それでは……
本編どうぞ!
「なんじゃこりゃ!!?」
ここ、○○鎮守府A基地に青年の声が響き渡った。
「し、司令官なにかありましたか!?」
昨日の出来事で不安は残るにせよ、青年に期待を込めている吹雪は響き渡った声を聞いて寝ていた体を慌てておこした。急いで食堂の調理場に姿を現したのだ。
「これはどういうことだ!?なんで食料が全部レーションなんだよ!!?」
青年が手に取っていたのは段ボール箱に無造作に入れられていたレーションだった。レーションは吹雪達にとって唯一の食料だった。艦娘は最悪食事を摂らなくても生きていけることが判明しているが、食事を摂らないと人間と同じく様々な問題が発生し、戦力にも影響を及ぼしている。前提督は不細工である艦娘達にまともな食事を与えることはしなかった。使い捨てなのだから残飯すら勿体ないと自分だけは豪華な食事を摂り、艦娘にはレーションで十分だと考えていたようだ。吹雪には見慣れたものだが、青年にとっては死活問題だ。
俺もこれを食べろと?ふざけんな!このレーションすっげぇ不味い奴じゃねぇかよ!?毎日レーションとか死ぬだろうが!!思った以上に最悪の環境じゃねぇか!!?おのれ……先輩方はこれを知っていて放置したのか!?せめて俺だけでもまともな飯にありつけるようにしてほしかったぞ!!
青年は前提督だけ満足な食事を取っていたことを知らない。提督である自分もこのレーションで生活せねばならないと思い込んでしまった。
「これを毎日食べていたのか!?」
「は、はいそうです」
「くぅ……はっ!?吹雪、ちなみにお前達寝床はどうしている?」
「寝床……ですか?」
吹雪は意味がわからなかった。何故寝床について提督は聞いてきたのか。
「レーション生活なんて正気じゃねぇ。この鎮守府に正常な場所はあるのか?お前達の寝床には布団とかは当然あるよな?」
「布団?布団とは……あのフカフカした感触がある……あれですか?」
「当たり前だろ。まるで見たことないようなことを言うな」
「見たことはあります……けど触ったことはありません」
「……はっ?」
吹雪はこの鎮守府で建造されたが待遇は悪く、艦娘は使い捨てだからと生活品まで不要だと判断されていた。故に布団で寝たことは無いと言う。青年は吹雪の答えに言葉を失っていた時に誰かが食堂の扉を開いた。
「むにゃ……吹雪ちゃんどうしたの……にゃ!?提督!!?」
「おはようございます……なのです!」
寝ぼけながら食堂の扉が開かれ調理場に居た青年を発見した睦月と電は慌てて姿勢を正した。やはり前提督の影響が残っており、昨日の期待は嘘だったのではないかと思うところもあるようで体が小刻みに震えていた。だが、青年にとって今はそれどころの話じゃない。これから毎日食べるはずの食事がレーションだけ、吹雪の衝撃発言に頭がいっぱいであったがそんな時だ。
青年は頭に軽い重みを感じた。吹雪達がこちらを見て驚いている様子であり、何かと思ってそれを摘まんで見れば妖精であった。その妖精は摘ままれながら吹雪達を指さした。
「俺に何の用だチ……何の用かな妖精さん?」
妖精の機嫌を損ねないように昨日のことを思い出し言い直す。
『「かんむすのへやをみて」』
「部屋?」
妖精は何かを伝えたい様子でつぶらな瞳で見つめて来る。小動物に見える愛らしさに青年の胸がキュンとしてしまった。
かわいい……はっ!?バカか俺は!チビなんかに心許してなるものかよ!決してロリコンではないからな。それはそうとチビの言うには吹雪達の部屋を見に行けと言うことだな?俺に何を期待しているんだこのチビは?とりあえず機嫌を損ねない為にも言うことを聞くしかないか……
「おい吹雪、お前達が寝ている寝床を今から視察しに行くぞ」
「ええっ!?で、でも司令官……」
ええい、何故悩む!俺は腹減っているんだ。早くしないとレーション飯になるだろ早く案内しろよ!!
「早く行くぞ吹雪、急がないと朝食が不味いレーション飯になってしまうだろ!」
「し、司令官!?」
オドオドしていた吹雪がもたついていた為、青年は寝床へ案内させる。その過程で無意識に吹雪の手を取ると言う形でだ。吹雪が何やら言っていたが途中から聞こえなくなり青年は気にも留めず寮へと向かって行く。その間、吹雪はなすすべもなく引かれて食堂から姿を消した。その後を唖然と見つめていた睦月と電。
「にゃしぃ……提督は妖精が見えているみたい」
「なのです……それに睦月さん見ましたか?」
「提督が吹雪ちゃんの手を握っていた気がした……あれ睦月の錯覚?」
「違うのです。電もハッキリ見ました。今度の司令官さんは……信じてもいいかもしれないのです」
睦月と電は艦娘寮へと向かった青年と吹雪の後を追った。
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「叢雲ちゃんは行かないっぽい?」
「誰が行くもんですか。それと吹雪はどこ行ったの?」
「吹雪は真っ先に向かったよ。睦月と電もね」
「はぁ!?なんで行ったのよ!!?あいつなんて放っておけばいいのに!」
朝、提督の声が鎮守府内に響き渡り吹雪達が向かって行った。何があったのだろう?
昨日新しい提督が着任した。初めて見た感想は鼻血を出していた。吹雪が言うにはいきなり鼻血を出して倒れたとか……どういうことかわからなかったけど、とりあえず吹雪と夕立と協力して執務室へと運んだ。男性に触れて良いのか思ったけど緊急事態だから仕方なかったし、前提督も男性だったから正直嫌だった。
僕は前提督が嫌いだった。僕だけじゃなく夕立もみんなも当然好きじゃなかった。男性は僕たち艦娘に対して優しくしてくれないし、同じ女性であっても容姿の優劣で上下関係を決める人ばかりで、どうしてこんな人たちの為に僕たちは戦っているのだろうと思ったこともあった。今度やってくる提督もそんな人なんだろうなって心の底では思っていたんだけど、叢雲が提督に食い掛ったのを取り押さえていた時に提督が鼻血を出していたのを見たんだ。みんなどうしたのかと唖然としていたけど、その時の瞳を知ってる。
前提督が女性の裸体が晒された如何わしい本を眺めていた時と同じ瞳だった。性的に女性を見る男性の瞳だったのだけれど……僕たちは美人じゃない。前提督が眺めていた本に載っている人だって美人だったし、不細工な女性に対して優しく対応してくれるのは少ない。表面上はそうでも内側は違ったりすることだってあるみたい。だから提督のことを不思議に思った。叢雲を性的な目で見てる?なんて思ったけどそんなことはない。叢雲には失礼だけど僕たちにはそう言った希望は万に一つも可能性はない……ないはずなんだけど腑に落ちない。
外道提督は何かが違う。僕はそう思っている……何かがわからないけどね。
時雨も青年のことを信用した訳ではない。しかし彼女が思うのは何かが他の提督と違うと言う曖昧な答えだが、期待を僅かに抱いているのは確かだった。
「邪魔するぞ」
「……えっ?」
いきなりドアが開かれたと思えば噂をすれば何とやら……青年がそこにいた。時雨だけが驚いたのではない。この場に居た夕立も叢雲も驚いていた。急に現れたことに対してであったが、それよりも注目する光景がある。視線を青年の顔から下へ腕から手へと向けると別の手が繋がれていた。その手から腕へと視線は上がり、確かめるとそこには真っ赤になっていた見知った顔があった。
……えっ、吹雪?えっ?ど、どういう状況?僕は幻を見ているのかな?提督と吹雪が手を繋いでいるように見えるけど……夕立は固まっているね。叢雲は……うん。そんな崩壊した顔なんて見せないでほしかったな。それに提督の頭に乗っているのってもしかして妖精?
「おいお前ら何を固まっている?折角俺がお前らの寝床を見に来てやったって言うのに」
唖然とする艦娘達を尻目に青年は手短に何があったのか説明した。
提督が言うにはレーションしか食べれない今の環境がおかしいみたい。僕は初めからレーションしか食べたことなかったし、食べさせてもらえなかった。だからもう慣れて作業と同じ感覚で食堂に行ってはレーションを食べてそれで出撃、帰ってお腹が減っていてもレーションだけのそんな毎日だった。初めは美味しくないレーションの味に嫌だなと思いながらも毎日続けば何も感じなくなる。だから味なんてもうわからなかった。提督は食事を改善そして僕たちの寝床の視察に来たみたい……提督驚いているね。まぁ……うん、酷いもんね。
辺りを見回してみると小汚い部屋っと言うよりも倉庫だった。所々シミや汚れが目立ち、壁が変色しており不潔感丸出しで見るだけで気分を害しそうになる。青年も頭に乗っていた妖精もあまりの汚さに顔をしかめているぐらいだ。
「なんだこの汚い壁は!?それにここ倉庫じゃねぇか!?カビも生えていやがるし汚ねぇ……誰がこんな鎮守府にしやがったんだ!!?」
「前提督ですよ、提督」
「それもそうだったな……って何を冷静に答えている時雨!これは死活問題だろう!だから妖精さんが艦娘共の部屋を見ろと言ったんだな?」
『「そだよ」』
提督が頭に乗っている妖精と話をしている?妖精の言葉は艦娘である僕たちには聞こえない。身振り手振りで何を伝えたいのか把握するしかないけど、人で見える人の中には言葉で意思疎通できる人物もいるとか聞いたことがある。すると提督は……その人物ってことで……妖精はいい人の傍に集まる。前提督は妖精が見えていなかったみたいだし、僕が建造されてからも妖精がここに居たところなんて見たこと無かった。
提督になるには妖精が見えなければならない……それは絶対じゃない。昔は結構妖精が見える人が居たみたいだけどみんなやめていったんだって。理由は大体想像できるよ……現在提督の数が少ないって聞いたこともね。訓練学校を卒業して妖精が見えなくても提督になれると聞いた。でも外道提督は妖精が見えて意思疎通ができる。それに僕の
妖精とやり取りしている青年の姿を見て時雨は思うことがあった様子だ。そんな時雨とは裏腹に叢雲がようやく現実へと意識を取り戻した。
「ちょ、ちょっと妖精がいる!?えっ、吹雪あんた……こいつと手を……えっ、ええぇ!!?」
「手だと?何を言って……んぉおおお!!?」
提督が慌てて手を離した。今まで気づいていなかったのかい?でもどうして満更でもなさそうなの?吹雪の方もさっきから真っ赤な顔をしている。まぁ、提督はちょっと怖いけど僕たちと違って顔はいいからね。それに男性に触れられるなんて……ちょっと羨ましいと思う僕はおかしいかな?昨日会ったばかりなのになんだろうね、安心感があると言うか……よくわからないや。
もしかしてこの人なら本当に変えてくれるかも……信じていいかもしれない。こんなことで提督を信じようとするなんて僕ってちょろいのかな?でも……そうなったらいいな。
今までは恐怖に怯える毎日だったが、これから変わっていく気がする。時雨はこの瞬間とても心地よいと感じることができた。きっとこれは青年のおかげなのだろうか……彼女は提督となった青年に対して少し心を許してもいいかなっと思った瞬間だった。
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「吹雪ちゃん大丈夫?」
「ふぁ、ふぁい……だいじょうぶ……だぉ」
「重傷っぽい」
フラフラ状態の吹雪は睦月と夕立が面倒を見ることになった。男性に触れられるなど暴力を受けた時しかなかったが、吹雪が感じたのは力強く温もりを感じる優しい感触だった。その温もりを感じていると段々体温が上昇していくのが頭ではわかっていても、青年は手を離してくれず寧ろこのままがいいとさえ思っていた。気づいた頃には吹雪はゆでだこになってしまっていた。
そして青年も同じように湯気が頭から上がっていた。妖精もいつの間にか肩に移動しており、小さなうちわを仰いでいる。この鎮守府では決して見ることができなかった光景がそこにあった。
「……ゴホンッ!ええ……さっきのことは忘れろ。いいな吹雪?」
「ふぇ?」
「い・い・な!」
「ふぁ、ふぁい!!」
無理やり話題を変えることにした青年は何事もなかったかのように振舞おうとするが、やはり恥ずかしいのだろうか吹雪と視線が合う度に二人は逸らしてしまった。
「提督さんも照れているっぽい?」
「ふふ、そうだね」
その姿に夕立はポカンとしており、時雨はクスリと笑っていた。こんな温かい光景を見れるだなんて誰が想像しただろうか。この場の空気が柔らかくなった気がする。
「……それで、何の用なのよ?」
「さっき言ったろ。見に来たと」
「私としてはさっさと出て行ってほしいんだけど」
「はわわ……叢雲さん!」
柔らかな空気になっても変わらない叢雲は反抗的な態度を見せる。慌てて止めに入る電だがそれでも態度を変えようとはしない。そんな叢雲に対して青年は内心昨日の件もあって、妖精がいなければ解体していたぐらいだ。いつか思い知らしめてやるっと意気込んでいたが、それはいつになるのやらわからない。少なくとも妖精がこの鎮守府にいる間は叶わぬ願いだろうし、青年が妖精をここから追い出すなど考えられない。
妖精達の間で青年がいい人間だと噂が広まったことでどこからともなく集まりだしたようだ。己の所業がすぐに知れ渡ってしまう環境と化し、横暴な態度を取るに取れなくなり我慢するしかなくなった。仕返しなど遠く未来の話になりそうだ。
「……まぁ、寝床を見れたから出て行ってやるよ。しかしお前ら……昨日もここで寝ていたのかよ?」
「ふん!そうよ、それはここが私達の寝室だからよ」
気丈に振舞っているように見えた叢雲であるが、彼女自身もここが寝室だなんて認めたくないのだろうが、今までここが彼女達にとって前提督から逃れられる唯一の安らげる場所であったのだから悲しいものだ。
「他にも部屋があるだろ?何故六人でこんな狭くて汚い倉庫で寝ていたんだ?」
「それは……電達が使い捨てだから倉庫にでも寝ていればいいって言われたのです」
「……他の連中もそうだったのか?」
「以前は僕たち以外にも十人で寝ていたよ。詰め寄って夏はよかったけれど、冬はみんな固まって温め合っていたぐらいだ。でも僕たちはまだマシな方だったよ……もっと酷い扱いを受けた子達は冷たい廊下で転がされていたから……」
「……」
十人……今は六人しかいない。時雨の言葉にこの場にいた艦娘達が唇を噛みしめていた。辛く苦しい光景が彼女達の中で蘇ったのだろう……色々な感情が混ざった表情をしていた。青年はそんな彼女達を見て鬱陶しそうに吐き捨てる。
「……チッ、お前ら今日から別の部屋で寝ろ」
「えっ?いいっぽ……いいのですか?」
「提督命令だ。夕立、それに敬語を使うなと言ったはずだ。普段は気楽に接すればいい……
「わかったっぽい!!」
夕立は嬉しそうにしていた。青年にとっては吹雪達艦娘の士気が下がるのは避けたかった。昇進の為の戦力をこれよりも低下させてしまっては存続することさえ怪しい状況のこの場所だ。それに妖精の目もあるので環境改善しようとしただけだったのだが、結果的に彼女達の為になっていた。そして青年はこの時やるべきことが増えた。
「俺は少し出かけてくる」
「司令官……どこへ行くのですか?」
「ちょっとな。お前達は食堂で待ってろ。それと……妖精さん」
妖精に耳打ちをして青年が何か指示を出したようだ。何やら「おかし」と聞こえたが詳しいことはわからなかった。それでも妖精が目を輝かせて青年から降りて敬礼をした後、どこかに去って行く姿を見た。
青年は吹雪達を残し一人で鎮守府から出かけた。行き先も言わずに……
「司令官……」
「吹雪は心配?」
「うん、このまま帰って来なかったたらどうしようって。時雨ちゃんは?」
「僕は……提督のことを少しだけど信じようと思う。だから提督は帰って来てくれる……っと思いたい」
「電もなのです。妖精さんが見える人はいい人と聞いたことがあるのです。だから司令官さんはきっといい人なのです!」
「睦月も……まだ怖いけど、前よりも良くなりそうな気がする……にゃしぃ」
「夕立は名前で呼ばれたよ。提督さん夕立のこと憶えてくれているっぽい!」
「ふん!そんな単純なことで信用するだなんてバカじゃないの?どうせ私達が不細工だからって辞任表明でも大本営に申し出に行く気じゃないの?」
なんだかんだ言っても六人とも青年を見送りに門前まで来ていた。彼女達は艦娘であり、裏切られようとも心のどこかで提督を必要としていた。心の拠り所である存在それが提督だ。反抗的な叢雲もきっと心の奥底では期待に応えてほしいと思っているのだろう。こうして誰一人として欠けることなくこの場にいることが証拠でもあった。
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「食え」
食堂に青年の一言が刻まれた。集まっていた吹雪達は突然のことで反応が遅れたが、吹雪が口に出す。
「えっと……司令官これは?」
「どこからどう見ても弁当だろ?まさかこれも?」
「はい……」
「はぁ……」
布団だけならず弁当もだったとは……ため息が出てしまう。その姿を見て、自分達に失望したのかと思うと吹雪はゾッとしたが、青年の口から出たのは思いもよらない言葉だった。
「とりあえず全員分買って来たから食え」
「「「「「……えっ?」」」」」
吹雪達は何度目になるだろうか、またしても青年の言葉に唖然としてしまう。
司令官が帰って来てくれてホッとしました。あのままどこかに行ってしまうのではないかと不安に思いましたが杞憂でした。でも司令官が帰って来たら手には山盛りに膨らんでいた袋を持っていました。そこから取り出したものを見て私達は息を呑みました。
知識で知っていた程度でしたが、白い米……白ご飯からホカホカと湯気が出ていました。それだけではありませんでした。唐揚げ、野菜、漬物、そしてあれは……いい匂いが漂ってきます。もしかしてあれは……!
「あの……司令官、このドロドロした液体のようなものは?」
「吹雪お前……カレーも知らないのかよ……」
カレー!?あの子供から大人までみんな知っている美味しい食べ物……いつかは食べてみたいと思っていました。けれど一生食べることができないと諦めていた……まさか司令官がカレーを用意してくれるなんて!!!
吹雪達は皆お弁当に夢中になっており、中でもカレーが注目されている。ゴクリと喉を鳴らす夕立や睦月の姿は無理もないことだ。
涎が出てしまう程に美味しそうです。朝は司令官の叫びで起こされて私達は朝食もまだでした。レーションを食べようか悩みましたが、司令官が「レーションは食うな」と念を押されて味は好きではないですが、司令官の命令だったのでみんな我慢していました。そしたらこれです。
カレーを含め美味しそうなものが詰まったこれは
「提督……僕たちはこれを食べていいの?」
「当たり前だ。その為に買って来たんだから」
「提督さん……お金はどうしたっぽい?」
「俺の自腹だ」
「そ、そんなことしちゃダメなのです!」
みんな司令官の行動に唖然としているみたいです。電ちゃんはあたあたと
「いいか、お前達はここの戦力だ。その戦力の士気が落ちた状態で勝利できるほど甘くはない。それに昨日言っただろ。これからは俺はお前達の為に尽くすつもりでいるっと……だからお前達は俺の為に尽くす。お互いに支え合っていこうって言ったばかりだ。忘れてたのか?」
「そ、そんなことないです……睦月感激です!」
「っと言うことでお前達には弁当を残さず食べてもらう。お茶のお代わりも自由だ。それでも腹が減っているのであればお菓子を摘まめ。妖精さんに大量に買って来たが、お前達の分も買ってあるからな」
妖精さん達がわらわらと群がっている方を見ればみんなお菓子を手に取って喜んで食べていた。中には自慢げに両手にお菓子を持っている子も居て癒されます。
私達が司令官を見送って戻って来たら妖精さん達が沢山居て、鎮守府内を掃除していました。私達の寝床であった倉庫もいつの間にか綺麗になっていて驚きました。きっと司令官が妖精さんに伝えたのだと思います。今日から倉庫で寝る必要がない……それを考えるだけで嬉しいです!それに妖精さん達だけでなく私達までお菓子を食べていいだなんて……
喜びが溢れんばかりの吹雪とは対照的に叢雲は疑心暗鬼に飲まれていた。今まで人一倍酷い扱いを受けて来たのだから提督と言う存在に対して警戒するのも人一倍大きかった。
「……何を考えているの?」
「なんだ?叢雲は要らないのか?なら仕方ないレーション飯で我慢してもらうしか……」
「だ、誰も要らないなんて言ってないわよ!!」
叢雲は反抗的な態度を取りつつも物欲しそうに弁当を見つめていた。その弁当に手が伸ばされた時、凄い速さで自分の弁当を守りぬいた叢雲は箸を手にした。そして青年の許可もなく、今も湯気が立ち上る白ご飯をカレーに付けて恐る恐るそれを食べた。
「――ッ!!?」
そこからは止まらなかった。次々に弁当の中身を口に運んでいく様はまさに重機が土砂を
「お前達も食べろ。提督命令だ」
吹雪達もその姿に圧倒されながらも許可が出たので口にした。そこからは全員とも重機のようであった。
時雨も夕立も睦月も電も艦娘達が嬉しそうに弁当を食べていた。睦月と電は嬉し過ぎて泣きそうにもなっていたほどだ。叢雲も今までの鬱憤を晴らすかのように食べてもいいと言われたお菓子に手を伸ばして口に放り込んでいく。それにつられて時雨達もお菓子を食べて誰もが「おいしい」と口ずさんでいた。
希望に満ちた食事がそこにあった。
夢を見ているみたいです。温かい……いつもはレーションだけの少ない食事でお腹を誰もが空かせていました。けれどこれからはそうならないみたいです。お菓子もお茶もある……初めてです。こんなに美味しくて暖かい食事ができたのは。この司令官なら私達を助けてくれる。叢雲ちゃんも時雨ちゃんも夕立ちゃん、睦月ちゃんも電ちゃんも……この鎮守府は変わっていく。私は……吹雪は司令官のことを信じます!!
吹雪達は初めてこの鎮守府に居て良かったと思えた。しかし環境改善は始まったばかりである。
「(……ったく、折角自腹でお前達に飯を食わせてやったんだからちゃんと俺の為に働けよな艦娘共)」
青年は吹雪達の邪魔にならないように執務室でカップ麺を