名探偵と他殺体愛好家   作:吉貝 雷

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優作視点のオリ主の話。


scrap(スクラップ).2[工藤氏&小瀬氏、初対談]

俺が小瀬賜黎(おせしれい)としての織田幸治(おだゆきはる)と出会い、探偵愛好会の実態を知ったのは彼の本が出版されて、1年。彼が21歳の時に読者の強い要望に後押しされて実現したラジオ対談収録の日の事だった。

 

ペラリ、ペラリ......。

原稿の締切以外で逃亡したことなど無いというのに、心配性の担当編集が2時間前に自宅に押し掛けてきて、スタジオに連行された俺は、慌ただしくスタッフたちが行き交う中で6人掛けのソファー席で1人『R.I.P.真実の墓』を読んでいた。

 

これを読み返すのは3度目だ。

出版された3ヶ月後に初めて読んだとき、犯人には作中の探偵より早くたどり着いたがそこから先が難航していた。トリックとアリバイだけならそう難しいものではない。

ただ、逮捕しようと考えると主人公(探偵)以上の犠牲者が出る。

小瀬賜黎(おせしれい)は悪辣な立ち回りを書くのが上手い。

如何により多く屍を積み重ねるかを考えて書いているのだろう。

 

主人公である探偵の斎石英義(さいごくひでよし)は正義感が強く、困っている人を見過ごせないが、青臭く未熟な一面もある"おじさん"呼びを決して認めない三十路前の爽やかな男だ。

事件で知り合った女性とのラブロマンスもあり、そこから非業の死を仄めかす描写に突き落とすのはジャンル(サイコサスペンス)に相応しいのかもしれないが、探偵賛歌の響き渡る現代によく書いたものだ。

 

決して作品を作者の本性だとは思わないし、俺自身も否定するが、輝かしい探偵の恋と友情の日常と、これが作品の一番の魅せ場だと言わんがばかりの執拗な死体の描写は後者こそが作者の書きたいものなのは間違いない。

ならば、彼の書く探偵は、俺が書く理解し難い宿敵(ナイトバロン)のようなものではないだろうか。そう俺の直感は囁いている。

エピローグでの探偵無き逮捕場面も勧善懲悪ではなく、単なるスコア登録のような薄ら寒さがあるのだ。

 

 今回、容疑者全員を集めてくれた安永刑事が俺の推理を聞いて唸った。「斎石(さいごく)探偵、まさか今回の事件は」

俺が推理した、もう一人の犯人の行動にホテルのラウンジに集めた集めた関係者たちがざわめく。

「そう、これは報復殺人何かじゃなかった。連続していたのは模倣殺人だけで、手段の違う4つの事件は全て無関係だったんだ。そしてそれが出来たのは、一連の事件のもう一人の犯人は、水上絆平(みかみはんぺい)。君しか有り得ない!」

水上を睨みつけながら、真っ直ぐ指差す。

「ふうん、大した推理と行動力だ。で、それが正しいとして。証拠は有るんですか?」

水上は既に全て暴かれているにも関わらず、涼しい顔をしているが、彼は既に自白に等しい行為をしている。

「確かに今この時までは直接君に繋がるような証拠はなかったさ。でも、君はさっきの推理を聞いている間、ミスを犯した。どうして、第三の事件の犯人が使った凶器が現場に無かったと知っていたんだ?あそこには血塗れのナイフが落ちていたのに。

それを知っていたのは俺と警察、殺された犯人。そして犯人を殺した人物だけだ」

 

-337-

 

「うむぅ......」

そこまで読んで、もう一度今までの事件を読み返す。

トリックも犯人も作中のタイミングより早く気付ける要素はある。

中学生の新一でも主人公(探偵)より早くたどり着けるだろう。

だが、犠牲を出さずに捕まえる方法が未だに見つからない。この推理ショーが斎石(さいごく)探偵の死ぬある意味原因だが、ショーを行っていなければ、この裏で家宅捜索をしている警部と鑑識たちが死亡する。

 

目暮()警部なら犠牲者を出さずに逮捕できるだろうか。

犯人だけでは無く、作者までも保身よりも捕まるまでに如何に人を殺すかを考えているように感じる。

「工藤先生、先ほど小瀬(おせ)先生が到着されました。機器の設置が終わるまで控え室で待つそうです」

編集に声をかけられ、意識を浮上させる。

時計を確認すると50分後になっている。

「読み終わったら、挨拶に行ってきます」

そういって本の世界に舞い戻った。

パラパラと惨劇の2ヶ月を行ったり来たりしながら、犠牲を増やさずに殺人鬼、水上絆平(みかみはんぺい)を捕らえる方法を考える。

これを19歳で受賞したにも関わらず、作者が20歳になってから出版したのは英断だろう。有害図書入りしてはいるが、20歳まで待つのは理由を付けやすいし、執拗な死体の描写を成人後の加筆だと主張できる。

 

「よし、被害者は出ているが第五章でなら犠牲を出さずに捕らえることが出来るか?」

小瀬賜黎(おせしれい)氏がその想定までしているかは分からないが、対談前に聞いてみよう。

 

俺はご好意で入れてもらった対談予定の会議室をスタッフに一声掛けてから出て、『小瀬賜黎(おせしれい)』と書かれた控え室をノックする。

「どーぞ......」

無気力そうな声で返ってきた返事とほぼ同時にドアが開かれる。

開けてくれたのは自身の編集と同期で、俺が締切を破った際に何度か助っ人に駆り出されていた小林さんだった。

部屋の奥には、小瀬賜黎(おせしれい)だろう青年が机の上に崩れながら本を読んでいる。

特徴のない服装で、ここに居なければ新入りのスタッフに見えたかも知れない。

今日は進行役にマルチタレントの杉村さんを迎えた上で、俺と彼中心に会話を進めることになる。

「お久しぶりです、小林さん」

小林さんは彼の方を一度振り返って、頭を下げる。

「すみません、失礼な若造で。工藤先生、お久しぶりです。小瀬(おせ)くん、先生がいらしたからシャキっとして!」

「うぃーす......。おひさー、米花の森(で起きた事件)以来じゃん?」

そう言って体を起こして振り向いた青年は知り合いだった。

知り合いの探偵を差し置いて、事件現場での遭遇回数トップの探偵愛好会所属の織田幸治(おだゆきはる)くんだ。

探偵ファンにしては推理への関心が無さそうだったので、学生の小規模サークルに有りがちな口実だけの旅行や溜まり場目的のサークルなのかと考えていたが、彼が小瀬賜黎(おせしれい)ということは死体が出たときに現れたのは、物珍しさの野次馬ではなく......。探偵愛好会というサークルももしや。

小瀬賜黎(おせしれい)くん、でいいかな。小林さんは君の趣味のことは知っているのかい?」

「......へえ」

そう尋ねると彼は一瞬、陰のある笑みを浮かべて直ぐに軽薄な笑顔に戻す。

 

「勿論知ってますよ。もう成人したので余りうるさくする気はないんですけど、作者が趣味だと公言しているからって、刃物送りつけてくるのは止めて欲しいですよね。

今は小瀬(おせ)先生が何処からか見つけてきた、警備会社と提携してるトランクルームと契約して向こうに送ってもらってますけど、一時期は刃物が届く度に警察呼んでましたよ。実際、脅迫状紛いのファンレターもありましたし。小瀬(おせ)先生は心臓が鋼の剛毛で出来てましたけど。勿論、成人済みとはいえ、大学生ですので、ファンレターは一度こっちで預かって内容確認してます」

なるほど、確かに彼は後書きでナイフコレクターを公言して、マニアックな蘊蓄も語っていた。

しかし、これは対談の後で問い詰めた方が良さそうだ。

「対談の後、時間を貰ってもいいかい?」

「んー、いいっすよ」

最初より幾分か抑揚のある声だった。

「ところで、君のデビュー作について聞いてみたいことがあるのだけど、いいかな?」

「うぃーす」

そう言って彼は読んでいた本を鞄にしまい、小林さんから『R.I.P.真実の墓』を受けとる。

彼は俺の書いた最新作を読んでくれていたらしい。

「どうしたら、被害者以外が死なずに水上絆平(みかみはんぺい)を捕らえられるか考えてみたんだが、付き合ってくれるかい?」

そう聞くと、少し考えた後で鞄から『Rest.In.Pretend(偽り)』と書かれたノートを取り出して「ん」と一音で答えた。

見出し代わりの付箋が貼られて、それぞれ死因が書かれている。

彼が物語の何を『Pretend(偽り)』と称しているのかは後にして、どうやら受けてくれるようなので、俺は小林さんが用意してくれた椅子に座り、小瀬賜黎(おせしれい)の筆に宿る水上絆平(みかみはんぺい)に挑む。

「第五章で起きた第4の殺人で、水上絆平(みかみはんぺい)の痕跡がーー」

そう切り出して、斎石(さいごく)探偵ではなく、全ての捜査情報が集まっていた真鍋(まなべ)警部に行動させる。

小瀬(おせ)くんはそれを聞きながら、ノートを捲る。

中身はほぼ暗記しているようで、指先に迷いがない。

 

「ーーという動きだったら、どうかな」

と推理というより詰め将棋に近いそれの成否を尋ねると、拍手で返ってきた。

小林さんは途中で退出して、小走りで離れて行った。

おそらく俺の編集のところだろう。

「答え合わせは聞かせてくれないのかい」

「んー、その行動が出来たら第5の殺人の直前で水上絆平(みかみはんぺい)は捕まるね。第6と第8は起こるけど、それは彼らには知りようの無いことだから、被害者も2人減った上で探偵も助かるし、追加の犠牲者も出ない」

それに辿りつけば大団円だが、その条件は推理マニアほど難しい。

「その為には探偵が独自調査せず、第4の事件発生時から刑事2人に護衛される必要があり、ラブロマンスも発生しないと。探偵は嫌いかい?探偵愛好会」

「いいや?彼ら無くして探偵愛好会はないさ」

 

そうやって話していると編集2人が揃って、急遽書いた俺たちへの企画プレゼンだろう一枚の手書きの紙を持って入ってくる。

「工藤先生、小瀬先生。対談10分前なので入ってください」

そう促されて対談の席についてから、2人に聞く。

「それは私たちへの企画プレゼンですか?」

俺がそう聞くと、少し驚いた顔で答える。

「はい、対談の最後でこの企画をテーマに少し話して頂ければ」「私は構いません」

「うぇーい」

「企画が頓挫した場合はカットしますね」

 

全員がマイクをオンにしたのを確認してから、進行役の杉村さんが話し始める。

メインテーマは決まっていて杉村さんから振られる。小瀬くんがまだ経験が浅いことも考慮してメインテーマの開始時間以外はフリーだ。間が空いた際のトークは俺と杉村さんがすることになっているが、織田()の語った経歴に嘘がなければ、慣れたものだろう。

 

挨拶と前置きが終わり、メインテーマに入る。

杉村:小瀬くんが初めて読んだ工藤優作作品はなんですか?

小瀬:やっぱりナイトバロンだね。探偵役と男爵の攻防と死体(ドラマ)はヤバかった

工藤:小瀬くんがドラマを感じてくれるところと私がドラマを演出しているところは違いそうですね(笑)

 

杉村:小瀬さんが初めて読んだミステリーは何ですか?

小瀬:初めて読んだのは何処の図書館でも全巻置いてあるシャーロック・ホームズの緋色の研究だったな

工藤:一番最初に好きになったのは?

小瀬:江戸川乱歩の孤島の鬼だね。中学のときに学校で読んだよ

 

その後も"工藤優作からみた小瀬賜黎《おせしれい》作品(彼は既に3作目を出版している)"、"現実の探偵について(俺の希望)"、"今までで一番印象に残った現実の事件(小瀬くん希望)"と対談は続き、直前で増えた"緊急企画について"に入る。

 

杉村:企画の前に聞きたいんだけど、2人は本番前に何話してたの?

工藤:未読の方に配慮して答えさせて貰いますが、ちょっと彼のデビュー作で詰め将棋してました

 

 

杉村さんが企画(小瀬くんが作った事件を俺が解く)を読み上げ終わったところで、小瀬くんが答える。

小瀬:小説自体は書けるけど、覆面作家にやらせて面白くなるかな

工藤:最近、動画サイトとかでマスクで顔を隠して映っていたりするだろう。ああいうのはどうだい?

 

探偵の弔い合戦に燃えた俺は、いまいち乗り気でない小瀬を説き伏せる。企画で削れる新刊は講稟社に何とかして貰おう。

 

一度も着ていないTシャツを着る機会に丁度良い、という経緯の推理し難い理由で、顔を隠してのテレビ出演をもぎ取る。

後々、マスカレードマスクに黒マント(とんでもない格好)で現れるが俺の責任ではない。新一にはホームズの帽子(鹿撃ち帽)ぐらいで済ませて貰いたい。

 

こうして俺と彼の対談は終わった。

原作死亡人物(情報の多い警察学校のみ)、生きていたのは?オリ主の救助・助言ではなく、現場観光・深夜徘徊の影響です。下記の状況は変更の場合あり。うち一人の死亡確定エピソードまで受付

  • 萩原研二:爆弾魔の勘違いがオリ主に変更
  • 松田陣平:愛好会が集まり、爆弾場所バレ
  • スコッチ:オリ主の影響で降谷が先に到着
  • 伊達航:オリ主の職質の時間分で鼻先回避
  • 荻原・松田生存
  • スコッチ・伊達生存
  • 全員生存
  • 原作通り死亡:人でなし共が盛り上がる
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