魔法少年リボルバースバル   作:飛鳥

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ティアナルート 第三十五話

ゆりかご阻止限界点まであと―――一時間七分。

残された時間の中、ゆりかごの動力炉の防衛砲台をすべて破壊したヴィータはグラーフアイゼンを引きずりながら動力炉の前までたどり着いていた。

 

「―――ッ、アイゼンッ!!」

 

『了解』

 

ヴィータは身体中にできた傷から血を流しながらも、アイゼンを掲げて目の前にある標的を見続ける。

彼女の言葉とともに、すでにその機体に皹を走らせているグラーフアイゼンは、四発のカートリッジを惜しげもなく装填する。

 

「ふ……ッ!!」

 

アイゼンの姿が、基本形態である槌から、破城鎚へと姿を変える。

その直後、短く息を吸って止める。

そして、ヴィータは跳んだ(・・・)

すでに魔力が枯渇し始めている彼女は、飛行にも魔力を最低限しか回さず、すべてを一撃に回すという賭けに出た。

魔力による最低限の補助を受けた跳躍で、彼女の身体は動力炉の上まで踊り出た。

自分の真下に獲物があることを確かめるまでもなく、彼女はアイゼンを上段に振り上げる。

背中の傷が、彼女の神経を刺激するが、わずかに顔を顰めるだけでそのまま……

 

「ツェアシュテールングスハンマァァァッ!!!!」

 

振り下ろした。

振り下ろされたグラーフアイゼンのドリルと、動力炉を覆う障壁が削りあい、火花を起こす。

障壁との干渉で、グラーフアイゼンのドリルに走った皹がさらに広がる。

 

「ッ、ブチ貫けェェェッ!!!!」

 

彼女の咆哮とともに、パリンとアイゼンのドリルが砕けた。

 

「ッアァ……ッ!!」

 

アイゼンのドリルが折れるとともに、彼女の身体は障壁から起こった爆発で吹き飛ばされる。

すでに魔力を使いきった彼女は、体勢を整えることもできず、真っ逆さまに通路へと落ちていく。

朦朧とする意識の中、ヴィータは動力炉の障壁が健在であることを目にして、その目に涙を浮かべる。

 

「ごめん……みんな……!

 ゴメン……はやて……ッ!」

 

そんな彼女の涙で潤んだ視界の端を、黒い羽根が舞った。

ヴィータがそれを目にしたとき、真っ逆さまに落下していたヴィータの身体がふわりと何かに受け止められる。

 

「謝ることなんかない」

 

「……ぁぁ」

 

ヴィータは、潤んだ視界でもわかった。

自分を受け止めてくれた者が誰なのか。

 

「うちの自慢の騎士、鉄槌の騎士ヴィータと(くろがね)の伯爵グラーフアイゼンが、全身全霊で打ち込んだ一撃や。

 それで砕けんものなんて、この世界にあるわけないやろうが」

 

「はやてぇ……!」

 

ヴィータを受け止めた人物―――はやての目にはしっかりと映っていた。

砕けたアイゼンのドリルの先端が、障壁に食い込み、亀裂を生み出していることに。

そして、彼女が腕の中にいるヴィータに告げると同時に、そこを起点として、障壁は粉微塵に砕け散った。

 

「さぁ、ヴィータは少し休んどき。

 あとは」

 

「私たちがやりますからッ!!」

 

ゆっくりと通路に降り立ったはやては、ヴィータを壁際に座らせ、そう伝える。

ヴィータがその言葉を理解するよりも早く、はやての帽子にしがみついていたリインが飛び出してそう言い放った。

 

「さてと、いこかリイン」

 

「はいですッ!!」

 

「「ユニゾンインッ!!」」

 

ヴィータに背を向けてはやてとリインは、むき出しになった動力炉を前に一つになる。

リインがはやての中に入ると同時に、はやての茶色の髪は白く染まり、深い蒼色の瞳は、明るい空色へと変わっていく。

 

「出し惜しみはなしや。

 最初っからフルパワーでいくで」

 

『はいです!

 手加減容赦情け無用です!』

 

はやてが右手に持った杖『シュベルトクロイツ』を掲げ、左手に持った魔導書『夜天の魔導書』のページが勢いよく開いていく。

 

『魔力充填完了ですッ!!』

 

「よっしゃ、いくでぇ……!」

 

リインの言葉とともに、夜天の魔導書から白い光が溢れ出し、シュベルトクロイツの周囲に三つの高濃度の魔力収束体が生成される。

 

『「響け終焉の笛、ラグナロク!」』

 

紡がれたのは、破滅の言葉。

三つの収束体から放たれた魔力の奔流は、はやての目の前で一つに合わさる。

 

『「一点集中ッ!

  ブラストシュートォッ!!」』

 

神々の黄昏を意味するその一撃は、ヴィータによって障壁を失った動力炉を一瞬で吹き飛ばし、反対側の壁を突き抜け、ゆりかごに風通しのいい通路を一つ創りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Time up.

Gear third.

Set off』

 

「ハァー……ッ!」

 

渾身の一撃を、ノーヴェに叩き込んだスバルは、マッハキャリバーの声を聴いてようやく大きく息を吐いた。

赤熱化していたマッハキャリバーから大量の蒸気が噴き出され、スバルもまた、リボルバーナックルから空薬莢をすべて取り出し、新しいカートリッジをセットしていった。

 

「稼働効率は……?」

 

『103%を突破しました。

 今まで一番の出来栄えです』

 

マッハキャリバーの言葉にスバルは苦笑を禁じ得なかった。

実際、マッハキャリバーのギアサードの状態での稼働効率は今までは低いものだった。

そんな結果しか出ていないものを使用して尚、最高の結果を実戦で叩きだせたことにスバルは驚きを隠せえなかった。

 

「とりあえず、ティアナの方に……『エネルギー反応増大ッ!!』―――ッ!?」

 

身体の異常がないかを確かめて、相方(ティアナ)の援護に向かおうとしたスバルだったが、マッハキャリバーの警告と同時に背中を走る悪寒を感じてすぐに振り返る。

 

「ノーヴェ……?」

 

そこには、先ほど彼が倒した、少女、ノーヴェがゆっくりと立ち上がる姿があった。

スバルはすぐに彼女の様子がおかしいことに気づき、呼びかける。

 

「――――――――――!!!!!」

 

だが、その呼びかけへの返答は、獣と聞き間違えるほどの咆哮だった。

 

「ノーヴェッ!?」

 

「――――――――――ッ!!!!」

 

スバルが声を上げるが、ノーヴェはその呼びかけには反応を示さず、ジェットエッジの出力を上げて彼に迫った。

 

「クッ……!」

 

「ァッ!!!」

 

ノーヴェの右手が突き出される。

動きは単調、だが、その速度が異常だった。

 

「なっ!?」

 

スバルは自分の頬に走った傷に驚愕した。

確かに彼女の攻撃を避けたはず。

だが、実際にはコンマ数秒の差でしかなかった。

 

「ォォォッ!!」

 

「くそッ!!」

 

スバルは、次々に繰り出されるノーヴェの攻撃を捌いていく。

だが、戦闘機人としての身体の反応速度を上回る攻撃は、彼の身体にいくつもの傷をつくる。。

頬、腕、脇腹、太ももと言った身体中に走る、鋭い痛みに顔を顰めながらスバルはノーヴェへの呼びかけを止めない。

 

「ノーヴェ!!

 正気に戻れ、このままじゃ……ッ!!」

 

「ガァァッ!!!」

 

『Protection』

 

スバルは苦虫を潰したかのような表情を浮かべながらノーヴェの目を覚まさせようと呼びかけるが、ノーヴェには届かない。

わずかな隙に繰り出されたノーヴェの拳を回避は不可能と判断したマッハキャリバーが障壁を張る。

スバルの障壁とノーヴェの拳。

押し合う障壁と拳の間から広がる火花の向こう側、ノーヴェの瞳を見たとき、スバルは息を飲んだ。

 

はじめて彼女と会ったとき、スバルはメガネの向こう側に見える彼女の眼がきれいな金色だったことを覚えている。

だが、今の彼女の眼は赤く染まっていた。

 

そして、均衡が崩れた。

ノーヴェの拳が障壁を貫いた。

 

「ヤバ……ッ!!」

 

「ゥゥォッ!!!」

 

障壁が砕け散る。

スバルはすぐに距離を取ろうとするが、ノーヴェの左手が彼のコートをガッシリと掴んでいた。

自分に向けられた拳が、どれほどの威力を持つのかなど考えるまでもなかった。

衝撃に備えて両腕を交差させて身体に力を入れて衝撃に備える。

 

『Reactive Purge』

 

「―――――ッ!!?」

 

だが、その衝撃は襲ってはこなかった。

拳が直撃する直前、マッハキャリバーがロングコート(外装)に使われている魔力を爆発させたのだった。

爆発の衝撃によってコートを掴んでいたノーヴェの手は離れ、拳の威力は失われる。

スバルは突然の爆発によって拳の直撃は避けたが、体勢を崩し、地面に倒れ込む。

 

「ガ―――ッ!?」

 

「――――!!」

 

すぐさま立ち上がろうとしたスバルだったが、それよりも早く、ノーヴェが彼の身体に馬乗りになり、彼の首を両手で掴んだ。

スバルは締め上げられる腕を、両手で掴み、意識が落ちるのを堪える。

 

「ノーヴェ……ッ!」

 

「――――――ッ、スバ……ル……ッ」

 

「―――ッ!!」

 

気を抜けば失いそうな意識の中、スバルは彼女の瞳に涙が浮かんでいるのを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Protection EX』

 

「……ッ!」

 

迫りくる拳を桃色の障壁が阻む。

だが、目の前の少女―――ヴィヴィオは、お構いなしに拳を叩き付ける。

 

「戦闘パターンS13」

 

ヴィヴィオの口から機械的な言葉が紡がれる。

それと同時にヴィヴィオの拳に捻りが加わり、一撃で障壁に亀裂が走った。

 

「やっぱり。

 レイジングハート」

 

『Barrier Burst』

 

あと一撃で障壁が砕け散るというタイミングで振り下ろされたヴィヴィオの拳が障壁に触れる直前、障壁が爆発を起こす。

爆発の威力は『聖王の鎧』によって完全に防がれるが、爆風によってヴィヴィオの身体は大きく後ろに吹き飛ばされた。

体勢を崩さないように踏ん張ったヴィヴィオが次に見たのは、桃色の砲撃だった。

 

「シュートッ!!」

 

『Short Buster』

 

最速のタイミングで放たれた砲撃はヴィヴィオを直撃し、さらに距離を離すこととなった。

 

「レイジングハート。

 どうかな?」

 

『マスターの予想通りです。

 先ほどからの彼女の戦い方は、訓練の際にフォワードメンバーや、マスターたちの戦い方と同じです。

 特に、スバルの戦闘パターンが多くみられます』

 

「スバルの戦い方かぁ。

 それは悪手だよ、ヴィヴィオ」

 

砲撃によって巻き上げられた煙の中から六発の魔力弾とヴィヴィオが飛び出してくる。

その速度は、先ほど彼女たちが話題にあげたスバルよりも早かった。

だが、なのはは落ち着いて六発の誘導弾(アクセルシューター)を展開し、迫りくる魔力弾を撃ち落す。

 

「ごめんね、ヴィヴィオ。

 せっかく学んだ戦い方だけど……ッ!」

 

「―――ッ!?」

 

誘導弾と魔力弾が衝突し、爆炎を起こし、その中からヴィヴィオがなのはに向けて拳を突きだす。

岩をも砕くその拳をなのはは恐れることなく、レイジングハートでかち上げる。

勢いを乗せた腕を思いっきり上に叩き上げられたヴィヴィオは無防備に懐をさらすこととなった。

その隙を逃さず、なのははレイジングハートの切っ先をヴィヴィオの身体に向ける。

 

「ディバインバスターッ!!」

 

超至近距離からの砲撃。

流石の聖王の鎧でもこの攻撃を完全に防ぐことはできず、ヴィヴィオの身体は玉座の間の反対側まで吹き飛ばされる。

 

「スバルの戦い方は基本、一回きりの初見潰し。

 今のも模擬戦(1対1)の時にやられたからね。

 私には通用しないよ」

 

レイジングハートを構えながらなのはは教え子に教えるように優しく口にした。

その時、空中に浮いている彼女でも感じられるほどの揺れがゆりかごを襲った。

 

「レイジングハート、今のは?」

 

『恐らく、動力炉の爆発かと』

 

「そっか、ヴィータちゃんの方はうまくいったんだ。

 なら、こっちも頑張らなきゃね」

 

なのはの前には、破損した甲冑を再生し、なのはの元へと向かってくるヴィヴィオの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

「あのチビ騎士と夜天の主が動力炉を潰したようね……!」

 

一方、ゆりかごの中枢でシステムへの介入を試みていたクアットロは、激しい揺れを感じた直後、一時的にシステムがダウンした隙に、聖王(ヴィヴィオ)の意識の切り離しに取り掛かっていた。

 

「システムの復旧まであと一分。

 何、こんなのドクターのプライベートPCに入り込むのよりはずっと簡単……ッ!!」

 

システムの復旧まであと40秒。

 

「意識の切り離しと同時にシステムの破壊ウィルスの設定完了ッ!!

 これで……!!」

 

残り15秒。

 

「私の勝ちっ!!」

 

クアットロの指が、キーを押した。

 

「はぁーい、聞こえますか~?」

 

『聞こえてる。

 なんか、ヴィヴィオの様子が変だけど……』

 

クアットロはなのはに通信を繋ぎ、状況を確認する。

なのはは心配そうな表情でモニターとは別の方向を向いていた。

 

「システムから切り離した反動ですよ。

 すぐに収まります。

 けど、此処からはあなたの仕事。

 システムから意識は切り離せたけど、肉体の方は聖王の鎧が操作しているも同然」

 

『どうすればいい?』

 

「貴女の得意技。

 魔力ダメージによるノックアウトで、彼女はもとに戻ります」

 

『わかりました。

 協力に感謝します』

 

なのはのその言葉にクアットロは人をからかうような表情で尋ねる。

 

「あらぁ、いいのですか?

 私があなたをだましているかもしれないんですよ?」

 

『あなたのさっきまでの眼を見ればそれはないことはわかるよ』

 

「……それじゃ、あとは任せましたよ」

 

クアットロはなのはの言葉に面白くないといった顔で通信を切った。

通信が切れたことを確認した彼女は大きくため息を吐いた。

 

「まったく、私は肉体労働(こっち)は専門外なんだけど……ッ!!」

 

そう言いながらその場から飛び退く。

直前まで彼女がいた場所に幾多もの光線が降り注いだ。

 

「システムに介入し、聖王の意識を切り離したから敵対認定ってところかしらね?

 でも、遅すぎでしたね~?」

 

少し離れたところで膝をついていたクアットロは楽しそうに呟く。

 

「まったく、ウェンディちゃんから借りといて正解だったわね」

 

そう言ったクアットロの右手には、ウェンディの固有武装である『ライディングボード』が握られていた。

 

「さてと、あとはあの人が陛下を助けるまで粘るだけね。

 これでも戦闘機人、簡単にはやられませんよ~?」

 

 




どうも、お久しぶりです。
さて、クライマックスまであと少しのところすみませんが、暫く更新をストップさせてもらいます。
これから三週間ほど、試験やらなんやらでリアルがとんでもない忙しさになっているので……(´・ω・`)
次の更新は早くても22日以降となります。
それでは(´・ω・`)/~~
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