優作視点のオリ主の話。
俺が
ペラリ、ペラリ......。
原稿の締切以外で逃亡したことなど無いというのに、心配性の担当編集が2時間前に自宅に押し掛けてきて、スタジオに連行された俺は、慌ただしくスタッフたちが行き交う中で6人掛けのソファー席で1人『R.I.P.真実の墓』を読んでいた。
これを読み返すのは3度目だ。
出版された3ヶ月後に初めて読んだとき、犯人には作中の探偵より早くたどり着いたがそこから先が難航していた。トリックとアリバイだけならそう難しいものではない。
ただ、逮捕しようと考えると
如何により多く屍を積み重ねるかを考えて書いているのだろう。
主人公である探偵の
事件で知り合った女性とのラブロマンスもあり、そこから非業の死を仄めかす描写に突き落とすのは
決して作品を作者の本性だとは思わないし、俺自身も否定するが、輝かしい探偵の恋と友情の日常と、これが作品の一番の魅せ場だと言わんがばかりの執拗な死体の描写は後者こそが作者の書きたいものなのは間違いない。
ならば、彼の書く探偵は、俺が書く
エピローグでの探偵無き逮捕場面も勧善懲悪ではなく、単なるスコア登録のような薄ら寒さがあるのだ。
今回、容疑者全員を集めてくれた安永刑事が俺の推理を聞いて唸った。「
俺が推理した、もう一人の犯人の行動にホテルのラウンジに集めた集めた関係者たちがざわめく。
「そう、これは報復殺人何かじゃなかった。連続していたのは模倣殺人だけで、手段の違う4つの事件は全て無関係だったんだ。そしてそれが出来たのは、一連の事件のもう一人の犯人は、
水上を睨みつけながら、真っ直ぐ指差す。
「ふうん、大した推理と行動力だ。で、それが正しいとして。証拠は有るんですか?」
水上は既に全て暴かれているにも関わらず、涼しい顔をしているが、彼は既に自白に等しい行為をしている。
「確かに今この時までは直接君に繋がるような証拠はなかったさ。でも、君はさっきの推理を聞いている間、ミスを犯した。どうして、第三の事件の犯人が使った凶器が現場に無かったと知っていたんだ?あそこには血塗れのナイフが落ちていたのに。
それを知っていたのは俺と警察、殺された犯人。そして犯人を殺した人物だけだ」
「うむぅ......」
そこまで読んで、もう一度今までの事件を読み返す。
トリックも犯人も作中のタイミングより早く気付ける要素はある。
中学生の新一でも
だが、犠牲を出さずに捕まえる方法が未だに見つからない。この推理ショーが
犯人だけでは無く、作者までも保身よりも捕まるまでに如何に人を殺すかを考えているように感じる。
「工藤先生、先ほど
編集に声をかけられ、意識を浮上させる。
時計を確認すると50分後になっている。
「読み終わったら、挨拶に行ってきます」
そういって本の世界に舞い戻った。
パラパラと惨劇の2ヶ月を行ったり来たりしながら、犠牲を増やさずに殺人鬼、
これを19歳で受賞したにも関わらず、作者が20歳になってから出版したのは英断だろう。有害図書入りしてはいるが、20歳まで待つのは理由を付けやすいし、執拗な死体の描写を成人後の加筆だと主張できる。
「よし、被害者は出ているが第五章でなら犠牲を出さずに捕らえることが出来るか?」
俺はご好意で入れてもらった対談予定の会議室をスタッフに一声掛けてから出て、『
「どーぞ......」
無気力そうな声で返ってきた返事とほぼ同時にドアが開かれる。
開けてくれたのは自身の編集と同期で、俺が締切を破った際に何度か助っ人に駆り出されていた小林さんだった。
部屋の奥には、
特徴のない服装で、ここに居なければ新入りのスタッフに見えたかも知れない。
今日は進行役にマルチタレントの杉村さんを迎えた上で、俺と彼中心に会話を進めることになる。
「お久しぶりです、小林さん」
小林さんは彼の方を一度振り返って、頭を下げる。
「すみません、失礼な若造で。工藤先生、お久しぶりです。
「うぃーす......。おひさー、米花の森(で起きた事件)以来じゃん?」
そう言って体を起こして振り向いた青年は知り合いだった。
知り合いの探偵を差し置いて、事件現場での遭遇回数トップの探偵愛好会所属の
探偵ファンにしては推理への関心が無さそうだったので、学生の小規模サークルに有りがちな口実だけの旅行や溜まり場目的のサークルなのかと考えていたが、彼が
「
「......へえ」
そう尋ねると彼は一瞬、陰のある笑みを浮かべて直ぐに軽薄な笑顔に戻す。
「勿論知ってますよ。もう成人したので余りうるさくする気はないんですけど、作者が趣味だと公言しているからって、刃物送りつけてくるのは止めて欲しいですよね。
今は
なるほど、確かに彼は後書きでナイフコレクターを公言して、マニアックな蘊蓄も語っていた。
しかし、これは対談の後で問い詰めた方が良さそうだ。
「対談の後、時間を貰ってもいいかい?」
「んー、いいっすよ」
最初より幾分か抑揚のある声だった。
「ところで、君のデビュー作について聞いてみたいことがあるのだけど、いいかな?」
「うぃーす」
そう言って彼は読んでいた本を鞄にしまい、小林さんから『R.I.P.真実の墓』を受けとる。
彼は俺の書いた最新作を読んでくれていたらしい。
「どうしたら、被害者以外が死なずに
そう聞くと、少し考えた後で鞄から『Rest.In.
見出し代わりの付箋が貼られて、それぞれ死因が書かれている。
彼が物語の何を『
「第五章で起きた第4の殺人で、
そう切り出して、
中身はほぼ暗記しているようで、指先に迷いがない。
「ーーという動きだったら、どうかな」
と推理というより詰め将棋に近いそれの成否を尋ねると、拍手で返ってきた。
小林さんは途中で退出して、小走りで離れて行った。
おそらく俺の編集のところだろう。
「答え合わせは聞かせてくれないのかい」
「んー、その行動が出来たら第5の殺人の直前で
それに辿りつけば大団円だが、その条件は推理マニアほど難しい。
「その為には探偵が独自調査せず、第4の事件発生時から刑事2人に護衛される必要があり、ラブロマンスも発生しないと。探偵は嫌いかい?探偵愛好会」
「いいや?彼ら無くして探偵愛好会はないさ」
そうやって話していると編集2人が揃って、急遽書いた俺たちへの企画プレゼンだろう一枚の手書きの紙を持って入ってくる。
「工藤先生、小瀬先生。対談10分前なので入ってください」
そう促されて対談の席についてから、2人に聞く。
「それは私たちへの企画プレゼンですか?」
俺がそう聞くと、少し驚いた顔で答える。
「はい、対談の最後でこの企画をテーマに少し話して頂ければ」「私は構いません」
「うぇーい」
「企画が頓挫した場合はカットしますね」
全員がマイクをオンにしたのを確認してから、進行役の杉村さんが話し始める。
メインテーマは決まっていて杉村さんから振られる。小瀬くんがまだ経験が浅いことも考慮してメインテーマの開始時間以外はフリーだ。間が空いた際のトークは俺と杉村さんがすることになっているが、
挨拶と前置きが終わり、メインテーマに入る。
杉村:小瀬くんが初めて読んだ工藤優作作品はなんですか?
小瀬:やっぱりナイトバロンだね。探偵役と男爵の攻防と
工藤:小瀬くんがドラマを感じてくれるところと私がドラマを演出しているところは違いそうですね(笑)
杉村:小瀬さんが初めて読んだミステリーは何ですか?
小瀬:初めて読んだのは何処の図書館でも全巻置いてあるシャーロック・ホームズの緋色の研究だったな
工藤:一番最初に好きになったのは?
小瀬:江戸川乱歩の孤島の鬼だね。中学のときに学校で読んだよ
その後も"工藤優作からみた小瀬賜黎《おせしれい》作品(彼は既に3作目を出版している)"、"現実の探偵について(俺の希望)"、"今までで一番印象に残った現実の事件(小瀬くん希望)"と対談は続き、直前で増えた"緊急企画について"に入る。
杉村:企画の前に聞きたいんだけど、2人は本番前に何話してたの?
工藤:未読の方に配慮して答えさせて貰いますが、ちょっと彼のデビュー作で詰め将棋してました
杉村さんが
小瀬:小説自体は書けるけど、覆面作家にやらせて面白くなるかな
工藤:最近、動画サイトとかでマスクで顔を隠して映っていたりするだろう。ああいうのはどうだい?
探偵の弔い合戦に燃えた俺は、いまいち乗り気でない小瀬を説き伏せる。企画で削れる新刊は講稟社に何とかして貰おう。
一度も着ていないTシャツを着る機会に丁度良い、という経緯の推理し難い理由で、顔を隠してのテレビ出演をもぎ取る。
後々、
こうして俺と彼の対談は終わった。
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