魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第二十八話

空を悠然と飛ぶ船―――聖王のゆりかご。

その周辺はまさに激戦区にふさわしい様相を呈していた。

休む暇もなく襲い掛かってくるガジェットⅡ型。

空をも覆いつくさんばかりにゆりかごの砲門から放たれる紫の砲撃。

 

「航空魔導師隊、スリーマンセルで当たって!

 単独での戦闘は避けて、確実に、だけど迅速に撃ち落して!!」

 

そんな状況に内心舌打ちをするはやては、周囲の航空魔導師に指示を出しながら飛行するガジェットの編隊を撃ち落す。

だが、それだけやっても敵の数は減るどころか増えてきているように彼女には感じられた。

敵味方が入り乱れる乱戦状態のため、はやてが最も得意としてい広範囲殲滅魔法は使えない。

そんな状況に歯噛みしながらはやては一つの考えに至った。

 

「外からチマチマやっててもどうにもならん……。

 やっぱり、中から止めるしかないか……ッ!」

 

はやては目の前のゆりかごを苦々しい顔で見上げる。

その規格外の巨体には、はやての魔法でも致命傷を与えることはできないだろう。

ゆりかごを止めるためには、内部に侵入して動力炉を潰すしかない。

 

『24番射出口より、小型機多数!』

 

『南側の射出口からもⅡ型およびⅢ型の射出を確認!!』

 

「!」

 

はやての思考に割り込む形で、この戦域にいる魔導師からの念話がつながった。

その内容は彼女にとってかなり苦しいものであったが、はやてはそれを顔には出さずに周囲で彼女の撃ち漏らしを撃ち落していた魔導師に指示を出す。

 

「皆、落ち着いて!

 拡散されたら手が回れへん。

 叩ける小型機は空で叩く、潰せる砲門は今のうちに潰す!

 ミッド地上の航空魔導師隊、勇気と力の見せ所やで!」

 

『はい!!』

 

はやての激励に、魔導師たちは得物を構え、己が敵に狙いを定めた。

戦いはまだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

「せぇいッ!!」

 

気合を込めた声とともに振るわれたグラーフアイゼンによって、一機のガジェットが空中で叩き潰され、スクラップと成り果てた。

ヴィータは返す刀で背後から接近していたガジェットⅠ型を、吹き飛ばし粉砕する。

 

「中に入る突入口を探せ!

 突入部隊、位置報告!!」

 

ヴィータはガジェットが密集する場所に向かって飛翔し、突入部隊への指示を出す。

そこから少し離れたところでは、なのはが密集したガジェットに向かって砲撃を放ち、その存在をこの世から消し去っていた。

 

「第七密集点突破、次ッ!!」

 

機械音とともに、レイジングハートから噴き出す蒸気を払いのけながらなのはは次の密集点に向けてその矛先を向ける。

今、彼女の手に握られているのは杖というよりも、槍と評した方がいい代物だった。

レイジングハート・エクセリオン、その全力稼動を示す形態『エクシードモード』。

普段のレイジングハートに比べて、攻撃的なデザインのそれは、彼女の覚悟の証でもあった。

最初から全力全開。

彼女には手加減するつもりも、出し惜しみするつもりもなかった。

 

(ゆりかごの阻止限界時間まであと三時間……ッ!)

 

なのはは新たな標的をその視界に認めると、即座に砲撃を放った。

まさに鎧袖一触。

今の彼女にとって、ガジェットは己の道を塞ぐ障害どころか、路傍の石と同じ存在だった。

 

「邪魔をしないでッ!!」

 

 

 

 

阻止限界時間まで―――後、二時間五十七分。

 

 

 

 

 

 

「烈風一陣ッ!!」

 

掛け声とともに、彼女の両手に握られたトンファーから二発のカートリッジが排出される。

排出が終わるとともに、彼女―――シャッハ・ヌエラは得物を回転させながら跳び上がる。

 

「切り裂け、ヴィンデルシャフトッ!!」

 

辿り着く先は、ガジェットの密集した場所。

その中心に降り立ったシャッハは間髪入れずにデバイスを振るい、ガジェットを文字通りに『切り裂いて』いく。

彼女の通った後には、スクラップと成り果てたガジェットの残骸が転がるだけだった。

 

「はああああっっ!!」

 

シャッハの戦っている地点から少し先に進んだところ通路では、大型のⅢ型が通路を塞ぎその触手(アーム)を伸ばし、弾幕を張っていた。

だが、その弾幕のわずかな隙間を金色の光が駆け抜けていく。

並の魔導師や騎士では通り抜けることすらできないであろう場所を金色の光―――フェイトは躊躇いなく駆け抜け、Ⅲ型の懐に飛び込む。

 

「せえええいっっ!!」

 

バルディッシュにカートリッジが装填される。

デバイスに魔力が充填されたのを確認し、フェイトは幅広の大剣を振り上げ、天井ごと目の前に展開するⅢ型の群れを押しつぶした。

 

すべてのガジェットを撃破したフェイトとシャッハは顔を見合わせ頷いた。

そんな彼女達の下に、二匹の犬が駆け寄ってくる。

ただの犬ではない。

その二匹の犬は、淡い緑色の光を纏い、その身体は透けていた。

この犬は、ここを突き止めた査察官ヴェロッサ=アコースのレアスキル、無限の猟犬(ウンエントリヒ・ヤークト)で生み出されたものであり、今はスカリエッティの居場所まで2人を案内する役目を担っていた。

 

『別働隊、通路確認。危険物の順次封印を行います』

 

フェイトと共に突入した部隊から、通信での報告が届く。

 

「了解。各突入ルートは、アコース査察官の指示通りに」

 

『はい!』

 

別働隊への指示を出した後、フェイトは隣に立つシャッハに微笑んだ。

「ありがとうございます、シスター・シャッハ。

 御二人の調査のお陰で、迷わず進めます」

 

「探査はロッサの専門です。

 この子達が、頑張ってくれました」

 

フェイトの言葉にそう返しながらシャッハは足元の二匹の犬の頭を撫でる。

そしてフェイトに視線を戻して力強く告げる。

 

「このまま奥へ。スカリエッティの居場所まで!」

 

「はい!」

 

そんなシャッハに頷いて、フェイトは先に進む。

この先に、あの男が。

フェイトが長年追い続けていた男―――ジェイル・スカリエッティがいる。

そう考えるだけで、彼女の手は相棒を強く握りしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆりかごが空を昇る空域から離れたところをゼストとアギトは高速で飛翔していた。

 

「旦那、もうすぐ地上本部だ」

 

「あぁ、わかっている」

 

アギトは隣を飛ぶゼストの表情を一目見て、今までずっと思っていたことを尋ねることにした。

何故かは彼女にはわからなかったが、この機会を逃すと二度と聞けなくなるという思いが彼女の頭をよぎったからだ。

 

「旦那、なんであのレジアスってやつにこだわるんだよ?

 何かあいつとあったのか?」

 

「…………」

 

ゼストは彼女の方をチラリと見て、少し間をおいて口を開いた。

 

「俺が以前、首都防衛隊にいたことは話したな?

 俺はその隊の隊長として、あいつは地上の指揮を執る頭としてミッドの平和を願っていた。

 だが、あるとき俺の部下が掴んだ違法研究所への介入をあいつは中止させた。

 はじめは何かの手違いだと思った。

 だが、それからも何度も同じようなことが続いた。

 俺はあいつに尋ねたが、終ぞ答えることはなかった。

 あとは、お前も知っている通りだ」

 

ゼストの率いる隊は、違法研究所に押し入り、そこでスカリエッティ一味との交戦、そして、彼を含んだ隊員の全滅となったのだった。

 

「俺は、あいつが何を考えて俺たちの行動を止めていたのか、それを知りたい。

 レジアスは理由もなくあのようなことをする奴ではないというのは知っているからな」

 

「旦那……」

 

アギトはゼストに対して、自分の胸に思い浮かんだ言葉を投げかけようとする。

 

「旦那ッ!」

 

「ム……ッ!」

 

だが、彼女たちに向けて大きな反応が高速で近づいていることを察知したアギトはすぐさまゼストに呼びかける。

彼女の声に反応したゼストがデバイスを構えた直後、彼らの上空の雲の中から一人の騎士がその手に握った剣を振るいながら飛び出してきた。

 

「ハァァァッ!!」

 

「……ッ!!」

 

剣と槍が触れ合った瞬間、爆発が起こる。

その爆発の衝撃を利用して騎士から距離をとったゼストとアギトは、間をおかずにユニゾンを果たす。

 

「防がれた、か……」

 

(あの融合騎が直前に知らせたみたいです。

 中々やりますです)

 

騎士―――リインとユニゾンしているシグナムは右手に持った愛剣(レヴァンティン)を構えなおす。

構えた剣は一瞬、彼女の紫の魔力光に包まれ炎を纏った。

 

(―――ッ、あの魔力光は……!?)

 

「どうした、アギト……?」

 

(な、なんでもねぇ!!

 一回で決めるぞ、旦那ッ!!)

 

「……あぁ」

 

(炎熱加速ッ!!)

 

アギトの驚きの声を聞いたゼストは彼女に尋ねるが、アギトはそれをなんでもないと答え、彼の槍に炎を纏わせる。

アギトが自分の身体のことを思っているということを理解しているゼストは、彼女の言葉に従いデバイスを構えた。

 

「すまないが、そこをどいてはくれないか。

 この先に用があるのだが」

 

「それはできません。

 貴方の目的がなんであれ、それは公務の妨害とみなされます、騎士ゼスト」

 

「俺のことを知っているか」

 

「えぇ、貴方は我々ベルカの騎士にとって模範とされる人ですから」

 

「―――退いてはくれないか……。

 ならば……ッ!」

 

「―――ッ!!」

 

時間にして一分にも満たない時間であったが、ゼストは目の前に立ちふさがる騎士がかつての自分と同じように職務を全うするべくこの場に来ていることを理解した。

 

「紫電……一閃ッ!!」

 

「ムゥンッ!!」

 

刹那―――、二人の剣閃が交わる。

そして、閃光が弾ける。

 

「クッ!!」

 

「アギト……ッ!」

 

(加速ッ!!)

 

剣と槍が交わった瞬間に起きた爆発に両者ともに弾き飛ばされるが、シグナムが体勢を整える間にゼストはその背中から炎を吹き出し、その推進力で彼女に迫っていた。

 

「速いッ!」

 

(緊急防御ッ!!)

 

その動きに回避することは不可能だと悟ったシグナムは左手に握った鞘を前に構え、それにリインフォースが氷の盾を付随させた。

 

「ハァッ!!」

 

「グッ!!」

 

だが、ゼストの一撃はその氷の盾ごとレヴァンティンの鞘を打ち砕いた。

その衝撃にシグナムは彼と地上本部を結ぶ直線からはじき出される。

 

(シグナムッ!)

 

「リイン、大丈夫か?」

 

(はい、でも……)

 

シグナムはゼストの去っていった方角―――地上本部の方を見る。

 

「さすがは、首都防衛隊のエースというところか。

 リイン、お前は主のもとに向かえ。

 本部には私が向かう」

 

(了解です!)

 

シグナムは砕かれた鞘を魔力を使って修復すると、レヴァンティンをその鞘に納めた。

彼女の指示に従い、リインフォースはすぐにユニゾンを解除する。

 

「それでは、シグナム。

 気を付けてください!」

 

「あぁ、お前もな」

 

リインフォースは彼女に一度敬礼をしてすぐにその場を後にする。

シグナムもまた、ゼストを追うために地上本部へその足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

「降下ポイントの安全を確認、アルト!」

 

『はいッ!

 みんな、頼んだよ!』

 

ヘリの側面のドアからガジェットの機影がないことを確認したヴァイスは操縦席のアルトに呼びかける。

アルトの返事とともに、ヘリの後部ハッチが開かれた。

 

「よし、行くか」

 

「先頭はスバル、頼むわよ。

 次にあたしが降りて、その次にエリオとキャロ。

 ギンガさん、最後お願いします」

 

「「はいっ!」」

 

「任せて」

 

ティアナの指示にスバルたちは頷く。

 

「六課フォワードチーム行きますッ!」

 

 

 

 

 

 

 

「キャロ、反応は?」

 

「ダメです。

 さっきまではあったのですが……」

 

地上に降り立ったスバルたちはレーダーに先ほどまで出ていた反応の方へと向かっていたが、そのレーダーには肝心の戦闘機人の反応が映っていなかった。

 

「―――ッ、フリードッ!!」

 

「お、おい、キャロ!?」

 

その時、スバルとティアナ、ギンガの後ろをついてきていたエリオと一緒にフリードに乗っていたキャロが突然速度を上げて先頭に踊り出た。

 

「あれって……」

 

「あの時のチビッ子か」

 

キャロの突然の突出に驚いたスバルたちだったが、彼らの丁度目の前の廃ビルの屋上に特徴的な紫のロングヘアーの少女が立っていた。

 

「向こうから出てきたってこと?」

 

「予定変更ね。

 先にあの子を捕まえるわ。

 ギンガさん、横の召喚虫を頼めますか?」

 

「わかったわ。

 ウイング―――」

 

瞬間、ギンガはその場から吹き飛ばされた。

 

「姉貴ッ!?」

 

「ギンガさんッ!!」

 

吹き飛ばされたギンガの名前を呼ぶ二人だったが、そんな彼らに向けて極太の砲撃が浴びせられた。

二人はその場から飛び退くことで何とか直撃を避ける。

 

「スバル、無事ッ!?」

 

「もちのロンッ!」

 

『スバル、ティアナ』

 

「ギンガさん!

 無事ですか!?」

 

追撃を警戒しながら、砲撃によって巻き上げられた砂埃の向こう側を凝視するティアナとスバルだったが、そんな彼らにギンガからの念話が届いた。

 

『何とか、ね。

 それよりも、こっちに戦闘機人を二人確認したわ。

 多分そっちにも……』

 

「来たみたいだ。 

 二人、反応のあった四つと数はあってるな」

 

スバルが砂埃の中から飛び出してくる二人の戦闘機人を認める。

その中に、彼が止めると決めた彼女もいた。

 

「ノーヴェ……」

 

「スバル、わかってるわよね?」

 

「あぁ、絶対に止める……ッ!」

 

「ならいいわ。

 あっちは任せるわよ」

 

「言われなくてもッ!!」

 

その言葉とともにスバルはマッハキャリバーを駆り、ノーヴェに向かって走り出した。

 

 

 

阻止限界時間まであと―――二時間四十三分。




気が付いてみれば、もう十月も終わりに近づいてますね。
そして、このティアナルートもあと数話で完結となります。
ここから最後まで、お付き合いお願いします。
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