魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第二十七話

『状況は予想していた以上に最悪な方向や。

 ジェイル・スカリエッティの思惑は何なのか不明。 

 だけど、あの巨大船が予想されるポイント、二つの月の魔力が満ちる場所に辿り着いたら、ミッドチルダの市民の安全が脅かされる』

 

巨大船、聖王のゆりかごが浮上してすでに数十分。

アースラでの緊急ブリーフィングのために、スバルたちは会議室に集まっていた。

 

「巨大船のポイント到達阻止のために次元航行艦隊も出撃してる。

 今も、航空部隊がゆりかご周辺に展開しているガジェットの排除に向かってるはず」

 

「ゆりかごだけじゃない、スカリエッティのアジトの制圧と、地上本部に向かっている戦闘機人の捕縛。

 やることはいっぱいあるけど、高濃度のAMF環境下での戦闘を行える魔導師はまだそんなに多くない」

 

『そこで、機動六課を三つのチームに編成する。

 まず本部に向かってる戦闘機人、それはスバルたちに任せる。

 別ルートから本部に向かっている魔導士……、騎士ゼストの方は、シグナムとリインが』

 

「アジトには私が、ゆりかごには」

 

「私とはやて部隊長、ヴィータ副隊長が行く……でいいんだよね?」

 

『そうや。

 もう時間がない。

 準備ができ次第、出撃頼むよ』

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、準備はいい?」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

出撃の準備を終え、格納庫に集まったスバルたちは、なのはとヴィータの前に並んで立っていた。

 

「今回の出撃は、今までで一番ハードになると思う」

 

「あたし等も、お前らのピンチになっても助けてやれねえ」

 

「でも、目を閉じて、今までの訓練を思い出してみて?」

 

なのはの言葉に従い、目を閉じるスバルたち五人。

 

「何度もやった基礎訓練、嫌って程磨いた、それぞれの得意技。

 痛い思いをした防御練習、全身筋肉痛になっても繰り返したフォーメーション。

 いつもボロボロになるまでやった、私達との模擬戦」

 

なのはの言葉とともに、スバルたちの顔がどんどん青ざめていく。

彼女の訓練を受ける期間が短かったギンガは比較的マシだったが、残る四人、特にスバルとティアナは今にも吐きそうな表情を浮かべていた。

 

「目、開けていいよ」

 

なのはは目の前に立つ五人の姿を見て、苦笑する。

 

「訓練メニュー考えた私が言うのもなんだけど、皆きつかったよね?」

 

「それでも、ここまで5人ともよくついて来た」

 

「特にスバルとティアナはよく頑張ったよ。

 私が教えてきた中で一番キツイ訓練メニューだったんだから」

 

なのはのその言葉に、スバルとティアナは頬を引き攣らせながら笑うしかなかった。

彼らは、彼女の考えた訓練メニューは彼女の教えを受けた者はだれでもこなしていると考えてやっていたために、その分の驚きも含まれていた。

 

「5人とも誰より強くなった……とは、ちょっと言えないけど。

 だけど、どんな相手が来ても、どんな状況でも絶対に負けないように教えてきた」

 

なのはとヴィータは、そう言いながら笑みを浮かべる。

 

「守るべきものを守れる力、救うべきものを救える力。

 絶望的な状況に立ち向かっていける力。

 ここまで頑張ってきた皆は、それがしっかり身に付いてる」

 

その言葉は、スバルたちの中に何の抵抗もなく入り込んでくる。

そして、それは彼らの中で自信となってその心を強くする。

 

「夢見て憧れて、必死に積み重ねてきた時間」

 

言葉を続けながら、なのはは拳を握りしめて前に出す。

 

「どんなに辛くてもやめなかった努力の時間は、絶対に自分を裏切らない。

 それだけ、忘れないで」

 

最後にそう言って、締めくくる。

浮かべていた笑顔は彼らの知る、なのはの、強くて優しいエースオブエースの顔だった。

 

「キツイ状況を、ビシッとこなして見せてこそのストライカーだからな」

 

「「「「「……はいっ!」」」」」

 

ヴィータは不敵な笑みを浮かべながら彼らにそう告げ、スバルたちも自信に満ちた顔で答えた。

 

「じゃあ、機動六課フォワード隊、出動!」

 

「行ってこい!!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

今までで一番の敬礼をなのはとヴィータに返して、スバルたちは踵を返して走り出した。

だが、ヘリに向かう彼らの中で、スバルだけが立ち止りなのはの砲に振り返った。

 

「なのはさん、ヴィヴィオのこと、頼みます」

 

「スバル……」

 

「あいつに、あげようと思ってたチョコ渡してないんで」

 

スバルのその言葉になのはは吹き出しながら答える。

 

「うん、任せて。

 スバルも、気を付けてね」

 

「はい」

 

スバルはもう一度、彼女に敬礼をして、今度こそヘリの方へと走っていった。

 

「スバルの奴、完全に兄貴になってるな。

 六課(ここ)に来てから、エリオとキャロ(チビども)の相手してたけどさ」

 

「うん、もう完全に下の子を思いやるお兄ちゃんだよね。

 ヴィヴィオにとっても、スバルはお兄ちゃんなんだろうなぁ」

 

走り去るスバルの背中を見ながら、なのはとヴィータはそう言葉を交える。

 

「さ、私たちも行こう」

 

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ、スバル」

 

「ヴァイスさん……ッ!?」

 

ヘリの後部ハッチの前で彼を待っていたのは、今も病院にいるはずのヴァイスだった。

 

「なんでここに!?」

 

「お前らを無事に降下ポイントに連れてくためだよ。

 直接(やりあ)った訳じゃないが、無駄に消耗して戦える相手でもないだろ?

 途中までの露払いをしてやるってことだよ」

 

ヴァイスはそう言ってヘリの中へ入っていく。

スバルの眼には、その背中がとても大きく、頼りがいのあるモノに見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォワードのみんなは出撃()たんやね?」

 

「うん。

 シグナムとリインも一緒に出たよ」

 

「次はあたしたちの番だな」

 

スバルたちが出るのを見送ったなのはとヴィータは、アースラの下部ハッチのある区画にいた。

 

「…………」

 

「なのは……」

 

フェイトは、ここに来てなのはが一言も話さないのを気にして彼女に視線を向ける。

その視線に気づいたなのはは決意の籠った表情で答える。

 

「大丈夫だよ、フェイトちゃん。

 ヴィヴィオは絶対に助ける。

 スバルとも約束したんだし」

 

「……気を付けてね、なのは。

 私が言えることじゃないかもしれないけど、なのははすぐに無茶するから……」

 

「約束はできないけど、善処はするよ」

 

フェイトはなのはの言葉に額を押さえながらため息を吐く。

 

「そう言うと思ったよ、まったく……。

 なのは、ヴィヴィオは任せるよ」

 

「うん。

 フェイトちゃんも気を付けて」

 

『降下部隊、ポイント到着。

 お願いします』

 

「ほな、行こうか」

 

「「「了解!」」」

 

アースラの艦内アナウンスを聞いたはやてはその場でバリアジャケットを展開し、開かれたハッチから外に飛び出す。

彼女に従ってなのはたちもバリアジャケットを身に纏い、その身を空に投げ出した。

 

「久しぶりのリミッター無しの状態や。

 加減を間違えんようにな!!」

 

「大丈夫だよ、はやて」

 

「やることは変わらないから」

 

「そう言うことだ」

 

「心強いなぁ……」

 

はやてはなのはたちの返事に笑みを浮かべながら、その頼もしさをうれしく思っていた。

 

「フェイトちゃんはそろそろ……」

 

「うん、このままスカリエッティのラボまで一直線にいく」

 

「それじゃ、フェイトちゃん。

 またあとで」

 

「うん、なのはも。

 ヴィヴィオも一緒に」

 

フェイトはそう告げて三人と別の方角へとその進路を変えていった。

 

「さ、うちらも」

 

「うん……ッ!」

 

はやてに促され、なのはとヴィータはその高度を下げ、雲を突き抜ける。

その先には、巨大な船と、その周りに展開するガジェットとそれを押しとどめるために魔法を放つ航空魔導師部隊が激しく争っていた。

 

(ヴィヴィオ、待っていて……ッ!

 今、助けに行くからッ!!)

 

なのははその手に握るレイジングハートを構え、飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

「ゆりかごの方はどうなっている?」

 

場所は移り、地上本部の司令室。

そこでレジアスは後ろに立つ女性局員にそう尋ねた。

 

「高濃度のAMFが発生しているようで、苦戦しています。

 現在、機動六課所属の魔導師が三名合流しましたが……」

 

「まぁ、そう簡単には流れは変わらないだろうな」

 

だが……、とレジアスは言葉を続けた。

 

「規格外の魔導師ならほかにも当てがあるのでな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、あの人は人使いが荒いッたらないな」

 

男は靴紐を結びながらそうぼやいた。

そんな男に苦笑しながら二枚のカードを渡す女性。

 

「でも、行くのでしょう?」

 

「頭の上であんなデカブツが浮かんでたら、ケイが静かに眠れないからな」

 

男―――キョウは女性―――イリョウからカードを受け取る。

 

「お父さん……」

 

「どうした、ケイ?」

 

キョウは足にしがみついた娘を抱き上げる。

ケイはキョウの首に一度強くしがみついた。

 

「けが、しないでね……?」

 

「あぁ、お父さんは強いからな。

 ちゃんと帰ってくるさ」

 

キョウはケイを優しく抱きしめ、彼女をイリョウに受け渡した。

 

「そうだな、この騒ぎが終わったら、三人でどこか旅行にでも行こう」

 

「いいわね、それ。

 どこにするか決めておくから、ちゃんと帰ってきてね」

 

「あぁ。

 行ってくる」

 

キョウは住処を出る。

その顔は、優しい父の顔から、鋭い目つきの戦士のそれになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おわッ!?」

 

「グッ……!」

 

揺れるヘリの中で、スバルたちは身体をぶつけないように手すりなどにしがみついていた。

 

「コラァ、アルト!!

 もちっと丁寧に操縦しろ!!」

 

『す、すみません!

 でも、あのガジェットたちしつこくってッ!!』

 

ヘリの中でヴァイスの怒声が響く。

現在、スバルたちを乗せたヘリはノーヴェたちの進路上に向かうコースを飛んでいた。

ガジェットⅡ型の追撃を受けながら。

 

「バカヤロウ!

 こいつは前の新型とは違うんだ!!

 以前の感覚で飛ぶんじゃねぇ!!」

 

『そ、そうか……!』

 

ヴァイスの言葉を聞いたパイロットのアルトはすぐに操縦桿を手前に引きその身をビルの上にさらした。

 

「スバル、腰のベルト掴んでくれ。

 絶対に離すなよ」

 

「了解ッ!」

 

ヴァイスはそう言うと、ヘリの側面のドアを開いた。

スバルが彼のベルトを握ったのを確認すると、ヴァイスはその身をドアから乗りだした。

その手には銃型の彼の愛機『ストームレイダー』が握られていた。

彼の視線の先には、彼らの乗るヘリを追ってきた二機のガジェットⅡ型の姿。

 

「ストームレイダー」

 

『いつでも撃てます』

 

「アルトッ!!」

 

『はいッ!!』

 

ヴァイスの合図に従い、アルトが操縦桿を左に思いっきり倒す。

ヘリの急旋回を認めたガジェットⅡ型はその進路を変える。

 

「狙い撃つ……ッ!」

 

『スナイプシューター』

 

進路を変更する際に、一瞬だけ二つの機影が一直線に並んだ。

その瞬間をヴァイスは逃さずに、引き金を引いた。

放たれた弾丸は、二機分のAMFを物ともせず、そのコアを撃ち抜いた。

 

「す、すげぇ……」

 

「スナイパーの名は伊達じゃないってな」

 

その様子を直に見ていたスバルは素直に、賞賛の声を上げた。

身体をヘリに戻し、ドアを閉めたヴァイスは、中で彼の腕に驚きの表情を浮かべている皆に向けてそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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