Blue Silver Vampire   作:WaT=Vermillion

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元:pixiv


飛び立った天使は縛られる 承

「こちら的場、日本に向けて帰還する」

『了解、領海ラインにて艦艇が迎えに来る』

「了解、合流ラインまで飛翔する」

 エンゲルを纏った男、的場は日本へ向けて飛翔していた。

 狙撃による妨害もあったが、こちらの機動力をもってすれば余裕のことであった。

「これで俺の手元に報酬が手に入るわけだ」

 すると的場の後ろから銀色の光が飛んでくる。

 それに気づいた的場は間一髪で光から避けていく。

「どうやら、簡単に行かせてくれないようだな」

 追ってくる者も同じく飛翔している。

 蒼銀の色をした鎧と光の翼をしており、右腕に大きな籠手が付いていた。

 それが大きな風を起こして、的場の行く道を先回りして、右手のクロスボウを的場に向ける。

「これはいったいどういうことだ。的場、といったな」

「これはこれは所長自らがやってくるとはな」

「事が事だからな、テスト装者になりにきたわけでもあるまい」

「こいつを持って帰るだけだ」

「どこへだ?」

「そいつぁ教えられんな」

「ならば力づくでてめぇごと連れてくだけだッ!」

「やれるもんならやってみなッ! お前の弱点は知っているッ!」

 的場はエンゲルの腰部から柄を握り、光の刃を出す。

 銀次もそれに応じて銀の太刀、銀雪を左手に構える。

 互いに右腕に射撃武器、左腕に斬撃武器を持っている。

 先に仕掛けたのは銀次、右腕のシルバー・ピアスを突き出し的場はハンドガンを握る右腕で銃口を逸らす。

 クロスボウから放たれた銀色の矢は的場の顔面ギリギリを通過した。

「殺す気かよ、ガキがッ!」

 そう言っている間に銀次の持つ銀雪が的場に斬りかかる。

 的場はそれをビームサーベルで防ぐ。

 しかし銀の刃は光の刃に喰いこんでくる。

 力負けしている。なので、的場は咄嗟に銀次の腹に蹴りを入れる。

「ごふッ!」

 銀次は胃液を吐きながらも、シルバー・ピアスを横に振り的場の顔に叩きつけた。

「くそッ!」

 的場は血を吐きながらも、銀次に頭突きをかます。

 しかし、頭突きは外れ、銀次が的場の突き出した頭を顎に向けて蹴り上げる。

「降伏するなら今のうちだッ!」

 的場は思い知らされた。

 流石は米国の特務部隊を壊滅した上で政権を失墜させ、異世界から帰還した経験を持つ少年だと身を以って実感した。

「フリーズランサーッ!」

 銀次から魔術を発せられた。氷の刃が的場に向かって撃ちだされていく。

「その程度ッ!」

 的場が氷刃を光の刃で斬り裂いていく。

「これならどうだッ! フリーズパーティッ!」

 氷の追尾弾が的場に向かって発射される。

「氷のミサイルかッ! 厄介なッ!」

 氷の追尾弾から逃れる的場だったが、この隙に銀次はまた詠唱を始めた。

「おかわりを喰らえッ!」

 氷の追尾弾が追加され、逃げる的場に追い打ちをかける。

 氷の弾幕は見事に的場に当たり、氷が爆発した跡が結晶となって冷たく残っていた。

 当然、的場の機動力も落ちていった。

「ちッ! ウィングユニットがッ!」

 的場は落ちていく自分の機動力を無理矢理上げる手に出た。

 それはビームサーベルで氷の結晶を無理矢理破壊することだ。

 ゴールまであと少し。

 そう考えたからこそ、強行的な策に出たのだ。

 しかし、的場に予想外のことが起きた。

 合流地点にいるはずの艦艇がいないことだ。

 なにかの間違いだ。

 そこで落ち合うと決めたはずだ。なのに、

「どういうことだあぁぁぁぁぁッ!?」

 的場は思わず叫んだ。

 銀次は落ち着いて戦況を確認した。

『もう少しで日本の領空に入られますわッ!』

 カジュンがそう告げると同時に、的場の激昂に納得がいった。

「なるほどな、日本の防衛省かッ!」

 シルバー・ピアスにエネルギーを込めて発射する。

 それは炎の弾幕。まるで夜に咲く花火のようだ。

 その弾幕を、的場の進路を、日本との領空圏外でばらつかせた。

「クソッたれがあぁぁぁぁぁッ!!」

 的場は半ばヤケになっていた。

 弾幕を避けようとせず、そのまま日本へ向かって飛んでいった。

 エンゲルのあちこちで爆発が起きている。

「機体が爆走しているってのに……ッ!」

 銀次はそれ以上に踏み込めなかった。

 領空侵犯を機関の人間が行うわけにはいかない。

 だが、略奪者を野放しにするわけにはいかない。

 ならば、こっちに引き寄せるまでだ。

「吹き荒れろ、氷風ッ! アイストルネードッ!」

 自身が使える風を混ぜた氷の魔術。

 これを使ったのは二つの目的があった。

 一つは機動力を落としたエンゲルを風で引き寄せること。

 もう一つは引き寄せたエンゲルの機動力を削ぎ落とすことだ。

 その二つの目論見は見事に成功した。

「くそッ! 寒いッ! 氷でまたッ!」

 的場の頭がパンク寸前、完全に冷静さを欠いていた。

 完全に捉えていた。もう動きようがないはずだ。

「とどめだッ!」

 右手の籠手を大剣状に変形させて黒い炎を纏わせた。

「竜凰天駆ッ!!」

 一気に降下し、的場ごとエンゲルを斬り裂いた。

「ぐはッ!」

 決定的だ。

 彼の纏うエンゲルが制御不能に陥った。

 的場も気を失い、エンゲルと共に落下する。

 そこへ、大きな黒い機体、ISのシュヴァルツェア・ツヴァイクがエンゲルごと的場を抱えた。

 そのISを駆る左目を眼帯で覆っている女性、クラリッサの元へ銀次が近づく。

「いいところで来たな、クラリッサ。拘束を頼む」

「了解した。ところでなんだが、これについては……」

 銀次はクラリッサに頭を下げた。

「ちゃんと話すよ。だから、第七機関まで送ってくれ」

 クラリッサは、やれやれ、と言いつつも受け入れてくれた。

「わかった。フェルも知っていたそうだからな」

「すまない」

 二人は暁の帝国に帰投するため、踵を返した。

 

 的場を研究所の部屋に閉じ込め、クラリッサと別れて、所長室に戻って数分、ご機嫌斜めのマリアが近づいてきた。

 食事中にお金を置いて飛び出していったことが原因ではないのだろう。

「まさか、量産機がもう完成していたなんてね」

 マリアの発言に銀次はチクチクと棘が刺さったのを感じた。

「なんだよ。仕方ないだろ、今回みたいな事件を防ぐつもりだったんだ。的場ってやつにはバレていたけどな」

 振り返って言い返したが、顔を合わせてくれない。

「別に、怒ってないわよ」

「怒ってんだろうが……」

 はぁ、と溜め息を吐くと、次は零菜が入室し、食いかかってきた。

「でも、わたしには教えてくれてもよかったのにッ!」

「悪かったって、他言無用だったんだよ。ってか零菜なら知ってるもんだと」

「教えてもらってないもんッ!」

「お前はわかりやすく怒るよな……」

 わかりやすく態度に出る零菜を見て、ホッと胸を撫で下ろし――待て。

 調と切歌が来たのを見て違和感が確定に変わる。

「うん? お前ら、学校は?」

 三人がビクッ! と大きな声を上げた。

「零菜さん、調さん、切歌さん、学校はどうしましたか?」

「いや、緊急事態が出てね」

「それで早退してきたら」

「そしたら、もう解決してたデースッ!」

「わかりました。あとで那月ちゃんを通して、担任の先生には言っておくからね」

 零菜、調、切歌が掴みかかる。

 正直、零菜が掴みかかっただけで恫喝に近いのに、二人も加わると新手の暴力としか思えない。

「放せッ! 放さんかッ! お前らが早退したのが悪いんだろおがッ!」

 見かねたマリアが三人から銀次を手放させ、解放させる。

「すまん、マリア」

「いいのよ、あなたの判断は間違ってないから」

「「「えぇ~?」」」

「え~じゃない」

 流石マリア、母親の鑑だな、と銀次が感心する。

 零菜と切歌の偶然『暁』の苗字コンビが肩を落とす中、調が挙手した。

「それより質問があります、兄さん」

「罰則は免れんと思うが、どうした、調?」

 それでもたじろぐことなく、銀次に質問した。

「エンゲルにも、シュルシャガナやイガリマ、アガートラームの運用データが入っているんですか?」

 調の質問に言われてみれば、とマリアが顎に手を当てる。

 銀翼の運用データの中には、銀次が過去に吸血した調、切歌、マリアから得た三種のシンフォギアの力がある。

 それを銀翼が効率的なエネルギー運用をして、それらの力をほぼ完璧に模倣しているとまで言われる。

「入れてない、って聞いているが……」

 もっとも銀次曰く、シュルシャガナもイガリマもアガートラームも、トリッキーな武装なので、自分以外に使いこなせないとのこと。

 それを受け入れて、エンゲルにはそれに関する武装は取りつけられていないのだ。

「なんかすっきりしない返事デスね……」

 切歌がこんな反応をするのも無理はないかもしれない。

 銀次も全容を把握していないのだ。

「しゃーないだろ、切歌。俺は技術屋じゃないんだ」

 それにココノエが明かしたのは、多分俺で最後だろうと思った。

「そうデスけど、もっと所長らしくしてほしいデスよ」

「悪かったな、所長らしくなくて」

 自分でも似合ってないことはわかっていながら、顔を背けた。

「悪い、遅れた」

 開発者のココノエが銀次たちの元へやってくる。

「遅いぞ、ココノエ。なにしてたんだよ」

 銀次を睨みながら発言する。

「エンゲルの整備をな。派手に損壊してくれたから遅れた」

「……悪かったよ」

 確かに派手に攻撃はした、と反省している。

「まぁ、おかげでわかったこともあるがな」

「わかったこと?」

「通信履歴を調べたら、お前と戦った周辺にまで迎えの艦艇が来ていたらしい。日本海軍のな」

「おい、それって、奴は風鳴機関の――?」

 すると、通信機器が鳴り、通信が開く。

 日本からの通信だ。

『それは違う。風鳴機関の残党ではない』

「風鳴八紘?」

「いったい、どうして翼のパパさんが?」

 銀次たちの見覚えのある顔が映像通信に出ていた。

 風鳴八紘。日本の内閣情報官であり、亡くなった風鳴機関の党首、風鳴訃堂の息子だ。

 日本の風鳴機関が起こした事件による日本への損害賠償などを合法・非合法含め、回避させた人物である。

 それ故に、日本直轄の二課を国連に移管させてS.O.N.G.が創設されたきっかけになったのだが。これは日本にとって譲らざるを得ない部分でもあったわけだが。

「わたしがS.O.N.G.を通して、さっきのことを報告した」

 ココノエが言い終えると、八紘が端末を操作しながら話し続けた。

『こちらで調査をした結果、防衛省の人間が指示した、ということが判明した。従った海軍含め、こちらの方で解雇などの懲戒処分を下した』

「早い仕事ね。流石だわ」

「あなた方は、事前に察知したということか」

 的場が取った行動について銀次は考えていた。

 本来であれば、あの地点に迎えが来る想定になっていたのでは、と。

 それが日本内で動いていたのなら、いなかったのは納得できる。

『秋十が証拠を掴んでくれたからだ。金恵君も一夏君もよく働いてくれた。もう一つ、わかったことがある。そちらのエンゲルを強奪した的場翔斗についてなんだが……』

 端末の操作を終えた八紘の言葉が淀んだ。

「どうしたの? なにか言いづらいことでも?」

『資料は送った。目を通せば早い』

 マリアの質問に答えず、八紘は目を瞑って話した。

「わかりました。こちらの事件に巻き込んでしまい、申し訳ありません」

 銀次が頭を下げた。

『謝るのはこちらの方だ。日本が起こしたのが問題だからな。近いうちにまた連絡をしようと考えている。それでは用事があるから失礼する』

 最後に八紘が頭を下げて通信が途絶えた。

「目を通しておけ、ってことか。資料は?」

「ほら」

 ココノエからタブレットを受け取った銀次はデータを一覧した。

 その目は驚きに見開かれている。

「……これってッ!」

「どうしたの、銀次君?」

 銀次と目を合わせたマリアが、覗き込むように窺った。

「なんでも、ない」

 銀次は目を逸らした。

「わたしたちに隠す必要があるもの?」

「お前らには関係ないことだ……」

 銀次に明らかな動揺が見られた。

「ココノエ、こっちにも資料をッ!」

「あっ、おいッ!」

 銀次は止めようとしたが、ココノエはタブレットをマリアに渡した。

「あまり気乗りしないが、こっちに落ち度があるからな」

 零菜もタブレットを見ようとマリアに近づく。

「わたしにも見せて、マリアッ!」

 その内容にマリアも零菜も言葉を詰まらせる。

「これって……」

「銀次君、だから――」

「言っただろ、お前らに関係ないって」

 そう言いながら、退室しようとする。

「どこへ行くの?」

「そいつに事情聴取」

 マリアに返答するとそのまま退室していった。

「何が書かれてたの、二人とも?」

「アタシたちにも見せるデスよッ!」

 銀次が置いていったタブレットを起動させて、データを一覧する。

 それを見た調と切歌は銀次たちの態度に納得がいった。

「これは……」

「お兄さんの、問題デスね……」

 

 銀次は研究所の禁錮部屋へと向かった。

 これは元来、パンデミックなどの症状が出た際に使用されるのだが、このように罪人を禁錮刑にするような意図で造られたわけじゃない。

 銀次は的場のいる部屋を開けた。

 その開閉音に気づいた的場はベッドから起き上がる。

「おい、的場」

「わりいが話すことなんてねえぞ、坊主」

 どこか苛ついた様子で銀次を睨む。

「その件はとっくに日本の方で調べられているよ」

「だとしても話すことなんてねえよ」

「これは第七機関研究所所長としての質問じゃない。俺個人の質問だ」

「……なんだよ?」

 それを聞いた的場からのプレッシャーが弱まった。

「俺の父さん、遠山キンジと関わりがあるんだろ? おっさん」

 銀次が言うと、的場から大きな笑い声が上がった。

「……まさか、俺がキンジさんの息子にとっ捕まるとはな」

「父さんのこと、どこまで――」

「待ってくれ、銀次」

 手で制してきた。

 名前を呼んできてくれたことから、待ってくれると信じてくれたのだろう。

「答えられないか?」

「キンジさんを殺したのはあの力か?」

「その質問の意味は?」

 ここから先は、機密事項になる。

 だから慎重になった。

「俺もただ知りたいだけだ。答えてくれたら教える。俺個人の頼みだ」

「……遠からずも当たらずだ」

 銀次は処罰を覚悟して答えることにした。

「関係は、あるんだな。どういうことなんだ」

「俺とお前が身に纏ったムラクモ・ユニットはそれの模造品なんだよ」

「はっきりと答えてくれるじゃねえか」

「俺にとっては安い取引だからな。この程度のことはここに長く居る人は知っていることだ」

「……そうかい」

 銀次はバレたら厳罰になるだろうな、と猛省した。

「改めて尋ねるぞ、父さんとは――」

「俺が新米の刑事だった頃、世話になっていた。武装検事だから妙な縁ではあったがな」

「……そうか」

「あの人が武力行使して、俺は犯人を取り押さえていた。そんな役割だったんだ」

「あんた、当時最優秀の刑事だったらしかったな」

「ああ、だから俺は天狗になっていたんだよ。あの人のおかげだってなのにな」

「父さんはあんたが言うほど強くはないよ。だって――」

「キンジさんは強かったよ。お前ら家族を守って死んだんだからな」

「だから強くはないって言ってんのさ。死んじまって……」

「そうだな。お前はまだガキだもんな」

「俺を叱る人ならもう間に合ってる」

「へへっ、そうか」

 銀次は父親のことを話してスッキリした。

 あとで厳罰がきても受ける覚悟ができている。

「気になったのは以上だ。戻る」

「待てよ」

 退室しようとした銀次を的場が止めた。

「なんだ?」

「タバコくれないか? 吸いたくて仕方ねえんだ」

 銀次が溜め息を吐きながら答える。

「我慢しろ。ここは全面禁煙だ」

「喫煙者には厳しいな」

「女子が煙たがるんだ。ここに喫煙者と言ったら今収監しているお前だけだ」

 それに俺も嫌いなんでね、と拳を握り締めた。

「手厳しすぎないかね?」

「とにかく寝て我慢してろ。日本との取引で解放されるまでの辛抱だ」

「へいへい」

 的場から必要な情報を訊き出した銀次は部屋から退室して鍵をかけた。

 

『的場翔斗に関しての処置が決まった。日本への帰還が禁止された』

 風鳴八紘から的場翔斗の処遇が伝えられた。

「ちょっと待ってくださいッ! 事実上の国外追放じゃないですかッ!」

 銀次は感情を剥き出しに八紘に怒鳴った。

『防衛省の処遇は執り行われたが、昨日、的場翔斗の日本から追放することが決まった』

「そんな……」

『戻れば恐らく死刑になるだろう。貴国で処断していただきたい』

「俺らが死刑って宣告しなければいけないんですかッ!?」

 銀次は感情的に訴えるが、八紘はそれに動じず淡々と告げた。

『処遇は貴国に通達済みだ。上層部から判断が下されるだろう」

「……わかりました」

 銀次は自分の立場を理解し、怒りを鎮めた。

『君の上層部は、非情な事をすると思うか?』

 八紘の発言はまるで子供を諭すような言い方だった。

「い、いえ」

 銀次は自分の行為を恥じた。

『とにかく、何から何まで迷惑をかけてしまい申し訳ない」

「いえ、過剰に返答してすみません」

 銀次は熱くなりやすいことを八紘はわかっていたかのようだった。なぜなら、

『姉弟だな。彼女は君以上に反対していたぞ』

 姉の金恵のことを掘り返した。だから銀次の意見を受け止めたのだ。

「姉が無礼を、すみません」

 銀次は深く頭を下げた。

『いい。私はこれで失礼するが、後はそちらの上層部の判断を仰いでくれ』

「わかりました」

 通信が途切れた頃には、熱くなった激情はなりを潜め、冷静さを取り戻した。

 その時、所長室にマリアが入ってくる。

「おはよう。所長」

「お、マリアか。おはよう」

 挨拶をして早々にマリアの眉をしかめる。

「なにかあったの?」

「そこまでわかりやすいか? それとも、エンゲル以外に隠していると睨んでんのか?」

「そこまで疑っていないわよ。難しそうな顔をしていたから」

 お見通しか、銀次はさっき伝わった情報を包み隠さず話した。

「的場の処遇がこの国に任せるってさ」

「随分無責任なことね」

「八紘氏にしてもあれ以上の改善は期待できなかったんだと思う」

「別に翼のパパさんを責めてるわけじゃないのよ。ただ……」

「トカゲのしっぽ切りで切り離された的場が気になるわけか」

「ええ。庇うつもりではないんだけど」

 銀次はマリアが気にしていることがわかった。

「俺の親父のことか? 気にする必要はないよ」

「……差し出がましいとは思っているでしょうけど、あなた個人は的場をどうしたいの?」

「今の俺に決定権なんてないよ」

 あくまで研究機関、裁判に関わることはない。

 一息つこうとしたその時、警報が鳴り響いた。

『アルカ・ノイズ警報ッ! 沿岸部から出現ッ!』

「なんでこーなるかな」

 一息どころか溜め息が出てくる。

「出てきた以上、わたしも加勢するわッ! 行くわよッ!」

 銀次が重い腰を上げたところで、マリアの発言によって止められる。

「気になるんだが、もしかしていつものパターン?」

「それの方が手っ取り早いッ!」

 銀次が気にしていること、それはマリアの運搬方法についてだった。

「あ、そですか」

 銀次には拒否権がなかった。

 

 

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