今回はようやくあの方の再登場です。
それでは……
本編どうぞ!
遂にこの時が来たか。
言葉にするならばこうだろう。数名の艦娘を連れ、とある建物の前に佇んでいる一人の女性がいた。
私の名は美船。昔はただの一般人、今は海軍の元帥にまで上り詰めたのだが、そこに至るまでには長く辛い道のりだった。正直に言えば私は……この世界全体が嫌いだった。
世界は不公平だったわ。整った顔立ちにシミもない肌は見慣れたもので、鏡で毎日拝む自分自身の顔に嫌になることなんてある?子供の頃何度それでいじめられたかわからないわ。私以外の女の子はみんな綺麗だったから……男の子もそんな私を避けていたぐらいよ。小学生から大人まで皆が歪な顔をしていたりシミやそばかすだらけで女性は
『不細工』それは迫害の証であり、残酷な差別を意味する言葉。
この世界では美人が多いが、稀に不細工な女性が生まれて来る。それが美船だった。幼少期の頃から不細工と言う理由で虐げられ、バイトも就職で面接を受ける時に大きな足枷となっていた。このままでは引きこもり生活を余儀なくされる運命に身を委ねるしかないのかと諦めかけていた。しかし彼女の運命を変える出来事があった。小さな人……妖精が見えたのだ。世界が深海棲艦の魔の手が伸びた時に颯爽と現れた艦娘と呼ばれる存在に力を貸す不思議な生き物(?)だ。「自分には妖精が見える!」その資格は世界にとってとても重要なものだった。
深海棲艦に対抗する為には艦娘の力が必要。そして艦娘を支えるのは妖精と提督の存在だが、妖精の姿を見ることができる人間は限られている。その限られた内に美船は居たのだ。『美人』の枠組みから弾き出され『提督』の枠組みに引き込まれた。軍は資格を持つ人間を欲しており、すぐに彼女は入隊することができた。
本当にあの時は大変だったわねぇ……ある日突然新米軍人である私の下へ大本営から前元帥が自らやってきて「君、今から○○鎮守府の提督だから」って言い渡されて唖然としていた私を強制的に連行したあの糞ババア……あの時の事は今でも忘れていないわよ。まだ軍人として
しみじみ過去のことを思い出す美船元帥。ふっと横を見れば家族同然の大切な
「どうしたんですかご主人様?もしかしてお疲れですか?」
「もしも何かあっても私がお守り致します!」
漣と五月雨の駆逐艦娘が不思議そうにではあるが、身を案じてくれることに自然と胸が温かくなる。二人は美船元帥が提督だった頃に出会った艦娘だ。
当時まだ艦娘のことなど把握できておらず、軍人達の間で兵器と扱われていた艦娘と初めて対面し、自身との容姿に劣らぬ醜い彼女達に共感を覚えた。いきなり提督となり、艦娘の運用法など左も右もわからぬ彼女に色々と教えてくれたのはこの二人だった。人間の女性と変わらないが見た目が醜い。しかし心はとても温かかった。醜いと言う理由で虐げられた者同士すぐに意気投合し、時には笑い、時には喧嘩したし、共に泣いた。美船と彼女達が家族になるのも時間の問題だった。
美船は決意した。新米提督だった美船は成長し、絆と絆で繋がった艦娘達は深海棲艦を次々に打ち負かしていった。しかし敵は深海棲艦だけではない。艦娘を捨て艦として扱うブラック鎮守府を摘発し、艦娘達を道具としてしか見ない軽視派の連中と戦うことを決めたのは。そして月日が過ぎていき、数少ない不細工提督として同じ提督から軽視される視線を受けながら苦痛の日々を長く我慢してきた。汗と努力の積み重ね、功績と艦娘達から信頼を得、前元帥から目を掛けられていた彼女は元帥の座につくことになって現在に至る。
「ありがとう二人共、心強いわ……けど、そうじゃなくてね……」
「ああ……」
「激おこぷんぷん丸ですもんね……」
血の気が引きそうな威圧感を背で感じ、ちらりと三人は背後に視線を向けると鬼ですら泣いて逃げる程に恐ろしい形相で親の仇を討ちに来たのかと錯覚をさせる程に殺気を放っている赤城と加賀の一航戦の姿があった。何故これほどまでの殺気を放っているのかと言うとやはり鳳翔の件が原因だろう。二人にとってまだ事情聴取は終わっていなかった。そして目の前の建物には目の敵が居るのだ。
美船一行は視察として○○鎮守府A基地へと訪れていた。元帥自ら視察など何事かと思うだろうが、相手は軽視派でありながらも我が子同然の大淀達を泣く泣く潜入させた。何度胸が痛くなったことか、何度謝ったか、検挙する為とは言え暴力を振るわれ罵倒を受けて苦しんでているかもしれないのに見て見ぬふりをしなければならないと思うと心が張り裂けそうだったが、返って来た返事は「楽しくやっています」との報告と意味不明な内容に何度思考を放棄することになったか……美船がわからなければ他の誰もわかるわけがない。ならば自分自身の目で見極めるしかないと彼女自身が視察の名目で青年が支配する○○鎮守府A基地へと訪れたのだ。
敵地へと赴いた気分だが、明らかな殺気を持って対面する訳にはいかない。相手は相当な手練れだと美船は読んでいる。報告の内容は恐らく本物だろうが、人間の汚い面を何度も見てきた美船には
大淀の報告書に嘘はない……この目でしっかりと見極めるまでは私は信用できない。けれど外道提督が本当に艦娘達を支え、心の拠り所になってくれているのなら……どうしたらいい?軽視派の影響を受けているのは間違いない。間違いではないが……わからん。とにかくこの
「二人共止めなさい。内乱を起こしに来たのではないぞ?」
「ですが美船元帥!鳳翔さんだけではなく間宮さん達までもが非道な扱いを受けているかもしれないんですよ!?」
「ここは譲れません!!」
「譲りなさい。私だってわかっているわ。でも今は視察と言う名目でここに来ているの。そのことを忘れないでほしいわ。元帥と言う立場上問題を起こすことはできないの。上層部の連中に弱みを握られては何かと不都合だからお願い」
赤城はともかく普段は感情を表に出さない加賀ですらこれだもの。漣と五月雨でもちょっと怖いと思うわよね……私だって怖いわ。けれど今は大人しくしておいてほしい。はぁ、偉くなったけど何かと縛られてしまうのが致命的なのよね。
美船元帥によって二人は怒りを胸の内に抑えることになった。そして運命の瞬間がやって来る。
「お待ちしておりました美船元帥殿」
さぁ、外道丸野助……あなたが偽善者か見極めさせてもらうわ。
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んぁ!!?な、なんで元帥自ら来てんだよ!?てっきり長門か陸奥の艦娘の誰かがやって来ると思っていたが意外だな。いや、艦娘にお優しい美船元帥さんのことだ。大淀辺りからの報告に疑問を持って自らの目で見極めに来たってところだろうな。クヒヒ♪これは逆にチャンス到来だぜ。あんたをこちら側に引き入れることができれば俺は怖いものなしだ♪クヒ、クヒヒ……って一航戦共も居やがる……だと!?な、ななな、なんでこいつらも付いて来てんだよ!護衛ならそこの漣と五月雨に任せておけよ!!!はっ!?だ、だから別にび、ビビッているわけじゃねぇって!!あ、あれだ……その……そ、そんなことはなんだっていいだろ!!やべぇ、やべぇよ……お、落ち着くんだ俺、我らの元帥様の前で誇り高いプライドを持つ一航戦共が感情如きに流されて俺を説教することはないはず……ないよな?マジでやめてくれよ?こっちは説教魔の間宮と鳳翔が既にいるんだからこれ以上要らねぇんだ!!もしそうなったら神様(愉悦猫を除く)、仏様、美船元帥様、お助けくださいお願いします!!!
現時刻はヒトサンマルマル。
鈴谷達と共に○○鎮守府A基地へと帰って来た青年。出発前のお通夜状態とは変わり、彼女達の肩の重みは軽く、表情も柔らかくなっていた。帰った頃には時刻はヒトフタマルマル。丁度お昼時であり、秘書官の吹雪は皆で食事を楽しもうとしたが、青年がいつの間にか居なくなっていた。そういえば午後から視察がやって来ると報告が入っていた。おそらく青年はそれまで少し時間があるので仕事をしに執務室へと戻ったのだろうと予測する。吹雪はため息が出てしまう。仕事熱心なのは良いことだが、それで昼食を放っぽり出して体調でも崩してしまっては元も子もない。さてはまたカップ麺で済ませようとでもしているのではないか?と疑いすら浮上する。「やっぱり私が司令官の傍にいないとダメなんだから」と呆れ半分、喜び半分で執務室へ向かう。すると執務室の前で青年は時雨達に捕まっており、吹雪が青年の行動を予想できたように時雨達も仕事を優先しようとする彼を捕まえる為に先回りしていたようだ。
青年が○○鎮守府A基地の提督となった時から一緒に居る初期艦娘達。ある程度ではあるが彼の考えを理解できるようになれたことに密かに喜びを感じている。叢雲辺りは「そ、そんなバカなことあるわけないでしょ!!?」なんて否定するだろうがちゃんとこの場に居ることが何より言い逃れられぬ証拠になっているのだが知らぬふりをした方が良さそうだ。吹雪も合流し、青年は仕事が優先だと小さな抵抗するものの、間宮と鳳翔の名を出せば小さな駆逐艦娘相手でも逆らえなくなることは知られてしまっている。故に護送されることになり、食堂へと向かうことになった。食事中だった不知火や木曾に龍驤、青葉に那珂と島風も青年が姿を見せれば自然と周りに集まり、まだ雰囲気になれない鈴谷達も大淀や明石に背を押され、初めは遠慮しがちな彼女達も気軽な食事を出来たのは初めてのことで、自然と笑みを浮かべることができた。妖精達もお菓子片手にはしゃいでおり、その様子を見ていた間宮と鳳翔もほっこりと笑みを浮かべていた。
しっかりと食事を取ったことを見届けられた青年はそろそろ頃合いだと視察に来るであろう艦娘を出迎えに行くが美船元帥が居たことに吹雪一同驚きを感じつつも、彼だけは気が別の方へと向いていた。明らかにヤバイ存在が目に入る……何食わぬ表情なのだが、瞳の中に殺気が込められた視線を送って来る赤城と加賀の一航戦コンビの姿がある。視線を向けられている青年以外(大淀達は既に知っている)に殺気を感じさせないよう器用に気を操っているのはまさに神業であり、吹雪達は全く気付かない。比べて内心ビビりまくっていた青年であった。
「お待ちしておりました美船元帥殿」
それでも弱みを見せぬよう気丈に振舞う覚悟は見事と褒められるべき根性だと言えるだろう。
「いや、そう緊張しなくていい。視察に私が同行するのはどうかと思ったのだが、○○鎮守府R基地の件もあって直接話し合いをした方が良いと判断して急遽来てしまったが……迷惑だったか?」
「いえ、そういうわけではありませんが……」
……チッ、なにが「迷惑だったか?」だよ。迷惑だよ特に後ろの奴!!その殺気立った目を向けるな!!!と、ともかくファーストコンタクトは悪くはないはずだ。大丈夫だ、問題ない。なんとかなるはず……いや、なんとかしてみせる。俺のことを
姑息な策を組み上げ、内心では邪悪な高笑いが響いて居ることだろう。そんな青年はさておき、久しぶりの再会となる大淀と美船元帥はというと……
「美船元帥自ら視察に来るだなんて聞いていませんよ?」
「ごめんね、急に来たくなって。それよりも大淀は元気にしてた?」
「はい、元気に生活させてもらっています。しっかりと毎日食事を取って規則正しい生活を送っています」
「それは良かったわ(報告書通りね。大淀の表情から外道丸野助に脅されているとは考えられないわね)それに君達にとってもここは素敵な場所のようね?」
「は、はい!そ、それは勿論ですぅ!し、司令官が来てくれたおかげで私達毎日が楽しくてあの、その……!!!」
「ふ、吹雪緊張し過ぎよ。あ、あんたがちゃんとしていないとダメでしょ?」
「そういう叢雲ちゃんも緊張してるっぽい?」
「で、でも気持ちわかるよ。睦月も心臓バクバクにゃしぃ!」
「はわわ!?げ、元帥さんが居るのです!!」
「もうみんな少しは落ち着こうよ……」
なんてことないやり取りだが、このやり取りが彼女達の幸せを形にしているのだろう。出迎えた吹雪達の姿に美船元帥は笑みが自然とこぼれる。
「そう緊張しなくていいわよ(良きかな良きかな。緊張しているみたいだけどそれは私が元帥だから仕方ない。しかしだ、外道丸野助からこの子達が脅されている様子はない……か)」
久々に対面することができた美船元帥と大淀だが、彼女がやつれた様子もなく生き生きとしている様子に報告書通りであると安心できた。吹雪達もここが元々ブラック鎮守府だったのを感じさせない程に温かい光景を見せつけてくれている。
瞳は真実を映し出してくれる。ブラック鎮守府に居る艦娘は気丈に振舞っていても目の光が失われていたり、虚空を見続けている子が居たぐらいだが、この様子だと心配無用のようだ。だからと言って油断はできない。気を緩めるなんてことはしない。人間と言う生き物は嘘つきだ。真実を嘘で覆いつくすなんてお手の物、美船元帥は何度も汚い人間の内面を見てきた。嫌と言う程に何度も何度も……その過程でいつも犠牲になるのは優しい子達ばかりだった。だからこそ青年に向ける瞳には厳しさを増していた。
「あんたが何故ここに居るんだよ!!?」
「視察に来るとは聞いていましたが……美船元帥自らとは聞いていませんでした。これは不知火の落ち度でしょうか……?」
「いや、ウチも知らんかったし落ち度やない。しかし急な登場やな?」
それから視察と言う名の探りを入れられている状況である。木曾達も元帥側の艦娘の誰かがやって来たのだと久々な仲間とのご対面できる思って出迎えた。漣と五月雨、赤城と加賀が視察としてやって来たのかと納得したが、見慣れた顔が一人余分に居たことに一瞬呆気に取られ、美船元帥本人が居たことで驚いていた。鳳翔なんかには「あなたが自ら来るなら事前に報告してください!」と叱られたぐらいだ。元帥相手でもやはり鳳翔は強かった。伊達にとある次元の提督達に『お艦』と呼ばれているだけはある。青年も自身が叱られているわけではないのに内心身震いしていたりする。ここに間宮も加われば身震いは更に倍化されるだろう。
そして問題の一航戦コンビは鳳翔を見つけるなり駆け寄り心配していた。赤城と加賀の二人がここに居ることに驚いている様子だったが鳳翔は微笑みを見せて二人を安心させる。赤城と加賀はその微笑みから暴力を振るわれていないとわかると安堵の息を吐いた。しかし青年の疑念が晴れたわけではない。ギリっとすぐさま青年を睨みつける姿に「隠す気あるのか?」とツッコんでもおかしくはないのだが、肝心の本人は睨まれてそれどころではなかった。それでも「久しぶりの再会を邪魔するのは申し訳ないからな、鳳翔頼んだ」と気を利かせ、三人の再会を祝福する為の行動だと周りは思うかもしれない。実際は一航戦コンビを鳳翔に押し付けて自分自身の安全を確保したかっただけだ。その証拠に足が震えていたのだが……それを指摘したら可哀想だ。
何とか
そうしてある程度見て回っていると美船元帥は会いたい人物……艦娘がいると青年に伝えた。察していた彼はとある一室へ彼女を案内することにした。
「鈴谷、俺だ」
「あっ、はい。今開けます!」
「外道提督、そこにいると……」
「んぁ?なんでs――んがぁ!!?」
ノックをすると帰って来た声の主は鈴谷の為に用意された大部屋だった。彼女が扉を開けるのを待っていると親切心で声をかけたつもりの美船元帥だったが、時すでに遅し……鈴谷は慌てて扉を開けるが、勢い余って思いっきり開けてしまったことが原因で青年の顔面にぶつかってしまう。どこかで見た光景だ。
痛ぇ!?こいつまたしても俺にぶつけてきやがったな!!もう我慢ならねぇ、今度という今度はこの俺が直々にお仕置きして……はっ!!?
文句を言ってやろうかと声を荒げようとしたが思いとどまった。鈴谷はわざとした訳ではないので彼女を叱るのは間違いだ……っと言うよりも、美船元帥自らが視察に来ており、背後からの視線には重苦しい程の圧力を感じたからだ。
そ、そうだった。あぶねぇあぶねぇ……感情に任せて危うく失態を犯すところだったぜ。俺は今は
「ていとk……外道さん大丈夫!?」
「あ、ああ……大丈夫だ、問題ない。悪かったな、心配させてしまって」
「う、うん……でも……」
「大丈夫だって言ってるだろ。心配するな、全くもって痛くなかったからな」
「私にはそう見えなかったけど?」
「吾輩も同感である」
煩いぞお前ら!少し空気読めよ!!……いや、これも利用できるな。失態を犯した鈴谷に本当は痛いのに痛くないと安心させ、お前のせいじゃないと擁護することで「この人、鈴谷の為に嘘までついて……いい人だ」と思ってくれるわけだ。それを見た美船元帥さんもそう思うに違いない!クヒヒ……瑞鶴、利根よ、お前達ナイスアシストだぜ♪
瑞鶴と利根に嘘を突かれるがこれはチャンスと利用しようとする……流石姑息な奴だ。
「俺のことはいいんだよ。まぁ、それはさておき……お前らに紹介したい方がいるんだ」
「紹介したい方ですか?」
「一体どなたでしょうか?」
「(あれ?外道さんの後ろに居る方って……まさか!?)」
翔鶴と筑摩は紹介したい方と言われても思い浮かばない。しかし夕張は違った。工廠での仕事と司令部での報告等の裏方仕事をしていた彼女にとって書類で薄っすらと見覚えのある顔があって背筋が伸び切ってしまった。
「初めましてだね。私は美船、元帥の立場に居るけど気軽に接してくれていいわ」
「「「「「……えっ?」」」」」
意外も意外な人物の登場に鈴谷達は固まってしまった。
こいつらがこうなるのも無理はないか。まぁ、きっと美船元帥さんはこいつらを引き取りに来たといっても過言ではなさそうだ。さっさと引き取ってくれ、元々ここの艦娘じゃねぇし、ここにはおいておきたくないだろう。俺にはもうこいつらとは縁もゆかりもなくなるんだ。ただ……深海棲艦の進撃を食い止めた功績を残すことができ、昇進への一歩に貢献した礼ぐらいはしてやるよ。ならばどんな礼がいいか……去る前にしっかりと艤装の修理や点検を明石に頼むとするか。鳳翔と間宮には飯を腹いっぱい食わせてやるように伝えておいてやる。後はそうだな……甘い物でも土産にでも持たせるか。生憎経費で買ってもいいが、深海棲艦への対策費として置いておきたい。代わりに俺の財布から出してやる……俺の慈悲に感謝しろよ。
などと考えていたが……そのすぐ後のことだ。
「外道提督、彼女達をここで養ってもらえないだろうか?」
「………………………………………………はっ?」
美船元帥と青年だけの執務室で告げられたのは彼の予想と反したものだった。