早いというその一点に尽きる。
 誰もが思い浮かんでやらなかったであろうコラボをあえてやる。

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モタモタしてると置いてくぜ?

 

 

 軽そうなその声はずっと彼女の耳に残ってた。

 ウマ娘じゃないにも関わらず、彼は彼女以上のスピードで追い抜いて、彼女以上のスタミナで走り続けてた。

 『ウマ娘じゃないのにどうして?』なんて疑問は当時の彼女には思い付かなかったのも無理はない。

 なぜならそれ以上に彼女にとっては自分よりも先を走る彼が気に入らなかったから。

 

 ーーおいおい、いい加減諦めろって?もう分かってんだろ?それに、オレもお前に先を譲るつもりは無いんでな。先頭は諦めろ♪ーー

 

 その瞬間から彼女の中で何かが変わった。

 『絶対に彼を追い越してみせる』

 それから彼女の挑戦の日々が続いた。何度も先を越され、ハンデを貰っても勝てず、全戦全敗だった。

 幼い子供ならトラウマ必至だが、彼女は挫けず、彼に挑み続けた。

 そして時折、彼は手を、否、足を抜いていた。

 ごく稀に彼はこけたり、彼女にわざと先を越されるようになった。

 今にして思えば分かりやすい演技だったが、幼い彼女にはその時折訪れる目の前に誰もいない一面の芝生を見るのが大好きだった。

 それだけでそれまでの負けは清算されるのだが、もう一度味わいたいと彼に勝負を挑み、また負け始めるまでがワンセットである。学びが少ない。

 

 そしてそんな日々が何年も続いたある日、ふと彼がつぶやく。

 

 ーーところでお前以上に速いやつって他にいるのか?ーー

 

 彼からしてみればどうって事ない話だった。昨日見たGⅠレースの名勝負が熱かった程度のテンションで、彼にとってはその場潰しの雑談の一つに過ぎなかった。しかし、彼女にとっては意味が違った。それは野球少年が目の前で4番バッターのホームランを見るレベルで人生に影響を与える一言だった。現実はそこまで綺麗なものではないが。

 

 彼女の中でその言葉は聞き捨てならないセリフだった。

 

『もう勝った気でいる』

 

 お淑やかな見た目に反して意外と負けず嫌いな性格の彼女はその言葉をそう受け取った。確かに現状では彼に()()()()()(重要)負け越しているがそれで完勝した気になり新しい相手を探そうとしている彼が心底気に入らなかった。

 

 その一言が彼女をトレセン学園に導く一言となった。

 

 

 

 

 

 トレセン学園に入学してからも彼女のスタイルは変わらなかった。一時学園内最強チームでトレーニングを積んだが、なまじ彼女の気質とチームのスタンスが合わずものの数ヶ月で辞めた。

 先行?差し?追込み?

 そんな戦術彼の前では一切通用しない。

 先行なんて作戦に出る余裕はない。足を溜めるなんて考えは死を意味する。

 差しに関しては差が開いた時点で彼がバック走行でこちらを見てくる顔が目に浮かぶ。そこからさらに差が開くのでタチが悪い。

 追込みに至っては論外。こちらが良し仕掛けるぞというタイミングの頃にはどれだけ軽く見積もっても200バ身以上差をつけられる。

 

 やるのならば逃げ一択。それも他では考えられないような大逃げだ。それでやっと彼とは対等(イーブン)でいられる。

 

 しかし、この考えは圧倒的なまでに所属したチームと合わなかった。チームの総合コーチもこちらの事を配慮してトレーニングメニューを組んでくれているのは分かっているのだが、いかんせん足を抑えたレースは昔から彼とフルスロットルで走り続けていたレースが基本となってしまっていた彼女にとっては非常に息苦しいものになっていた。

 

 ペース配分なんてものは眼中にないあのレースは非常に心躍るものであったのに、今のレースは常に楽しくない。そんな毎日だった。

 

 

 

 

 

 

「……そうか、遂に。いつか来るとは思っていたが」

「はい。申し訳ございません。トレーナー」

「構わん。それが自分で決めた道ならば私はそれを全力で応援する。それがトレーナーとしての私の責務だ」

「……ご迷惑をかけしました」

「いい……この後所属するチームは決まっているのか?」

「いえ。ですが、少しゆっくり考えたいと思います」

「ああ、そうしろ……次のチームでは上手くやりなさい。スズカ」

「はい」

 

 トレセン学園最強チーム、リギルのトレーナー室にて、彼女・サイレンススズカはリギルトレーナー・東条ハナは互いに見つめ合い何度か話を済ませて部屋を出る。去る際に東条の顔を少しばかり流し見たが、ただ黙ってこちらをじっと見ていた。スズカはもう一度軽くお辞儀をして部屋を出る。

 

「……スズカ」

「ルドルフ」

 

 部屋を出てすぐ、そこには1人のウマ娘がいた。

 茶色の髪に少し黒混じりの前髪、そしてその中で一際輝く一房の銀髪が特徴的な大人びた印象のウマ娘、シンボリルドルフはドアを開けた先で静かに彼女を待っていた。

 

「辞めたのか?」

「……ええ、正直、申し訳なさはあるわ。ハナさんは最後まで私のためにメニューを組んでくれたし、レース展開も無理のない作戦で何度も助けてもらったわ……でも、それでも私にはこのチームは合わなかったみたい」

「……そうか」

「ごめんなさい」

「構わないさ。しかし、一つだけ聞かせてくれないか?」

「なに?」

 

 

 

 

 

 

「どうしてそこまでして速くありたい?トレセン学園で最速は間違いなく君だ……最強は譲れんがね。どうしてまだ早さを求めるんだ?」

「そうね。ルドルフには言ってもいいかも」

「……?」

 

 スズカは少し考え気味に黙り込んだのち、ルドルフと向き合う。彼女がなにを言うのか分からず、ルドルフは彼女が口を開くのを待っていた。

 

「私より早い人が居るの。その人を超えるまでは速さを求め続けると思う」

「なに?」

 

 意外な言葉にルドルフは混乱する。トレセン史上最高速度を持っていると感じている彼女以上に速い存在。そんな人物がいるのならばトレセン学園生徒会長としては知っておきたいと思うのがシンボリルドルフというウマ娘であった。

 

「それは非常に興味がある。名前を教えてもらえるかい?」

「いいけど……トレセン学園に引き込もうとしても無理だと思うわよ?」

「どういう意味だい?」

 

 おのが心中を当てられ、なおかつその目標を否定されても生徒会長たる彼女は動じなかった。そして冷静にスズカに続きを促す。

 

「だって()…………ウマ娘じゃないし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーくしょん!!うー、さむ!何だってんだ急に?」

 

 場所は離れてとある草原にて、一つの青い物体が寝っ転がってくしゃみをする。物体はサイズの大きい赤い靴に全体的に青みがかったハリネズミみたいな見た目で、目がやや軽そうな印象を見受けられる。

 

「んー!にしてもなんか懐かしい夢見たな?そういやアイツ急にトレセン学園行くとか言い出してたけど、どうしてんだろうなー」

「おーい!ソニックさーん!」

「んお?」

 

 そうぼやきながら雲を眺めていると遠くの方から声が聞こえてきた。振り返ると其処には前髪の中心部分が白いボブカットの純朴そうな見た目をした女子がいた。しかし何よりも目を引くのはその前髪の白い部分ではなく……

 

「おーう、スペ。また来たのか?」

 

 その頭頂部に生えたウマ耳だろう。

 

「はい!今日こそは絶対勝ちたくて一杯練習してきたんです!見ててくださいよー?」

「おうおう、分かった分かった。しっかし飽きねーなお前も。この前は結構早くぶっちぎったと思うんだが?」

 

 青い物体、ソニックはやや困惑気味に頬を掻く。しかしスペシャルウィーク、スぺは気にせずソニックに満面の笑みを向ける。

 

 

「でも、一緒に走れる相手がいるのが嬉しくって!それに、勝ってお母ちゃんを喜ばせたいですし」

「んーよっし、なら今日はどこをゴールに走る?俺としちゃどこでもいいがな?湖付近でも坂の上でもどこからでも行けるぜ?」

 

 ソニックは立ち上がって軽く体をほぐす。スぺはその様子を確認すると辺りを見渡して目印になりそうな場所を探す。

 

「それじゃあ……向かいの森の入り口までで!それじゃあよーい……ドn」

 

 スぺが出した合図と同時に爆風がスぺを襲う。その風に一拍遅れてスぺは横を見ると、そこには大きな靴底の後が地面に埋まっていた。

 

「おい、スぺ」

「うひゃあ!」

 

 背後から軽そうな声が聞こえる。振り返るとニヤニヤと笑みを浮かべながらソニックがこちらを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「モタモタしてると置いてくぜ?」




スぺちゃんとスズカさんの順応が早すぎるとか野暮な事言っちゃいけない













エアシャカールの実装まだ?

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