Blue Silver Vampire   作:WaT=Vermillion

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この話から異世界事変の話に半人半妖のヨツモが追加されます。


ポリュムニアの歌

 それはある海賊の歌だった。

 その歌はまるで童話を、いや、神話を彷彿とさせる出来事を引き起こした。

 キャロルが言っていたことを思い出した。

 『世界を壊す歌がある』と。

 その歌は、まるであの異世界を壊さんとするものだった。

 ここにその歌にまつわる物語を追記する。

 いつの日か、その歌が解明されることを信じて。

 俺たちが辿り着けなかった結末を誰かが生み出してくれると信じて。

 ここに記したことが読んだ者のなにかしらの助けになるように。

 

 2044年1月20日 遠山銀次

 

 

 それは四聖主を呼び起こした後の航海で出会った。

 俺たちの乗っている船は海賊船・バンエルティア号。

 ミッドガンドへ向かう途中で、その海賊船と出会った。

 当然、船内は慌てていた。

 船長が亡くなったアイフリード海賊団は徐々に臨戦態勢に入っていた。

 ただ一人、俺は遠くにある船の様子に違和感を感じていた。

 双眼鏡をヨツモに渡し、覗かせた。

 その船上には、たった一人しか立っていなかった。

「様子を見に行って参ります」

 ヨツモは俺に頭を下げて、人を乗せられる紙飛行機を作っていた。

「待って待ってッ! わたしも見に行くッ!」

 それを聞きつけた零菜がグリフォンを腕に乗せて叫んできた。

「待て待て、俺が見に行ってくるよ」

 俺は反論するが、マリアが俺の肩を叩いた。

「いえ、相手がどう出るかもわからないわ。だから、銀次は遠距離から様子を見て」

「なるほどな。応戦してくるようだったら、銀次の弓矢で射てたらいいわけか」

 ラグナも賛同してきた。

「ええ、その通りよ」

 俺に決定権がないのか。

「わかった。零菜、ヨツモ、様子を見に行ってくれ」

「合点ッ!」「はいッ!」

 零菜は喰魔化したグリフォンに、ヨツモは巨大な紙飛行機に乗って、船から飛び立った。

 飛び立ってからすぐにエレノアが彼女たちの心配をした。

「大丈夫でしょうか? もし、襲ってくるようだったら……」

「なら、大砲でも弓矢でも飛んできそうだけどな」

 そんな彼女の心配をロクロウが一蹴する。

「確かにそうかもしれませんが……」

「あいつらの実力は俺たちがよく知ってるだろ? 怪我はしないだろ」

「それは、わかってますが……」

「それに万一に業魔の船だったら、お前は迷いなく沈められるだろ?」

「そんな、わたしが業魔を殺したいみたいな言い方はなんですかッ!?」

「いや、お前だったら――」

 その会話にアイゼンが拳骨で割り込む。

 二人は殴られた頭にこぶがないかを確認する。

「業魔にしろ、そうでないにしろ、俺たちの邪魔をするようだったら戦うだけだ」

「それがあんたの流儀?」

 ベルベットがエレノアの頭にこぶがないかを確認しながら訊いた。

「いや、ただの海賊としての基本原則だ」

 ベルベットがエレノアの手当てをすると、右手からブレードを出した。

「それなら、あたしも混ぜてもらうわ。ここで止まるわけにはいかない」

「応。それなら、俺も手伝ってかまわないよな?」

「ええ。最も相手の様子次第だと、あんたの斬る分がなくなるけどね」

「なら、先発は俺に任せてくれ。クロガネ征嵐で船を斬りたかったんだ」

「やれやれ。なら、任せるわよ。ロクロウ」

 ベルベットに手当てをされたエレノアが俺とマリアに小声で話す。

「まさに、悪党って感じですよね」

「エレノア、そんなの今更じゃない。わたしは腹を括ったつもりよ」

「それは、わかっているんですが……」

 今のところ、零菜たちは船上から様子を窺っている。

 なにかあったみたいではないが、彼女たちに実害はなさそうだ。

 弓と矢の準備はできているが、射てもいいかどうか……。

「ところで、銀次。零菜たちの様子は……?」

「まだ、なんとも言えそうにないな。襲われてないのは確かだが」

 すると、零菜がグリフォンから降り始め、ヨツモが戻ってくる。

 只事ではなさそうだが、零菜が襲われているわけではない。

「おい、ヨツモが戻ってきたぞ」

 ロクロウたちも視認した。

「ヨツモッ! どうしたんだッ!」

 アイゼンが呼びかける。

 すると、小さな紙飛行機が俺に届いた。

 紙飛行機を解くと、あることが書かれていた。

『壊賊病の恐れあり。接舷は勧めない』

 俺は読み終えると、アイゼンに渡した。

「ベンウィックッ! サレトーマは残ってるかッ!?」

「副長、なにがあったんですか?」

 突然の言葉にベンウィックも戸惑った。

「いいから、答えろッ!」

「あとは十個あるかないかですけど……」

「あの船に接舷するッ! 念のため、人間は近づくなッ!」

「アイサーッ!」

 バンエルティア号はその船へと寄せていく。

 ベルベットが眉を寄せる。

「いいの? 治ったら襲われるかもしれないわよ」

「その時はその時だ。漂流船を見過ごすわけにはいかん」

「はぁ……。ホント、面倒くさいわね」

 ベルベットが頭を抱えると、ヨツモが甲板に帰ってきた。

 なんでか、俺が受け止める形で。

「只今帰りました~。なでなでしてくださいな~」

 ヨツモが大きな胸を俺で押しつぶしていく。

 当然、俺のヒステリアモードのスイッチが切り替わりそうになる。

「馬鹿ッ! 離れろッ!」

「嫌ですわ~。せめて――」

 その時、大きな打撃の音が響いた。

 俺のすぐ近くだ。

 ヨツモがすぐさま俺から離れて頭を抱えた。

 すぐ後ろへ振り返ると、笑顔のマリアがいた。

「あら、お邪魔だったかしら?」

 言葉に棘を感じた。

「いやッ!? 助かりましたけどッ!?」

 俺も思わず声が高くなった。

 だって、あのマリアの笑顔が怖いんだもん……。

 エレノアがヨツモに治癒術を掛けてあげた。

「それよりヨツモ。報告をお願いします」

 エレノアは冷静だった。

 顔を真っ赤にしてはいたが。

「えー、まずはあの海賊船には敵意がありません」

 ベルベットたちもこぞって集まった。

「それって、壊賊病で倒れているから?」

「ええ。紙でお伝えしました通り、壊賊病でほとんどの船員が倒れておりました」

「ほとんど?」

「はい。零菜と同じ、それより下かの少女が看病してました」

「その少女一人だけ?」

 ヨツモは、コクリ、と頷いた。

 今度は俺が切り出す。

「それで零菜はどうしてるんだ?」

「船員たちを聖隷術で治癒しています」

「効くのか?」

「いえ、壊賊病は聖隷では治せません」

 零菜のお節介が来たか。

 俺も人のことを心配している場合じゃないだろうが。

 零菜は「無駄」を押し通そうとするからな。

 日は浅いが、ベルベットたちもそれを理解している。

「とにかく、零菜が倒れる前にサレトーマで治療する。生存者は?」

「恐らく、甲板にいる者だけかと。船内からは異臭が……」

 俺たちは悪い想像をせざるを得なかった。

「どれだけいる?」

「船上のものだけで少女を除いて四名ほど……」

「息があれば五人、か。足りるか?」

「ええ、なんとかッ!」

 倉庫から出たベンウィックが返事した。

「接舷したら、サレトーマを六人分用意しろッ!」

「六人? 了解っすッ!」

 アイゼンの言葉に全員が唖然とする。

「零菜も感染しているかもしれん。一応だ」

「ありがとう、アイゼン」

 流石はアイフリード海賊団の副長だな。

 だけど、この時の俺たちは知らなかった。

 この海賊団との出会いが新たな事象の始まりに過ぎないことを。




あと3、4話で完結する予定ではあります。
ですが、確約はできません。
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