それでは……
本編どうぞ!
「艦娘集合!第一回、
ここは○○鎮守府A基地の大部屋、そこには艦娘達が集まっていた。
一つのテーブルを囲む艦娘達の視線を一点に集めるのは睦月である。いつもとは違う空気の中、一度はやってみたかったことがあった。それは女子会だ。
参加者を女性のみに限定することで、異性を意識することなく本音で話し、盛り上がれる機会として認知されている。そもそもこの鎮守府は青年以外艦娘と妖精だけなのだから女子会を開く必要があるのかと思うかもしれないが、やってみたかったのだから仕方のないことだと妥協しよう。以前までの鎮守府なら女子会など気軽にできなかったこともあり、気分が舞い上がって
「ちょい待ち!なんかおかしないか!?」
大部屋に集まった艦娘の一人が声を荒げた。
「およ?なんですかなんですか~龍驤さん?ご質問なら挙手をお願いするにゃ♪」
「おおそれはすまんかったな。ほな挙手っと……ってちゃうわ!!
「えっ?でも龍驤さん見た目は駆逐艦と変わらないですよね?色々と小さい……」
「吹雪……ちょっち屋上へ行こうやないか。久しぶりにキレてもうたで」
「い、今のはじょ、冗談です……だから拳を振り上げないでくださいぃ!!?」
一人だけ駆逐艦ではない艦娘が吹雪に恐ろしい形相で詰め寄っていた光景がそこにあった。言わずもがな龍驤であった。集められた理由は……吹雪が口に出してしまったので語る必要はないがそういうことである。小さいのだ……色々と。
吹雪と龍驤がもみ合っている光景を眺めていると自然と胸の内が温かくなっているような気がしたが、それはきっと錯覚ではないだろう。叢雲は呆れ、電は右往左往しているが、皆の心は温かくなっていることだろう。
「龍驤さん落ち着いてください。夜中なので煩くすれば司令に迷惑がかかります」
「提督から許可取ったんやろ?まぁそれでも煩くするのはアカンわな……って言うか女子会の為にわざわざ夜中にせんでも……」
「そうじゃないと雰囲気がでないの!睦月は夜中に集まってお菓子を摘まみ、飲み物を飲みながら語らいたかったのにゃ。雰囲気は大事!」
不知火も駆逐艦なので当然睦月に呼ばれこの場に居る。彼女は性格上こういったことは好きではないと周りから思われているのか美船元帥の下では呼ばれる機会がなく無縁だった。しかし真っ先に大部屋を訪れたのが彼女だった。本当は今回の女子会を最も楽しみにしていたのは不知火だったりする……彼女もやはり駆逐艦娘なのだ。
残念ながら大淀達にも声をかけてみたが断られてしまい、駆逐艦娘だけの女子会となった……約一名を除くが。ちなみに青年に女子会をやりたいから夜中煩くしないので起きていたいと申し出せば「ほどほどにしろよ」と許可してくれたことに睦月は感謝した。
女子会を今日実行に移そうとしたのは、明日は訓練も遠征も休みの日である為だ。青年も考えがあり、木曾の件もあって、艦娘達の精神的ストレスを溜めない方が良いと考えた。極度のストレスは戦力を大きく低下させる原因にもなり、健康状態や戦闘への集中力を失ってしまう。それは昇進の為の障害となるので、今回は特別に許可を出したのだ。昇進の為ならば艦娘の女子会まで利用しようとする青年は中々の悪のようだ。
青年の公認ならばと鳳翔と間宮の二人が気を利かせて用意してくれたお菓子とジュース類がテーブルにいくつも乗っている。いつもとは違う雰囲気の中こうして集まるのは初めてのことであり、吹雪達は興奮を隠しきれず、いつもよりもテンションが高い。
「それで?女子会をするって言っても何をするのよ?」
「第一回目だから特別なお話をするの。だから……第一回目の話題は睦月達を救ってくれた提督についてみんなで語り合うのにゃ!!」
「……あいつの話?」
青年のこととなると叢雲の眉がピクリと動いた。艤装が装着されていたのであるならばきっと頭の獣耳のような機械が反応していることだろう。他のメンバーもそれぞれ反応があり、興味を
睦月は第一回目は青年のことを話題にしようと決めていた。提督である青年のことを語り合えるなら誰もが楽しめると思ったからだ。
睦月達を地獄の底から救い上げたのは青年だ。前提督が居なくなったことで安堵できる状況ではなかったこの鎮守府にやってきたのはまたもや男性だった。彼女達は前提督から酷い扱いを受けていた為、初めは恐怖に怯えていたが、今では毎日楽しくて仕方ない。
朝昼晩三食お腹いっぱい食べることができる。艤装も修復され、戦闘に何の支障も生じことはない。温かい
平穏な日常を与えてくれた青年に、感謝してもし足りないくらいだ。それに醜い艦娘相手に男性でありながら話しかけても嫌悪感を見せずに対応してくれる。ちゃんと健康面についても考えてくれ、自由時間も与えてくれる。月月火水木金金の日々は過去のもの、今ではちゃんと休みがある。
暴力は
「夕立乗ったっぽい!提督さんのお話したいっぽい!!」
「電もあの……提督さんのお話を皆さんと一緒にしたいのです」
「僕も賛成だよ。ふふ、どんなお話をしようかな♪」
「ふん!なんであいつの話なんか……ま、まぁ折角睦月が開いてくれた女子会だから……付き合ってあげるけどね。あ"っ、勘違いしないでよ!仕方なく付き合ってあげるだけなんだからね!!」
「司令の話ですか……どんな話をすればいいのでしょうか。話題が多すぎますね」
「せやな、話題があり過ぎて困るっちゅうか……不思議な若者やな」
「だから今日はみんなでお菓子とジュースを楽しみながら提督のことをいっぱい、い~~~~っぱい!!お話するにゃしぃ!!」
不知火と龍驤もこの話題には食いついていた。今は青年が軽視派であることなど忘れてこうした雰囲気の中で女子会を楽しみたいのだ。現に不知火は真っ先にここへとやってきたのだから。
「(司令官、睦月ちゃんが言うように私達を救ってくれた人。初めは見た目もちょっと怖かったけど、本当はとても優しい人で、私……ううん、私達にとって大切な人……)」
そんな中で、吹雪は一人青年への思いに浸っているとまるでお酒に酔ってしまったかのように、ほんのりと頬が赤色に染まる。体も温もりに包まれているかのような安らぎを感じる……不思議だ。
「それじゃ初めは……吹雪ちゃん!トップバッター任せたのにゃ♪」
「いきなり!?ええっと……ゴホン、司令官って私達のこと……どう思っているのかな?」
「「「「「……」」」」」
話題を振られた吹雪が答えた言葉に全員が黙り込んでしまった。醜いはずの自分達に優しくしてくれる青年に対して思うことはそれぞれ違いはあるだろうが、青年の方は自分達のことをどう思ってくれているのだろうか……気にならない訳が無い。
艦娘は人の形をしていようとも異なる存在であることは間違いない。歴戦の艦船に魂が宿った人型とも受け止めることができるが、人間ではない。
深海棲艦が海に現れた頃、現代武器では歯が立たずに一方的に蹂躙され続けていた。このままでは世界は深海棲艦に駆逐されてしまうと人間達は思ったことだ。しかしその時、深海棲艦と唯一戦える存在が現れ、自分達の危機を救ってくれた艦娘達は人類にとって
全ての人間がそうではない……美船元帥のような艦娘と心を通わせ、共に道を歩もうとする人間もいるのは事実であるが、現実は甘くはなかった。仕事として表面上の付き合いだけしていればいいと考えるのが常識だ。例え軽視派の人間でなくとも艦娘と触れ合いたいと思う者はいないだろうし、好意を持たれるなんてもってのほか。美人揃いのこの世界で醜い彼女達の居場所はなかった。
しかし吹雪達は違った。前提督によって心身ともに疲労していた吹雪達を地獄の底から救い上げただけではない。それだけにとどまらず日常生活の中で艦娘である自分達と接して、同じテーブルで共に食事をしたり、受け答えする時も目をちゃんと見てくれる。艦娘とまともに話すこともせず、伝達も艦娘任せの連中が多い中で、青年だけはわざわざ用があれば本人に直接会いに来てくれたこともあった。艦娘一人一人の為に有意義な時間を消費してまで会いに来てくれるのだ。作戦も独自で決定せず、全員の意見を取り入れてくれる……その姿こそ艦娘が求めた提督だった。
今まで前提督から受けた扱いは酷いものだと理解している。今では毎日が幸せに包まれていて雲泥の差と感じてしまう程に。食生活や健康状態、睡眠時間に精神的なストレスまで管理してくれるのだ。だからこそ青年は醜い自分達にそこまで親身になってくれるのか疑問だった。青年は自分達のことをどう思ってくれているのか……気になる。吹雪を含めこの場にいる艦娘達が様々な理由を思い思いに口にする。
「……電達のことを信じてくれているから……ではないのですか?」
「なんだろう……僕もそうだと思うけど、なんだか不思議とそれだけじゃない気がするんだ。それに提督ってよくわからないところがあるよね?僕達と初めて会った時、叢雲を見て鼻血を出していたね。なんでだろう?」
「そうね……なんで私なんか見て鼻血を出したのかしら?見ても醜いだけなのに……あいつの頭の中、本当にネジが数本抜けているんじゃないかしら?」
「……もしかしたら叢雲のこと性的に見てたんとちゃうか?それで興奮したとかあるかもしれんで?」
「せ、性的に!!?あ、ありえない……絶対にありえないことよ!!!わ、私を見て興奮するとか……どんな変態なのよ!!?」
龍驤の説は正しいのだが、醜い容姿をしている艦娘相手に欲情するなどありえない……そう思うのが普通であるが、叢雲は口角が吊り上がっていた。青年が不細工好きのB専だったとしたらと思うと……ちょっと嬉しかったりする。
「叢雲さん、顔がニヤついているのです」
「ばっ、ばっかじゃないの!?そ、そんなわけあるわけないでしょう!!?」
「僕も見た。ニヤついてたね」
「睦月も見た。良い笑みだったのにゃ♪」
「確かに見ました。不知火の目に狂いはありません」
「――くっ!?」
電達にいじられて顔を赤色に染まる叢雲であった。その光景を見ていた夕立がふと思い出した。
「そういえば吹雪ちゃんも会った時、提督さんが鼻血出していたっぽいよね?」
「うん、でもどうしてだろう……?」
吹雪は青年と会った時のことを思い出す。
「(司令官と初めて会った時も挨拶しただけなのに鼻血を出してそのまま気を失ってしまいました。今思えば司令官とは衝撃的な出会いでした。でも叢雲ちゃんが言うように私なんかを見て鼻血を……もしかして私で興奮したとか?艦娘の私や叢雲ちゃんに対してそんなことあるわけがありません……けど……そうであってほしいなぁ。もし司令官に女性として見られたらどうなるのかな?もしそうだったとしたら司令官と一緒にお買い物したり、一緒にどこか遊びに行って、公園でお話してそれから……)」
『「吹雪、俺の女になってくれ」』
『「し、司令官……そ、それはだめですぅ!私みたいな可愛くないのが司令官の傍にいるだなんて……」』
『「いや、俺はお前がいいんだ。他の誰でもない吹雪がいい。お前がほしいんだ!!」』
『「し、司令官……で、でも……」』
『「ええい!つべこべ言わず俺の女になれ吹雪!!お前は俺のものだ!!!」』
『「司令官……はいっ❤」』
モヤモヤと吹雪の中で妄想が捗っていく。その過程で普段とはかけ離れた青年の姿が映し出されるがそれは吹雪の脳内なので悪しからず。
初めは軽めのスキンシップから徐々に過度に触れ合う場面が繰り広げられてセクハラ行為にも等しいが、妄想なので法律にも触れることもなく憲兵もいないことで、欲望丸出しの過激なものへと変わりはて……
「ふぇ……ふぇへへへ……そ、そんな司令官……そこはだめれすぅ♪」
「ふ、吹雪さんがおかしいのです……!」
「吹雪ちゃん気持ち悪いのにゃ……」
「ちょ、ちょっとどうしたのよ吹雪?涎なんか垂らして……そんなだらしない顔を晒さないでくれるかしら?正直引くわ」
「ふへへへへへへ♪」
「アカン……なんや妄想の世界に囚われてしもうとるで」
電と睦月に叢雲だけでなく、他のメンバーもとろけた表情を晒してだらしなく涎を垂らす吹雪に引いてしまう。でも仕方ないことだ。女であるならば男と恋仲になってイチャイチャラブラブしたい衝動に駆られるのは定められた本能である。駆逐艦だと侮るなかれ……欲望に大人も子供も関係ないのだ。
「吹雪は置いておいて、僕達のことを提督がどう思っているかなんだけど……嫌ってはいないと思うね。叢雲もそう思わないかい?」
「まぁ……目が合って罵倒が飛んでくることはないけど、そもそも私達って好かれているのかしら?あ゙っ、違うわよ!?べ、別に好かれていないんじゃないかって不安とかそんなこと思ってないんだからね!!」
「はいはい、そういうことにしておくにゃしぃ」
「睦月あんたねぇ!!」
「およ?およよ?どうしましたどうしました~?またまた顔が真っ赤ですよ~いひひっ♪」
「きぃいいいいいいいいいい!!!」
それからと言うもの、様々な意見が飛び交った。しかし誰もが青年の美的感覚が
「第一回、駆逐艦だけのドキドキ女子会の結果発表の時間にゃしぃ!提督は睦月達のことをどう思っているのか……答えは決まらなかったけど、睦月達は幸せ者なのは間違いないのにゃ♪」
「そうなのです。電達は幸せなのです。司令官さんが来てくれてみんな笑顔になれたのです」
「提督さんの為に夕立頑張れるっぽい」
「僕も提督の為なら命をかけるよ」
「ダメだよ時雨ちゃん!司令官は誰も轟沈させないって約束してくれたんだから私達も約束を守らないと!」
「……ふん、まぁ……待遇改善も約束しているから仕方なく付き合ってあげるわよ。だけど、妙なことをするつもりなら蹴っ飛ばして出て行ってもらえばいいものね」
吹雪達は答えを見つけられなかったが、笑顔はこれから先も絶えることはないだろう。
「司令は変わり者ですが……不知火をお姫様d……ゴホン!介抱してくださいました。恩を仇で返すことは致しません」
「(不知火も木曾もあの若者に飲まれたようやな。今のところ悪事に手を染めている様子もなさそうやし、妖精も懐いとる。そればかりかウチが訓練を指導していた時やって来たことがあったな。その時にお礼を言われてもうたし……あれは不意打ちやったで。はぁ……変な感じやわ。これじゃ美船とおる時と変わらんやん……まぁ、嫌ではあらへんし、ウチもしばらくはこの雰囲気に飲まれとこか)」
不知火も龍驤にも笑顔が浮かび上がっているのは青年のおかげであることに間違いはなかった。
「……それで?確かに俺が許可を出したわけだが……ほどほどにしろよと言ったよな?この有様はなんだ?」
「「「「「す、すみませんでした(っぽい)(なのです)(にゃしぃ)」」」」」
いつまで経っても姿が見えぬ吹雪達の様子を確認しにやってきた青年は大部屋に無残な姿を晒すお菓子の食べかすや中身が床にこぼれたジュースの数々を見てしまう。それだけではない……床でだらしない格好でぐっすりと眠りこけていた吹雪達。テンションが高揚しきった彼女達は夜通しで羽目を外して大はしゃぎしてしまい、休みの日ではあるが、青年にあまりにもだらしなさすぎると説教されることになった。ちなみに不知火と龍驤は大淀達にも説教をくらったとさ。