あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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お待たせして申し訳ございません。何とか時間を見つけての投稿となります。


「あらすじ」
上司に呼び出されストレスがマッハの青年、しかし新たな問題が発生!何が起こったと言うのか!?


それでは……


本編どうぞ!




2-4 緊急事態発生

 鎮守府内に響くサイレン……それは敵襲を知らせるものであった。

 

 

 突如のことで鈴谷達は動揺していたが一人の声が響いた。それを発したのは若き男性提督……青年だ。「しっかりしろ!司令部はどこにあるんだ!?」と青年の必死な態度に動揺していた彼女達は冷静さを取り戻し、彼を連れて駆け出した。急いで一同は司令部へと到着すればそこには一人の艦娘がいた。

 

 

「みんな!?て、ていと……誰!?」

 

「俺は外道だ。別の鎮守府で提督をやっている。お前は夕張だな?」

 

「えっ?ど、どうして私の名前を……」

 

 

 司令部にいた艦娘とは夕張型の1番艦である夕張、彼女は 兵装をどれだけ効率的に載せられるかを実験してみた艦という珍しいタイプである。しかし豚野提督からは性能が劣っている軽巡洋艦と認識されており、自身の良さを知って貰おうとした夕張の主張により、工廠を任されることになったはいいが、駆逐艦の子達の艤装は直す必要もないとされ放置、建造と装備開発のみを請け負うことになった。建造する度に新たな犠牲者が生まれる苦しみを我慢するしかなく、装備開発に失敗すれば罰が与えられた。第一艦隊とは違い、裏方仕事をさせられる彼女には更なる仕事を押し付けられた。司令部での入電対応をさせられる羽目になり、工廠での仕事と司令部での対応を一人で両方こなさなければならなくなり、睡眠時間も僅かなものとなって目の下のくっきりとしたくまが彼女の疲労度を物語っていた。

 度重なる疲労で意識が朦朧とする中、一通の報が届く。無数の深海棲艦が鎮守府へ向かって移動しているとの報だ。それは遠征に向かっていた駆逐艦の子が知らせてくれたものであった。それを聞いた夕張の意識はハッキリと危機感を憶え、すぐさま駆逐艦の子達に安全を優先して帰投するよう呼びかけたが砲撃の音と悲鳴を最後に通信が途切れてしまう。

 

 

 顔を真っ青にする夕張……だが今はこの鎮守府に敵が向かっているとことを知らせなくてはならない。駆逐艦の子達の無事を祈りつつ、緊急事態を知らせるサイレンを鳴らして今に至る。しかし急いでやってきたのだろう鈴谷達とは別に知らない男性が居たことに驚いてしまった。本人曰く別の鎮守府の提督らしいが、何故自分の名前を知っているのか不思議だった。建造されてから一度も豚野提督から名前を呼ばれて貰ったことはなかったのだから。

 

 

「そんなことは後でいい!それよりも状況はどうなっている?」

 

「えっ、えっと……」

 

 

 夕張はどうしたらいいのか悩んでいると内線電話が鳴った。この場にいる青年を除く全員がビクリと震え、血の気が引いている様子である。恐る恐る夕張が受話器を取れば向こう側から怒鳴り声が聞こえて来る。豚野提督の声だった。その声の質から焦っている様子が伝わって来る。それにも屈しずに駆逐艦の子が知らせてくれた内容を説明すれば更に怒鳴り声が強くなった。「早く第一艦隊のグズ共に撃退させろ!!」とハッキリと聞こえて来る始末である。しかし相手は無数の深海棲艦であり、鈴谷達だけで守りきるのは無謀だと説明しても「お国への忠誠心があるなら守れるはずだ!」と根拠のない理由を盾に出撃を強要する豚野提督だったが、ここで青年は気づいた。

 豚野提督と会談時に制海権を取り戻した話をしていた。しかし深海棲艦は追い詰める前に自ら逃げ出したと話していたことに違和感を覚えていた。その違和感が今わかった。深海棲艦は逃げてなどいなかった。深海棲艦は体勢を一度立て直し、こちらに攻め入る隙を窺っていたのだ。深海棲艦はバカではない……この鎮守府から資材集めの為に駆り出される駆逐艦の子達、その出撃度合いを見ていればこちら側に疲労が蓄積されていくのは時間の問題であり、実際に駆逐艦の子達は戦力にならない程に疲労が溜まり使い物にならなくなっている。深海棲艦は確信したのだ。この鎮守府は落ちる……そして今日実行に移されたのだ。まさに青年にとっては運の悪い日らしい。

 

 

 状況は完全に不利な状況、その上に打って出ろと受話器から煩い怒鳴り声が響きっぱなしで夕張はプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。そんな状態の夕張を見かねた青年は無理やり受話器を奪う。

 

 

「先輩ですか?外道です」

 

『「なに、お前が何故そこにいる!?」』

 

「そんなことよりも今は迫りくる深海棲艦の対応が先でしょう?」

 

『「そうだ、お前からもそこにいるグズ共に言ってやれ!打って出よとな!!」』

 

「お言葉ですが先輩、打って出たとしても敵の数からして多勢に無勢……ここは守りに徹底するべきです。彼女達を見す見す轟沈させるおつもりですか?」

 

『「そんなことなど知らん!そもそも艦娘と言うのは戦ってこその()だ。沈んでも代わりはいくらでもいるじゃないか。それにグズ共がどうなろうと知ったことではない!この私さえ守ればいいんだ!!」』

 

「守るのはあなたではなく、この国のはずでは?」

 

『「う、うるさい!!とにかくグズ共を出撃させろ!!」』

 

「ならば先輩も司令部へとお越しください。執務室に籠っていては作戦の指揮を執ることができないでしょう?」

 

 

 豚野提督が来る……想像しただけで鈴谷達の顔色が悪くなる。それほど恐れられていると言うことであるが、肝心の提督が居なければ話にならない。青年はそう言ったが受話器からの返答はと言うと……

 

 

『「指揮ならもうしたではないか!?」』

 

「まさか今のが指揮と……言う訳ではないですよね?」

 

『「何を言っているんだ貴様は?()()()()とたった今命じたではないか!」』

 

「……」

 

 

 青年は頭を抱えた。まさか「()()()()」それだけが指揮として成り立っていると思っている。無能だとわかっていたが、ここまで無能だったとは予想外だった様で、○○鎮守府A基地を支配していたと前提督と同じぐらいの無能提督であったと思い知らされた。深海棲艦が舐めてプレイ(舐めプ)しているのではないかと感じられる程によくもこれで無事でいられたものだと感じさせられる。いや、実際豚野は深海棲艦に舐められていたのだろう。己の命を賭けて散って逝った艦娘達のおかげで○○鎮守府R基地の今と言う時間の中に存在していられるのだと理解できてしまう。

 

 

「……とにかく、すぐこちらにお越しください。提督が状況を判断し、指揮を命じるのは提督としての役目ですよ?それに敵もすぐにこちらにやってきます。ここが落ちれば日ノ本の未来が……」

 

『「そこまで言うのであるならば貴様が指揮すれば良いではないか!」』

 

「……なんですって?」

 

 

 受話器から聞こえて来た言葉に青年は耳を疑った。

 

 

『「貴様も提督だ。ならば問題ないだろう?寧ろ私が貴様の提督としての器を見極めてやる……光栄だろう?」』

 

「――くっ!!」

 

 

 青年は今にもこの受話器を叩きつけたくなった。何が「提督としての器を見極めてやる」っだ。何かあれば責任は全て青年のせいにするつもりなのだろう。本来ならば豚野提督が指揮しなければいけないのだが……チラリと視線を鈴谷達に向けるとそこには不安を宿した瞳がジッと青年を見つめていた。その瞳を見た時、青年はやはり似ていると感じた……初めて吹雪達と出会った時の瞳にそっくりだった。

 

 

「(……チッ、こんなところまできて艦娘共の世話を焼かなければいけないとはな。まったく運がない日だぜ)」

 

「「「「「……」」」」」

 

「……わかりました。先輩の代わりに俺が指揮を執らせていただきます。しかし私の作戦には口出ししないでいただけますね?」

 

『「ふん、承知してやろうではないか。光栄に思うとよいぞ、この優秀な私が直々に貴様の活躍を見届けてやるのだからな。だが喜べよ?この戦いに勝利するのは我々と初めから決まっている。何故ならこの鎮守府には私が居るのだからな。おかげで貴様は勝利のおこぼれを手に入れることができ、私に一歩近づけるのだからな。まぁ、後百歩ほど足りないがな……ブヒヒ♪」』

 

「そ、そう……ですね(クソがぁ!!!今はそんなどうでもいい話している場合じゃないだろ!?敵がそこまで来ているんだぞ!!!)」

 

『「だが言っておく。貴様に任せるが、失敗は許さんぞ?」』

 

 

 受話器から声が聞こえなくなった。ガチャリと苛立ちを抑えながら受話器を戻す。豚野の声が聞こえなくなってもあの耳障りな雑音が残っている……だが青年は時と場合を見失っていない。今は深海棲艦の方が先だ。深呼吸をし、心を落ち着かせてから鈴谷達に振り返った。

 

 

「先輩から許可は頂いた。今から俺がお前達の指揮を執ることになった外道だ。早速だが作戦会議を始めるぞ」

 

 

 予想外の出来事に遭遇してしまった青年はどうするのであろうか?

 

 

 ★------------------★

 

 

「あり得ないわ……こんな作戦を実行しようとするなんて」

 

「そうね、でもこれしかないって外道さんが言ってましたし……私達のことを考えに入れての発言だったわ」

 

「翔鶴姉は……あの男のことどう思っているの?」

 

「私は……優しい方だと思うわ。だって……」

 

 

 海上には瑞鶴と翔鶴の五航戦姉妹が立ち並び、二人の艤装を妖精達がせっせと準備していた。姉の翔鶴がそれを見てふっと笑う。

 

 

「ちくまー!吾輩なんだかやる気が出て来たぞ!」

 

「ふふ、利根姉さん、それでも油断は禁物ですよ?」

 

「わかっておる。じゃが筑摩のやつより、強くなってしまっているかもしれんぞ?」

 

「私だって利根姉さんよりも強くなっているかもしれませんよ?」

 

「なんじゃと!?それは負けておれん!!」

 

 

 同じく利根と筑摩の姉妹は以前の暗く落ちた感情はどこにもなく、艤装には妖精達が戦闘の準備に取り掛かっていた。

 

 

「みんな、準備OK?」

 

 

 旗艦である鈴谷の声に応えるように首を縦に振り、全員やる気に満ち溢れている。今回の戦闘はこの国にとって最大のピンチと言える状況だ。まだ深海棲艦がやって来るまでに時間はかかるが、こちらはたったの五人(夕張は戦力どころではない)で守らなければならないのだから。彼女達が最後の砦となっており、負ければ地上へ上陸され深海棲艦による攻撃が罪なき一般人を襲い悲劇の幕開けとなってしまう。それは避けねばならない……しかし以前の彼女達ならば戦力にもならずに轟沈し、地上へ上陸されていただろう。しかしそのようにはならない気がする。何故ならば今回ばかりは心強い味方が付いているのだから。

 それは妖精達だ。数こそ少ないが頼りになる存在で、青年に付いてきたことが幸いし、鈴谷達の為に立ち上がってくれた。それに妖精達だけではない……青年も頼れる存在だと彼女達は気づいたのだ。

 

 

 鈴谷は司令部でのやり取りを思い出していた。指揮らしい指揮を与えてくれずに出撃命令しか下さない豚野提督に何度目になるかわからない失望を向けた矢先、青年が代わりに指揮を執ることになったことには驚いた。不安が募る中、青年は鈴谷達に頭を下げて協力を願い出た。「お前達の力が無ければ深海棲艦から日ノ本を守ることができない。だから力を貸してくれ!」そう言われたら嫌とは言えない。特には鈴谷と翔鶴の二人は直に優しさを向けられた彼女達は初めてのことに戸惑いながらも彼にどこか安心感を覚えたのだ。この人ならば……そう思うものがあった。

 何とか鈴谷達の協力を得たが、無数の深海棲艦を相手にどう立ち回るかが問題である。多勢に無勢……打って出れば犠牲者がでるのは間違いない状況であり、遠征に出た駆逐艦の子達とも連絡が取れないことで安否がどうなっているかもわからず、もし健在だったとしても戦力としても期待できない。つまりここに居る鈴谷達のみで対処せねばならないのだ。当然そんなことは不可能だと青年はいち早く理解しており、すぐさま受話器を取りどこかへ連絡を入れていたのを鈴谷達は憶えている。

 

 

 「援軍を要請した」と青年は言っていた。それまで持ちこたえることが鈴谷達に課せられた役目であった。

 

 

 ホントマジで驚きじゃん。艦娘である鈴谷達にあれだけ寛大な態度取れる?敬語も使うなって、普段通りの私達で良いとかそれ何の冗談って思っちゃった。それに……あれは鈴谷としてもずるいと思うなぁ。

 

 

 鈴谷は青年を見て思ったことがある。扉をぶつけてしまう失礼を働いてしまった彼女を許したのも彼であり、司令部で深海棲艦に対する作戦会議を始めた際に「俺に対していちいち敬語を使う必要はない。普段通りのお前達でいい」と言われた。無理に口調と言葉使いを変えてまで顔色を窺っていた彼女達にとっては驚くべきことだった。今まで何度本来の自分達を否定されたか……意を決して普段の自分をさらけ出した鈴谷に周りが固唾を飲んだが、青年は否定しなかった。寧ろ「そっちの方がお前らしくて良い」とまで言われてしまった。その時の青年の笑顔を向けられた鈴谷は顔を真っ赤にしていた。

 

 

 や、やだ……マジ、恥ずかしい……!もぉー、でも……テンション上がるぅ!

 

 

 その時のことを思い出して体が火照るが……今はそれよりも話の続きをしよう。鈴谷を皮切りに普段の自分を表に出したが、誰一人否定されることなく受け入れてくれた青年に皆の心が少し開いた瞬間だった。睦月のように自分の個性に誇りを持っている……本来の自分自身を表に出せず押し殺すことは士気の低下に繋がると学んだことが今回の行動に繋がることになり、士気向上と妖精達を意識しての行動であった。特に今回の戦闘では援軍が来るまで鈴谷達を持ち堪えさせねばならない為、士気が何よりも大事となる。一人でも欠ければ前線が崩壊してしまうだろう。それはすなわち深海棲艦の上陸を許すことだ。そうなってしまえば国全体が大混乱に陥り、青年の昇進の夢どころの話ではなくなってしまう。負けは終焉を意味するこの戦いで誰一人轟沈させない為の作戦を考え付いた。それを鈴谷達に伝えると目を丸くしていた。それもそうだ、何故なら彼女達に与えられた指示はこうだ。

 

 

 「鎮守府を背後にして前方のみ集中し、鎮守府に損害が出ようと無視しろ。自分の身を最優先に動くこと」と青年は言った。

 

 

 打って出れば広い海上が戦場となり、鈴谷達は取り囲まれる可能性が高い。故に背後を気にする必要があり、数では向こうの方が上の状況で注意力を割くのは危険だと判断した結果であった。だがこのような作戦を考える提督が今までいただろうか?鎮守府に損害が出ても自分の身を最優先に動けと命じられたのだ。鎮守府は最後の砦だと多くの提督は考えるが、青年はそう思っていない。艦娘こそ最後の砦、もぬけの殻となった鎮守府では砦どころかただの的である。そんなもの砦とは言わぬ。深海棲艦に対抗できるのは艦娘のみ……彼女達が砦でなれけばならないのだ。

 

 

 鈴谷達は当然こんな作戦を決行しようとする青年に意見を申し出たが「作戦には口出ししないと許可はとってあるから心配するな。全ての責任は俺が取る」そう言われたら何も口出しすることが出来なくなった。何かあれば責任を取らされていた彼女達だったが、彼が全ての責任を取るとまで言ったのだ。鈴谷達はその時体中に電流が走る。今まで描いていた提督とはかけ離れた現実に失望していた。しかし目の前に居る青年は自分達が思い描いていた理想の提督像と似ていたが、そのことを誰一人口から言葉にすることはなかった。

 今から出撃しようとする鈴谷達の胸には不安が溢れて出そうになっていた。報告から想定しても不利には間違いなくこちら側の戦力はたったの五人だけ。夕張はもはや限界に近い状態で戦闘に参加させる事態できない。敗北は国を危機に陥れることになり、最悪そのまま……それにそれだけではない。遠征に出たきり連絡のつかなくなった駆逐艦の子達の安否が不明であること……嫌な緊張が全身を硬直させるには十分な材料だった。

 

 

 こちらはたったの五人なのだ。たったの五人で何が出来ようか?無力……ただ深海棲艦に轟沈させられるのを待つだけなのか、一つだけに留まらぬ不安が絶望を呼び寄せようと心の中を蹂躙しようとする。しかし不安が絶望を呼び寄せることにはならなかった……彼が居たから。

 不安を募らす彼女達に対して青年は一人一人わざわざ名前を呼びあげて言葉を送った「期待している」「お前達ならばできる」「俺はお前達を信じる」その言葉を聞いた瞬間、胸に何かが湧き上がるのを感じた。必要とされている……初めて自身の存在を認められたような気がして彼女達の足取りは軽くなった。いつの間にか溢れ出そうになっていた不安が落ち着きを取り戻す。

 

 

 そして鈴谷達は鎮守府を背に海上に立っていた……しっかりとした足取りで。

 

 

 おかしいよねー、ついさっきまで男なんて信用できないって思っていたのに……深海棲艦が襲って来るはずなのになんだか鈴谷やる気いっぱいになっちゃった。これもあの提督のおかげかな?みんなも顔色良くなってるし、何よりも体が軽い。こんなこと初めて……ちょっと理解不能だけど、今はそれで良いっかって思えるぐらい気分がいい。勝手に燃料も弾薬も補給したけど、全部外道提督が責任取ってくれるってやっぱりおっかしい人じゃん。でも、悪くないかも……ね。よし、準備万端!

 

 

「来るならこればいいじゃん。本当は来てほしくないけど!」

 

 

 深海棲艦の到達まであと少し……

 

 

 ★------------------★

 

 

「はぁ……司令官……」

 

「ちょっと吹雪、あなた落ち込み過ぎ」

 

「そう言う叢雲ちゃんも落ち着きないよ?」

 

「な、なにを言っているのかしら吹雪ってば!?べ、別にあいつのことが心配とかそんなことはこれっぽっちも微塵も欠片も塵粒一つも何とも思ってないから!!!」

 

「ちょっち言わんとアカンことがあるんやけどな、叢雲の今飲んでいるの醤油やで?」

 

「ぶふぅぅぅぅぅうっ!!?」

 

「きゃぁっ!せっかくの服が汚れたじゃない!!」

 

「ゴホッゴホッゴホッ……ご、ごめんなさい熊野、すぐに拭くわ!!」

 

「………………………………………………」

 

「木曾、おーい聞いとるかーって……ずっと上の空やな。お姫様抱っこしてもらったんがそんなに効いたんか?」

 

「なっ!?ち、違う!!お、俺はただあいつが何か向こうでやらかさないか考えているだけで、気になっているのは気になっているがそう言った意味で気になっているとは……ごにょごにょ……」

 

「なんや聞こえとんのかい」

 

 

 訓練終わりで第一艦隊のメンバーが集まっていた。他にも……

 

 

「(司令はいつ帰って来るのでしょうか……はっ!?わ、私は何を考えていた!!?くっ、不覚!この不知火に落ち度があるわけは……!)」

 

「ねぇねぇ時雨、提督さんいつ帰って来るっぽい?」

 

「今日中には帰って来てくれると思うけど……いつ頃になるかは僕にもわからないよ」

 

「提督ぅ……いないと元気出ないのにゃ……」

 

「ダメなのですよ睦月さん!提督さんが居なくても電達は出来ることを証明しないといけないのです!!」

 

「そうだよー!那珂ちゃんも提督の為にライブの振り付けを毎日練習しているんだよ?いつかアイドル那珂ちゃんライブを見てもらう為にも頑張っているんだから。不在だからって練習を怠る那珂ちゃんじゃないんだよ」

 

「ども、青葉ですぅ!皆さん提督が不在の今、色々と不安があるでしょうが……じゃじゃーん!青葉秘蔵コレクションの一つ、提督の転寝(うたたね)写真なんてご覧になってみては如何でしょうか♪」

 

「ねぇ青葉、その写真ってどう見ても盗撮だよね?カメラアングルからして盗撮しかないよね?これはいけないと思うな僕は。提督なら大丈夫だと思うけど、もしその盗撮写真が原因で提督が怒って鎮守府から出て行ったらどう責任取るつもり……ねぇ?」

 

「えっ!?そ、それはダメっぽい!絶対ダメ!!!」

 

「ふえぇぇぇ……提督が居なくなるなんて考えたくないのにゃ!!!」

 

「青葉さん盗撮は犯罪なのです!例え優しい提督さん相手でもやって良いことと悪いことがあるのです!!」

 

「そ、そんなに皆さんが怒るとは思っていませんでした……は、反省します」

 

「それじゃこれは僕が処分しておくよ(提督の写真を手に入れられるなんて……ついてるね♪枕の中にでも隠しておこう。ふふ、今日は提督の夢見れるかな♪)」

 

「(し、司令の写真!?しかも寝顔!!?み、見たい……はっ!?ま、また私は何を考えているんですか!?落ち度……不知火の落ち度です!!)」

 

「もう、てーとく、おっそーいー!」

 

 

 時雨率いる第二艦隊に青葉率いる第三艦隊のメンバーも集まっていた。昼時は既に過ぎていてもここが彼女達の団欒広場である。提督である青年は留守である為、何名かの気力が削がれているがいつもとそこまで変わらない日々を送る……かに思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

み、皆さん大変です!!!

 

 

 食堂の扉を開け放ち開口一番にそう告げたのは青年が居ない間、補佐である大淀。書類仕事をしていたはずの彼女には珍しく汗を流して走って来たのがわかる。気を利かせて間宮が一杯の水を手渡すとそれをすぐに飲み干し気持ちを落ち着かせていた。

 

 

「大淀さん何をそんなに慌てているのですか?」

 

 

 間宮の問いに大淀はこう答えた。「○○鎮守府R基地が深海棲艦の攻撃に晒されようとしています」一瞬場が静まり返ったが、すぐに大淀に詰め寄ったのは元々○○鎮守府A基地に残っていた初期艦の吹雪達。○○鎮守府R基地はまさに今青年が訪れていることはこの場にいる誰もが知っている事である。深海棲艦の魔の手が伸びれば彼の命も危険であると言うことは言葉にせずともわかること。詰め寄られた大淀はあまりの剣幕にタジタジになり、吹雪達は我慢できず今にも飛び出して行く勢いだ。

 

 

「吹雪ちゃん、みんなちょっと待って!」

 

「鳳翔さん止めないでください!司令官がっ!!!」

 

「提督さんを守るって誓ったの。だから夕立、深海棲艦をぶっ潰すっぽい!!」

 

「すぐに向かわないと提督が危険だよ!僕もジッとしていられないんだ!」

 

「電も提督さんの下にすぐに向かいたいのです!」

 

「提督は睦月達の提督なの。だから……睦月が行かないといけないの!」

 

「あいつにはまだやってもらわないといけないことが山ほどあるの。勝手に逝って約束を破るなんてことはさせないわ。それに……あいつには傍に居てほしいし……ってそうじゃなくて!?と、とにかく止めたって無駄なのよ、私は行くわ!」

 

「みんなの気持ちはわかるわ。でもあなた達だけではダメよ。それに提督から指示が出ているの」

 

 

 吹雪達を止めたのは鳳翔、彼女は大淀にお茶とお菓子を差し入れしに執務室へと訪れていた。そんな時に電話がなり、青年とのやり取りを傍で聞いていたことで○○鎮守府R基地の現状を理解した。走る大淀に遅れて食堂へと辿り着いた彼女は駆逐艦でありながらその剣幕は戦艦をも上回る圧力に押されていた大淀に助け船を出したのだ。鳳翔の説明により、吹雪達は落ち着いた。だが緊急事態であることに変わりはない。すぐに青年からの指示通りに出撃するメンバーはすぐさま艤装と体調のチェックを行い港へと向かった。

 その背中を見送り、残された大淀はすぐさま執務室へと向かう。大淀も青年からの指示通り動き出す。彼女に与えられた命は一本の電話をとある人物にかけることで、受話器を取り一本の通信を入れた。

 

 

「もしもし、私大淀です。美船元帥をお願いします」

 

 

 残すは時間との戦いだ。

 

 

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