「シュートッ!!」
『Divine Buster』
ゆりかごの内部を飛翔するなのはは、前方に現れたガジェットの群体を砲撃で一掃する。
なのはは、ガジェットの爆発によって撒き散らされた破片の中を躊躇わずに突き抜け、煙の向こう側に出る。
「レイジングハート、ヴィヴィオのいると思われる場所までどのくらいかな?」
『この進行速度ならば十五分といったところです」
「なら、このまま行くよ……!」
レイジングハートからの答えに頷きなのはは前を向く。
その時、頬に鈍い痛みを感じた彼女は手でその部分を拭うと、血がべっとりとついていた。
先ほど、ガジェットの残骸の中を突っ切った時にできた傷である。
『マスター、治療は?』
「かまわないよ。
この程度ならしばらくすれば傷口はふさがるから」
女としては、顔に傷が残るのはうれしくはないが、今はヴィヴィオを救うという最優先目標があった彼女にとって、頬の傷は気にするほどのものでもなかった。
「それに、ヴィータちゃんとも約束したしね。
ヴィヴィオを助けるまで、無駄な魔力は使いたくない」
『了解です』
なのはは、ゆりかごに突入し、動力炉に向かったヴィータの言葉を思い出していた。
ヴィヴィオを救って、無事にみんなで六課に戻る。
その一つの約束を守るために、なのはは先を急いだ。
「クアットロ、高町なのはは予想通りのルートを来てるよ」
その様子をモニターから見ていたディエチは、部屋の中央に位置する玉座に眠るヴィヴィオのそばでガジェットへの指令を飛ばしているクアットロにそう告げる。
「あら~、やっぱり~?
「ガジェットによる足止めは?」
「今のエースオブエースにガジェットごときで足止めになると思う?」
「思わない」
即答するディエチにクアットロは苦笑しながら「そうなのよね~」と言いながらパネルを操作する。
「それじゃ、最後の追い込みに入るからディエチちゃんは予定通りに」
「了解。
ちゃんとここまで来るようにすればいいんだろ?」
「お願いね~。
しばらくは私はこっちに付きっきりになるから、ガジェットの援護は出来ないけど……」
「ガジェットはいても邪魔になるから丁度いい。
それじゃ」
ディエチはそう言って足元に置いていたイノーメスカノンを担ぎその部屋を出ていく。
「さ~てと、それじゃあと少しで終わりますからね~。
それまでゆっくりとおやすみくださいな、陛下」
玉座で眠るヴィヴィオを見つめるクアットロ。
その目はまるで―――だった。
ゆりかごから離れた空域で、フリードに乗ったキャロは、ガジェットⅡ型に乗って空を駆けるルーテシアを追っていた。
「シューティングレイッ!!」
「……ッ」
キャロの放つ魔力弾と、ルーテシアの魔力で構成されたナイフが衝突し、爆発する。
「なんで、こんなことするの……ッ?」
キャロの呼びかけにルーテシアは無言でナイフを射出する。
フリードが急上昇と急降下を繰り返し、誘導を乱されたナイフは互いにぶつかり、空に虚しい花火を上げる。
「何か、理由があるのならッ!!」
「――――ッ!!」
それでも呼びかけを続けるキャロだったが、ルーテシアはその言葉に応じることなくナイフを三度射出した。
呼びかけに集中していたキャロは、反応が遅れ、障壁を張るがナイフの爆発によってフリードの体勢が大きく崩される。
その隙を逃すルーテシアではなかった。
とどめと言わんばかりにこれまで以上に数を増やしたナイフをキャロに向けて放った。
二人が空中戦を繰り広げている少し下のビルの間でエリオは腕の突起を刃のように振るうガリューの攻撃をストラーダで捌いていた。
「ストラーダッ!!」
『
ガリューの刃を、後ろに飛び去ることで回避したエリオは、ビルの壁に張り付き、ストラーダのブースターを噴かせて一気に上昇。
「ハァッ!!」
体勢を立て直したフリードの背に乗り迫りくるナイフを一閃のもとに切り伏せた。
「エリオ君ッ!」
「キャロ、大丈夫?」
エリオは、キャロに怪我がないことを確かめると、ガジェットに乗ったまま自分たちを見つめるルーテシアを見つめる。
「どうして、こんなことをするんだ。
君にだって、スカリエッティがしようとしていることはわかっているだろう!?」
「あの人のせいで、多くの人が傷ついている。
なんで協力しているの?
理由を話してくれれば、手伝えることなら私たちも協力するから!」
「「お願いだから、話を聞いて!!」」
ルーテシアには、わからなかった。
自分と同じぐらいの年齢で、管理局員として戦っている二人が。
以前の戦闘で、彼らのことを殺してしまうかもしれいないことをしていた自分と話しをしようとすることが。
そして、目の前の彼らのことを見ていると、胸の内に湧いてくるこの苛立ちが何なのか。
「……ッ!
ガリュー……ッ!」
「―――ッ!」
ルーテシアの声に応じて、エリオを追ってきたガリューがフリードの背に立つエリオに向かっていく。
そんな彼(?)に対して、エリオもまたストラーダを構えて空を走る。
「―――ッ!!」
「なんで、何も話してくれないの……?」
残ったキャロに向けてルーテシアは魔力弾を放つ。
だが、その魔力弾は彼女に当たることなく、虚空から現れた鎖に砕かれた。
キャロは俯きながら、言葉を紡ぐ。
彼女の言葉とともに、フリードの周囲に桃色の魔力弾が生成される。
その数―――二十。
「言葉にして、話してくれなきゃ……わからないってばぁッ!!」
「クッ……!?」
桃色の光が、青空を切り裂いた。
「――――ッ!!」
「クッ!!」
視界の外から放たれた刈り取るような蹴りをスバルは左腕を使い直撃を避ける。
ノーヴェは防御に入ったスバルに攻撃の隙を与えないために続けざまに回し蹴りを放った。
「―――ッ!?」
だが、その蹴りはスバルの左手に掴まれ彼女は彼の成すがままに投げ飛ばされる。
「おおぉッ!!」
「グッ……!」
体勢を崩しながらも着地したノーヴェはスバルが自分に向けて飛び込んできているのを認めると、すぐに彼に向けてエネルギー弾を放つ。
だが、狙いが正確なエネルギー弾はすべてマッハキャリバーが張った障壁に阻まれる。
「ハァァッ!!」
「……ッ!!」
懐に飛び込んだスバルはノーヴェに向けて拳を放つが、それをノーヴェは受け止める。
お返しとばかりに反対の塞がれていない腕でスバルに殴り掛かるが、迫りくる拳を、スバルはその腕を掴むことでノーヴェの動きを捕らえる。
「ノーヴェッ!!
なんのためにまた戦うんだッ!!」
「そんなことは決まっている。
ドクターの望みのためだ……ッ」
ノーヴェはスバルを蹴り飛ばし、距離が開いたところでエネルギー弾を打ち込む。
「
創造主のために戦うことの何が悪い」
エネルギー弾がスバルの周囲に着弾し、彼の姿が煙の中に消えていく。
彼をその場から逃がさないために、ノーヴェはさらに追加でエネルギー弾を放つ。
「このっ!」
スバルは自分に直撃するエネルギー弾を見極めて『リボルバーシュート』で彼女の攻撃を相殺する。
だが、ノーヴェの攻撃を撃ち落したときに生じた爆煙の中からノーヴェが飛び出し、彼の身体を蹴り飛ばした。
「ガ―――ッ!?」
「私からしたら、お前たちタイプゼロが異常だ。
お前たちもまた、私たちと同じだ。
創られた存在のはず。
なのに、なぜ自分の意志で戦える?」
蹴り飛ばされた衝撃が抜けきる前に、ノーヴェはスバルの服の襟を掴み、何度も地面に叩き付ける。
二度三度と固いコンクリートの地面に叩き付けられるスバルだったが、何とか彼女の腕を掴み戦闘機人としての膂力で拘束を解き彼女の動きを止める。
「俺が、人間だからだ……ッ!
確かに俺たちは創られたかもしれない。
だけどなぁ……ッ!」
地面に叩き付けられたときに切った額から流れ出る血を気にすることもなく、スバルは目の前の少女に語り掛ける。
「創られた存在、戦闘機人の前に、一人の人間だ!
心で考えることのできる、立派な生き物なんだよ……!
例え創造主の望みだとしても、それを自分の意志で戦うならまだいい!!」
スバルはノーヴェの瞳を見つめて、言葉を放つ。
「今のお前は、ただの機械と一緒だ!!
入力されたプログラムを実行するだけの、思考もできない一昔のコンピューターと同じなんだよ!!」
ノーヴェの視界にスバルの瞳に映る自分の姿が映り込む。
何日も、何日も思考の狭間で悩み抜いた彼女の頬は以前よりも艶も張りも失われ、その瞳は光を失っていた。
「悩んだのはわかるさ……。
お前がなんで悩んでいるのか、わからない。
けど、なんでそんなになるまで抱え込んだんだよ……?」
スバルの瞳が悲しみの色を帯びる。
そんな彼の表情を見た、ノーヴェは自分の心が揺さぶられるのを感じた。
「なぁ、今からでも遅くない。
戦うのを止めろ。
なんで悩んでいるのか、教えてくれノーヴェッ!!」
「もう……遅いんだよ……ッ」
「なに……ッァ!?」
ノーヴェがぼそりと言葉を発したが、スバルがそれを聞き届ける前に、彼女は彼の身体を壁まで投げ飛ばした。
咄嗟に受け身を取ったスバルだったが、彼の目には、ノーヴェが辛そうな表情でいるように見えていた。
「もう決めたんだよ、あたしはッ!!
あたしは戦闘機人として命を得た。
だったら、あたしを生んでくれたドクターの夢を叶えるのが、あたしの戦いなんだよ!!
だから、これ以上私を惑わせるなーーーッ!!」
ノーヴェは叫び声とともにスバルに突進してくる。
そんな彼女に対して、スバルは一言、言い放った。
「この……分からず屋が……ッ!」
『Gear third.
Drive Ignition.』
刹那、スバルの周囲に魔力の激流が渦を巻いた。
瞬時にマッハキャリバーの出力が上昇し、リボルバーナックルに装填されている魔力カートリッジに込められた魔力すべてを一気に開放する。
そのあまりにものエネルギーの熱上昇によって、マッハキャリバーは赤熱化し蒸気を上げる。
そんな中でも、スバルは目の前に迫るノーヴェの拳を紙一重で躱し、彼女の腹を蹴り飛ばす。
「ガ―――ッ!」
「なんでそこまでこっちの話を聞かないかは知らんが、その考え方はダメだ、ノーヴェ」
蹴り飛ばされたノーヴェはすぐに跳ね起き、スバルに殴り掛かる。
だが、その拳は、人のそれではなく、本能で生きる獣のものと同じだった。
そして、本能で繰り出される拳ほど、スバルにとって見切るのは容易だった。
「な―――ッ!?」
拳を躱し、ノーヴェの懐に飛び込んだスバルは彼女の腹に拳を当てる。
すでにその拳には魔力の収束が完了されていた。
「少し頭冷やせ、この馬鹿野郎が」
『
放たれた蒼き一撃は、ノーヴェの身体を呑み込んだ。
※補足です。
ノーヴェの戦う理由についてですが、スバルと戦いたくないという思いと、スカリエッティの願いを叶える手伝いをしたいという思いの間で悩んで悩んで悩み抜いた結論です。
二つの相反する思いの間で苦悩していたノーヴェの精神的余裕はほとんどないために、あのようにやつれていたと考えました。
オリジナル設定
・『ギアサード』
マッハキャリバーの新モード、というよりもマッハキャリバーがスバルのために強化プランの一つとしてシャーリーたちに提案し、採用されたもの。
スバルの戦闘力を全開で使用するためのモードだが、スバルが戦闘機人としての力を使わずに、魔力のみで全力を出せるようにするためのものとして設定された。
その実態は、マッハキャリバーの出力を強引に引き上げ、その負担をすべてマッハキャリバーが引き受けるというもの。
スバルが受ける負担をマッハキャリバーが引き受けるために、マッハキャリバーにかかる負担が半端ないものになるために使うたびにマッハキャリバーに無理を強いる諸刃の剣。
・『ストライクブレイザー』
ギアサード時限定の砲撃魔法。
砲撃魔法としているが、マッハキャリバーのギアサード状態および、フルドライブでの魔力運用能力にものを言わせて魔力を収束して放つという収束魔法の一種。
スバル自身に収束技術の適性が低いために、マッハキャリバーありきの魔法。
余談だが、この魔法を将来の格闘少女が参考にしている。