おかげで身体がついてこれず、半月経たずに熱でダウンしてしまいました(笑)。
これからも遅めの更新になりますが、ティアナルート完結、そしてノーヴェルートに進むために頑張っていきたいと思います。
それではどうぞ!
サカキは自分の部屋で頭を抱えていた。
「ここまで頭を悩ませた問題はいつ以来だろう……」
彼が頭を抱えることになった原因は、ギンガとスバルについてだった。
彼が一番の興味を持って接しているのはスバルだが、姉であるギンガに何かあればスバルが悲しむのは必定。
そんな彼をサカキは見たくはなかった。
そして、その最悪のことが起きようとしていた。
以前のギンガの身体の異常がついに許容できる範囲を超えた。
病室にいるギンガにとってもそれは耐え難い苦痛を与えるものだ。
少しの調整で、その苦しみを和らげることができる。
だが、ギンガはそれを望んではいなかった。
「まったく、ここまでそっくりだね、彼ら姉弟は……ん?」
大きくため息を吐いたサカキだったが、彼のプライベートのパソコンに一つのメールが届いているのに気付いた。
「こ、これは……!!」
その中身を確認したサカキはその部屋を飛び出していった。
「あ、お、おはよう」
「お、おう」
その日、スバルが病室を出たとき、ちょうど部屋に入ろうとしていたティアナと鉢合わせしていた。
互いに昨日のことを思い出して顔を紅めていたが。
「ど、どこか行くの?」
「あぁ、姉貴が気が付いたって連絡が昨日の夜あってな。
今からちょっと行こうとしたところだ」
「そう、ギンガさん、目が覚めたんだ」
ティアナはスバルの言葉にホッと息を吐いた。
部屋から一歩出て扉を閉めるスバル。
「あ~、一緒に行くか?」
「……うん」
ギンガが収容されている研究所まで、街の中を走るレールウェイの中で二人は無言だった。
だが、それは決して互いに喧嘩したとかではなく、どちらも話しかけようとしては中断するという感じで生じた無言だった。
「昨日のことだけどな」
「うん」
「返事は、お前が言った通り、このゴタゴタが終わってからする。
終わらせて、それから、俺の気持ち、ちゃんと伝えるから」
座席に座りながらスバルは隣に座るティアナに語り掛ける。
「絶対に」
「……約束よ」
「あぁ、約束だ」
揺れる列車の中でティアナがスバルの肩に頭をコトンと当てる。
彼女の重みを感じながら、スバルはしっかりと頷いた。
「なんか、ちょっと見ない間に二人とも仲良くなってない?」
「な、何のことですか?」
ギンガのいる病室に着いた二人に向けられた彼女の言葉は、二人を狼狽させるのには十分な言葉だった。
彼女の言葉にスバルは目を逸らし、ティアナは引き攣った笑いを浮かべるしかなかった。
「なんとなく、ね?
女の勘ってやつかしらね~」
ギンガのその言葉に二人は苦笑を浮かべるしかなかった。
「それで、傷の具合はどうなんだよ、姉貴?」
「右腕以外はほとんど直ってるわよ。
頭切ってたから血が結構出てたけど、それももう修復終わったしね」
「こういう時に限っては、
ギンガとスバルがそんな風に笑って言い合っているとき、部屋の扉がノックされた。
ノックの音が響いたとき、三人は互いに顔を見合わせ、ギンガが返事をする。
「あいてますよ」
「失礼するよ」
扉を開いて入ってきたのは、サカキだった。
彼はケースを手に持ちながら部屋に入る。
「おや、スバル君もいたのか。
なら丁度いい。
君を呼ぶ手間が省けたよ」
「何かあったんですか……?」
部屋にスバルがいたことに驚きの表情を浮かべたサカキだったが、すぐにいつもの笑みが浮かぶ。
そんな彼に対してギンガは首を傾げながら尋ねる。
「おっと、そうだったね。
実はギンガ君とスバル君。
君たちにいい知らせがあってね」
サカキはティアナが部屋の隅から持ってきた椅子に彼女に礼を言いながら座り、メガネの位置を直しながら口を開く。
「二人はグランツ君のことを覚えているかな?」
「フローリアン博士ですか?
あの人がどうかしたんですか?」
「実は、ここに彼から研究資料用に送ってもらったものがある」
そう言ってサカキは手に持ったケースの蓋を開けた。
そこには二つの腕が収められていた。
「これは……」
「腕……?」
「そう、彼が開発したアンドロイド『ギアーズ』のプロトタイプの予備パーツだよ。
ここからが本題だ。
このギアーズの身体は君たちと同じ機械の身体だ。
そして、彼らは君たち二人の身体をベースに作られた」
サカキの言葉にギンガとスバルは何かに気づいた顔をする。
「まさか……!」
「そう、そのまさかさ。
この腕を少し調整すれば、君たちに取り付けることも可能だ。
さて、この選択肢を差し出された君たちはどうする?
もちろん、断ってくれてもいい。
本来腕を失った君たちはこのまま負傷局員としてしばらく前線から離れられる。
僕としてもそうしてくれた方がいいと思ってる」
まぁ、選ぶのは君たちだ、と言ってサカキはその口を閉じる。
そして、すぐに二人は答えを彼に伝えた。
「ありがたいです。
これでちゃんと戦える」
「弟が戦うって言うのに、姉が寝ているだけってのは情けないですしね」
「うん、君たちならその選択を選ぶと思っていたよ。
実はもう準備は始めているんだ。
スバル君は先に研究室に向かっていてくれ。
リツカ君がそこで調整を始めるから」
「姉貴は?」
「彼女にちょっと話があってね」
サカキの少し強めの言葉にスバルは戸惑いながらもティアナを連れて部屋を出ていった。
「さて、ギンガ君」
「私の身体のことですよね?
もう時間が……」
サカキがギンガを見ると、彼女は先に彼の要件を言い当てる。
彼女は感じ取っていた。
すでに自分の身体が思うように動かなくなるということを。
顔を俯かせてそう言う彼女だったが、サカキは軽い感じで声をかける。
「まぁ、君の身体のことなんだけどね。
まだ確証を得たわけでも、安全が確認されたわけでもない。
だけど、一つだけ、それをどうにかできる方法がある、と言ったらどうするかい?」
燃え盛る草原。
すべてのものを焼き尽くす臭いだけが、彼の鼻に刺激を与えていた。
人も、建物も、森も、すべて。
男は心の中で呟いた。
―――これで、すべて終わりだ……―――
だが、それはだれにも聞かれることはなかった。
燃える、燃える。
すべてが燃える。
彼の生まれた街が、偉大な王が築いた城が、平和だった国が。
彼が作り出したあるもののせいで、この国、いや世界は狂ってしまった。
彼は所謂天災と呼ばれる者だった。
故に気づいてしまった。
自分たちが暮らす世界の他にも、人々が暮らす世界があることに。
そして、絶望を撒き散らすだけになったこの世界が、平和に暮らしている世界に
そこからの彼の行動は早かった。
それは彼自身のケジメでもあった。
まともな思考を残した者はこの世界にはいなくなっていた。
そんな世界は、邪魔なだけ。
彼はその世界を滅ぼす魔王になることを選んだ。
「―――これですべて終わり。
あとは……」
男は手に持ったそれをコメカミに向け、引き金に指をかける。
―――願わくば、この世界の跡を誰も見つけないでくれ―――
そして、一つの音が彼の耳を打つのと同時に、彼の意識は消えた。
「―――よし、成功だ……ッ!!」
「すぐに最高評議会に連絡を……ッ!」
そして、彼は目覚めた。
彼は長い夢を見ていたようにも感じていた。
「…………………」
徐々にはっきりとしてきた思考の中で彼は………。
「――クター、ドクター」
「…………ん」
耳を打つ自分の長女の声で彼、ジェイル・スカリエッティは瞼を開く。
視界の中には、ウーノ、クアットロ、ディエチが揃っていた。
「準備、整いました。
いつでも始められます」
「あぁ、ご苦労様だ、ウーノ」
スカリエッティは固まっている関節をほぐす様に身体を動かす。
「久しぶりに夢を見たよ」
「夢、ですか?」
ウーノはスカリエッティの言葉に首を傾げる。
今までそう言った話をしたことがなかった彼が、唐突にそのようなことを言ったことを疑問に思っていた。
「あぁ、とても懐かしくて、クソッタレな夢だよ」
その時、彼の目はとても冷たいモノだった。
スカリエッティはウーノから受け取った白衣を羽織ると、寝台に横たわっている少女―――ヴィヴィオのもとに近寄る。
「さぁ、始めよう」
―――一世一代の大勝負を―――