かなり展開が速いですがどうぞ!
スバルがノルンとの約束したその日、ティアナはヴァイスに彼のバイクを借りるために格納庫を訪れていた。
今、彼女の目の前でヴァイスは自分のバイクの整備を行い、最後のチェックを行っているところだった。
「よし、いい調子だ」
バイクのアクセルを空噴きさせ、エンジンの調子を確かめたヴァイスは笑顔で頷きながら鍵をティアナに投げ渡した。
「そら、こけたりするなよ」
「大丈夫ですよ。
免許はちゃんと持ってますし」
鍵を受け取ったティアナはバイクに跨り、エンジンを始動させる。
手袋をつけてヘルメットを被ろうとしていたティアナにヴァイスはどうしても気になっていたことを尋ねた。
「今日はスバルと一緒じゃないんだな。
さっき一人でバイクに乗って出ていったが」
「えぇ、なんか最近文通してる相手と待ち合わせしてるって聞きましたよ」
ヴァイスはヘリの整備のために格納庫を訪れた際に、スバルが一人で自分のバイクで六課を出て行っていたのを思い出しながらティアナに尋ねる。
ティアナは、彼の問いにヘルメットのひもを締めるのを止めて答えた。
その顔はどこか寂しさを滲ませていた。
「お前はそれでいいのか?」
「何がですか?」
「だから、スバルのことだよ。
そういった気持ちはなかったのか?」
「……スバルのことは、男って言うより手のかかるやんちゃな弟、みたいな感じですよ。
だから、スバルにはそう言った気持ちはありません」
ヴァイスの遠慮のない問いにティアナは手に持ったヘルメットを両手で握りしめながら少し声音を落としながらも答えた。
その答えを聞いたヴァイスはそれ以上聞くことはなく、バイクを発進させた彼女の背中を見送った。
『以上より、非魔法装備の充実により地上の検挙率はこれまでより20%以上の向上が見込むことができる。
よって私は非魔導師局員における非魔法装備の配備を提案する』
六課の食堂では、地上本部のトップであるレジアス中将の演説についてのニュースが流されていた。
そんなニュースを聞きながら、なのはたち六課隊長陣は遅めの朝食を採っていた。
「相変わらず強気な発言だよな」
「だが、レジアス中将自身、大規模テロ行為を未然に防いだ経験がある。
その経験からの発言だろうな」
画面の中でレジアスが静かに、だが力強く演説しているのを聞いてヴィータとシグナムはそう口にする。
ヴィータは少し呆れを交えた声だったが、シグナムの言葉を聞いて、納得したかのように頷く。
「まぁ、経験則ってのは馬鹿にできねぇからな……。
しかもあの人、魔力持ってないんだろ?
よくそんな状況でテロを阻止できたな」
「相手も非魔導師のテロ組織だったからこそと言えるが、質量兵器に向かって魔法なしでは流石にためらいが出るな」
二人は画面の中で演説を続けるレジアスに対して少しの畏れと尊敬の眼差しを向けた。
そんな二人をよそに、なのはたちは別の話題で盛り上がっていた。
「じゃぁ、エリオたちは二人でデート……ッていうか遊びにいったんやね?」
「うん。
ちゃんとお金も地図も渡したし、大丈夫、だと思う」
「ティアナとスバルはそれぞれ別々に街に行ったみたい。
でも、意外だったかな。
あの二人がバラバラで遊びに行くなんて」
「そうやね。
あの二人はいつも一緒やったからなぁ……。
てっきり二人で遊びに行くもんやと……」
なのは、フェイト、はやての三人はコップに淹れたコーヒーをゆっくりと飲みながら世間話と興じていた。
例え、管理局のエースと呼ばれても、若い女性が三人集まればそう言った話になるのは仕方がないと言えるだろう。
そのまま、三人は朝食が終わるまで楽しげに話していた。
さて、六課の食堂で話題にあげられていることなど知らないスバルは、待ち合わせ場所に辿り着いていた。
時間は待ち合わせの十分前。
スバル自身は待ち合わせに遅れるなどありえないと考えての時間だった。
「まぁ、まだ来てないよな……」
スバルは駅前をざっと見回したが、以前見たノルンの綺麗な赤髪は彼の視界にはなかった。
少し残念と思いながらも、時間よりも早く来たのは自分の方だと思い出し、近くにあったベンチに腰掛けて待つことにした。
だが、ベンチに座った直後、スバルの端末に一通のメールが届く。
『今着いた。
どこにいる?』
その文字を見たスバルはキョロキョロと周りを見渡すも、彼女の姿は見えなかった。
すぐにスバルは返信のメールを打つが、そんな彼の頭にポスッと柔らかいモノが置かれた。
「もう見つけた」
「お、おう……」
スバルは自分の頭に置かれたのが彼女―――ノルンの鞄だと気づき、その視線を上に向け、言葉を失った。
スバルの視線に気づいたノルンは怪訝な表情を浮かべながら彼に尋ねる。
「な、なんだよ……。
何か言いたげだな」
「い、いや……。
前あったときとはまた服の雰囲気が違ったから……」
「やっぱり似合わねぇよな、あたしにこんな格好」
スバルの言葉にノルンが暗くなりながら答えると、スバルは慌てて手を振りながらそれを否定した。
「違う、違う!
似合ってたというより似合いすぎてその、か、かっこよさと可愛さがいい感じになってると思う」
「か、かわいいって……まぁ、姉が選んでくれた服だし……」
ノルンは顔を紅くし、指をツンツンと突き合わせながらゴニョゴニョとそう口にする。
スバルはそんな彼女の様子に苦笑する。
「さてと、どこに行く?」
まず二人は、互いに行きたい場所に行くことにした。
スバルはゲームセンター、ノルンはアクセサリーショップという希望を出したため近くにあったアクセサリーショップに入ることになった。
「いらっしゃいませー」
店員の挨拶を聞きながら二人は店の中に入っていく。
その店は外からでは中が見えない構造だったが、店の中は落ち着いた感じの雰囲気が出ていた。
「へぇ、いろんなのがあるんだな……」
「この間はこの店を探してたんだよ。
この辺りは結構店が多くて迷ってたんだ」
スバルとノルンはそう言いながら棚に飾られているアクセサリーを見ていく。
その中でノルンは数字をかたどったアクセサリーを選んでいく。
その数は一から十二までとかなりの数になっていた。
「結構多く買うんだな」
「あぁ、上の姉から下の妹までな。
結構いろいろと厳しいんだよ、うちは。
だから、誰かが出かけたら何か土産をって感じになってる」
「姉妹、か。
俺にも姉貴がいるんだけど、贈り物なんてした覚えがないな……」
今度何か買っていくか?と悩むスバルをよそにノルンはレジへと進みアクセサリーの代金を支払う。
そんな中、あるアクセサリーをスバルがしげしげと見つめて手に取った。
「どうしたんだ?」
「いや、ちょっとな」
ノルンからの問いを曖昧な言葉で返したスバルは手に持ったアクセサリーをノルンの方に向ける。
スバルのその行動に首を傾げるノルンだったが、スバルは彼女に構わずにそのアクセサリーをレジに持っていき代金を支払った。
「お、おいスバル?」
「ちょっと動くなよ?」
袋に入れることなくそれを持ってノルンの背中に回ったスバルはそれをノルンの首にかけた。
ノルンの首元には、流れ星をかたどったネックレスが揺れていた。
「ちょ、これ!?」
「うん、似合ってるな」
「いや、そうじゃなくて!!」
ノルンは自分の胸元にあるネックレスを指さしながらスバルに向けて尋ねるが、スバルはそんな彼女に向けていつも通りの感じで答える。
「これからもよろしくって感じの贈り物だ。
ダメだったか?」
「う……。
はぁ、わかった、受け取るよ」
スバルの言葉に裏がないことを今まで知っていたノルンは彼の言葉にため息を吐きながらもそう答えた。
「でもなんで星なんだ?」
「いや、なんとなくノルンにはそんな感じの流れ星が似合うと思ってな。
うん、その服ともいい感じだしよかった」
「…………サンキュー」
「おう」
「へぇ……」
アクセサリーショップを後にした二人は、ゲームセンターに足を運んでいた。
初めて入ったのか、ノルンは中の雰囲気に声を上げていた。
「結構いろいろなのがあるんだな」
「まぁ、此処はミッドでも一番の場所だからな。
ここに来ればどんなゲームでもできるってのがこのゲーセンの触れ込みらしい」
中を歩きながら二人は気が向いたゲームを楽しんでいった。
対戦型の格闘ゲームをやってスバルが乱入してきたゲーマーにコテンパンにされたり、ダーツでノルンがど真ん中に刺したりといったこともあった。
パンチングマシーンでスバルが桁外れの値を出したときにはスバルが店員から「魔法での身体強化は禁止です」と怒られたりもしていたが、二人はそれなりに楽しんでいた。
そして、二人はゲーセンの出口付近に設置されていたプリクラでの記念写真を取っていた。
とはいっても、二人とも男女でのツーショットなど初めてなこともあり、互いの頬は紅くなっており、その表情もガチガチに固まっていたが、二人にとってそれは確かに繋がりを示すものだった。
「結構遊べたな」
「まぁ、な」
ゲーセンから出た二人は、その後ミッドの中心付近の公園のベンチに座って休んでいた。
二人は青く晴れた空を見上げながらそう呟いた。
「こんなに遊んだのは初めてかもしれねぇ」
「そうなのか?」
「あぁ、出かけることはあっても少しの間だけだったり、一人だけの時が多かったからな。
それに、だ、男と二人っきりってのも初めてだったし……」
「あー、まぁな」
視線を逸らしながらそう言ったノルンに対してスバルは頬を掻きながら苦笑するしかなかった。
実際スバルもそう感じていたからだった。
今までティアナと遊びに行ったことはあっても、彼女とはあくまで仕事上のパートナーとしての関係しか感じていなかった。
だが、目の前の彼女は自分にとってどうなのだろう、とスバルは自問する。
「スバル?」
「……わかんねぇな」
「ん?
何がだ?」
「なんでもない」
ノルンが自分の顔を覗き込むようにしていたことに気づいたスバルは彼女の顔から目を逸らしてそっけなく答えた。
そんな彼に対してノルンもまた相槌を打つだけに終わる。
会話がなくなったとき、スバルのポケットに入っていたマッハキャリバーから全体通信を知らせる音が鳴り響いた。
その音を聞いたスバルはすぐに気持ちを切り替える。
「すまん、ノルン。
今日はここまでだ」
「仕事か?」
「あぁ、せっかくノルンと遊んでたってのにな。
悪い、また今度遊びに行こう!」
「あぁ、またな!」
ベンチから立ち上がったスバルは彼女にそう言ってすぐにその場を後にした。
「またな、か」
公園から出ていく彼の背中を見ながらノルン―――ノーヴェは静かに口にする。
「最初で最後だったけど、楽しかったぜ、スバル」
そう言いながら、ノーヴェは首にかけられたネックレスを外した。
『やぁ、チンク。
どうだったかい?』
「ドクターの言う通りでした」
チンクは自身のいる部屋を見回しながら答える。
そこには様々なものがあった。
大型のコンピューター、モニター、検査用機器、そして、大型生体ポッド。
『やはりか、例のあれがあったんだね』
「はい。
対戦闘機人用戦闘機人。
タイプゼロ・ジエンド」
チンクの見つめる先、生体ポッド中には、タイプゼロセカンドと呼ばれているスバルや、彼女の妹の一人であるノーヴェと同じ顔をしたモノが浮かんでいた。
だが、いくつかの生体ポッドの中には、中身がないものも存在していた。
『起動はしているのかい?』
「プロトタイプのものが数体と、そして完成体が一体起動してこの場から飛び去っていくのを確認しました。
また、プロトタイプのものが施設の防衛行動に入ったために破壊しましたが、ガジェットⅴ型も破壊されてしまいました」
そして、彼女の足もとには、生体ポッドの中に浮かんでいるモノと同じ顔をしたモノが五体、転がっていた。
すでにその目から光は消えていた。
『まぁ、ⅴ型はジエンド用の保険も兼ねていたからね。
よしとしよう。
それで、プロトタイプはどの程度のものだったんだい?』
「ガジェット以上、私たち未満といったところです。
外側は我々と同じですが、頭の中が違いました。
あれではただの機械と同じです」
『そうか……』
「ですが、これはプロトタイプに限ったものです。
能力だけでいえばタイプゼロ・セカンドと遜色ないものでした。
完成体となると……」
『下手をすると、タイプゼロ・セカンド以上のものか……。
やれやれ、ご老人方も厄介なものをつくってくれたものだよ……』
「あの、ドクターはどうやってこの施設を……?
今まで見つけられなかったものを……」
チンクの問いにスカリエッティは微笑みながら答える。
『何、その施設を作った者は私たちのことを疎ましく思う者だということ。
そして、その連中をさらに疎ましく思う者がいる、ということだよ』
「連中を疎ましく思う者……、まさか……!」
『おっと、それ以上は口にしない方がいいよ。
何処で誰が聞いているかわからないからね』
チンクを遮ると、スカリエッティはすぐに指示を出した。
『では、その施設は破壊してしまってくれて構わないよ。
というか、徹底的にやってくれ。
地図から山一つ消えるくらいならどうにでもできるとも言われたから』
「いいのですか?」
『構わないよ。
私はね、娘たちを傷つける存在を許すほど心は広くないのさ』
チンクは彼の言葉をうれしく感じていた。
「わかりました。
それでは」
『うん、気を付けて帰ってくるんだよ』
スカリエッティはそれだけ言うと、通信を切った。
通信の切れたことで、薄暗かった部屋がさらに暗くなった。
そんな暗闇の中でポッドの前に立ったチンクはその中身に向けて一人呟く。
「悪いな、お前たちも目的があって生み出されたのかもしれんが、私とて自分を壊す可能性のあるモノを存在させるほどお人よしではないのでな」
この日、一つの山が地図から消えた。
ノーヴェルート第二話でした。
今回は主にティアナのスバルに対する心情とスバルとノーヴェのデート(本人たちは無自覚)でした。
ティアナのスバルに対する意識はヴァイスに対してはこう答えましたが、本音は話していません。
誰だって知られたくないことの一つや二つはあるでしょ?
スバルとノーヴェのふれあいというか絡みはここでいったん終了です。
敵味方に分かれる二人の関係がどんな風になっていくのかを楽しみにしてい下さい!
さて、ティアナルートにはほとんど出番のなかったジエンドです。
彼(?)がどのように物語に関わってくるのか、それも楽しみにしていてください!
それではまた次回!