あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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元帥直属の艦娘達の回その3です。


それでは……


本編どうぞ!




2-EX 不知火と木曾そして鈴谷

「沈め!!!」

 

 

 一発の砲撃で敵が沈んでいく。周りから絶賛の声が聞こえますが傲慢はしません……油断が命取り。海上では常に深海棲艦に気を配らないといけません。

 

 

 現在不知火は任務についています。油田地帯から燃料を載せたタンカー船団の護衛それが任務です。駆逐艦である不知火にとってはどうと言うことではありません。実際に少々の敵ならば不知火一人でも問題はないのですが、今は他の艦娘と共に任務中です。ですが練度もまだ低く、連携も上手くいっていないのが現状ですが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

「よぉ、任務ご苦労さん」

 

「木曾さんお疲れ様です。今帰ったばかりですか?」

 

「ああそうだぜ。それで……どうだったそっちの連中は?」

 

「まだまだですね。息が合っていません」

 

「……だろうな」

 

 

 ここは激戦区に近い鎮守府。不知火達は現在ここを拠点とし、この海域での主力部隊として出撃命令を下されることもありますが、遠征任務を主に不知火が受け持っています。援軍と言う形でここの提督と艦娘と共に任務に当たっていますが……先ほど護衛任務の時もそうでしたが、艦娘達の練度が低いことが問題視されます。それと激戦区に近い場所でありながら艦娘の数も思った以上に少なく、一人当たりの負担も大きいことで疲れも確認できました。

 ここの提督は軽視派ではありません。ですがやはりと言っていいのでしょう。容姿が醜いことから普段のコミュニケーションが疎かになっており、指揮や伝達に不備が生まれているようです。艦娘側が伝えたいことがあってもお互いに疎遠状態である為、接し方がわからないなどと言ったことが起こっているようです。提督と艦娘との間に壁があることで、ここぞと言う場面が来た時に影響が及びそうと推測します。木曾さんもこの現状に呆れている様子ですね。いや、不知火の方がおかしいのではないでしょうか?

 

 

 ○○鎮守府A基地が如何に他の鎮守府とかけ離れていたことか。美船元帥から窺っていた話と一致しない鎮守府の現状に困惑しました。吹雪達の様子、妖精の存在、そして何より暴力的か無関心な態度を持った傲慢で身勝手な男が居ると思っていましたが、そこに居たのは一人の男でした。

 その人物が軽視派の人間だと不知火達は知っていました。しかし不知火達が抱いていた人間像とは正反対の人物であり、配属された初日から艦娘相手に自らの手料理を振舞うとは予想外で、吹雪達に群がられても嫌がる素振りも見せずにデザートのプリンまで披露するとは……なんて罠だと思いました。それにしてもプリンの味はとても甘く濃厚でしたね……はっ!?ち、違いますよ?甘い物に目が眩んだわけではありません!食材を残しては罰が当たるので食べただけですので!!

 

 

 ……それはさておき、罠だと何度も自分自身に言い聞かせましたが今思えばどうだったんでしょう?罠ですらなかった気がしています。結局悪事を仕出かしていた証拠も痕跡一つ見つからず、尾行してまで観察したことがありました。結果は空振りに終わってしまいましたが……お姫様抱っこを体験できるとは……♪

 軽視派……だと不知火は知っています。しかしそのようにはいつの間にか見えなくなってしまって、途方に暮れる事も多々ありましたが気遣いは本物でした。栄養バランスの取れた食事による健康状態の管理、疲労等による目には見えないメンタルケアまで取り入れ、遠征や深海棲艦との戦闘を終えて帰って来た不知火達に労いの言葉を毎回忘れずに送られました……艦娘に対してここまでの気遣いは普通の男性にはできないことです。つまりあの方は普通ではなかったということになりますが疑いようのない事実でした。

 

 

 その影響を受けている……時間が過ぎていく毎に不知火はおかしくなっている気がします。遠征を終えて○○鎮守府A基地へ帰れるのを喜んでいる自分が居ました。正確には……司令の下でしょうか。おかしいですね、初めは敵視していたはずが、今では司令の下を離れてここに居る事に違和感を覚えます。ですが私情を優先する訳にはいきません。敵を沈めなければこちらが沈んでしまいますからね。それでもあそこで過ごした時間を思い出してしまいます。目の前のことに集中しないといけないのに……これでは完全に不知火の落ち度となってしまいますね。

 そもそも美船元帥と司令の面影が重なるなどありえないはずだったのです。パーティーの集合写真でも男性と醜い艦娘が一緒に写るなんて考えられないことですが、司令には常識は通用しませんでした。異常性とも言えるのでしょうけど、それで良かったと思える不知火はやはりおかしくなってしまっていたようです。

 

 

「木曾さん、そろそろ()の時間なので不知火は先に」

 

「ああ、帰って来たばかりで無理はするなよ?」

 

「はい、それでは」

 

 

 司令と出会えたことで不知火は変わりました。何がとはわかりませんが、司令のことを信用しています。軽視派なのかもしれませんが、悪事に手を染めていなかった。例え軽視派の人間であっても共に過ごした時間は本物でした。不知火だって司令が良い方なのはわかったつもりです。司令が何を考えていたのかは結局のところわかりませんでしたが、あなたを見ていて思うところがありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督とのコミュニケーションをどうとればいいのか……それでは皆さんで話し合いましょうか」

 

 

 やはり提督と艦娘の絆が深海棲艦打倒には必要不可欠だと感じ、不知火は仲間と共に会議を開くことにしています。醜い艦娘と提督との絆を深めようとすることは難しい問題だと理解しているつもりですが、ここにいる艦娘達も本来ならば提督と良好な関係を築くことを望んでいます。お互いに支え合える仲になればきっと深海棲艦だけでなく、幾多の困難を乗り越えられるようになると信じています。

 

 

 不知火と司令のように……

 

 

 ★------------------★

 

 

 不知火の奴あんなに強くなりやがった。指示に従って行動するのが主な性格なのに提督と艦娘がどうやったら絆を深めることができるのか会議を開いているぐらいだ。これもあいつの影響なんだろうな……

 

 

 鮮明に思い出すぜ。あいつと初めて会った時のことは。

 

 

 憎い、糞野郎、艦娘を道具としてしか見ていないクソッタレ……隠していたつもりだったが、俺の中に生まれた負の感情があいつを許せないと表に出ていたらしく、後で大淀さんに注意されたんだったな。そんな感情がすぐに理解できない、おかしい、妖精が何故居る?吹雪達がなんで笑っているんだ?負の感情が困惑に変わったのを憶えているぜ。

 外道丸野助……それがあいつの名前だ。一時的な期間だけだったが俺の……提督だった男。軽視派の人間で訓練学校卒業したての新米だ。だが俺の常識を滅茶苦茶にしやがった奴だ。

 

 

 俺のような色気も魅力もないし、そもそも不細工だからそんなこと思われるはずもない。女として良いところの一つもない俺をあいつは女として見ているなんて言いやがった。なんだよそれ、俺のどこが女なんだよ。俺はお前にとって道具じゃないのか?深海棲艦からの雷撃に晒された吹雪を庇ってボロボロになった俺を……お、お姫様抱っこしやがって……殴るつもりはなかったんだが、それでも殴ってしまった。解体事案なのに見過ごすなんて何考えてんだよ。俺達を非常識で振り回しやがったせいで居心地いい日を送る羽目になっちまっただろうが。

 ○○鎮守府A基地で過ごすうちに俺自身が否定していたこと……軽視派だから艦娘を道具として扱い、ボロ屑のように使えなくなったら捨てるっと思っていたが、あいつはそんなこと一度たりともしなかった。美船元帥直属だから警戒したのか?そうには見えなかったけどな。誰一人として轟沈させることなく深海棲艦に打ち勝っていったあいつは提督として優秀な人材だ。しかも俺達艦娘相手に対等の立場を築いている……意味わかんねぇよ。

 

 

 だけどよ……それが嫌じゃなかったんだ。美船元帥以外から……しかも男から艦娘として、女として扱いを受けるなんてことは一度たりともない。あるわけないのが常識だったが、難なく塗り替えてしまった。穏健派の人間よりも大切に扱われているって、しかもその扱うあいつが軽視派なんて……全くもって意味わかんねぇだろ?そう思うよな……なぁ?

 そのせいでいつの間にか軽視派であるとか、他にも男なのにとか、そういったことが些細なことのように思えて気にもしなくなっていた。あいつ……感性がどっかずれてんじゃないのか?

 

 

 まぁなんだ……結果を言えば悪事の証拠も痕跡も何もなかった。牢屋にぶち込む気でいたが空回り。○○鎮守府A基地での最後の日にパーティーを開いて俺達を楽しませてくれた。あいつが仕組んだことで、妖精も協力していた。あいつが俺達の為に手作り料理を作ってくれていたな……ベッドで寝ている俺を朝起こしに来て、俺の為だけに手料理を毎日作ってくれねぇかな?ひとつ屋根の下で食事をして、何気ない会話で盛り上がって休みの日には二人で遊びに行って、帰るころには日が落ちて夜になれば……はっ!?な、何を考えているんだ!!?い、今のはナンデモナイ、ナンデモナインダ!!!

 

 

 はぁ……はぁ……そ、それはおいておいてだな、あいつはもう俺の提督ではなくなった。美船元帥の下に帰って来たんだ。だからもうあいつはいないんだ……なのに夢にまで出てくるようになった。俺があいつを求めているとでも言うのか?どうであれ、夢を見たその朝は憂鬱な気分になる。何故だ?離れ離れになったからか?あいつの夢を見ているだけなのに……不知火は変わった。大淀さん達も変わった……全てあいつのせい。俺自身は変わっていないと思っていたが、そんなことはなかったらしい。

 夢を見なかったら見なかったであいつのことが気になってしまっている。中々寝付けない日もあり、胸に痛みが走ることだってあった。心臓に病気でも発症したのかと思ったこともあったが、健康そのものだった。あの痛みは何だったんだ?それに最近毎日あいつを考えているしまつ……どうして俺はこんなにあいつのことを……?

 

 

「……」

 

「あっ、木曾隊長!探しました。次の出撃時刻が(せま)っていますよ」

 

「……なに?」

 

 

 駆逐艦の一人が俺を探しに来たらしいな。しかし不知火と別れてからいつの間にか時間が過ぎていたのか……その間ずっとあいつのことを考えていたということなんだろうな。

 

 

 いつっ!?またあの痛みが襲って来た。

 

 

「……木曾隊長?」

 

「い、いやなんでもない。すぐに準備する」

 

 

 この胸に走る痛み……これは何なんだ?俺は……一体どうしちまったんだ?

 

 

 ★------------------★

 

 

「じゃーん!!!鈴谷の山盛りカレーだよ。召し上がれ」

 

「ほぉ、これは中々うまそうだな」

 

「でしょー♪」

 

 

 今日の食事担当は鈴谷でーす♪今はこの場に居ない鳳翔さんと間宮さんから指導してもらって作れるようになったんだ。初めは失敗ばかりで気分最悪になったこともあったけど、提督に食べてほしかった。

 

 

 美味しそうって言ってくれて気分上がるじゃん♪でも本番はこれからなんだ……

 

 

「……ど、どう?美味しい?」

 

「……うん、流石鳳翔と間宮にみっちり教えられた甲斐があったな。うまいぞ」

 

「よ、良かったー!!!提督に満足してもらえたー!!!」

 

「おいおい、翔鶴や夕張もそうだったがそこまではしゃぐか?」

 

 

 そりゃはしゃぐよ!!だって提督に美味しいって認めてもらえたんだよ。こんなに嬉しいことなんて今までなかったもん。提督に会ってからなんだよ?私やみんなが笑えるようになったのは。

 ○○鎮守府R基地で過ごした日々は最悪だった。けどみんなが居たから頑張れた。でもみんなが減っていく。増えればその分沈んでいく。最上も三隈もそしてR基地に居た熊野も沈んで鈴谷だけになっちゃった。悲しくて、辛くて、苦しくて……でも死にたくないから抗っていつの間にか旗艦を任せられるようになっても全然嬉しくなかった。このままずっと私達は最悪な日々を送るしかないのかぁ……そんな時に提督が来てくれた。提督のおかげで私達は今ここに居る。熊野の最期の言葉『「わたくし達の分まで生きて……幸せになって……」』私達は幸せになる為にここに居るの。提督が私達に幸せを与えてくれるの。

 

 

 だから鈴谷、提督の為に頑張って覚えたんだよ?鳳翔さん達が居なくなってしまうから吹雪ちゃん達が寂しがっていた。私にとって鳳翔さん達とは短い間しか交流できなかったけど、学ぶべきことは教えてもらったし、お世話になった方だから……鳳翔さん達が抜けた分を補えるようにレシピ本を何度も読んで憶えたカレーを一番に食べてもらいたかったんだ。私達の提督になってくれた恩人さんに。

 

 

「ふぃ……お腹空いたっぽい……あっ!?提督さんだけ先に食べてる!」

 

「ホントだにゃしぃ!?ずるいにゃしぃ!!!」

 

「ずるいってなんだよ……おいこれ夕立、涎を垂らすな!カレーならまだ余っているから自分の取れ。そうだろ鈴谷?」

 

「うん、提督に一番に食べてもらったし満足した。それじゃみんなの分も用意しているから食事にしよっか」

 

「そうだね、僕もお腹空いちゃったよ」

 

「電もなのです。今日はお代わりをしちゃうのです!」

 

「鈴谷さんのカレーどんな味がするんだろう?楽しみだね叢雲ちゃん♪」

 

「そうね、楽しみかしらね」

 

 

 笑っていられるっていいよね。○○鎮守府R基地じゃ考えられなかった。もし提督があそこに着任してくれていたなら今頃最上達は……ううん、そうだと吹雪ちゃん達がここには居なかったのかもしれない。話を聞いたんだけどここも元ブラック鎮守府だったみたい。酷いよね、艦娘は醜いけど小さな子にまで暴力や罵倒を浴びせるなんて……人間の方が醜くない?って思っちゃうことがあるんだよね。私達艦娘は人間とこの国の為に尽くしているのに……人間なんてって思ったこともあったけど、提督みたいな人が要るってわかったからもう一度頑張ろうって思える。

 

 

「提督もう食べてるの?はっやーい!!!」

 

「那珂ちゃんの朝一ライブやっちゃうよ♪」

 

「おお!?鈴谷さんのカレーですね。記念に一枚……」

 

「美味しそうですわね。鈴谷、提督はなんと?」

 

「美味しいって」

 

「そう……良かったですわね」

 

 

 熊野達も来てくれた。そして……

 

 

「朝からの装備開発も楽じゃないわね……はぁ、喉乾いた」

 

『「おやつー!!!」』

 

『「われがいちばんのりだ!!」』

 

『「させないよ!」』

 

『「んん~うまい!!!」』

 

『「さきをこされたー!!?」』

 

「妖精さん達もはしゃいじゃって……あら、提督今日はやけにお早いですね」

 

「提督さんおはよー。おっ、今日は鈴谷のカレーだね」

 

「なんじゃもうお主は食べておるのか?筑摩、吾輩も食べるぞ。勿論辛口でじゃ」

 

「鈴谷さん、私達にもお願いします。それと……利根姉さんは甘口でお願いします

 

「了解したよ。鈴谷におっまかせー♪」

 

 

 ○○鎮守府R基地で共に過ごしたみんな。みんなとこうして楽しくお話できるのは提督のおかげなんだよ?深海棲艦の攻撃で沈んでいった駆逐艦の子達の分まで私達幸せになってみせる。だからね提督……

 

 

「ねぇ、提督」

 

「んぁ?なんだ?」

 

「なんでもない♪」

 

「……なんなんだ?」

 

 

 これからずっと私達の提督で居てよね♪

 

 

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