「さて、私の話はこれでお終いだ」
スカリエッティは大きく息を吐きながら、フェイトの身体に巻き付けていた鎖を消し去った。
「スカリエッティ……」
「おっと、同情ならやめてくれたまえ。
確かに、私の目的は人の笑顔を守るというものだったが、そのために少数とは言え笑顔を奪っていたのも事実だ」
フェイトが言葉を発する前に、スカリエッティは手をかざしながら彼女に言い放つ。
「だから、君は私を犯罪者として扱うんだ」
「……わかった。
ジェイル・スカリエッティ、貴方を大規模騒乱罪並びに諸々の罪で逮捕します」
フェイトの言葉にスカリエッティは満足そうに頷き、彼女に一つのメモリーを手渡す。
彼の掌の上にあるメモリーを手に取ったフェイトそれをバルディッシュの格納領域にしまい込んだ。
「さっき送ったデータと、私の研究資料のすべてだ。
今のメモリーと、私の頭の中にしかないものだから、君が持っていてくれ」
「なぜ、私に?
レジアス中将に渡すこともできたはずだが……」
「そのレジアス中将が、君に預けるように言ってきたんだよ」
彼の言葉に、フェイトは一度だけ会った地上のトップのことを思い出しながら大きくため息を吐くのだった。
「ここか……ッ!」
ガジェットの群れを突破したヴィータは背中の傷から血を流しながらも、ゆりかごの動力炉に辿り着くことに成功していた。
「行けるな、アイゼン」
『もちろんです』
「よし、アイゼンッ!」
『Zerstörungsform』
ヴィータは肩に担いでいたグラーフアイゼンを構え、カートリッジを三発装填する。
補充された魔力が、アイゼンからヴィータへと伝わり、アイゼンの姿を
アイゼンのドリルが唸りを上げ、ブースターが火を噴いた。
「ウラァァアァッ!!」
ヴィータの小柄な体からは考えられない力で振るわれたアイゼンは、動力炉を守る障壁に阻まれるが先端に装着されたドリルが唸りを上げて障壁を削る。
短時間の膠着とともに、アイゼンと障壁の間で爆発が起こる。
爆発の衝撃によって吹き飛ばされたヴィータは体制を整えながら動力炉を睨む。
『危険な魔力反応を探知。
防衛プログラムを作動、非戦闘員は動力炉へ続く通路から退避してください。
繰り返します……』
「ちっ……。
やっぱ簡単には行かねぇか……」
ヴィータは煙の中からその無傷の姿をさらす動力炉と、彼女との間に現れる防衛砲台を見て舌打ちを一つ。
その瞬間、彼女に砲口を向けた防衛砲台から砲撃が放たれた。
砲撃から生じた煙に彼女の姿がかき消される。
「だったら、何度でもやるだけだ!!
アイゼンッ!!」
『了解』
「ぶっ潰すッ!!」
背中から感じる熱い痛みを堪えながら、ヴィータは砲台の群れの中へと突っ込んでいった。
「戦闘パターン、S34」
「ヴィヴィオ……ッ!」
ヴィヴィオの身体から虹色の魔力が溢れ出す。
その魔力は彼女の右腕に収束し、螺旋の回転を始める。
「あれは……ッ!」
「アクティブ」
彼女の右手の魔力を見て、なのはが目を見開く。
その直後、ヴィヴィオが静かな声とともに接近し右腕を突きだす。
だが、その一撃はなのはを穿つことはなかった。
『Restrict Lock』
「捕まえたッ!!」
螺旋回転する魔力の塊は、なのはの顔のすぐ横の空間を貫いていた。
間一髪、その一撃を避けたなのはは、レイジングハートが最速で発動させたバインドが解ける前にヴィヴィオの身体にレイジングハートを突きつける。
「シュートッ!!」
『Short Buster』
放たれた砲撃は、ヴィヴィオの身体を守る『聖王の鎧』に阻まれ彼女の身体に直撃することはなかったが、彼女となのはの距離は離れた。
未だにバインドをほどくことに意識を向けているヴィヴィオを警戒しながらなのははレイジングハートに話しかける。
「レイジングハート、あれをやろうか」
『身体への負担は?』
「ヴィヴィオを救うためだもの、考えていられないよ」
『了解です』
レイジングハートの言葉とともに、マガジンに残っているカートリッジのすべてを装填する。
愛機に魔力が充満したことを確認したなのはは、大きく息を吸って……
「ブラスター『ちょっと待ったーッ!!』ワンッ!?」
驚きの声とともに彼女の身体に魔力が流れ込んできた。
なのはは、いきなり大声で叫んできた彼女―――クアットロを睨みつけた。
『あらら~、ちょっと遅かったか~』
「貴女はッ!!」
なのはは目の前のヴィヴィオに警戒しながらモニターに映るクアットロに言葉を投げつけようとするが、クアットロが手をかざしてそれを止めさせる。
『すみません~。
こっちにも時間がないので、簡潔にお話しします』
「……」
『沈黙は肯定と受け取るわよ。
今の彼女、ヴィヴィオはゆりかごのシステムに囚われてる』
「囚われてるもあなたたちがッ!!」
『こっちにも想定外だった。
だから少し時間をちょうだい』
「そう言われて信用するとでも……?」
『彼女の意識をシステムから切り離す。
だけど、それだけだと確実じゃない。
そこであなたに彼女を直接止めてほしい』
「……何分でできる?」
『五分……いや、三分でやれる』
「なら、早く。
こっちにも余裕はないから」
彼女の言葉にクアットロは返事も無しにモニターを切った。
「さてと、ヴィヴィオを助ける算段も付いたし、もう一頑張りしようか」
『了解です、マスター』
なのはとの通信を切ったクアットロは、ゆりかごの中枢で大小さまざまなモニターを映し出す。
「さてと、大口叩いたからには、ちゃんとやらないとね……!」
彼女は、そう言いながら鍵盤型のキーボードの上に指を置いた。
「まずはシステムの中枢に潜り込む……!
抜け穴を探せ、どんなに頑強な城にも隙はある。
抜け穴、抜け道、どんな隙も逃すな……。
隙のできたところから一気になだれ込め……!」
目にもとまらぬ速さで鍵盤を弾く指と、すべてのモニターをしらみつぶしに見るために動く目。
その二つが、たった一つの、抜け穴を見つけた。
「見つけたッ!!」
その隙を逃すクアットロではなかった。
その穴を一瞬だけ広げ、システムの中に入り込む。
余談だが、システムの抜け穴の原因が動力炉の防衛へとリソースを割かれたためだった。
「さぁ、ここからが本番。
クアットロの織り成す電子の嘘と幻のショーの開幕よッ!!」
廃ビルが立ち並ぶ廃棄都市区画で、二匹の召喚獣がぶつかり合う。
白い召喚虫―――白天王と、黒い召喚獣―――ヴォルテール。
二匹の規格外の召喚獣は、その余波を撒き散らしながら戦いを繰り広げていた。
白天王が腕を振るえば、ヴォルテールはその腕を受け止める。
巨大故に動きは緩慢だが、その行動だけで彼らの周囲のビルはその余波を受けて吹き飛ぶ。
そんな中、キャロは目の前のルーテシアに呼びかけていた。
「もうやめて、ルーちゃん!!
あなたのその感情は、全部
「あなたたちには、守ってくれる人、大切な人が隣にいるからそう言える……!!
私は、もう一人はいや……ッ!!
寂しいのはもう嫌なのッ!!」
だが、キャロの言葉は、彼女の心には届いていなかった。
今の彼女の心を占めるのは、寂しい思いをしながら生きてきた記憶。
そして、その寂しさを埋めてくれる存在、母親であるメガーヌの目を覚まさせる邪魔をする彼女たちに対する怒り。
その二つが、白天王やガリュー、地雷王、インゼクトに伝わり暴走と言っていいほどの力を出していた。
「邪魔をしないでッ!!」
「ッ、ケリュケイオンッ!!」
『Boosted Protection』
キャロはルーテシアが放った魔力による衝撃波を障壁で防ごうとするが、彼女の想定以上の威力を持ったそれを完全に相殺することはできなかった。
衝撃波によって撒き散らされた土煙の中で、キャロは一つの決断を下すことにした。
「ケリュケイオン、行くよ。
我が乞うは、疾風の翼。
我に駆け抜ける力を」
『Boost Up Acceleration』
ケリュケイオンから桃色の魔力が彼女の身体を包み込む。
キャロはさらに言葉を紡ぐ。
「我が乞うは、城砦の守り。
我に清銀の盾を」
『Enchant Defence Gain』
さらに桃色の魔力が彼女の腕に纏わり、桃色から赤く輝きはじめる。
「猛きその拳に、力を与える祈りの光を」
『Boost Up Strike Power』
ダメ押しとばかりに、ケリュケイオンが輝き、彼女の魔力が拳を優しく包み込んだ。
「行くよ、ルーちゃんッ!」
煙が晴れると同時にキャロはその場を駆け出した。
ルーテシアはそれに反応してダガーを射出するが、キャロは自己ブーストによって強化されたスピードでそのダガーの隙間を縫ってルーテシアに迫る。
(スバルさんに教わった、たった一つのこと……ッ!)
ダガーを凌いだキャロは防御の強化を行った腕を顔の前で構えてルーテシアの放った魔力放出の中に突っ込む。
『いいか、キャロ。
『いざってときのために、接近戦で一番大事なことを教えておく。
相手も支援魔法を主軸にしている魔導士の時限定だが、何とかなるはずだ』
『大事なのは、飛び込みと、間合いと……』
「飛び込みと間合いと……ッ」
「―――ッ!?」
ルーテシアの放った魔力放出の波の中から飛び出したキャロが彼女の懐に飛び込む。
『「気合だッ!!」』
ルーテシアの間合いの内側に入り込んだキャロは、その拳を思いっきり彼女に叩き付ける。
キャロの拳が届く前に、ルーテシアは障壁を張ったが、強化を施されたキャロの拳はその壁を容易く打ち砕き、ルーテシアの腹部に辿り着いた。
「ケリュケイオンッ!!」
『
キャロの言葉とともにケリュケイオンが接触部からルーテシアの魔力を吸い出す。
すでにかなりの魔力を消費していたルーテシアは、急激な魔力流出によって、その意識を深く閉ざした。
「ルーちゃん……」
意識を失い倒れ込む彼女の身体をキャロは優しく抱き、そっと床へと寝かせた。
そして、ルーテシアの意識が失われると同時に、白天王や地雷王、インゼクトは沈黙した。
「エリオ君は……!」
キャロとルーテシアの戦っていた場所から少し離れた場所で、黄色と紫の光が交差する。
「もうやめるんだ、ガリューッ!!」
「……………ッ!!」
ビルの上に降り立ったエリオはストラーダを構えながら目の前のガリューに叫び続ける。
だが、ガリューはエリオに向けてその腕の刃を向ける。
「クゥ……!」
「―――ッ!!」
ガリューからの攻撃を何とか捌くエリオだったが、彼はガリューの動きに違和感を感じていた。
先ほどからガリューの動きが鈍っている。
具体的には、周囲から聞こえていた雷の音が鳴りやんだころから。
「ガリュー、君はッ!」
「―――――ッ!!!!」
エリオがたどり着いた一つの可能性。
それは彼がルーテシアからの魔力を受け取っていないということ。
魔力による補助が無くなって、彼の動きは一瞬だけ鈍っていた。
だが、それをガリューは自分の命を削り取って身体能力を上昇させている。
「もうやめるんだ、ガリューッ!!
このまま戦い続ければ、君はッ!!」
エリオが必死に呼びかけるが、ガリューはそれを聞こうともしない。
それどころか、さらに自分の身体から触手や刃を生み出し、雄叫びを上げる。
ガリューの胸の内には、一つの思いだけ存在していた。
主であるルーテシアの笑顔を自分では生み出せない。
それを彼は理解していた。
ならば、彼女に幸せを感じてもらうためには何をすればいいのかを彼は考えた。
はじめは彼女とほかの召喚虫だけだったために、一つも考えが浮かばなかった。
だが、ゼストやアギト、スカリエッティやその娘たちと出会ったことで彼の中で一つの答えが浮かび上がった。
自分では笑顔を与えてあげられない。
ならば、その笑顔を与えられるように彼女を支える。
彼女の邪魔をするものは、自分たちが取り除く。
その思いだけで今、彼は立っていた。
「ガリュー……」
エリオは、身体中から血を流しながらも戦う意思を見せるガリューにストラーダを向ける。
今の彼には、ガリューの思いが伝わっていた。
例え言葉を交わすことができなくても、戦うことしかできなくても、ガリューの戦う意味を知った。
そして、戦う意味を知ったからこそ、エリオは彼を止めると決めた。
「君の思いはわかった。
けど、君が傷ついたら、悲しむ人がいる。
だから、僕は君を止める……。
ストラーダ、フルドライブッ!!」
『Drive ignition』
ストラーダから四発の空薬莢が排出される。
カランカランと薬莢が落ちる音が響く中、ストラーダの穂先から
『ストライクフレーム展開』
二つに分かれた切っ先の間に黄色の魔力刃が生み出される。
エリオの魔力を使用したそれは、彼の電気変換の性質を受け継ぎ、ストラーダは雷を纏う。
「行くよ、ストラーダ」
『了解です、マスター』
「――――――――ッ!!」
エリオがストラーダを構えて、飛び出す。
彼に対してガリューもまた飛び出すが、彼の突き出した刃はエリオのいた空間を切り裂くだけだった。
「――――ッ!?」
エリオの姿を見失ったガリューはすぐさま彼の姿を捉えようとするが、その前にガリューの身体は衝撃に襲われていた。
「ハァッ!!」
「―――ッ」
ビルの屋上を何度もバウンドしていく彼は、直前まで自分がいた場所にエリオを見つけた。
だが、その直後彼の姿が掻き消え今度はガリューの真後ろに現れた。
何とか体勢を立て直そうとするガリューだったが、その前にエリオの振るうストラーダが彼の目に映った。
ガリューは振るわれたストラーダによって、その身体を上空に打ち上げられる。
打ち上げられた衝撃を逃すこともできない状態だが、彼の目にはすでに自分よりも上に跳び上がったエリオの姿があった。
「――――ッ!!」
「でぇいっ!!」
苦し紛れに放ったガリューの攻撃は、ストラーダで払われ、さらにエリオの踵落としがガリューの身体にめり込み、彼を屋上に叩き付ける。
だが、エリオの攻撃はそれで終わりではなかった。
「まだッ!!」
ガリューが立ち上がるよりも早く、彼の身体を再び上空に蹴り上げる。
そして彼を追う形で跳び上がったエリオは、ストラーダのブースターを吹かして彼を追い抜きざまに切り抜ける。
切り抜けた先には、黄色の魔力光の障壁。
その障壁に足を着け、方向を変えてさらに跳び上がる。
「もっと速くッ!!
もっと、もっともっとッ!!」
何度もガリューの身体を切りつけ、蹴り上げ、叩き落とす。
彼の軌跡は、彼の魔力光と相まって、雷のように昇って行った。
「これでッ!!」
そして、十分な高さまで跳び上がったエリオはストラーダを上段に構え、遅れて打ち上げられてきたガリューに向けて振り下ろした。
「終わりだーーーッ!!」
「―――ッ!!」
叩き込まれた槍は、ガリューの刃を打ち砕き彼の身体をビルの屋上に叩き付けた。
その勢いはとても強く、ガリューの身体は屋上をぶち抜き、その下のフロアまでたどり着いていた。
「―――ッ!」
だが、ガリューはまだ立ち上がる。
すでに満身創痍と言ってもいい状態だが、彼にとっても負けられない理由があった。
そして、彼が顔を上げる。
その先には、落ちてくる勢いを乗せた斬撃を振り下ろすエリオがいた。
「紫電一閃ッ!!」
ダメ押しの一撃を受ける。
すでにボロボロだったガリューはその身体を横たえることとなった。
「おやすみ、ガリュー」
意識を失う前に、ガリューの耳に届いた言葉は、彼を気遣う言葉だった。
とりあえず一言。
「 や り す ぎ た 」
いや、キャロもエリオも六課襲撃の際の活躍を省いたんで、しっかり書こうとしたらこんなことに……。
キャロは格闘少女になっちゃうし、エリオはオーバーキル……。
なんか批判的な感想きそうだが気にしない!!
これがやれて私は満足です!!
あ、ちなみにエリオの技の元ネタはスーパーロボット大戦シリーズから雷鳳の『ライジングメテオ』からです。
気になる人は動画を見てください。
絶対熱くなりますから(笑)。