それでは……
本編どうぞ!
「まさか建造していたなんてね……私達も呼びなさいよ」
「興味あったのか?まぁ、例えそれでも朝早くからの建造だったからな。昨日の出撃もあって疲れがまだ残っているお前達を起こすことはしなかっただろう。ぐっすり眠って元気になってもらいたかったからよ(疲労状態では戦いにならないだろうが!)」
「そ、そうなの……ふん、まぁいいわ。戦力が増えるのは私としても嬉しいもの。べ、別にあんたには感謝なんかしてないから!」
いつもの食堂に集まるのは吹雪達、それに大淀達も含まれているが、建造され新しく仲間達も加わっており、熊野を含めた四人の紹介を朝食ついでに済ませたところだ。初めての対面で、一際注目された艦娘島風。おぞましく見えるその姿に艦娘全員が唖然としていたことだ。龍驤に「あれを見ても大丈夫なん?」と青年は聞かれても「大丈夫だ」と答えれば全員大層驚いていた。青年はここに至るまでに何度もシミュレーションとの戦いで敗北しているのだが……そのことはなかったことになった。敗北を隠ぺいするなど……流石ずるい奴だ。
大淀も島風には興味を示していた。なんでも島風自体建造されたのが初だと言うことだ。今まで大本営にはそんな報告は届いていない……いや、建造されていたとしてもこのような醜悪な姿を他の提督が見れば即解体されていることだろう。醜い艦娘がより醜さを際立たせる格好をしているのだから。電なんかは顔を真っ赤にして「はわわわ!?」と狼狽えていたし、睦月も「痴女だにゃ」とボソリと呟いていた。それほど島風の恰好は刺激が強すぎる……悪い意味で。そう言う意味では青年に建造されたことが何よりの幸福だったと言えるだろう。初の建造で一度も失敗せずに、前例のない駆逐艦娘を建造したことに吹雪は「流石司令官です!」とキラキラした目で尊敬の眼差しを送っていた。
「ゴホン、これで役割分担が少しマシになるはずだ。それと吹雪を旗艦にした第一艦隊には熊野を入れようと思う。そして新しく第三艦隊を作る。旗艦を青葉とし、那珂と島風をそこへ入れる。しかしお前達は建造したばかりで素人同然。しばらくは交代で第一艦隊と第二艦隊に編入し、訓練を受けながらここのルールを覚えてもらう」
青年は次々と今後の予定を説明していき、それを聞いている間は皆、真剣な表情であった。
「そして、近々深海棲艦共から海域の制海権を奪い返す。それに向けての下積みだ……お前達には期待している。だが、絶対に轟沈は許さない。お前達はここへ帰って来い。それが使命があり、義務である。命あればこそ次があるんだ。勝手に沈むことは期待を裏切ることだと思え。俺の下で働き、生きていけ。お前達は俺の
「「「「「了解」」」」」
「(クヒヒ♪それなりにいいことを言っておけば簡単に従ってくれやがって……
深海棲艦撃滅の下準備が始まった。海域の制海権を取り戻すまでそう遠くはならなさそうだ。
そしてあっという間に過ぎていき、深海棲艦を撃滅の時が来た。
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「吹雪ちゃん第一艦隊が敵艦発見しました。時雨ちゃん第二艦隊はいつでも動けるように待機しています」
「第三艦隊の様子はどうだ?」
「青葉さん達も吹雪ちゃん達の支援に回ってもらっています」
「そうか、ならばいい」
遂に深海棲艦を撃滅する時が来たぜ。ここは俺の海域だから出て行ってもらう……いや、沈んでもらうぜ。俺の昇進の為に踏み台になれ。そして徹底的に潰して誰の海域に土足で踏み入ったか後悔させてやる!
司令部は緊張感に包まれている。この場にいる大淀は勿論のこと、青年ですらこの緊張感は隠しきれない……出撃した吹雪達にも緊張の色が現れていた。鎮守府近隣海域の制海権を取り戻すと言う重要な任務なのだから。
新たな仲間である熊野は第一艦隊、青葉を旗艦とし、那珂と島風を第三艦隊として結成した。
事あるごとに男性であっても暴力も罵倒すら手にかけない青年に気を良くしたのか、先回りして色々と根掘り葉掘り追求してきたことがあった。青年は妖精達の視線を気にして愛想よく振舞ったが、実は内心ウザいと思っていたりした。しかしこの青葉の行動力が青年の考えを改めた。
行動力、洞察力、何よりも情報収集にたけている。それを戦場で活かせばいいのではないか?そう思い、旗艦を任せたところこれが中々の戦果を生んだ。他の艦娘では気づけない事細かいところまで見ており、状況判断が優れていた。幸運に恵まれており、青年が艦娘同士の演習訓練では何度も攻撃が当たったり、夜戦を想定しての訓練でも成果を見せている。想定外の収集であった。那珂も艦隊のアイドルと自称しているが、戦闘になればやはり艦娘だと言うことを思い知らされた。弱音を吐いたりするが、確実に少しずつであるが皆の力になろうと食らいついて来る。醜い艦娘だとしてもアイドルと自ら主張するその根性は中々のものだ。島風に関してはやはりと言うべきであった。速度を活かした戦場をかける姿は彼女にしかできない芸当だ。そして熊野はと言うと……昼間の戦闘訓練は問題ないのだが、夜戦を想定した訓練での奇声が青年の笑いのツボを刺激して肩を震わせていたと言うことがあったとか。
四人共この鎮守府には既に馴染むことができていた。もう少し時間がかかるかと思ったが、すぐに打ち解け、何よりもラッキーなことに男性の提督でしかも醜い自分達に対して気にかけてくれる青年が居たことで彼女達はここが好きになり、何より嬉しかった。そして戦場へと赴いている熊野達は奮起していることだろう。
自分の容姿が生まれながら醜いと理解しており、艦娘達は拒まれるのではないかと言う不安は誰しもが持っていることだ。だからこそ、提督の為に国の為にと戦場へと赴き、深海棲艦をやっつけて活躍し、認めてもらおうとするのだ。しかし青年はそんなことなど知らずに妖精達の目を気にして愛想よく振舞った結果、彼女達にとっての理想の提督を見つけることができた。
食事、健康管理、休暇、労いの言葉、褒美、ちょっと怖いがイケメン提督。彼女達艦娘にとってこれほどの優良物件は無い……いや、絶対に無いと断言できる。誰もが羨む立場に居る熊野達、青年に建造された彼女達は鼻が高いだろう。熊野達が青年に懐くことに時間はかからなかったが、彼が軽視派だと言うことは知らない。知ったとしても「そんなことありえない!」と反論してくれるだろう。吹雪達と同じように青年に信頼を寄せている。これにより青年を守る盾が増えたことになり、内心ほくそ笑んでいた。
クヒヒ♪順調に駒が増えて、このままの調子でいけば深海棲艦を撃滅も間近だな……いや、油断するな俺。吹雪に油断するなと言っておいて俺の傲慢で誰かが沈めばどうなる?士気は低下し、後にズルズルと引っ張ってしまうことになりかねないからな。傲慢せずに、状況を冷静に判断する必要がある。吹雪、時雨、青葉の艦隊がどれか一つでも危なくなれば最悪この作戦は中止せねばならない。負けても生きていればチャンスは巡って来る……例え屈辱の歴史を辿ることになっても、生きていればやり直せる。折角手に入れた駒をみすみす捨てるような真似は避けねばならない……俺があいつらの引き際を見定めてやらねぇとな!
「敵増援を発見したようです。吹雪ちゃん達の背後に回ろうとしているみたいです」
「よし、近くにいる時雨達に向かわせろ。奴ら背後を取ろうとしたんだ。背後を取られても文句言えまい。敵さんを驚かせてやれ」
青年の指示を大淀は的確に伝えている。報告によれば敵の数は相手の方が上だが、こちらの士気は上々で敵の数は確実に減っているとのことだ。このままいけば間違いなく我々の勝利だが……はたして?
「入電です提督。新たな敵増援を確認……重巡リ級の姿もあるとのことです」
遂に来たか。決着を付ける時だな……しっかりやれよお前ら。やってくれよ?やってもらわねぇと俺は困るんだぞ?絶対だぞ!!俺の未来がかかっているからな!!!
艦娘達は提督の為、未来の為に深海棲艦から海域の制海権を取り戻すことができるのか?!
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「沈みなさい!」
「弱すぎるッ!」
叢雲と木曾の雷撃により敵艦が次々と沈んでいく。周りに居た深海棲艦は全て蹴散らしたようで、日が沈みつつあった。
「もうちょっち活躍したかったけどウチの出番はここまでやな。……ん?あれは……来よったで」
「龍驤さんそれって!」
「重巡リ級や。このタイミングで登場かいな。空母を警戒しての可能性もあるな。皆に負担掛けてしまうのは悔しいでぇ……」
「気にすることありませんわよ。後はこの熊野に任せてください。敵なんてわたくしの砲撃で黙らせてやりますわ!」
「頼んだで熊野、ウチの代わりにドカンとやっつけたってな!!」
「龍驤さんのことは青葉達にお任せください。行きましょうか」
「那珂ちゃんのエスコートお願いね♪」
「エスコートされんのウチやで?」
「みんなおっそーいー!」
龍驤が発見したのは例の重巡リ級。しかし龍驤が戦えるのはここまで……力になれず悔しさが現れるが、以前とは異なっている。熊野が新しく加わり、重巡洋艦娘が一人増えるだけでも心強かった。彼女が居るかいないかで状況は大きく変わることになるだろう。
戦えなくなった龍驤は前線を退く。護衛は青葉達第三艦隊が受け持ち、警戒を怠らない。だから龍驤の心配は不要だと思っていい。吹雪達が集中するべき敵は徐々にこちらに向かって来ていた。
「みんな、準備はいい?」
「ここからが、私の本番なのよ!」
「本当の戦闘ってヤツを、教えてやるよ」
「一捻りで黙らせてやりますわ!」
「それじゃ……行くよ!!」
第一艦隊は深海棲艦と対峙した。この勝敗により○○鎮守府A基地の未来が変わる……
「残念だったね」
「これでど~お!?」
「命中させちゃいます!」
「主砲も魚雷もあるんだよっ!」
「弱いのね」
時雨達も次から次へと敵艦を沈めていく。『期待』と言う心の支えから気分は高揚し、士気の高さ故なのか疲労感を感じさせず、深海棲艦の砲撃を受けても最小限の損傷で済ませていく。それでも小破状態にまで追い込まれてしまった。しかし闘志は消えることはなかった。
「状況を確認するよ……みんな大丈夫?」
「夕立問題ないっぽい!」
「電も大丈夫なのです」
「睦月、絶好調なのにゃ♪」
「不知火も少々のダメージですが、何の問題ありません」
「うん、僕も大丈夫っと……やっぱり提督のおかげかな?僕たちがここまで力を出せたのは?」
時雨達は遠征をメインにしたメンバーである為に吹雪達第一艦隊よりも控えめだ。しかし今回は鎮守府近隣海域の制海権を取り戻すと言う重要な局面であるので、時雨達も本格的に出撃した。出撃前に青年から「時雨、夕立、電、睦月、不知火も頼んだぞ」と言葉を頂戴した。一人ずつわざわざ名前を呼んでくれた。そこからは燃え上がるように出撃したのを憶えている……青年が○○鎮守府A基地の提督になってからというもの、期待を背に戦うとはこんなにも気持ちの良いものなのだなっと彼女達は知った。不知火ですら、いつもと変わらぬ態度であるが、心は闘志の炎を燃やしている程であった。
「もう弾薬がないや。燃料もこれ以上は持ちそうにないね」
「もっと提督さんの為に戦いたかった……っぽい」
「こればかりは仕方がないのです」
「みんな頑張ったのにゃ!」
「敵影も確認できません。後は吹雪達に任せるしかありませんね」
「そうだね。僕達は撤退するよ」
「「「「了解!」」」」
吹雪達も今頃戦っていることだろう……青年の為に。○○鎮守府A基地は変わった。環境だけでなく、艦娘達の心まで改変してしまった彼の為ならばどんなことだってやれる……やってやると思える程に地獄の日々を送っていた彼女達は強くなった。その地獄の日々を送ったからこそ彼に会えたのだと思うと皮肉なことだが、それでよかったと思えた。しかし彼に会うことが出来ずに沈んでしまった仲間達のことを思うと悲しみが湧き上がる。もっと早く出会えていたら今頃は……だがもう過ぎてしまったことだ。だからこそ、時雨達は戦う……幸せを与えてくれた青年の為にと。
「にひひっ、あなたって、遅いのね!」
「いつもありがとー!那珂ちゃんからのプレゼントだよ♪」
龍驤を回収し終えた第三艦隊。その間も敵は攻撃の手を休めることはない。しかし迎え撃つのは駆逐艦最速の島風。相手がイ級程度では彼女の速さに翻弄されていた。その隙を那珂が仕留めていく。
「やるやないか。建造されてからそれほど経ってへんのに大活躍やな」
「なんででしょうかね?青葉、司令官に褒められるとやる気が出るんですよ!」
「(それは全員同じ感想やて。でも提督に褒められること自体稀なのに……不細工なウチらに対してあの笑顔はホンマせこいわ。軽視派の人間であること時々忘れてしまうぐらいに気分が良くなってしまうのも無理ない。提督と艦娘との絆が強さに繋がるんや。美船の為と思うとウチだってやる気が出るからな。吹雪達も時雨達もどんどん強なっとる。このままやとウチの出番が奪われてしまうかもしれへん……面白いやないか!これはウチもうかうかしてられへんな!)」
長者である龍驤は静かに笑った。まるで美船元帥の下で競い合う仲間達と居るような感覚を覚える。絆とは不思議なものだ……艦娘達に力を与えてくれる。妖精だけでなく、提督を信じる艦娘達は強い。吹雪達や時雨達、青葉達の活躍を見せられて龍驤はそう思った。
「やったやった!那珂ちゃん大活躍♪」
「私も連装砲ちゃんも一番だね♪」
「お疲れ様ですー!後は吹雪さん達ですね」
「大丈夫や。熊野もいるし、今の吹雪達は闘志に燃えとる。それに絶対負けられへん理由があるしな」
龍驤は○○鎮守府A基地が存在する方へと視線を向け、そっと呟いた。
「や、やだ……ありえない……でも、私はまだ戦えるのよ!!」
「あうっ!で、でも、私だって司令官の為にも負けられないんだから!!!」
叢雲が中破、吹雪も小破した。しかしそれでも止まらない……熊野の砲撃により重巡リ級も中破し、木曾の活躍で他の深海棲艦は全滅。戦局は吹雪達に傾いている。そして叢雲と吹雪の魚雷が発射された。
「いっけー!!」
「沈みなさい!!」
咆哮が夜の海に響く。二人が放った魚雷は見事にリ級へと吸い込まれるように着弾し、恨みの念を漏らしながらリ級は海底へと沈んだ。
「や、やりましたぁ!」
海域の制海権を取り戻した瞬間であった。
それから出撃していた艦隊全てが○○鎮守府A基地へと帰投した。港にはボロボロになった吹雪達の姿があり、先に帰投した時雨達、青葉達も整列しており、大淀達も揃っている。全員の視線は出迎えてくれた青年へと向けられる。太陽が沈み、星々と暗闇が支配する空の下。鎮守府から放たれる光に照らし出される帰投した彼女達の顔はとても凛々しく誇らしげだった。
「お前達よくやった。よくやったぜ!これで制海権を取り戻すことに成功した。立派に戦い、そして誰一人として欠けることなく戻ってきたことに俺は誇らしいぞ!」
青年の言葉を聞いている者の中には薄っすらと涙を流す者も居た。艦娘としてこれほど誇らしい言葉を送られたことに感極まっていることだろう。
青年は吹雪、叢雲、木曾、熊野、龍驤と一人一人の名前を告げていく。醜い彼女達と接触を避けていたことで名前を憶えていない提督は大勢いる中で、青年は誰一人として欠けることなく憶えていた。初めから全員の名前を憶えていたのは前世の記憶のおかげなのだが、例えそれがなくとも青年は名前を記憶していただろう。
青年曰く「アレやコレじゃ伝わるものも正しく伝わらねぇだろ。伝達に不備が生まれ、いちいち面倒だろ?それにそれが原因で敗北したらどうする!!」と考えていたりするが、今はどうでもいいことだ。彼女達にとって提督に個々の存在を認識されることがどれほどの価値を持つだろうか。理不尽な世界に誕生し、人々や国の為にと戦っても相手にしてもらえず嫌悪感を向けられることがどれほど辛いものか……しかしここにそんなものは存在しない。青年が居る限り。
「負傷した奴は入渠ドックへ行け。のんびりと浸かるも良し、修復材を自由に使え。報告書なんて後回しで構わないが、最後に言っておくことがある」
「お前達が
「「「「「――はっ!了解しました!!!」」」」」
青年は返事に満足したのか意気揚々と鎮守府へと戻って行く。その後すぐに歓声が港を支配した。
「(これで昇進への道が近づいた!クヒヒヒヒ♪やればできるじゃねぇか。これからも頼んだぜ……昇進の為に使われる駒にされているとも知らずにな♪)」
青年はそう言いつつも、全員に労いの言葉をかけることを忘れなかったのは「