それではどうぞ!
「メインコンピューターにハッキングッ!?」
「すぐに回線を切れッ!!」
「ダメですッ、止まりません!!」
「くそッ、何がどうなってる!?」
地上本部総司令部は混乱の極みにあった。
突如として総司令部の目であるセンサーが機能を停止、続いてメインコンピューターもその役目を果たすことができなくなる。
それと同時に、地上本部の周辺に大量のガジェットが出現し、現場の注意がそちらに向いた瞬間、地上本部に一筋の砲撃が撃ち込まれた。
「むふふのふ~」
クアットロは地上本部が見える位置で笑みを浮かべながら地上本部のハッキングを行う手を動かしていた。
空中に投影されたパネルを弾くように叩き、モニターに映る局員の混乱を見てさらに笑みを深くする。
「あら?」
だが、そんな彼女の手が一瞬だけ止まった。
彼女の奪っていた施設の機能の一部、正確には本部全体を包み込む魔力障壁の維持といった限定的なものだが、それらが奪い返されるのはもう少し後だと予想していた彼女にとって意外なものだった。
「シルバーカーテンの嘘と偽りのショーを見破ってくるなんて……。
ドクター以外にも、面白い人がいたようね……」
クアットロはその奪い返されたところのコントロールを諦め、ほかの部分へとその手を伸ばそうとした。
だが、それすらも拒まれてしまった。
「予想以上にできるわね~。
というか、これは……」
クアットロは取り戻されそうになっている施設の区画を見て、思わず舌打ちをする。
そしてすぐに姉のウーノへと通信を繋げた。
『どうしたの、クアットロ』
「ウーノ姉さま、少しお手伝いお願いできますか~?」
『あなたが手伝いを頼むなんてね。
どうしたのかしら』
「例のタイプゼロ・ファーストを隔離した区画の隔壁のコントロールが奪われそうなんです~。
ですから、そこは私が死守しますので、ウーノ姉さまにはとにかく連中を引っ掻き回してください~」
『タイプゼロ・ファーストの確保は陛下の確保と同レベルでの行動目的。
いいでしょう、少し待ってなさい』
ウーノからの通信が切れ、直後に彼女に対しての対処が見るからに遅くなり、地上本部を囲む魔力障壁が薄くなる。
「魔法障壁減少。
ルーお嬢様、よろしくお願いします~」
『わかった……。
遠隔召喚……』
ルーテシアの小さな声とともに地上本部の周囲にガジェットⅠ型、Ⅲ型、およびⅢ型改が大量に現れる。
「あとはお任せくださいな。
お嬢様は礼の場所へ」
『うん』
クアットロの言葉にルーテシアは頷き、通信を切った。
モニターが消えるのを確認した彼女は再びその視線を地上本部に向けた。
「さぁ、ドクターの夢のために踊りなさい。
ディエチちゃん、やってちょうだい」
『了解、ISヘビィバレル発動。
バレット、エアゾルシェル……発射ッ!』
「くそッ、ガジェットの相手は陸士部隊じゃまだ無理か!」
「先ほど撃ち込まれた砲撃により、本部内にはガスが入り込んでいます。
幸いにも、致死性のものではなく麻痺性のものです。
今データを送ります」
ガジェットが本部周辺に現れたことを知ったヴィータたちはガジェットが集中して現れた正面玄関の方へと足を向けていた。
その途中で、本部内にガスが撃ち込まれたことを知ったリインによってすでにバリアジャケットを展開していたスバルたちへ防御データを転送されていた。
「なのはさんのところには俺たちが行きます。
なのはさん達にレイジングハートたちを届けないと……ッ!」
「頼む!
リイン、本部の指令室との連絡は取れねえのか!?」
「待ってください……!
ダメです、本部の通信システムそのものがダメになってるです」
リインからの報告にヴィータは思わず舌打ちをする。
だが、次の瞬間彼女は六課に待機しているロングアーチに通信をつないだ。
「おい、ロングアーチ!
聞こえてるだろ!
応答しろ!」
『ヴィータ副隊長!
今どちらに!?』
「地上本部の外にいる!
部隊長に通信繋げられるか!?」
『無理ですよ!
それより、今こちらのレーダーに反応がありました!
そちらに接近する飛行物体多数!
ほとんどはガジェットⅡ型のようですが、二つだけ魔力反応が高いものが!
推定オーバーSです!』
「ちっ!
そっちにはあたしとリインが向かう!
地上はティアナ達に任せるぞ!」
「了解です!」
ロングアーチからの通信を切ったヴィータは後ろを走るスバルたちに向かって手に持っていたシュベルトクロイツとレヴァンティンをティアナに渡す。
「そいつらをはやてたちに渡してくれ」
「了解です!」
ヴィータの言葉を聞いたスバルとエリオもその手に握るレイジングハートとバルディッシュを強く握りしめる。
「よし、行け!」
ヴィータの声に従ってスバルたちは本局の内部に突入する。
それを見送ったヴィータは隣を飛ぶリインを呼び寄せる。
「リイン、最初からユニゾン行くぞ!」
「はいです!!」
ヴィータはポケットからグラーフアイゼンを取り出す。
「「ユニゾンイン!!」」
刹那、彼女たちを光が包み込む。
光が消えたとき、そこには白い騎士甲冑を纏い、髪の色も赤から白髪に変化していた。
「行くぞ、地上本部には一機たりとも近づかせねぇ!」
(はいですッ!!)
夜空を一筋の光となったヴィータが駆け抜ける。
「ここもダメか……」
その時、一人地上本部の中に閉じ込められたギンガは何とかその場から脱出するための出口を探していた。
だが、彼女のいる区画につながっている通路のすべてが隔壁によって遮断されていた。
「仕方ない……ッ!」
隔壁を破壊して外に出ようと構えたギンガだったが、彼女の戦闘機人としてのシステムが飛来するナイフを察知し、その場から飛び退いた。
「タイプゼロ・ファースト、ギンガ・ナカジマだな」
その声に反応したギンガはリボルバーナックルを構える。
暗闇の中から現れたのは銀髪に眼帯という特徴的な姿をした少女、チンクだった。
「なぜ、っていうのは無駄かしらね。
あなた、戦闘機人ね」
「話が早いな。
ならば単刀直入に言おう。
ギンガ・ナカジマ、ドクターのもとに来てもらおう
こちらとしてはできれば手荒なことは避けたい」
「ドクターっていうと、スカリエッティのことよね」
ギンガの問いにチンクは頷き、肯定の意を示す。
それを見たギンガはリボルバーナックルに二発のカートリッジを装填する。
「残念だけど、この後は予定がいっぱい詰まってるの。
他をあたってちょうだい」
「来てもらう理由が、お前の身体の事に関してでもか?」
「えぇ」
「ならば仕方ない。
穏便に済ませたかったが」
チンクはそういって両手の指の間にナイフを挟み構える。
「IS発動、ランブルデトネイター……!」
「はぁぁあっ!!」
誰にも知られることなく、二人の戦いは始まった。
照明の消えた通路を走るスバルたち。
「相棒ッ!!」
『protection』
先頭を駆け抜けるスバルは咄嗟に障壁を張る。
「うぉぉっ!!」
「―――ッ!?」
だが、その障壁は繰り出された蹴りの衝撃を逃すことができずにすべてスバルに叩き付けられた。
スバルはその蹴りの勢いに押されて壁に叩き付けられる。
「スバル―――ッ!?」
目の前で壁に叩き付けられる相棒を見たティアナが声を上げるが、そんな彼女たちの周囲にエネルギー弾が展開され、即座に爆発する。
間一髪、爆発に巻き込まれずに後退したティアナ達だったが、そんな彼女たちの耳に何者かの声が聞こえてきた。
「おい、ウェンディ。
目的忘れてねぇだろうな?」
「当たり前っすよー!
一番面倒な連中をここで足止めっすよねー」
暗闇の中から出てきたのはガジェットを引き攣れた二人の少女、ノーヴェとウェンディだった。
ガジェットに囲まれたことに対して舌打ちをするティアナだったが、彼女の耳に聞こえてきたのは今にもくじけそうなスバルの声だった。
「なんで、お前がそこにいるんだよ……ノルン……ッ!」
「なぁ、何かの間違いだよな?
お前はこんなところにいるわけない……そうだろ、ノルン!?」
ノーヴェは、目の前で彼女に訴えかけるスバルを見て、覚悟はしていたが胸が張り裂けそうな痛みを感じていた。
彼女の視界に映るスバルの目には、目の前にいるノーヴェしか映っていなかった。
「違う」
「違うって何がだよ……ッ!」
「あたしはノルンなんかじゃない。
あたしは、戦闘機人No.9、ノーヴェだ……ッ!」
「………ッ!!」
覚悟はしていた、していたはずだった。
だけど、そんなものは無駄だと言わんばかりに彼女は、スバルに向けて言い放った。
「散開ッ!!」
スバルの様子が尋常でないということにいち早く気づいたティアナは即行動に移した。
フリードのブラストフレアとティアナの射撃魔法で近くのガジェットを貫き、爆風でその身を隠す。
その隙にエリオがスバルを回収する。
即席の作戦だったが、スバルの戦意を取り戻すために必要なことだった。
「スバル……ッ!」
「ティアナ……?」
物陰に隠れたティアナはエリオが連れてきたスバルの胸倉を掴み上げ、彼に向けて言葉を投げかける。
「あんたとあの赤髪にどんな関係があったのか、私は知らない。
だけど、今あんたが戦わないで、誰が戦うってのよ!!」
「…………くそ」
胸倉を掴みあげられたままのスバルは、頭を二度振り、リボルバーナックルを装備した右手で額を軽く殴る。
一度俯き、次に顔を上げた彼の顔には、以前とは比べ物にならないほどだが戦意が戻っていた。
「悪い……、作戦は?」
「とにかく連中の目をくらませて速攻で離脱。
これしか無いわ。
いい、時間との勝負よ」
ティアナの言葉に全員が頷き、彼女の出す合図でそれぞれのするべきことを実行に移す。
スバルとエリオは、晴れかけた煙の中からそれぞれの相手を強襲。
その間にキャロのブーストを受けたティアナが幻影を創り出し、それを囮にして撤退する。
それがティアナの作戦だった。
「クッ!!」
「ハァッッ!!」
スバルと対峙したノーヴェは、自分に向けて突っ込んでくるスバルを見て顔を歪ませた。
先ほど、彼に自分から遠ざけるようなことを言ったが、彼女もまた彼と戦うことにためらいを覚えていた。
二人の関係は、敵味方だと割り切るほど弱いものではなかったということだ。
迫りくるスバルの拳を受け流しながらノーヴェはあることに気づいた。
データで見たときよりも狙いが荒いということに。
スバル自身もそのことに気づいており、小さく舌打ちをする。
今の彼は、ティアナによって戦意を取り戻したが、その戦意の大半は、管理局員としてやるべきことをやらなければならないという義務感に似たもののためだった。
頭ではわかっていても、彼の身体が、拳が、目の前の少女を倒すことを拒んでいた。
「クソッタレがッ!!」
「うわっ!?」
だから、スバルは優先順位を切り替えた。
ノーヴェを倒すのではなく、自分たちを追ってこれないようにする。
そう考えた直後、スバルの手はノーヴェの腕をガッシリと掴み、ガジェットが密集している場所へとぶん投げた。
「マッハキャリバーッ!!」
『Cartridge load』
「リボルバーシュートッ!!」
投げ飛ばされたノーヴェは空中で体勢を立て直し着地するが、その直後に放たれた魔力弾がガジェットのコアを打ち抜き、爆発させる。
外と比べれば狭い通路での爆発は、その隣にいたノーヴェも巻き込んだ。
「ノーヴェ!!」
ティアナ達三人を相手に奮戦していたウェンディはノーヴェが爆発に巻き込まれたところを目にして、そちらに気が向いてしまった。
「エリオ、今!」
「はいっ!!」
「しまッ―――!?」
その隙を逃すエリオではなかった。
魔力変換資質によって生み出された雷を刃に纏わせ、ストラーダを上段に構え、高く跳び上がる。
「サンダー……」
「クッ……!」
ウェンディは周囲にガジェットを集めAMFの濃度を高めながら、空中でストラーダを振りかぶるエリオにライディングボードを向ける。
「レイジッ!!」
「う、うわぁ!?」
エリオの放った電撃はウェンディの攻撃を弾き飛ばし、さらに高濃度のAMFすら貫通して彼女にダメージを与えた。
「今よ、スバル!!」
「了解ッ!」
エリオの電撃がウェンディとガジェットにダメージを与えたのを確認したティアナは離れていたスバルを呼び寄せ、複数の通路が交わったところまで移動する。
「待つッすよってぇ!?」
ダメージから抜け出したウェンディは彼らを逃さないと視線をそちらに向けるが、彼女の視界には四人の姿がいくつも映っていた。
「幻影……ッて、サーモセンサーにも魔力センサーにも反応有り!?
あのガンナー、戦闘機人のシステムを……!?」
ウェンディは構えていたライディングボードを立て掛ける。
「逃げられたっすね……。
ノーヴェ、大丈夫っすか?」
ウェンディは爆発に巻き込まれた後、動く気配のなかったノーヴェが立ち上がったのを見て彼女のもとに向かう。
彼女が見たノーヴェの顔には、悲しみが浮かんでいた。
「ノーヴェ……」
「すまん、ウェンディ。
逃がしちまった」
ノーヴェは何ともないという風に言うが、彼女の様子を見てウェンディはすべてを把握した。
「ノーヴェ、大丈夫っすか?」
「身体は問題ない。
爆発も想定内の規模だったし」
「そうじゃないっすよ」
ノーヴェの言葉をすぐに否定する。
今の彼女は精神的に不安定だと。
稼動初期から基本的に一緒に行動していたからこそ見抜けることだった。
「どう考えても、今のノーヴェは普通じゃないっすよ。
すぐに戻った方が」
「大丈夫だって言ってるだろ!」
「……ッ!」
ノーヴェの大声を聞いて、口を閉じるウェンディ。
そんな彼女にノーヴェは一言「ゴメン」と呟き、彼女に向けて背を向けた。
「今は、やることをやる。
それが、ドクターの望むことだし。
あたしがやるって決めたことだから……」
「ノーヴェ……」
背を向けたノーヴェの肩が小さく震えているのを見たウェンディが彼女に手を伸ばそうとしたとき、通信が入る。
『ノーヴェ、ウェンディ。
少しこっちを手伝ってくれ』
「いいっすよー。
何すればいいっすか?」
通信から聞こえてきた声は、ノーヴェが一番信頼しているチンクからだった。
『今、ギンガ・ナカジマと戦闘中だ』
ノーヴェルート第四話でした。
ティアナルートと流れが同じなのでトントン拍子に飛ばして四話にて地上本部襲撃編です。
ティアナルートなら二十話近く使ってきたのに……。
さて、ついに始まった地上本部襲撃編ですが、ノーヴェルートではスバルとノーヴェにスポットを当てるために他(レジアスやヴィータ、六課)における戦闘はカットさせていただきます。
逆にティアナルートでカットしたエリオたちの方はやってみたい思っていますので、お楽しみに!
※補足です。
スバルとノーヴェの再会。
スバルはティアナルートと違ってかなり動揺します。
彼はノーヴェがスカリエッティの一味だとは知りませんでしたし、彼女のことを意識し始めた直後のことだったのでそれはかなり揺さぶられると思うのでこのようになりました。
ティアナによって戦意は取り戻したのですが、それは管理局員としての自分がまだ彼の中にはしっかりと残っていたために何とか戦えたというところです。
彼自身の意志を無視して戦っているので(自分のことを管理局員という一つの機械と割り切って戦っているとも言えますね)戦闘能力は激減です。
スポーツや勉強も自分からやるのと嫌々やらされるのではその結果も断然違いが出るのと同じだと思われて結構です。
スバルに対して、ノーヴェは彼と戦うこともすでに承知していたのですが、それでも彼女もまたスバルのことを意識していたために、迷いが存在しています。
ここがティアナルートと違うところですね。
ティアナルートではスバルとの関係がまだ小さなものだったために割り切れたのですが、ノーヴェルートにては、彼女とスバルの関係は簡単に切り捨てることができなかったということです。
それではまた次回!