あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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気分が乗ったので投稿しちゃいます。


それでは……


本編どうぞ!




1-5 信じることは難しい

「木曾さん、あなた何をしたかわかっているのですか?」

 

「……ああ」

 

「流石に今回の件は木曾さんが悪いです。気持ちはわかりますが……殴り飛ばすのは無いかと」

 

「わ、わかっている」

 

「わかっているのであるならば何故殴り飛ばしたのか不思議なくらいですよ。どういたしましょうか……」

 

「大淀さん……今回は俺が悪い。あいつを故意に殴った訳じゃないが、手を上げたのは事実だからな。解体されるとしても俺は抵抗しないさ。ただ……美船元帥は怒るだろうな」

 

「う~ん……そんな結果にはならないと思いますよ?」

 

「な、何故だ?上司に対して……艦娘の俺が男のあいつに暴力を振るったんだぞ?俺を解体するに決まっているだろ!」

 

 

 木曾は自身の結末を予感していた。青年に対してとある事情があったにせよ、男性の顔面を殴り飛ばすと言う暴挙である。上司に対して艦娘しかも男性に危害を加えたのであるならば下手すれば軍法会議ものとなり、艦娘は人間に対して力を行使できない根底を覆す事案となってしまい、艦娘を危険視する輩が現れるかもしれない。そうなれば穏健派や美船元帥の立場が危うい。そうならない為にも木曾は自身の解体を望み、それがあたかも当たり前のように考えていたが、対し大淀の態度はそこまで危険性を含んではいなかった。

 

 

「何故でしょうか、なんとなくですが解体はされないと思いますよ?強いて言えばあの提督だから……でしょうか」

 

「……大淀さんはあいつのことをどう見えているんだ?」

 

「私は……見えていると言うよりも信じたいです。提督の優しさが本物でありますように……そうであってほしいと」

 

「そんなの……嘘だ」

 

「そう……かもしれません。でも……今はそう思いたいですね」

 

「……」

 

「……」

 

 

 信じたくない木曾と信じようとする大淀の間に沈黙が訪れる中、扉がノックされた。二人は誰が来たのか……想像はつく。

 

 

「俺だ。入るぞ」

 

 

 思った通りだった。扉が開かれ青年が叢雲を引き連れての登場だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、俺が何故ここを訪れたのか……理由はわかっているだろうな?」

 

「……ああ」

 

 

 部屋には青年と木曾が対峙する形となり、傍では叢雲と大淀が見守っている。布団の上で正座している木曾を青年が見下ろしているのだが、いつもは何かと敵視して睨みつけてくるはずの彼女が今日は大人しい。しかもいつもセーラー服を着用しているはずが、今はパジャマ姿である。

 

 

 流石に上司に対して暴力行為を反省しているみたいだな。しかしセーラー服ではないパジャマ姿の木曾は初めて見るな。ショートパンツとは……やるな。ショートパンツと太ももの組み合わせは最高だな!!……って違う違う!俺は()()を考え……じゃない。何を考えているんだ!?木曾のパジャマ姿を拝みに来たんじゃない!話し合い……そう、話し合いをしに来たんだ!!落ち着け俺の魚雷(息子)よ!!!

 

 

 ゴホンっと咳払いして要らぬ思考を元に戻したが、鼻血が出る一歩手前まで来ていたのは秘密であり、更には下半身の一部分に力がみなぎっていたことは絶対の秘密だ。

 

 

「単刀直入に聞こう……何故俺を殴った?」

 

「そ、それは……」

 

 

 木曾は口ごもる。「言える訳がないだろっ!?」と心の中で彼女は焦りを隠していた。

 

 

 女としてまだ枯れてはいなかった木曾の体は欲望を我慢できなかった。鎮めようにも港では人目についてしまうので自室へと戻ろうとしたが、運悪く青年達と遭遇し流れに流されてしまう。吹雪の決意を同じ艦娘として聞き入っていたかったが、それどころではなかった。今にも欲望が漏れ出てしまいそうで、話に集中できず限界に達した彼女はその場から逃げようとしたものの、青年が彼女の腕を掴む事態に陥った。混乱と発情で思考もパニックに陥り、咄嗟のことでぶん殴ってしまった……と説明できるわけがなかった。

 「あなたに発情してました」「恥ずかしかったので殴りました」なんて木曾の口から言えるはずがないのだ。そんなことが知られてしまえば羞恥心を通り越して轟沈する勢いだろう。現に今、木曾の顔は赤く染まり、体は熱を発しており、まともに青年を見ることができない。

 

 

 そして何よりパジャマ姿であることが結果だ。間に合わなかったとだけ言っておこう。いつものセーラー服は気を利かせてくれた鳳翔が洗濯している最中であろう。そのことを知られる訳にはいかないが、言い訳を考えようにも今の木曾の脳内では答えは出ない。代わりに気分はスッキリしたようだ……何がとは彼女の尊厳に関わるので秘密であるが、同時に今まで(つの)っていた男に対するストレスも一緒に抜け落ちたようだった。溜め込み過ぎるのはよくないということだが、青年は彼女の事情など知らない。しかし何かを隠しているのはわかる。

 

 

 なるほどな……病気ではなさそうか。心の問題……の可能性が高いな。昨日吹雪の件があったからそれかもしれない。心はデリケートなものだ。迂闊に距離を詰め過ぎれば、逆に追い詰める結果になってしまう。どんなに頑丈な体を持った屈強な人間でも心が壊れれば体など抜け殻だ。心と体が一つとなって強者と言えるようになる。こいつにはもっと俺の昇進の為に働いてもらわないと困る。手強いが、信頼を勝ち取りさえすれば、俺の勝ちだ。体も心も俺の為に尽くしてくれる傀儡になるだろう。クヒヒ♪その為にはアフターケアが肝心だな。

 

 

「……木曾、お前が言いたくないならばそれでいい」

 

「……」

 

「だがお前に言っておくことがある」

 

「……な、なんだ」

 

「お前は一人じゃない。人生良いことばかりではない。辛いことの方が多いかもしれないが、そんな時は一人で抱え込むな。悩みがあるなら相談に乗ってやる。俺が嫌ならば大淀達でもいい。女同士なら気兼ねなく話すことができるだろ?」

 

「……お前は俺を……お、女として見ているのか?」

 

「当たり前だろ。男には見えないな?お前は立派な女だ」

 

「そ、そうか……そうなのか……女として見ているのか……」

 

 

 俯き視線を合わせようとしない木曾の表情は青年からは見えないが、笑みを浮かべているように見えた。それは気のせいだったのだろうか?真相はわからない。

 

 

 こいつは何を言っている……ああ、そういうことか。艦娘共は人間とは違う過程で誕生する(建造される)が故に女の姿をしてもそう見られることはない。それに俺以外から見れば不細工だったな。女として扱われないのは当然か。前の俺ならそうだったろうが……

 

 

 チラリと盗み見るとやはり青年にとって木曾は美人な女性に映る。愉悦猫に感謝する……ことは青年的には屈辱なので感謝はしない。しかし見れば見るほど綺麗な体をしている。髪の艶、シミの無い整った顔、細身だがバランスが取れた体型、しかも普段なら俺っ子属性持ちである彼女は今はとても愛おしい姿に見えたのだ。

 男性に今まで女性として扱われてこなかった木曾。それは艦娘全員に言えることだ。醜い彼女達と美しい人間の女性と同等に扱われるなんて喧嘩を売るようなものだ。しかし本来ならば木曾も女として扱われたかった。女を捨てたと自身ではそう思っているが、本能はそうではない。女としての幸福を感じたいのだ。そして青年から「お前を女として見ている」と豪語されれば嬉しくない訳が無い。本能が高ぶりを表現するかのように木曾にニヤニヤと笑みを浮かべさせたのだ。自然と心と体も温かくなる……まるで温かさに包まれているかのようだ。

 

 

 人間は心を読めないのだから、木曾の心理状態など知らぬ存ぜぬの青年は見下ろす形で、彼女のショートパンツへと瞳が動き、ダイヤモンドと見間違えるかのような美しい太もも、素足なのがこれまたそそられる。その光景を脳内フォルダに永久保存する為に視線をロックオン。当然意図してやった行為ではない……欲望に忠実なのだ男と言う生き物は。

 

 

「……」

 

「ちょっと……あんたまた鼻血が出てるわよ?」

 

「……いいな」

 

「はっ?あんたホントに頭大丈夫……って、また意識どこかに逝ってるのね。世話の掛かるやつね……ちょっと!しっかりしなさいよ!!」

 

「――はっ!!?」

 

 

 傍に居た叢雲の喝に我を取り戻し鼻血を拭う青年。危うく太ももの魅力に飲まれてしまうところであった。

 

 

 あ、あぶねー!?くっ……太ももは卑怯だ!!普段のセーラー服なら見慣れているから理性が効いたが、パジャマ姿はダメだろ!?しかも部屋の中にいい香りが充満している……ヤバイ。早くここから出なければ……だから発射態勢に入るな俺の魚雷(息子)!!!

 

 

 部屋がいい香りに包まれているのは間に合わなかった欲望を隠す為の偽装工作であったのだが、青年に刺激を与えた……主に下半身に。一度は静まったが、再び膨らみつつある()()を悟られてはいけない。青年は踵を返して出て行こうとするが……一言伝えておかなければならない大事なことがあった。

 

 

「木曾」

 

「な、なんだ……」

 

「お前は俺にとって必要な存在なんだ(昇進の為に)だから解体とか考えていたんだろ?ふざけたことを抜かすな。最期の時までせいぜい俺の為に働きな」

 

「……」

 

 

 そそくさと部屋を後にする青年を追いかけ叢雲も共に去った。残されたのは大淀と木曾の二人だけとなったが、そこには安心感が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上司に対して艦娘が暴力を振るえば即解体事案なのに……あんたやっぱり変わっているわね」

 

「さっきも言ったろ。あいつは俺には必要な存在なんだよ(昇進の為に)それに誰だって間違いは起こす。そこから学んでくれれば何も言わねぇよ」

 

「……ふ~ん、まぁ、木曾が居れば戦闘も楽になるし、私は……その……彼女が解体されなくて良かったわよ。あんたが彼女を解体するんじゃないかって思っていたわ」

 

「これは心外な回答だな。俺はお前達の為に提督やってんだ(嘘)自分の為にやっているわけでは……いや、お前達の役に立ちたいのだから俺自身の為にもなっているわけだ。俺があいつを解体するなんてことは絶対にしない。俺が提督で良かったろ?」

 

「……ふん!まぁ……その……あ、あんたには私達の待遇を改善するって約束があるし、それをきっちりと守ってもらわないと私達が困るのよ。それに……あんたが提督でよかったわよ

 

「んぁ?何か言ったか?」

 

「な、何も言ってないわよ!さ、さぁ!わかったならさっさと業務に取り掛かるわよ」

 

「な、なに!?俺の息k……目覚めたばかりなんだ。少しぐらい一人で休ませてくれよ!?」

 

「ダメよ、まだ書類が残っているわ。それにまだこの鎮守府の問題を解決したわけじゃないから時間が惜しいのよ。それに私さっき言ったわよね?待遇を改善するって約束……守ってもらうわよ司令官♪」

 

「――くっ!?」

 

 

 執務室へと魚雷(息子)を鎮める為に避難しようとしていた青年だったが、悪戯が成功したように笑みを浮かべる叢雲から逃れられることはできなかった。何故なら今日は彼女が秘書艦であり、書類はまだ残って仕事はまだまだ先まで終わりは見えないようだ。そして青年はこのまま魚雷(息子)が自然と鎮まるまで叢雲に悟られないようにしないといけない試練が待ち受けているのであった。

 

 

 ★------------------★

 

 

「………………………………………………」

 

「………………」

 

「………………………………………………」

 

「木曾さん!!」

 

「――うわぁ!?」

 

 

 一体どれぐらい見つめていただろうか?扉を一心に見つめて放心していたのは一人の艦娘……木曾であった。

 

 

「び、びっくりさせないでくれよ……」

 

「先ほどから上の空なあなたが悪いです。提督に夢中になっていたのはわかりますが……」

 

「む、むむ……夢中!!?」

 

 

 俺がぁ!?あいつに夢中だって!!?冗談じゃないそんなことは!!!あいつはおかしな奴だ。頭でも狂っているのか俺のことを……お、女として見ているって言ったんだ。それは……ありえない。俺みたいなブスで好戦的な女なんか男なら誰だって嫌いはずだ。そんな俺を女……絶対にありえない!!ありえない……そうだ。ありえない……はずなんだ……っ!!

 

 

 木曾は自分のことを「女として見ている」と言った青年の言葉を信じたくなかった。軽視派と言う肩書きが青年のイメージ像を固定させている。実際に青年は木曾のことを女性として見ている。愉悦猫のせいであるが、美的感覚が変わったことで、下半身のついている()()が発射態勢に入ってしまう程に木曾の姿は性欲をそそられるのだ。当然木曾はそんなこと知らないし、知ったとしても信じないだろう。しかしそれでも青年の言葉を否定しようとすると心に()()が突き刺さった。その()()とは今の彼女には絶対にわからないだろう。

 

 

 俺は女を捨てた……と思っていた。なのにあいつは俺を女として見ているなんて……軽視派の人間なのにお人好し、口が悪い癖に心配しやがる……訳がわかんねぇよ。お、俺は……これからどうしたらいいんだ!?

 

 

 軽視派でありながら、傲慢な態度を見せぬ男の理解不能な行動の数々……悪事に一切手を染めている様子のない青年に戸惑いを隠せない。思考が混乱し、頭を抱えてうずくまる。自分はどうしたらいいのか、どうするべきなのか……今までこんなことはなかった。男は敵視していたが、青年のことをそう見えなくなってしまっていた。不知火の様子もおかしかったが、今なら理解できた。自分はあの青年によって狂わされそうになっていると言うことを。

 

 

「……木曾さん、今のあなたは混乱していると思います。私もここに来てから自分自身がおかしくなっているのではないか?っと思ってしまうことがあります。暖かい雰囲気に包まれた鎮守府、噂とはかけ離れた光景を何度も見せられました。そして私は一つのことを思いました。そのままでいいので聞いていただけませんか?」

 

「……」

 

 

 大淀の声に返答する気力は今はない。だが耳だけは彼女の言葉を聞き取ろうとしている。

 

 

「提督を……信じろとは言いません。彼が軽視派の影響を受けているのは間違いないことなのですから。ですが提督のことを他の男性と同じに見てはいけない……あなたが提督を信じなくても私は信じたいと思いました。彼の優しさが本物だと……信じたいのです」

 

「……」

 

「私からは以上です。すみません、今のは独り言だと思っていてください。しかし今回の件は美船元帥にもお耳に入れておかなければいけない事案なので報告させていただきます。提督に許しを貰ったことも含めて」

 

「……」

 

「それでは私はこれで」

 

 

 大淀は一礼して部屋を去った。ポツンと答えが見つからず残された木曾は何を思うのか?

 

 

 ……もし、もしも……その優しさが偽物だったらどうするつもりなんだよ大淀さん?裏切られるかもしれないんだぞ?俺達のことをゴミ以下にしか見ていなかったらどうするんだよ……

 

 

 人の内面なんてわからない。青年の姿が偽りであったなら……彼を信じようとする大淀の結末は何を残すのか。後に残るのは後悔だけではないのか?今までの木曾ならばそう断言していた。しかし今の彼女は違っていた。

 

 

『お前は俺にとって必要な存在なんだ』

 

 

 ……なんだよそれ……そんな言葉なんて出まかせに決まっているさ。そうさ……決まっていることさ……そんなのは出まかせだって……そうに決まっている……決まっているはずなんだ……

 

 

 結末なんてわからないが、青年の言葉を思い出せば……絶対だと断言できなくなっていた。

 

 

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