魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第二十二話

「酷いモノね……」

 

地上本部と機動六課が襲撃された翌朝。

ティアナは資料を持って崩壊した機動六課の隊舎の現場検証を行っていた。

 

(スバル……)

 

ティアナは今も病院で眠っているであろうパートナーのことを思う。

彼女は、昨夜のことを思い出すだけでも身体が震えそうになっていた。

 

チンクたちが撤退した後、倒れ込んだ彼をティアナが抱き起したときに、彼の身体のいたるところから血が流れて、彼の体温が低くなるのを感じた。

その時、彼女は言い様のない恐怖を感じた。

今まで一緒にいた者がいなくなるという恐怖を味わったティアナは一つの思いをその胸に抱いていた。

 

(ちょっと、気恥ずかしいけど、後悔は、したくない……)

 

 

 

 

 

スバルとギンガをティアナとなのはが回収してしばらくしてガジェットはその姿を消した。

地上本部及び機動六課における損害はかなりのものとなっていた。

地上本部側では、警備任務にあたっていた局員の三分の一が負傷。

死者が出なかったことは幸運と言ってもいいだろう。

 

そして、機動六課の方が損害率でいえば地上本部以上のものだった。

フォワードメンバーの四人のうち前衛を張るスバルが左腕損失といった重症。

エリオも六課付近における戦闘で右腕を負傷していた。

さらに、陸士108部隊からの出向扱いのギンガも右腕の破損及び頭部裂傷という具合。

六課の防衛についていたザフィーラ、シャマル、ヴァイスの三名の負傷。

最後に、六課で保護していた少女、ヴィヴィオを連れ去られるという最悪に近い形での敗北だった。

 

 

「酷くやられたな……」

 

「シグナム副隊長……」

 

現場を見回っていたティアナに遅れてきたシグナムが声をかけた。

 

「ヴィータ副隊長やリイン曹長は……?」

 

「幸い、回復魔法ですぐに完治できる程度の怪我だったらしい。

 二、三日は安静にしておかなければならないそうだが、すぐに戻ってくるさ。

 リインも一応検査を受けてはいるが、あいつは夕方にでも戻ってくる。

 負傷した六課所属の局員も全員峠は越したようだ」

 

シグナムのその報告にほっと胸をなでおろすティアナ。

普段スバルたちと一緒にいるとは言っても、同じ職場に働く者が一人も欠けなかったことはうれしい報告だった。

 

「それで、高町隊長はどうだ?」

 

「……中で検証中です。

 ヴィヴィオが攫われて、悲しいはずなのに、それを感じさせないで……」

 

「そうか……。

 その資料を渡してくれ」

 

ティアナはシグナムの言葉に首を傾げながらも手に持った資料を彼女に渡した。

 

「あとの仕事は私がやっておく。

 お前も、病院に顔を見せに行ったらどうだ?

 スバルも目を覚ましたとエリオから連絡があってな」

 

「―――ッ、はい!

 ありがとうございます、シグナム副隊長!!」

 

シグナムは、彼女に一礼して走っていくティアナの背中を見ながら微笑んだ。

 

「……あれが若さか」

 

彼女のポツリと呟いた一言はだれにも聞かれることはなかった。

 

 

 

 

 

「はぁ~、お前も無茶するなぁ、エリオ?」

 

病室で目覚めたスバルは、同室となったエリオと、彼の見舞いに来ていたキャロに先日の襲撃の報告を聞いていた。

その途中で、スバルはストラーダとケリュケイオンに記録されていた戦闘データを見てそう呟いた。

 

「あの時は、ちょっと頭に血が上ってて……」

 

「ま、お前にそれを言う資格は俺にはないか」

 

ヴィヴィオが攫われていくのを直接見たエリオは、乗っていたフリードの背から飛び出し、ストラーダの推進力のみで彼女を連れ去ろうとしていたルーテシアに追い迫ろうとしたのだが、ガリューとルーテシアの援護に回っていたディードによって、海に叩き落されたのだった。

その後、エリオを救出したキャロによって呼び出された真竜『ヴォルテール』によって六課を襲撃していたガジェットは一掃された。

 

うつむきながらそう答えるエリオを見て、スバルは自分の左肩に手を当てる。

今は病院から貸し出された病院服の上着を羽織っているために一目ではわからないが、袖の肘から先のところには何もなかった。

 

「「「……………」」」

 

三人そろって無言になったとき、カラカラと病室のドアが開いた。

 

「……なんでみんなしてだんまりなの?」

 

部屋に入ってきたティアナは暗い顔をしている三人に驚きの表情を浮かべながらスバルのベッドの横に置いてある椅子に座った。

 

「ほら、差し入れ。

 どうせまだ何も口にしてないんでしょう?」

 

「ん、サンキュー」

 

ティアナは手に持っていたビニール袋の中から缶ジュースを取り出しプルタブを開きスバルに渡す。

それを受け取ったスバルは一気に飲み干した。

 

「それで、二人には話したの?」

 

「あぁ、俺と姉貴の生まれから身体のことまで全部な」

 

手に持った缶を見ながらそう答える。

ティアナはちらりと隣のベッドに腰掛けるエリオと、すぐそばに立っているキャロを見て口を開く。

 

「ごめんなさいね、私から言うのを止めてたの。

 もうちょっとしたら言ってもいいかもって話をこの間してたんだけど……」

 

「いえ、そんな」

 

「それに、お話を聞いて、あぁそうだったんだって納得できましたし。

 ほら、スバルさんってどこか人間離れしたところがありますから」

 

「そ、それもそうだな……」

 

「言われてみれば、ね」

 

エリオとキャロの顔を見てスバルたちは苦笑いしながらそう答える。

そんな時、キャロがエリオの袖を軽くつまんで彼に念話で部屋を出ることを伝える。

それにエリオも頷き、ベッドから降りた。

 

「僕たち、ちょっと食堂まで行ってきますね」

 

「スバルさんも、温かい食べ物とか食べますよね」

 

二人はすぐに部屋を出ていった。

それはもう、スバルたちが声をかける間もないほどに。

 

「気使わせちまったかな?」

 

「まぁ、今のあんた見たらそう考えるのも無理ないわね」

 

二人が出て言ったことで部屋は静かになった。

 

「ギンガさんは?」

 

「まだ目覚めてないらしい。

 一応、修復は終えたらしいけど、右腕は……」

 

「あんたと一緒か」

 

ティアナはスバルの左腕を見ながらそう呟く。

 

「ケーブルとかなら取り換えるだけでいいけど、今回みたいなその部位を失った場合は、その部分を丸ごと取り換える必要があるしな。

 多分、俺も姉貴も腕は肩から取り換えることになる。

 それでもスペアなんてあるわけないから、しばらくは片腕だ」

 

「あんたは片腕でも戦うんでしょう?」

 

「まぁ、な」

 

ティアナの言葉に頷くスバルの頭に浮かんだのは一人の少女の顔。

考え込んでいる彼の顔を見たティアナが彼に指摘する。

 

「あの赤毛の子のことでしょう?」

 

「……あぁ。

 多分、あいつは自分がやらなきゃっていうことだけしか見えていないんだと思う。

 でも、一つだけのことだけしか見ないのは、ほかのことを見ないようにしているんだよな。

 その中には、大切なこともある」

 

スバルは空になった缶を握りながら言葉を紡ぐ。

 

「だからさ、どうにかして目を覚ましてやらないとって思うんだよ。

 それがお節介だったとしても」

 

ティアナはそんな彼の表情を見て一つ大きなため息を吐く。

 

「つまり、あんたは出会ってそれほど経ってない相手のために、片腕でも戦おうって言うのね?」

 

「…………あぁ」

 

ティアナはスバルを呆れた表情で見る。

スバルは彼女の視線から目を逸らす。

 

「まぁ、その方があんたらしいわよね。

 見ず知らずの人のために身体張って助けるっていうお人よしというか、なんというか」

 

ティアナは大きくため息を吐く。

そして、彼女がスバルに真剣な表情で話しかける。

 

「スバル、今からちょっと真面目な話しするから」

 

「え……?」

 

いきなりの雰囲気の切り替わりに驚くスバルだったが、目の前に座る彼女の顔を見て彼も自然と真剣な表情になる。

 

「スバル、あたしはあんたのことが好き」

 

「…………はい?」

 

いきなりの言葉にスバルは目が点になった。

 

「あたしは、スバル・ナカジマのことが好き」

 

「マジ…………?」

 

本気(マジ)よ」

 

スバルが呆然と答えると、ティアナは顔を紅くしながらもはっきりと答える。

 

「本当は、こんな時にいうことじゃないんだろけど、我慢できなかった」

 

「我慢って……」

 

「だって、昨日あんたが倒れたとき、あたし、怖くなったの。

 兄さんみたいに、あんたまでいなくなるのは、考えたくなかった。

 だから、後悔したくなかったから、あんたに伝えたかったの、あたしの気持ちを……」

 

「いや、けどなんで俺?」

 

「好きになっちゃったんだから、しょうがないでしょう!!

 あんたのことが全部、そのお人好しなところとか、一度決めたらやり通すところとか全部!!

 理解できないなら、何度でも言う。

 あたしは、あんたのことが大好き」

 

「え……、あ、う、うん……」

 

スバルは自分の口の中がカラカラに乾いているのを感じた。

 

「そ、そんなこと考えたこともなかったし、というか、今でも信じられないし、いきなりだし……」

 

スバルは手をわたわたと振り、しどろもどろに話す。

だが、それも仕方のないことだろう。

今まで仕事のパートナー兼仲のいい友達といった関係だと思っており、彼女のことを異性として意識し始めてすぐの告白である。

そんな彼に混乱するなと言う方が無茶であろう。

 

「返事は……その、今じゃなくていいから」

 

「え?」

 

「今返事もらっても、なんかあんたが弱ってる時に入り込んだみたいで、嫌だし。

 それに、今は大変な時でしょう、色恋沙汰で仕事に支障きたすのは不味いし」

 

それに、とつづけながらティアナは立ち上がる。

 

「今はあんたも休まないと。

 ほら、とにかく返事はこのゴタゴタを終わらせてからね」

 

「え、あ、あぁ……」

 

終始、スバルを置いてきぼりにしてティアナは部屋を去っていった。

部屋に残されたスバルはベッドの上で彼女が出ていった出口を見ながら一言呟いた。

 

「え、どうしろって言うんだよ……」

 

その後彼は、エリオとキャロが戻ってくるまでスバルは頭を抱えてベッドの上をごろごろと転がっていた。

 

 




すみません、私情によりしばらく更新できそうにありません。
恐らく一週間ほどだとは思いますが……。
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