Blue Silver Vampire   作:WaT=Vermillion

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とりあえず、pixivで上げた小説を上げます。


二人の奇才

 所長室で仕事をしている銀次に、マリアがタブレット端末を持って入ってくる。

「ねえ、銀次」

「なんだよ、マリア。今、見るファイル選別してんのに」

 銀次は机上端末を打ちながら話している。

「最優先で見てほしいのがあるんだけど……」

「なになに……」

 マリアからタブレット端末を借りると、ある報告書があった。

『新型ムラクモ・ユニット用アサルトライフル・トレーテンシュタイン開発報告書』

 兵器開発の報告書だ。銀次は見覚えがない。

「許可したの?」

「したわけねぇだろッ! 止めに行ってくるッ!」

 銀次が急いで所長室を出ると、マリアは扉からひょこっと顔を出し、銀次が行ったことを確認する。

「忙しそうね……さて、と」

 マリアはポケットから出したエコバッグを取り出し、銀次の机の引き出しを開ける。そこには、エロゲーとエロ本がギッシリと詰められていた。

「今のうちに没収、と……」

 マリアは躊躇なく、品物をバッグにしまい込んでいく。どこにしまおうか悩みながら、バッグに詰め込んでいくのであった。

 

 開発室へと駆けこんだ銀次は、整備腹を着た銀髪の左目が赤、右目が金色のオッドアイの中性的な少年に怒鳴り込んだ。

「フェルッ! お前、なにやってんだぁぁぁッ!」

 ヅカヅカと足音を鳴らしながら銀次はフェルに近づいた。

「銀次さん、どうされたのですか?」

 フェル・ボーデヴィッヒ 種族:人間 役職:マッドメカニック(元ドイツ軍人)

 銀次はどこからかハリセンを取り出し、フェルの頭を叩いた。

「どうされたもクソもあるかッ! なんで勝手に開発してんだよッ!」

 頭の痛みに耐えながら、フェルが頭を上げた。

「もしかして、これの開発状況でありますか?」

 なんの悪びれもなく、試作中のライフルを見せた。

「それだよッ! 開発申請を出していないのに、造ってんじゃねぇッ!」

 フェルが首を傾げて、不思議な顔をする。

「あれ? それでしたら、ラムダが開発申請を代わりに出したはずでは?」

「え?」

 その報告に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていると、開発室に黄色の三つ編みの髪の少女が入ってくる。

「どうしたの?」

 ラムダ 種族:素体 役職:第七機関の私兵

 入ってきたラムダに銀次が問い詰める。

「ラムダ、開発申請を出したのは、本当か?」

「ごめん、忘れてた」

「はい、アウトー」

 銀次は笑顔で野球のバッターアウトの指を構えた。

「デュノア社が開発要請、資材を提供してくれたからいいかなー、って」

「それ、俺にまず話を通すよな?」

 銀次はこれを機に、二人に報連相を叩き込もうとする。しかし、ラムダはこんなにフラットだったか?

「ごめん」

「次からは気をつけますので――」

「お前はそうでなくても、勝手に開発するだろッ!」

「すみません……」

 フェルが反省の色を見せた(おそらく懲りてない)ところで、ドイツ軍人の女性が開発室に駆け込んできた。

「どうしたッ!? なにがあったッ!?」

 クラリッサ・ハルフォーフ 種族:人間 役職:シュヴァルツェ・ハーゼの副隊長

「お前まで絡んでくるなッ! 黒ウサギ隊ッ!」

 ドイツ軍のクラリッサまで加わった。こいつがドイツ軍の案件を持ってくるから、フェルの勝手に開発癖がついてくる。銀次にとっては厄介なことこの上ないのだ。

「そうはいかんッ! フェルは隊長の弟だッ! 取り扱いには注意しろッ!」

 確かに、フェルは隊長のラウラの弟だが、銀次には引っかかることがある。

「だったら、女装させてもいいのかよッ!」

 黒ウサギ隊にいた時、いやいや女装させられたのは聞かされている。

「あれは……男の娘というものをだな……」

 クラリッサが悪びれもなく言ってくる。そこが銀次の沸点を切った。

「馬鹿なのッ!? あんなの着せられた男子の自尊心を傷つけるだけだぞッ!」

「お前は傷ついたのか?」

「色々と、やられたよぉぉぉッ!」

 銀次自身、高神の杜にいた時はずっと女装させられたので、男子としての自尊心はないに等しい。

「……なんか、すまなかった」

 クラリッサからドサッと、紙袋が落とされた。

「クラリッサ、その紙袋、もしや僕に着せるものではありませんよね?」

 フェルが尋ねると、クラリッサは目が泳ぎだした。

「隊長にでもプレゼントしようかなー……」

「お前……」

 銀次とフェルはジト目で見つめ続けた。

「とりあえず、どうするの? デュノア社には開発中って報告しちゃったし」

「ラムダ……なんで、俺への申請をしてこないのに、デュノア社には律儀に報告してんの……」

「ごめん」

「ごめん、じゃないよ……」

 ラムダがなんで時にアグレッシブにパッシブに切り替わるのか不思議で仕方なかった。

「シミュレーションルームで使ってみてくれませんか? 試作段階は完了したので」

「マジでか、開発報告書には40%って……」

「まだ、80%程度でありますが、撃ってみる分には問題ないと思いますよ」

 なに、シャアにジオングを乗せる整備兵みたいなことを言ってくれてんの? と銀次は内心思いながら、フェルに尋ねた。

「残りの二割、なにができてねぇのかが気になるんだがな……」

「ストックの調整と、弾倉を従来のデュノア社製に合わせるのと、これ以上は専門的なことになりますが……」

 撃つ分には問題ない、と教えてくれたので銀次は了承した。

「わかった。けど、俺の銀翼はお前らみたいな銃撃戦に強いわけじゃないぞ?」

「なら、わたしもやる」

「いいのか? エネルギー兵装が主体だろ?」

「いいの。普通の銃を撃つ分には問題ないから」

 そう、ムラクモ・ユニット装者は銀次だけじゃない。ラムダとフェルもそれぞれ専用のムラクモ・ユニットの装者なのだ。

 

 シミュレーションルームには三機のムラクモ・ユニット、銀次の銀翼、ラムダのイエロー・バタフライ、フェルのフェルケルが並んだ。

 銀次の装備は、普段着の戦闘服の延長みたいなもので、鎧は最低限に着けられ、最も動きやすい恰好になっている。右腕の籠手と銀の翼の生え際から発現する光の翼が印象的だ。

 ラムダの装備は、スクール水着のようなボディスーツに装甲がところどころ付けられ、背徳感がなくなっている。背中には八対のガンソードビットが翼のように展開している。

 フェルの装備は、二人と比べて、一回り大きい。全身に重装甲をついており、肩部と腰部には隠し腕のサブアームが付けられている。本体の腕のパワーも高く、重装備を扱えるが、その分機動力が低く、ムラクモ・ユニットの中で遅い部類に入っている。

 対して、ドイツの試作ムラクモ・ユニットだった、シュヴァルツェア・ボーゲンを纏った黒ウサギ隊の隊員は的が書かれた装甲板を持って待機している。

「いいのかよ、クラリッサ。俺たちの実験に付き合って」

 銀次は隣でISのシュヴァルツェア・ツヴァイクを纏っているクラリッサに聞いた。

「かまわん、どの道フェルには射撃の腕を叩き込んでおきたいからな」

「確かに、いつも二門のバルカン砲をぶっ放されてはかなわんし」

 銀次が納得すると、フェルはいやいや、と断ろうとする。

「僕、銃撃戦は――」

「どうせだ。この実験のついでにお前の腕を上げておく。所長命令だ」

「わ、わかりました……」

 銀次が命令すると、素直に自信が開発したアサルトライフルを装備する。バズーカライフルのピグレットや接近戦用の長柄の斧のビームアックス、サブアーム用のサブマシンガンのクラインレーゲン、二門のバルカン砲のフェンリルMk2などは平気で使いこなしているのに、なぜ普通の銃はダメなのか?

 まずはラムダに試用させてみる。

「とりあえず、ラムダ、使ってみてくれるか?」

「了解」

「戦闘、始めッ!」

 クラリッサの号令を機に、的を持っている隊員が動き出す。的の役割だけでなく、マシンガンも撃ってくる。

 ラムダもたまらず移動する。敵の弾道を見るより先に身体が動いた。

避けてから的に構えるまでがスムーズだった。そして的の中央に弾痕が付いた。

「これでいい?」

 ラムダは難なくシュタインを使いこなした。

「次だ。フェル」

「はいッ!」

 フェルがシュタインを握る。構えだけはドイツ軍の誇らしい姿は模っていた。

「一応だが、AICによる停止結界などは禁止だからな」

「了解です」

「双方、始めッ!」

 クラリッサの号令で動き出す的役とフェル。

 フェルが銃撃する。しかし、的に当たらず、壁に弾痕ができる。

「甘いッ!」

 的役の黒ウサギ隊員が攻撃を加える。マシンガンの弾丸がフェルの肩の装甲に直撃する。

「まだまだッ!」

 フェルが反撃をする。当たったのは的役の黒ウサギ隊員だった。

「きゃあッ!」

「しまったッ!」

 ボーゲンを纏っていた彼女は貫通こそしなかったが、衝撃に変わってダメージを受けていた。

 クラリッサが間に入り、戦闘中止を告げる。

「試験中止ッ! 撃ち方やめッ!」

 フェルはシュタインを携えながら、的役の黒ウサギ隊員に近づいて頭を下げた。

「ごめんなさいッ!」

「い、いいのよ。あなたの射撃の腕は悪くはないから……」

 思いの外、軽症で済んでいた。

「し、しかし……」

「的に当てられてないのは昔からじゃない。実戦じゃ……」

「なら、実戦形式でやってみるか?」

 銀次が右腕の籠手からアームドギアの剣を取り出した。

 フェルはシュタインを咄嗟に銀次へ向けた。

「どういうつもりです? それで僕に――?」

「敵わねぇことねぇだろ? これでもアガートラームの模造品だ」

 左手に構えた剣をフェルに向ける。

「なるほど……勝つつもりはあるようですね……」

 フェルは思わず息を呑んだ。クラリッサは黒ウサギ隊員を連れて、観覧窓へと移動する。

「ラムダ、お前も残るのか」

「うん、フェルとの連携行動が一番の攻撃だから」

 シュタインを構えるラムダ。

「こりゃ、アームドギアだけじゃ足りないなッ!」

 右腕に太刀の銀雪を構え、右腕に握っていた蒼の大太刀へと変貌させる。

「ラムダ、これは僕が銀次さんから受けた――」

「男の甲斐性に付き合うつもりはない」

 フェルからシュタインを強引に奪って両手にシュタインを持ち構える。

 二挺銃になったラムダ。それに伴い、フェルも両腕に二門ずつのバルカン砲を構える。

 銀次は準備が完了したと捉え、左腕の剣を蛇腹剣に変え、先制攻撃を仕掛けた。

「挨拶代わりだッ!」

 ラムダは避け、フェルは避けず、目を閉じた。すると伸びた蛇腹剣の剣先が止まっていた。

 銀次の左腕が使えなくなった隙を、ラムダのシュタインが上空から狙い撃つ。

 銀次はすぐさま、左腕の剣を離し回避する。その跡には弾痕が残った。

 銀次の青い光の翼から放つ鎌の刃がラムダを襲う。

「ジュリエットッ!」

 寸前で躱したラムダは、回避運動を取った。光の刃なので、撃ち落としようがなかった。

「まずいッ!」

 ラムダが思わず叫んだ。飛んでいった二つの刃のの方向には、フェルが剣先を止めている最中だ。回避行動が取れない。しかし、フェルには奥の手があった。

「停止世界ッ!」

 フェルは光の刃を寸前で止めて、自由の身になった。停止世界は周囲の近くの時を止める技。停止結界とは桁違いの防御技である。その間、自分は自由に攻撃できるカウンター技でもある。しかし、止められる時間は少しだけ。それが解除されるのはすぐだ。しかも連発できない、という欠点もある。

「停止世界が解除されるのは……今かなッ!」

 銀次が手離した剣を左腕で、いや、左腕から射出されたワイヤーで巻き付けていた剣を操って、停止結界、停止世界が切れたタイミングで、蛇腹剣がまた動き出した。それをフェンリルの装甲板で受け止める。

「「くッ!」」

 銀次とフェルが同時に口から放たれた。銀次にとっては相手に軽微なダメージしか与えられなかったこと、フェルにとっては完全に防ぎ切ったという自身の油断から来たことだ。

 しかし、追い込まれたのは銀次だった。ラムダのガンソードビットが周りを囲いだし、銀次の行動範囲を狭めていった。ラムダは次の銀次の移動ポイントを探った、そして狙いをすまし、引き金を――。

「リベリオンッ!」

 銀次は大太刀を蛇腹剣に変え、周りのガンソードビットを払いのける。

「銀次ッ!」

 舌打ち交じりに両手のシュタインの引き金を引く。

「まずは、テメェだッ! ラムダッ!」

 銀次は大太刀を戻して、ラムダに突っ込んでいく。

「そうはさせませんよッ!」

 そう言いながら、銀次に向けて両腕の計四門のバルカン砲、腰のサブアームからサブマシンガン、肩のサブアームからライフルバズーカによる一斉射撃を浴びせた。

 銀次は仕方なく、回避運動を取らざるを得なかった。

「ちッ! 弾幕が濃すぎるッ!」

 それに加えて、ラムダによる狙撃。銀次の頭を悩ませるには充分だった。

「これで――ッ!」

「動けませんねッ!」

 ラムダ、フェルによる一斉射撃から解放されるには、もうすでに遅かった。周りは弾丸だらけ。どこへ逃げても、銀次がダメージを受けるのは必至だった。だからといって、銀次は匙を投げたわけではなかった。

「こうなったらッ!」

 銀次が残像を残して加速する。そのことに二人は気づかず、二人は斉射していた。

 最初に気づいたのは、ラムダ。フェルに顔を向けた瞬間、銃口を向け直そうとするが……。

 しかし、遅かった。ラムダが気づく前に、フェルの眼前に銀次が黒い炎を纏った拳で殴りかかろうとした。懐に入られたフェルにはどうすることが――。

「イグニッションッ! 響(ゆらぎ)ッ!」

 銀次の攻撃に対し、停止結界を試みた。だが、一歩遅く、彼はシミュレータールームの壁まで殴りつけられた。装甲は破壊されていないが、衝撃が強く、フェルの腕とサブアームから武装が手離された。フェルの意識が堕ちていく。

「フェルッ!」

 ラムダが残弾少ないシュタインを手放し、レーザーライフルのイエロー・コメットを二挺構えていく。

「遅いぞ、ラムダ」

 そう銀次が呟くと、上空から落下する銀雪をキャッチする。太刀の形態ではない。弓の形態だ。これを見たラムダは目を丸くした。

「業天・雨氷ッ!」

 ラムダは頭上を見上げると、薄暗い雲から氷柱の雨が降り注ぐ。

 ラムダはその氷柱の雨を回避していると、後ろに銀次が蒼の大太刀を構えて飛行してきたことに勘づく。

「氷蒼刃(ひそうじん)ッ!」

 氷の斬撃波を受けたラムダは体勢を崩して床に落下する。

「落火衝(らっかしょう)ッ!」

 起き上がろうとするラムダの身体に目掛けて炎を纏った落下した勢いの突きで刺さっていく。

 意識を取り戻したフェルはその姿を見て、驚愕した。

「ラムダッ!」

 フェルは自分の目を疑った。しかし、よく見れば蒼の大太刀はラムダの腹の横から大きく離れた床に刺さっていた。銀の剣はラムダの腹部に向けられてはいるが。銀次がなにかを言わせたがっている顔をしている。フェルはそれに応えて、両手とサブアームを上げていく。

「降参です……僕たちの負けです」

 それを聞くと床に刺さった大太刀を銀の太刀に戻していく。解放された銀の太刀を右肩に背負って、アームドギアの剣を逆手に持ち替えた。

「俺じゃなかったらどうなっていたことか……」

 銀次の身体を見てみると、スーツと装甲に擦り傷や弾痕があった。ゴリ押しで通った結果なのだろう。装甲が少ない銀次がこれほどダメージを与えられたのだ。

「惜しかった……」

 ラムダがそう呟きながらやっとこさ起き上がり、無事であることをフェルに確認させた。

「惜しいものか、セカンドを残しているんだぞ」

「「う……」」

 銀次に一蹴され、落胆するラムダとフェル。その裏では、ギリギリ勝てたことに内心ホッとしていた。銀次としても、これほどのダメージは想定外である。弾丸の雨から勝つためとはいえ、黒雷による加速で振り切る荒業をやってのけてしまったのだ。自身の限界をまた一つ感じてしまった。

(こうでも言わないと、こいつらが強くなれない……なにより俺も強くなれん)

 

 医務室にて軽く検査を受けた銀次は、溜め息を吐きながら所長室へと入った。

「あら、遅かったわね」

 何事もなく仕事を引き継いでいたマリアが端末を操作していた。

「まあ、実戦でも使わせてみたからな」

 銀次が席に座ると、マリアが銀次の顔の治りかけの傷に気づいて聞いた。

「どうだった?」

「デュノア社には改良の余地あり、納期を伸ばす報告を俺が書かねばならん」

 そう再び溜め息を吐くと端末を操作し始めた。

「デュノア社ってあのフランスのISを量産してる――?」

「ああ、そのデュノア社だよ」

 二人が真っ先に思い付いたのは、IS学園に在籍しているシャルロット・デュノアという少女だ。デュノア社の社長、アルベールをはじめとした家族とは最近になって折り合いが良くなっているとは聞いていた。

「どうして、わざわざこっちに委託してきたのかしら?」

「フェルの武装の発明品を見て、デュノア社が買い取ってフランスでいいとこ造ってますって宣伝したいんじゃないか?」

 銀次が所長を務めて少しになるが、未だに経済のことはわからない。社長のやりたいことなど、わかるはずもない。

「そうなのかしら……」

 銀次がそう言えば、と思い出す。

「いや、ムラクモ・ユニットの開発委託しているからそれもあるかな」

「確か、コードネームはブランかしら? ラファールリヴァイヴを基にした機体って聞いているけど?」

 マリアがそう聞くと、銀次が報告書の作成を中断して、デュノア社に提出したムラクモ・ユニットのブランの設計図のコピーファイルを開いて見せた。マリアも画面を見に近づく。

「そういや、そうだったな。浅葱さんが設計したとも聞いたが。詳しくは俺にもわからん。技術屋じゃないからな」

 図面だけ見ても、どういった機能を持ち合わせているのか、わからなかった。現段階で存在する銀翼やイエロー・バタフライ、フェルケル、現在量産を計画しているものと比べ、なにがいいのかわからなかった。

「ココノエなら知ってるんじゃないの?」

「いや、ブランの開発には携わってない」

 銀次はマリアとの顔が近いと気が付き、少し頬を染めながら余所見をして、気を紛らわせた。

「そう……それが完成したら、デュノア社もムラクモ・ユニットの製造を始めるのかしら」

「どうだろうな。日本や米国が絡んでこなきゃすんなりいくんじゃないか?」

 それを聞いて、マリアの溜め息を吐く。マリアがようやっと離れた。

「はっきりしないのね」

「政治や経済はお偉方に任せるよ。俺たちは細かな仕事と事件に集中すりゃ、それでいいさ」

 銀次はそう言いながら、そっと下に目を逸らした。

「そ……」

 ん? と銀次は机の引き出しが開いていることに気づき凝視してマリアに尋ねる。

「マリア?」

 マリアが内心しまった、と思い銀次から遠ざかる。

「なーに?」

 とぼけて逃げるマリアの肩を銀次が掴んだ。

「引き出し、調べた?」

 僅かに怒声が含まれた声で問い詰める。

「さあ、何が入っていたのかしら」

 そんな銀次に逆ギレで言い返した。掴まれた肩を解かせて睨んだ。

「おい、それはないだろッ! 返せよッ!」

 マリアの両腕を掴んで、エロゲーなどの所在を問い詰める。

「仕事場にあんなもの持ち込んでッ! 所長という自覚を持ってるッ!?」

 マリアも負けじと激怒する。

「仕事するのに必要だッ!」

「なに言ってんのッ! ヒステリアモードに頼らなくたって自力で仕事できるでしょッ!」

 その後も銀次とマリアの大声がぎゃあぎゃあ、と所長室から喧嘩の声が響いたという。

 

 ラムダはレポートを書いた端末を手に、開発室を素通りしようとした。機械音がしない限りは。ラムダは気になり、開発室に入った。

 開発室には、ラムダが先ほど使っていたシュタインを分解していた。思わずラムダが声をかける。

「なにをしてるの?」

「あ、ラムダ。シュタインの解体をしているんです」

 しかし、そう見せながらどこを改良すべきか、計算メモがずらりと床に散らばっていた。

「懲りないんだ」

「ええ。折角の受注ですからね。現技術で最高のアサルトライフルを作ってあげたいんです」

 ラムダが散らばったメモを集めていく。

「また怒られるよ?」

「それでも、パヴァリア光明結社に、ノーブルレッド、それらと取引するテロリストに、敵は多くいますから……」

 敵と呼ばれるものはすでに数えられないほどいるのだ。

「……」

 その敵の中には、ラムダが切っても切れない関係の者がいる。

「ニューやテルミの存在がいるというのに……のんびりとはできません」

 フェルの目にはどれだけ敵が強大に見えたか、ラムダにはわかっていた。

「だから、怒られるのを承知で――」

「それは違いますよ。僕が許可証を手に入れる前に手を付けてしまうんです」

 フェルはきっぱりとして否定した。むしろ喜々として言ってのけた。

「悪癖だとわかってやってるんだ」

 その様子に、呆れながらも受け入れた。

「はい。一々許可を取るより、完成したものを見せて、納得させればそれがいいんです」

 ラムダはフェルといる時間が長かった。だから、彼が今、真剣に取り組みながらも楽しんでいることがわかっていた。

「でも、次からはちゃんと許可を取ってよ? わたしまで怒られるのは理不尽だから」

 だからこそ、念を押して注意した。

「わかりました……」

 ラムダの注意に耳を傾けながら、シュタインの分解を進めていく。

 フェルがその作業を終えるまでラムダはずっと傍にいた。

「ラムダ。帰っても……」

「いい。また、なにかやらかすかもしれないから」

「今日の説教だけでいっぱいでしたよ……」

 フェルは監視の目を気にしながら分解を進めていったのであった。

 




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