それでは……
本編どうぞ!!
「……が、那珂の仮説だと言うんだな?」
「はい、提督」
俺は今、執務室で那珂と二人っきりで誰も寄り付かないように他の連中に言い聞かせた……決してやましい気持ちはないから誤解すんなよ!?ゴホン……まぁそれは置いておいてだ。那珂は電と深海棲艦について語っていてその過程で深海棲艦の正体を仮説として立てたようだ。だがその仮説は艦娘にとって受け入れられないものだった。
そりゃそうだ、深海棲艦は実は艦娘が轟沈したなれの果てだったなんて噂が広がれば混乱を招いてしまい、躊躇してしまうだろうな。元仲間だなんて……電はその仮説は間違っていると言ったようだが、それは自身が認めたくない故のものだろう。
軽巡ヘ級を入渠ドックへと連れて行った那珂と電だったが、青年からの呼び出しで那珂は執務室へとやってきた。何故深海棲艦を助ける方を選んだのか、その訳を聞き出したところだった。
「それでお前はこれからどうしたいんだ?その仮説が正しいとすれば……だ」
「それは……」
「深海棲艦は元艦娘だった。それが事実だとして……深海棲艦と戦うことはしないつもりか?多くの人を不幸にするか?」
「そんなことはしないよ!那珂ちゃんは人も国も……みんなを守りたいもん!!!」
ちょっと意地悪な問いだったのだろうが、那珂の意思はアイドルではなく間違いなく一人の艦娘が出した答えだった。例え仮説が現実だったとしても那珂は戦うだろう。そもそもの話、
ここに着任してから鎮守府を建て直す間に深海棲艦についての資料を読んだが、俺が記憶している深海棲艦の情報と差異はほとんどなかった。しかし記載されていたことは表面上の情報だけで、深海棲艦がどこで生まれたか、その正体はどこにも記されておらず謎だった。そして俺が記憶の中でどこにも見当たらなかったものがあった……それは
青年が記憶しているドロップとは、前世の記憶ではこの世界はゲーム内の世界だった。艦娘が出撃し、深海棲艦と戦い、敵を倒すと確率で艦娘が手に入ること……それがドロップだ。
青年は探した。深海棲艦を撃破して艦娘が手に入るというシステムがあれば建造せずに戦力を増強できると一時期考えていたが、資料を見てもどこにもそのようなことは書いておらず、今まで一度もそのようなことが起こったことがなかった為にこの世界ではありえない現象なのだと決めつけていたが……
あの時の言葉……軽巡ヘ級が言ったであろう一言が気になっていた。
『「……ヤ……セ……ン……」』
まさかあの軽巡ヘ級が……いや、よそう。下手な決めつけは足を
そう考えているとドタドタと廊下を走る音が近づいて来た。そしてそのまま執務室の扉が勢いよく開かれた。
「「て、提督!!!た、大変なのー!!!(ですわー!!!)」
鈴谷と熊野が慌てた様子で駆け込んできた。
さてさて、一体今度は何が起きたのだろうか……?
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アレハ……イツダッタ?
ソコハ……ドコダッタ?
ワタシハ……ダレダッケ?
冷たい感触、周りには誰もいない。一人寂しく不安に包まれている……真っ暗な闇の中に誰かが居る。その誰かとは……わからない。
全身が黒い……まるでシルエットのようだ。
沈んでいく……真っ暗な闇の更なる底へと。
アア……ダレデモイイヨネ。
また沈んでいく……意識が保てなくなっていく。
ガンバッタノニ……
マモレナカッタ……
タイセツナ……
イモウトヲ……
ワタシハ……
自分が……失われていくようだ。
『……那珂ちゃんのこと……わすれ……ないでね……』
……マモレナカッタ……ッ!!!
真っ暗な闇の中から憎悪を宿した怪物が産声を上げた。
「――ッ!!!」
怪物は目につくもの全てに行き場のない悲しみをぶつける。声にならない雄たけびをあげ、悲鳴と嘆きが聞こえ、海に幾多の命が沈もうとも止まることができない。怪物はひたすら悲しみを暴力に変え、破壊の限りを尽くしていく。しかしそんなある時だ。
「これ以上は……させません!!」
「――ッ!!?」
怪物の目前に一人の艦娘が立ちはだかった。その艦娘を見た瞬間懐かしいと思った。怪物は何故かはわからなかった。だがそんな思いは次第に真っ暗な闇の中へと消え失せる。
怪物は立ちはだかる敵に向かって吠えた。
怪物は波に流されていた。体が意思通りに動けぬほどにボロボロで痛みが全身を襲う。
……イタイ……イタイヨ……
痛みに耐えられず助けを求めるが、怪物に救いの手は差し伸ばされない。周りには誰もおらず、傷ついた体からは赤い液体が流れ海へと溶け合う。このままでは怪物……いや、深海棲艦は轟沈するだろう。
……ダレ……カ……
「こ、これは……!!?」
「た、たいへんなのです!!?」
誰かが居たような気がしたが、確認する間もなく深海棲艦は意識を失った。
それからだ。薄っすらと意識が覚め始めるが体が言うことを聞かない。周りが騒がしい……薄れた意識の中で断片的にしか聞き取れないが、一つだけハッキリと聞き取れた。
「深海棲艦だって生きているらしいが、こんなボロボロの状態で戦えない程に弱っている相手に追い打ちをかけても勝ったと言えない。敵であるが……命を蔑ろに扱うことはできない」
「やられたからやり返す。お前達が深海棲艦を憎んでいることは良く知っている。だが憎しみはいつかどこかで途切れなければ永遠と続いてしまう負の連鎖となるだろう。深海棲艦は憎むことが出来る。ならいつか深海棲艦は心を持つことができるかもしれない。微々たる可能性の話だが、心を持てば憎悪以外の感情も生まれるはずだ。戦争なんて虚しいだけだとわかってくれる日が来るかもしれない」
「熊野の言う通りかもな。だが可能性は無いなんてことはない。絶対なんてこの世にないし、こいつはもう戦う力もなく艤装も損傷している。危険は少ない方だ。それを見越しての決定だが……今回だけだ」
特徴的な声……というよりも男性のような気がする声が耳に残った。印象に残る……何故かはわからないが安心できた。その声の主に助けを求めようとするが絞り出せたのは一言だった。
「……ヤ……セ……ン……」
何故この言葉が出たのかは深海棲艦自身にもわからなかったが、誰かに触れられた感触が伝わってくる。不思議とその感触はとても居心地の良いものだと感じられた。
……アア……ナンダカ……アタタカイ……
真っ暗な闇の中で消えたはずの小さな光が次第に蘇っていく。
「ちょ、ちょちょちょ!?こ、これって……!!?」
「と、とにかく提督に報告しに行きますわよ!!!」
鈴谷と熊野は驚愕の表情を浮かべ、一目散に執務室へと駆けていく。残された電は衝撃の瞬間を目にした。軽巡ヘ級の姿が消え、代わりにヘ級が居た場所には全く別の存在が居た。
軽巡洋艦である川内型の1番艦……艦娘がそこに居た。
今後の展開についてアンケートを行いたいと思います。アンケート結果によって話の内容に矛盾が生じれば直す可能性もありますのでご了承ください。○○鎮守府R基地の艦娘は青年が……
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引き取るべき
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引き取る必要はない