あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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鎮守府に流れ着いたものとは!?


それでは……


本編どうぞ!




3-4 深海のお客様

「……なんだよ、これは!!?」

 

 

 青年は初の漁師達を護衛任務を完了した。途中ではぐれ深海棲艦との邂逅があったものの問題なく対処し、艦娘の存在意義を示すことに成功した。これにより艦娘の価値が向上する……とはいかなかった。醜い彼女達に対する嫌悪感と人間ではないことへの偏見(へんけん)が壁となっているが、こればかりは時間をかけて改善するしかなさそうだが焦ることはない。青年にとっては予想通りの展開であり、焦っても良いことはないのだ。

 出だしとしては高得点だろう。その結果に満足しつつ、失敗が許されない中での初の民間からの依頼に緊張と疲れを宿した吹雪達と共に鎮守府を目指す途中でのちょっとした出来事もここに記しておこう。

 

 

 ふとコンビニに立ち寄った青年。吹雪達は外で待ちぼうけをくらうかに思えたが、すぐに帰って来ると手に袋を持っていた。「手に持っている物はなんですか?」と聞けば「喜べ、頑張ったお前達の特別報酬だ!」と袋から取り出されたのはアイスだった。皆は大喜びし、甘いアイスに舌鼓を打ちながら凍えるどころか青年の優しさにポカポカと温かく感じた帰り道。

 いつもの彼ならばここで姑息な手を打っただろうが、今回ばかりは気分が良いこともあって些細な事は考えていなかった。本当にただの褒美だったのだ……(たま)には良いところもあるようだ。

 

 

 そんなひと時を過ごし、任務から帰って来た青年が目にしたのは驚愕の光景だった。そして彼の前方には守ろうとする吹雪達が立ち塞がっており、鎮守府全体が緊張に包まれている。何が起きているのか、それは一つの物体が原因だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで……深海棲艦が居るんだよ!!?」

 

 

 鎮守府に招かれざる客「軽巡ヘ級」がそこに居た。

 

 

 ★------------------★

 

 

 深海棲艦「軽巡ヘ級」とは。

 

 

 深海棲艦特有の艤装に人間が収まったような姿をしており、穴があいただけの仮面のような装甲を身に付け、身体には黒いボロ布を纏っている。しかし現在目の前に居るヘ級はそれ以上にボロボロの姿をしていた。艤装(?)のような体が所々破損しており、戦闘したであろう形跡があった。

 負傷者と見ておかしくない。しかし相手は深海棲艦で、人類と艦娘の敵である。何故深海棲艦がここに居るのか青年は戸惑ったが、留守番をしていた鈴谷が事の経緯を話してくれた。

 

 

 電と那珂が海上に浮かぶ深海棲艦を発見する。敵を発見したことに警戒心はあったが、意識はなく、あまりにも酷い損傷具合を見て心が痛んだのかすぐに陸へと引き上げる。しかしどうするか迷うことになった。当然のことだが深海棲艦なのだ。何人の艦娘が沈められたか……それでも苦しそうに時おり発する声が二人の心を揺らがせた。最終的には電が「見捨てられないのです!」と入渠ドックへと連れて行こうとした。ここで鈴谷と熊野の登場だ。偶然ドック前を通りかかった二人は世間話でもしようと思っていたが、目に飛び込んできた深海棲艦に悲鳴をあげてしまう。

 騒ぎを聞きつけ駆け付けた青葉達や利根達も鎮守府内に深海棲艦が居たことに驚くが、ここは陸地である為に艤装を無闇に扱うことは出来なかったが、入渠ドックへ行くことは阻止できた。何とか電と那珂はお願いするも流石に仲間であってもそれを許すことはできない。誰にだって深海棲艦に対して良い感情を持っている訳がない。ああだこうだと揉めている内に青年が帰って来る。誰も出迎えがないことに疑問を感じ、探し回っているとこの現場に遭遇したというわけだ。

 

 

「状況はわかった。電はまだわかるが、那珂も深海棲艦を助けたいとはどういうことだ?普通なら反対すると思うのだが?」

 

「いつもならそうなんだろうけど、ちょっと思うところがあって……えっと……」

 

 

 周りの視線を気にしている那珂は電に話した仮説をここで言うべきではないと判断している。仮にも仮説だが、やはり深海棲艦が艦娘だったなんて意識が芽生えてしまったら、今後の戦闘で支障をきたすことになりかねないからだ。

 

 

 何かあるようだな。ここでは話せない事らしい……か。

 

 

「言いにくいことがあるなら後で執務室だ。わかったな?」

 

「……はい」

 

「そして問題のこいつだ。どうするか……」

 

「あっ、あの司令官さん!罰は電が受けるので深海棲艦さんを許してあげてほしいのです!」

 

「ちょっと電!!さっきから言っているけど相手は深海棲艦なのよ!?」

 

「そうじゃぞ!!叢雲の言う通りこやつは敵じゃ!!のぅ筑摩?」

 

「はい、利根姉さんに賛成です。瀕死の状態ですが深海棲艦ですので……後のことを考えると残酷ですが処分した方がいいかと」

 

「深海棲艦なんて私達を沈めることしか頭にないって!!そう思うよね翔鶴姉!?」

 

「そうよね……私も助けるのはどうかと思います」

 

「提督どうしたらいいの?このままだと……」

 

 

 深海棲艦を前に気が立っている。それもそうだ、仲間の仇が目の前に居る。電の優しさは美しいものだ。だが現実は美しさでは許されない事だってある。声を発しなかった夕張、睦月や時雨ですら電の味方にはなれない。混乱する現場に島風が青年に救いを求めて来た。

 

 

 まずいぞ、この状況は非常にまずい。最も恐れることは仲間割れだ。そうなってしまえば俺の昇進の為に築き上げてきた苦労が水の泡と化す……ちくしょう、折角いい気分で帰って来れたのによぉ!!とにかくこの状況をなんとかしなければ俺の今までの苦労も無駄となっちまう……んっ?

 

 

 青年は脳をフル回転させた。どのようにすればこの状況を打開できるのか考えていた時にふとこの騒動の元凶を見れば苦しそうな様子だ。息をしているのかはわからないが、か細く弱々しい音が聞こえて来る。

 

 

 ……チッ、どいつもこいつも厄介事を持ち込んでくれる。俺の苦労も理解しろってんだ!!ちくしょう、今日は運がついていないらしいな。だが放って置くわけにはいかねぇ、一番恐ろしいことは仲間割れだ。俺はこいつらのことなんて仲間とは思っていないが艦娘()同士が争うのは避けねばならない……まったく仕方ねぇ奴らだ!!

 

 

「チb……妖精さん」

 

『「なに?」』

 

「深海棲艦は入渠ドックで治るか?」

 

「司令官!!?」

 

 

 青年の言葉を耳にした吹雪は振り返る。その表情が言っている……深海棲艦を助けるのかと。

 

 

『「ためしたことないからわからない」』

 

「そうか……それでもやってくれるか?」

 

『「ていとくさんがいうなら」』

 

 

 状況を見守っていた妖精達に指示を出せば、各自動き出してくれた。妖精達の行動の意味がわかり、艦娘全員の視線が集中する。中には驚愕している艦娘の姿もあった程だ。

 青年は深海棲艦を入渠ドックへ運ぶことを選択した。何故助ける選択をするのか?艦娘同士で言い争っている間にも苦しみ続いているのだろう深海棲艦の姿に何も感じることがない程、青年の心は冷たくはなかったのだ。

 

 

「司令官さん……」

 

「電、勝手な判断はこのような状況を生むことがわかったか?」

 

「……はい、なのです」

 

「だがお前の誰も見捨てたくない精神は悪くないと言っておく。とりあえずこいつを入渠ドックへ運ぼう」

 

「ちょ、ちょっと待って!ほ、本当に深海棲艦を助けるの!!?」

 

 

 鈴谷が待ったをかけるのは無理もない。口出ししていなかったが彼女も反対なのだ。深海棲艦を助けようとしているのは電と那珂、そして青年だけだろう。

 

 

「鈴谷だけじゃなく、お前達全員思っていることだろうが、俺はこいつを助けることを選ぶ」

 

「そんなことしたら軍法会議ものだよ?下手したら逮捕されちゃうかもしれないよ?」

 

「提督さんが捕まるの!?それはダメっぽい!!」

 

 

 時雨と夕立の心配も確かだろうな。敵である深海棲艦を助けるなど言語道断の行為に等しい。だがな……

 

 

 青年の視線には傷口から流れる液体が映っている。その液体は人間や艦娘と同じ赤色をしていたのを彼は見逃すことは出来なかった。

 

 

「深海棲艦だって生きているらしいが、こんなボロボロの状態で戦えない程に弱っている相手に追い打ちをかけても勝ったと言えない。敵であるが……命を蔑ろに扱うことはできない」

 

「「「「「………………………………………………」」」」」

 

「やられたからやり返す。お前達が深海棲艦を憎んでいることは良く知っている。だが憎しみはいつかどこかで途切れなければ永遠と続いてしまう負の連鎖となるだろう。深海棲艦は憎むことが出来る。ならいつか深海棲艦は心を持つことができるかもしれない。微々たる可能性の話だが、心を持てば憎悪以外の感情も生まれるはずだ。戦争なんて虚しいだけだとわかってくれる日が来るかもしれない」

 

「そのようなことがありえますの?もしかしたら憎しみ以外に何もないかもしれませんわ」

 

「熊野の言う通りかもな。だが可能性は無いなんてことはない。絶対なんてこの世にないし、こいつはもう戦う力もなく艤装も損傷している。危険は少ない方だ。それを見越しての決定だが……今回だけだ」

 

「司令官さん……ありがとうなのです」

 

「提督……ありがとう」

 

「まぁ、念には念を入れて艤装は解除させてもらう。後、こいつから色々と事情が聞ければこちらにも得となる情報を掴むことだってできるかもしれない。決してこちらが損することにはならないはずだ……言葉が通じればいいんだがな。でだ、俺の決断に意を唱える奴がいるならここで聞いてやるが?」

 

 

 答えは沈黙だった。青年に意を唱える者は居なかったのは戦争なんて虚しいだけだと誰もが心の奥底で思っていたことだ。戦わずに済むのならそれ以上のものはないのだから。

 

 

 よっし!!!なんとかその場しのぎだが状況を鎮静化したぞ。この場はなんとかなったが、こいつらの心境にも細心の注意を払わなければならなくなったな。憎む相手が傍に居る状態ではストレスをより感じやすくなる。メンタルケアは欠かさずに行うようにせねば……士気がガタ落ちしてしまうのはまずい。

 だからと言って深海棲艦をこのまま逃がせばそれはそれで問題が起きるので解放するのは難しい。こいつを助けると言ったからには後でやっぱり処分する!なんて答えようなら信用問題にも関わってくる。俺はまだ昇進の為の艦娘()を失う訳にはいかないんだ!だからって鎮守府内に置いておくわけには……くっそー!!!もう難しいことは後だ!!こんな予想外の出来事考えていられっか!!!

 

 

「とりあえず運ぶぞ……って重っ!!?」

 

 

 新たな問題を抱えることになってしまったことにストレスを感じ始めていた青年がこの騒動の元凶をドックへ放り投げてやろうかと軽巡ヘ級に触れた。力を入れたが鉄の塊のような重量を感じ、持ち運ぶのは無理だと判断して手を離そうとした時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ヤ……セ……ン……

 

 

 ――ッ!?今こいつなんて……

 

 

「提督手伝ってくれるのは嬉しいよ。でも運ぶのは那珂ちゃんがやるから任せて!」

 

「電も責任は果たすのです!!」

 

「お、おう……」

 

 

 青年の手が離れ、那珂と電が代わりに軽巡ヘ級を入渠ドックへと運んでいく。その後ろ姿を呆然眺めていた。

 

 

「どうしたんですか司令官?」

 

「何をぼうっとしているのよ……ちょっと、聞いてるの?」

 

「あ、ああ……」

 

 

 吹雪と叢雲の心配も今は頭に入って来ない。原因は深海棲艦が言ったのであろうあの言葉が妙に引っかかっている。それでも今は対処するのが先決だ。

 

 

「鈴谷、熊野は非番だったな?」

 

「そうですわよ提督」

 

「……もしかして仕事だったりしちゃう感じ?」

 

「ああ、深海棲艦の見張りを頼みたい。那珂と電だけではもしもの場合がある可能性を見越して重巡洋艦である二人の力が必要になるかもしれねぇからな」

 

 

 もしもの時を見越して重巡洋艦である鈴谷と熊野に監視の役目を与えた。相手は深海棲艦であるが故に何が起きるかわからないのだから。

 

 

「吾輩と筑摩も重巡洋艦じゃぞ!!」

 

「利根姉さん、これから夜戦を想定しての訓練があることを忘れていませんか?」

 

「ぬぉ!?そうじゃったわ!!!」

 

「青葉も訓練です。でもその前に写真を……っと」

 

「でーも、そんなことしていていいの?深海棲艦がここに居るんだよ?」

 

 

 島風の質問も確かであるが、危険度は低いと見える。全員で見張る程の危険性はないと判断した。だからと言って油断しているわけではない。

 

 

「島風の言うことにも一理あるが、いつ目覚めるかわからない分、そこに無駄な余力をかけていられない。そこで手が空いている二人に頼みたい」

 

「ええー!?あの気持ち悪いのを監視しないといけないのぉ……」

 

「残業代は出してやるよ」

 

「お金よりも……鈴谷の願い事聞いてくれたらいいよ♪」

 

「ああ、わかった。叶えられるならな」

 

「ラッキー♪」

 

「……あ、あの、わたくしのお願いも聞いてくださいますか?」

 

「……限度は考えろよ」

 

「……今日はラッキーですわ♪」

 

 

 予想外の褒美に頬が緩む鈴谷と熊野に様々な感情が籠った視線が二人に集まる。

 

 

「深海棲艦が鎮守府内に居て気が気ではないと思うだろうが、吹雪達は別のドックにて傷と疲れを癒せ。こっちは鈴谷と熊野に任せろ」

 

「でも提督ぅ……睦月心配にゃしぃ」

 

「仲間を信用しろ。何かあったら俺が責任を取る。鈴谷、熊野頼んだぞ」

 

「オッケー♪鈴谷におっ任せ♪」

 

「もしもの時はわたくしが黙らせてあげますわ」

 

「……ああ」

 

 

 夜戦……か。あの深海棲艦がもしも……もしも俺の予想が正しければあいつは……

 

 

 青年の予想とは一体何なのだろうか?今はただ深海棲艦が目覚めるのを待つだけだ。

 

 

今後の展開についてアンケートを行いたいと思います。アンケート結果によって話の内容に矛盾が生じれば直す可能性もありますのでご了承ください。○○鎮守府R基地の艦娘は青年が……

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