それでは……
本編どうぞ!
「ふっふ~ん♪これで掃除は終わりなのです!」
執務室の隣室は青年の寝室となっており、電が掃除を終わらせたところだ。
「……皆さんは大丈夫なのでしょうか……?」
ふっと表情に不安が現れる。数日前、漁師達の下へ訪れた当日は艦娘講義で一日を潰してしまったが、後日向こうから連絡が来た。青年が何やら電話越しに色々と話し込んでいる姿を見た。そして先日再び出向くことになり、今度は睦月と叢雲が護衛としてついて行くことになり、帰って来た二人は満足な笑みを浮かべ、青年が財布を寂しそうに見つめていた記憶がある。コンビニで奢ってもらったらしく、時雨と電は嬉しさでお腹を満たしていたので羨ましいとは思っていない……っとはいかず、正直言えば羨ましいと思った。食べ物の欲には誰だって敵わないのだ。なので今度は絶対に奢ってもらおうと心に誓い、近日青年の財布にダメージを与えることになる。
それはそうと、漁師達との会談は順調にいったようで護衛付きの漁が再開されることになった。当然その護衛とは○○鎮守府A基地の艦娘だ。しかも青年が居ない状態での仕事に嫌な顔をする艦娘は何人かいたが、彼が艦娘講義を行った為か少しは向けられる視線が微々たるが穏やかになった気がした。
抵抗はあるものの、艦娘が守ってくれなければ仕事ができず、今までの考えでは「仕事ができないのは艦娘がさっさと深海棲艦を撃退しないからだ!」と声を張り上げていただろう。しかし自分達の未来を想像し不安が生まれた。このままでは食べていくことさえ困難になってしまうのはわかりきっていることだ。漁師達は一旦ではあるが今の状況を変えることを選んだ。漁をして生計を建て直すことを優先した。別に漁をしている間、ずっと艦娘を視界に収めておく必要はなく、艦娘はただ漁師達を守るだけの任務。そこに容姿の良し悪しは関係なく、青年の姑息な作戦の影響により、漁師達の見方を少しだけだが変えることに成功したのだ。
おかげで現在漁師達の護衛として吹雪達数名が任務で出かけているところである。しかし万が一の場合もある為に青年も同行しており不在。書類仕事も残ってはあるが、今日秘書艦である電が留守番しているから何も問題ないと判断し、重要案件となる任務に自ら出向く必要があったのだ。
決して吹雪達を信用していないことではない。護衛を任せても問題なく遂行してくれると断言できるが、漁師側に問題があった場合、艦娘の立場は弱い。もしもの可能性を捨てきれず、トラブルを避ける為の行動でもある。
これでも人間と艦娘との未来への第一歩となろう。まだ容姿の認識による壁はあるが次第に分かり合えればいいだけの話。この結果に電は凄いと感じていた。
凄いのです!あの怖そうな漁師さん達を振り向かせたのは司令官さんなのです!いくら電達が頑張っても聞いてすら貰えず、説得は出来なかったと思うのです。でも司令官さんは漁師さん達を説得するだけじゃなく、電達のことをずっと見ていてくれていたのです。
嬉しかったのです。艦娘のことを理解してくれて、艦娘の良さを説いてくれた司令官さんの言葉を聞いていたら段々胸の奥から気持ちがいっぱいに溢れ出そうになったのです。帰るまで我慢しようとしたけど、帰り道で我慢できなくなって、電の汚い顔を更に汚くしてしまって迷惑をかけてしまったのです。で、でもそのおかげで……綺麗と言ってくれたのです♪
あの時の事を思い出して顔が赤くなる。抱えていた不安が胸の鼓動に変わる。ドクンドクンと高鳴りを感じるのに不快感など存在しなかった。
「……あっ、司令官さんのベッド」
先ほどまではそれほど気にもならない程度だったが、目に入ってからベッドに視線が釘付けだ。
青年が毎日ここで寝ている。そう思うと胸の鼓動が更に高まるのを感じてしまう。
……だ、誰も見ていないから……だ、大丈夫……なのですっ!!
自分以外の誰も居るはずもない小さな寝室で挙動不審の電は恐る恐るベッドの中へと潜り込み、青年が今朝まで寝ていた枕を掴み抱きしめた。枕に顔を押し当て荒々しい深呼吸を何度も繰り返す。何をしているのか……吸引しているのだ。
何を?ベッドの匂い?惜しい、正解は青年の匂いだ。
すーはー……すーはー……司令官さんの匂いは落ち着く……のです……ふぅ……♪
呼吸する度に鼓動が高まり、青年が寝ていたベッドの中は最高の居心地を感じさせ体温が上昇していくのがわかる。まるで天国に居るかのような気分になる。他に誰も居ない今、思う存分に至福のひと時を味わっていた。
「那珂ちゃん、
「はわわわ!!?」
しかしそんな至福のひと時は突如として終わりを告げる。
艦隊のアイドル(自称)那珂ちゃんの登場だ。彼女が隣の執務室へと現れたことに驚いて電はベッドから転がり落ちてしまう。
「う~ん?提督居るの……電ちゃん?そんなところで何してるのー?」
物音がした寝室へ突撃する那珂が見たものはベッドの傍でひっくり返って可愛らしい「パンツ!パンツです!」と主張する
「な、なんでもないのです!そ、それよりも那珂ちゃんさん(那珂は「ちゃん」付けしないといけないらしい)は何をしに来たのですか?」
慌てて服装を整えた電は話題を変えることにした。青年のベッドを堪能してたなんて知られたら嫉妬の念に操られた艦娘達から恨み妬みの炎を吐かれる……想像しただけで体が震えてしまう。
「那珂ちゃんは提督と一緒にレッスンしようと誘いに来ただけだよ?」
「司令官さんは今日は吹雪さん達とお仕事で居ないのですよ?」
「あっ、そうだった。那珂ちゃんうっかりしてました。てへぺろ♪」
「………………………………………………」
那珂ちゃんさんが来なければもっと司令官さんの匂いを堪能できていたのです……とても残念なのです。そう、とても残念なのですよ、那珂ちゃんさんが来なければ……
忘れていたことをごまかす那珂に一瞬どす黒い感情が湧いた。その証拠に電の瞳に光が籠っていなかった。まぁそれも男性の匂いを堪能できる機会を奪われたのだから仕方ないことだとフォローしておこう。
「……それで、
「あれ?さっきと口調違わない?それに那珂ちゃんに対して冷たいような……」
「さぁ、きっと
「あ、はい」
那珂は冷めきった瞳を向けるレアな電を見ることになり、露骨に機嫌が悪くなったちょっとした仕返しだった。
それからは何事もなく元の電に戻ったことで那珂の中では見間違いとして処理された。そっちの方が彼女の為にもなろう。さて、青年が居ないことを知った那珂は手が空いた電と共にのんびりしようと港に誘い、
「……提督いつ帰って来るかなー?」
「お仕事ですから遅くなると思うのです。夜には帰って来るとは思うのですが……みんな早く帰って来てほしいのです」
「……ねぇ、電ちゃんは元々ここに所属していたんだよね?」
「そうなのです。一体それがなんなのです?」
「ここで……沢山の艦娘が轟沈したんだよね?」
「………………………………………………」
何故唐突にそんなことを聞く気になったのか定かではないが、電にとっては暗く、辛い過去の話になるのは間違いない。思い出したくない記憶を電は持っていることも那珂も知っている彼女は真剣な表情をしており、興味本位で聞いたことではないのは確かだ。
「電ちゃん達は提督に救ってもらったんだよね?」
「……そうなのです」
「でも六人だけ……だった」
「……そう……なのです」
天龍さんも龍田さんもみんな沈んでしまったのです。司令官さんにもっと早く会っていれば……今頃は一緒に居られたはずなのです……
「原因は前提督だって聞いたよ。でも沈めたのは深海棲艦だってことも。前提督が原因を作ったわけだけど、深海棲艦が居なければ沈むなんてことは起こらなかった。それでね、那珂ちゃん思ったんだけどさ……深海棲艦ってなんなんだろうね?」
「……どういうことなのです?」
それは……一体どういうことなのです?深海棲艦は深海棲艦ではないのですか?
那珂の言っている意味がわからない。電以外でも同じことを思っただろう。
「この前、提督がね深海棲艦について調べていたことがあったんだ」
そうだったのです。司令官さんは深海棲艦について資料を読み漁っている時があったのです。司令官さんは「情報が勝敗に左右する」とも言ってた……でもなんで那珂ちゃんさんは今その話を?
「そんでね、その時に提督がボソッと呟いたんだ……」
『ドロップはしないのか?』
「ドロップ?飴玉なのですか?」
「多分違うと思うよ。那珂ちゃんは提督の呟きが聞こえただけだから詳しくはわかんないけど」
ドロップとは何のことなのでしょうか?気になるのですが、那珂ちゃんさんが電が知らなかった司令官さんのことを知っているのは……なんだか不公平なのです!!
秘書艦という立場にありながら、自分よりも那珂の方が青年のことを一つ多く知っていたことに妬いてしまう。無意識に頬を膨らませている姿があった。
「……でも今の話は深海棲艦とどう関係があるのですか?」
「提督は深海棲艦について調べていたんだよ?絶対何か関係があると思わない?」
「確かにそうなのです……」
深海棲艦は艦娘の敵、でも何故戦う必要があるのでしょうか?できれば戦いたくはないのです。傷つけ合うのは痛いだけでお互いに悲しいだけなのに……戦わずに済むならそうしたいのですが、そう言うわけにはいかないのが現実なのです。
那珂の話では深海棲艦について調べ物をしていた時にボソリと呟いた。『ドロップ』この言葉に何の意味を持っているのか?電と那珂は答えが出ない。そもそも深海棲艦とは一体何なのか?
深海棲艦は突如として海から現れた敵対する勢力。それに共鳴するように艦娘が現れ、現在の形へと世界が常識として認知された。しかしだ、深海棲艦の正体とは?何故人間を恨み、艦娘を恨むのか?敵であることしか明白になっていない。二人も深海棲艦について何も知らないのだ。
「でね、那珂ちゃん一つの仮説を立ててみました」
「仮説……ですか?」
「深海棲艦とは何なのか……那珂ちゃんなりの仮説です!」
「それでどんな仮説なのですか?」
「それは……一応ねんのために聞いておくね。那珂ちゃんの仮説……聞きたい?」
那珂の真剣な言葉。聞いても後悔しないか?と語っているようだ。
「……聞かせてほしいのです」
それでも電は聞くことは選んだ。戦争をしておきながら自分は何も深海棲艦のことを知らなさすぎる。それが例え仮説であっても他人の答えを聞いてみたかった。
「……
「――ッ!!?」
『
「う、嘘なのです!!深海棲艦が艦娘だったなんて……その仮説は間違っているのです!!!」
電は滅多に怒らない。しかし今の彼女は怒りを感じていた。そうであってほしくない……那珂の仮説は間違っていると彼女としては初めてかもしれない程に声を荒げた。そんな電を見ても那珂は驚く素振りを見せない。彼女だってわかっている。深海棲艦が艦娘だったなんて……信じたくはない。仮説が本当ならば仲間同士で沈め合っているということになるのだから。
「……ごめん」
「あっ、い、いえ……電の方も……声を荒げてしまったのです」
仮説とはいえ、怒りをぶつけてしまった電は反省する。那珂もそもそもこんな話題を出さなければこうならなかったと反省していた……そんな時だ。
妖精が乗車している水上偵察機。いつもの通りの警戒空域を巡回しているはずだったが、こちらへ向かって電と那珂の上空を飛び回り、何かを伝えたがっている様子だ。不審に思った二人は海上へ降り立ち、水上偵察機に連れられて進んで行くと……
「「……?」」
海に謎の物体が波に押されているのを発見する。クジラ?もしかしてサメ?形も大きさも違う。妙に興味を惹かれた二人は海上を進み物体に近づくと……
「こ、これは……!!?」
「た、たいへんなのです!!?」
二人は物体を抱えて鎮守府へと持ち帰る……
「……なんだよ、これは!!?」
青年が驚愕の表情を露わにしていた。果たして青年が見たものとは!?
今後の展開についてアンケートを行いたいと思います。アンケート結果によって話の内容に矛盾が生じれば直す可能性もありますのでご了承ください。○○鎮守府R基地の艦娘は青年が……
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引き取るべき
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引き取る必要はない