半ば冗談混じりにネタを混ぜ明るく朗らかに呼びかけてみたのだが……?
「…あれ?声が…男? おいおい珠世、お前さん400年も会わない内に気でも触れて性転換でもしたのか?」
応答に出たのが何故か男の声だったので俺は疑問に思いそう問いただす。
「そんな訳あるかッ!」
すると間髪入れず否定の言葉が返ってきた。もちろん男の声で…だ。
「言葉使いまで男だなんて徹底してるなぁ。俺は前の方が遥かに綺麗な声でよかったと思うんだが…勿体ねぇ」
「ふざけているのか貴様!?俺の声を珠世様と混同するなど耳が腐っているとしか思えんぞ!だが珠世様の声が綺麗だと称賛した事だけは褒めてやる!」
「おう、そうかそうか。そりゃありがとさん。で?お前さん誰?珠世を様付けで呼ぶなら下男か何かか?というか珠世を呼び出した筈なのに一体どういう事だ?」
一割ぐらい本気で性転換の可能性を疑い聞いたのだが即否定された。珠世を様付け呼びする事から本当に別人だったらしい。というかこいつの声…なんか聞き覚えがあるぞ。俺の記憶じゃない。分身のだ。…ああそうか分かった。確か珠世が旅の最中に医者として助けた奴の声だわこれ。病から
「ゆしどうふ!どうだ!当たってるだろう?!」
「なにがだ貴様!」
「いや、お前さんの名前」
「勝手に人の名を変えるな!俺の名は
「ああ、そうだそうだ。愈史郎だ。いや〜さっき整理した記憶だからまだ完全に把握してないんだよな。愈史郎な愈史郎。うん、スッキリした。あ、ちなみに"ゆしどうふ"って言うのは今から約500年前くらいに中国から南国琉球王朝に伝来した豆腐を琉球独自に発展させ創り出された豆腐の一種だぞ。とろりと柔らかく口あたりもなめらかで豊かな風味があり何も加えずそのまま食べても美味いし鰹だしや味噌を加え汁物として堪能するも良し。ご飯にぶっかけ
「そんな説明なぞ要らんわ!と言うか人の名を食い物の名に変えて呼んだのか貴様!?無礼にも程があるぞッ!!」
「すまんすまん。似てたんでついな。ちなみに元が大豆で栄養満点。お粥より食べやすいって人もいるから病人食としても優秀だと思うし珠世も気に入ると思うぞ?」
「……後で詳しく聞かせろ」
うむ。そう言ってくれると思っていたぞ愈史郎。いや!ゆっしー!珠世ファーストなお前なら確実にな!!
だんだんと愈史郎に関する記憶が掘り起こされてきたので、つい調子に乗ってからかっていたのだが…まあこれくらいにしておこうか。これ以上珠世を待たせるのは悪いしな。
ちなみにこの愈史郎は…人造人間である。分身の記憶によると元の身体は末期の肺癌で癌が身体の至る所に転移し過ぎて治療ポットでも治しきる前に死亡すると判断された為やむを得ず急遽ストックしていた人造人間体の予備を素体として使い延命したそうだ。…そう予備をだ。誰の予備だと思う?そう珠世のである。万が一を想定し用意していたものを流用したってわけだな。そして人造人間としての珠世の身体は元は縁壱氏の細胞を培養して創ったもの。つまり発する気も全く同じなのである。お互いある程度離れていれば区別できるが現在ドームハウスの中に居る二人の距離が近過ぎて珠世一人だと誤認してしまっていたらしい。具体的には…ほぼ密着?愈史郎的には至福だろうな。………ふっ、仕方ないよな〜来た以上は現状を打開しないといけないしぃぃ。ゆっしーよ、残念無念またいつの日か…があればよいね〜ぷぷぷっ! 人の恋路に首を突っ込まないのが不文律。だが生温かく見ぶゲフンゲフン!…見守るのはセーフ。なので俺はクールに振る舞うぜ!
「なあ、ゆっしー。珠世に代わってくれないか?ゆっしーの側に居るんだろ?」
「な!貴様!誰がゆっしーだ!勝手に変な渾名をつけるなッ!」
うーん、この打てば響く感じ。すごく…愉悦です!まるでウェイバーのようで楽ぁーのすぃー!の一言。アイツってば俺のボケに
「おい!聞いてるのか!?この!あ、…珠世…様。愈史郎代わって下さい。ゴーマさんお久しぶりです」
なんて事を懐かしく思い出し沈黙していると不満を爆発させ憤る愈史郎を押しのけ通信から珠世の声がするなり話しかけてきた。
なんか妙にゆっしーの声が途切れ途切れだったんだが? …ふ、青いな愈史郎。だから貴様は青いのだ!とでも言っておこうwww
「ああ、久しぶりだな珠世。400年ぶりの再会を喜び合いたい所ではあるが…あまり余裕はなさそうだな」
再会の挨拶もそこそこに俺は珠世の余裕のなさの原因を
「お察しいただきありがとうございます。遺憾ですが実のところ状況的に余裕があるとは言えません」
再会したばかりであるが現状その余力が珠世側に無いと理解できるので対処を優先し俺はストレートに本題を切り出す事にした。
「で?その随分と膨れているのが無惨…でいいのか?」
「見えているのですか?」
その場に居ないのに見えている…その事実に若干珠世は驚く。
「おう、そっちのスカウターに繋いで見えるようにしたからな」
なんの事はない。ただ珠世側のスカウターのカメラ機能を自身のスカウターにリンクさせ見えるようにしただけである。元々その機能を
「そうですか。現状を目視できるなら話は早いかと。早速ですが説明を始めますね」
珠世もそれで納得したらしい。いや、理解が及ぶと言った方が正しいか。そこら辺の理由は予想がつくのでいいかと俺は珠世の説明に耳を傾けるのであった。
「現状は見ての通りです。詳細は省きますが色々と手を尽くしゴーマさん案の最終手段を
珠世のスカウターから流れて来るLIVE映像に俺は内心なんだこの焦げピンク色の肉塊は…と呆れていたりする。なにしろ画面いっぱいに表示される光景がB級ホラー映画ばりに超グロテスクで気持ち悪い事この上ないものだったのだから。
視界を席巻するは肉肉肉&肉肉肉肉肉の壁。ウネウネと
見ているだけでSAN値がガリガリと削られていくぞ。どこのクトゥルフ神話生物だと言いたい。それを直近でまざまざと見せられ続けている珠世達にはご愁傷様と言うしかないな。
「さしずめ増殖して延命を図ったってところか」
「ええ、その通りです。ここまで無様な姿を晒してまで死を拒み遠ざける…本当に何処までも見下げ果てた男」
俺がそう呟くと即座に珠世が肯定した。ついでに悪足掻きを続ける無惨を無様だと酷評する。
なるほど生き汚いにも程があると珠世が散々言う訳だ。絶えず蠢き焼滅と再生を続ける
「珠世さん…話の腰を折るようで申し訳ないのだが少しいいだろうか?」
そんな愚痴とも言える珠世との会話が無惨への呆れで数泊途切れた時だった。いきなり通信に知らない男の声が聞こえたのは。
それは先んじて珠世のスカウターにリンク
「耀哉殿。ええ構いませんよ。ちょうど
珠世も知っている者らしく耀哉という名前らしい。
「そうでしたか。なら、お言葉に甘えて。お話の途中割り込んでしまい申し訳ありません。お初に御目に掛かりますゴーマ殿。私の名は産屋敷耀哉。鬼殺隊を率いる者…と言えば御分かりいただけるでしょうか」
その自己紹介を聞き分身から受け取った記憶にある年若い姿が脳裏に思い浮かぶ。
珠世と同盟を組んだ現産屋敷当主であり鬼殺隊を束ねる長。中学生になったばかりの少年といった年齢にも関わらずその所作は洗練され人を率いる者にありがちな周りを威圧する凄みを一切感じさせない穏やかな人物だったと記憶にある。だが俺は騙されない。あの凪いだ様に見える瞳の奥に宿るドス黒い炎…あれは誰かを心底憎悪する者の目だ。そう無惨という名の悪鬼を…。
同盟の際に聞いた産屋敷という一族の成り立ちは鬼舞辻無惨によって決定付けられたもの。元は同じ血族。故に呪われたのだとか。事の始まりは平安の世。ある時を境に一族に子が生まれても病弱で大半が死亡。成人であっても齢三十を迎える前に死ぬ者が続出した。いよいよ血脈が途絶えかけたとき神主より助言を受ける。同じ血筋から鬼が出ている。それを討つ事に心血を注げば一族は絶えないと。神事を執り行う神主の言葉だ真偽を確かめるべく調べれば無惨の存在が発覚し助言が真だと一族は信じた。それで代々神職の一族から妻を娶る事で血の穢れを薄めるやもとの助言もあり娶る事に。実際それで子の死亡率は低下し安堵する。だが、それでも一族の誰もが三十まで歳を数える事なく世を去るのは変わらない。なので以後、千年に渡り元凶の鬼である無惨を滅すべく邁進してきたという。その道のりは血と怨嗟が敷き詰められ怒りと悲しみで舗装し続けたもの…まさに呪いだ。
呪い…。実際それは間違いなくある。なにせ大本が人の持つ気だからだ。気当たり…それが呪いの正体だろう。死者の残した残留する負の気。言い換えるなら怨念とも穢れとでも分類されるそれは指向性を持つ。その矛先は負の感情を向けた個人もしくは属する集団。ひとつひとつは残滓ゆえに影響は薄い。だが数が揃えば生者へ悪影響を及ぼす。具体的には負の気が生者の持つ気を凌駕し身体を蝕み始めるのだ。気は命であり活力そのもの。それを阻害されれば体は弱り衰え病気にもなる。子供なら尚の事だ。だが負の気を身に浴びても微塵も影響を受けない者がいればどうなるだろうか?答えは…近しい者に行くだ。負の気は大半が対象にぶつかった時点で生者の気に相殺され霧散する。だが消滅しきれなかった一部は行き場を失い最終的に対象と同じ気を持つ者達の所へと向かう。それが産屋敷一族を千年苦しめてきた呪いの正体だ。
その仕組みを出会ったばかりの少年に話すのは流石に
「産屋敷少年といったな?」
「少年…はい。できれば耀哉とお呼び下さい」
「そうか。なら耀哉と呼ばせてもらおう。お前さん…無惨の無様な死を最っ高ぉに!楽しく見てみたくはないか?」
そう言葉を紡ぎ反応を伺うのであった……。
愉悦部!降オオオォォォォーーー臨イイイィィィィーーーーーンンンッ!!!
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