あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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投稿ミスってしまいました。これで直っていると思います。


問題が山積みの鎮守府で次に青年が目にするものとは……


それでは……


本編どうぞ!




0-5 ブラック鎮守府に光あれ

 あわわ、ビックリしたのです!司令官さんが電達の為に()()()()()を用意してくれました。ご飯はホッカホカで野菜はシャキシャキ、唐揚げはジューシーでとても美味しかったのです!漬物も独特でカレーと一緒に食べた時の感動は忘れないのです!いつもはレーションだけだったので、量も少なかったのです。それに比べれば満足だったのですけど……電はお菓子が食べたかったのです。

 電達の分も買って来てくれていると司令官さんが言っていましたけど、皆さん夢中になって食べているので電の分がなくなるのかと思ったぐらいでした。手に取ると軽く薄い丸形のお煎餅から醤油の匂いが漂って来て我慢できずに食べたのです。お煎餅も初めて食べましたけど、醤油が甘くてパリッとする触感が堪らなかったのです!皆さんと一緒にこんな美味しいものを食べることができて電はとても幸せなのです♪

 

 

 食堂でお腹を擦っている電の顔は幸せそのものだった。初めてお腹が膨れるほどに食べることができて、味もレーションとは比べものにならないぐらい美味しいものであり、これは夢ではないかと思ったりもするが現実なのだと思うと涙がこぼれそうになっていた。

 

 

「提督さんやっぱりいい人っぽい!」

 

「そうだね、睦月もそう思うにゃ!」

 

 

 二人の笑顔を見ていると電も嬉しくなっちゃうのです。司令官さんのこと初めは怖かったけど、とても優しい方でした。今まで使い捨てだと言われて沈んでいった皆さんともっと早く司令官さんに出会って欲しかったのです。そうすれば天龍さんも龍田さんも……電達はこんな幸せを味わっていいのでしょうか……

 

 

 幸せそうな顔をしていた電の表情が曇る。思い出してしまったのだ。この鎮守府に残っているのはたった六人だけ、それまで何人の艦娘が沈んでいったのか。その中には電とも親しかった仲間もいた。その犠牲があって今の六人はここにいるのだ。誰もが心に傷を負っていた。そんな中に現れた青年の行動で少しだが救われた。しかし自分達だけが幸せになっていいのかっと思ってしまう。

 

 

「電ちゃん暗い顔しているけど……どうかした?」

 

「吹雪さん……電は幸せです。今とても幸せなのです」

 

「うん、私も司令官のおかげで幸せだよ」

 

「でも思うのです。電達だけこんなに幸せになっていいのか……天龍さんや龍田さん達は満足に食べることができなくて、美味しいご飯の味を知らずに沈んでいきました。電達だけが良い思いをして……皆さんに恨まれていないのでしょうか?」

 

 

 沈んでいった者達のことを思うと心が苦しくなる。それは吹雪も同じであり、姉妹艦が沈んでいる。電の気持ちが痛いほどわかる。わかるから吹雪は否定する。

 

 

「ううん、それは違うよ。天龍さんも龍田さんも電ちゃんに生きていて欲しかったんだ。電ちゃんを生かすためだけじゃなく、きっと幸せになってほしかったと思う。だってあの二人電ちゃんと一緒に居る時いつも笑顔だったじゃない」

 

「あっ」

 

 

 そうなのでした。天龍さんも龍田さんだけじゃなく、皆さんも過酷な環境で笑わなくなっていました。でもお二人は電達と一緒に遠征に行くときは笑ってくれました。「今だけは嫌なことを忘れられる」暗く辛い日々でしたけど、天龍さんと龍田さんと一緒に居る時は気持ちが楽なのでした。

 

 

「だからね二人の分……ううん、みんなの分まで幸せになろう。電ちゃんが笑っている姿をみんなは見ていてくれるよ……きっとね」

 

「吹雪さん……はい!なのです!!」

 

 

 天龍さん、龍田さん、それに皆さんの為にも電は笑うのです!そして……電達に幸せをくれた司令官さんを支えるのです!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんじゃこりゃ!!?

 

「し、司令官、今日でそれ二回目ですよ」

 

「そんなことは気にすんな。それよりもチb……妖精さんから呼ばれて来てみればなんだこの有様は!?入渠ドックが一つもないとはどういうことなんだよ!!?」

 

「そ、それは……」

 

 

 カップ麵を(すす)り終わり、汁だけが残ったカップに虚しさと財布の中身を見比べながら黄昏ていた時だった。チビが現れて青年に来て欲しい場所があるらしく向かえばそこは入渠ドックだった。しかし最低でも二つドックが常備されてあるはずが驚くべきことに一つもなかった。正確には元々は二つあったであろう入渠ドックは、その両方とも明らかに事故とかではなく人為的に壊された形跡があった。

 

 

 ★------------------★

 

 

「あ、あの……電達はその……使い捨てだったので……」

 

 

 青年は妖精に連れられてドックに向かっている途中で吹雪と電に出会い、ドックを見に行くと伝えたらついて来ると言った。初め青年はついて来るなと断ったが、電は提督である青年の役に立ちたい思いに駆られていた。否定されてしまい今にも泣きだしそうになった様子に、慌てた青年が許可を出すと笑みを浮かべていた。こうして三人でやってきたのはいいが、青年が見たのは人為的な破壊により使えなくなっていた入渠ドックで電がこうなった訳を話してくれた。

 

 

 自分達は使い捨ての為の消耗品、壊れても代えは効くと前提督はその主張を変えなかった。そんな男の下で何とか帰って来れたとしても大破状態の艦娘達、その状態で出撃させられて轟沈していく仲間達をみすみすこのままにしておけなかった一部の艦娘達が前提督に内緒で入渠ドックを使っていたことがバレてしまう。怒りをかってしまい入渠ドックは壊され、その艦娘達は解体されてしまったと言う何とも残酷な話であった。語るにつれて電は涙を流しながら喋るのも辛い状態で吹雪が補足して実態が明らかになった。

 

 

 解体……艦娘を資材に代える作業のことだが、解体することは資材を得る代わりに命を失うと言うことだ。艦娘に対して命と言う言葉を使うのは適切かどうかはこの際は置いておこう。もし例えるならば人間にならば臓器を資材に例えれば、手術に使える臓器を手に入れられる代わりにその臓器の持ち主は死ぬことを意味している。これでも表現は優しい方だ。現実を言えば燃料や弾薬を得るのに一人の命を引換券として取り扱っているのも同じである。つまり前提督によって何人かの艦娘は犠牲になってしまったのだ。もし人間ならば大事件であるが艦娘は人間ではない為に合法なのである。醜い消耗品である彼女達に突き付けられた現実は辛すぎた。

 

 

 チッ、前提督のおっさんは無能だったのはわかったがこれ程とはな。艦娘には練度があって沈めばたとえ同じ艦娘が建造できたとしても練度は初めから、時間も資材も節約どころか消費が増えるのは餓鬼でもわかるぞ。おっさんの無能な運営でドックは使えず、戦力を自ら捨てているのと変わりない捨て駒戦法……これでよく反乱を起こされなかったものだな。先輩め、最悪な場所に俺を送り込んだな。こんなのはじめからスタートするのと変わらないじゃねぇかよ!

 

 

 青年はこの鎮守府に置かれた事実に舌打ちする。あまりの前提督の無能さに苛立ちを感じながらも自分には頼りになる妖精がいる。昇進の為の駒として利用する青年の味方である妖精は彼の言うことならば聞いてくれる。妖精が居なければこの鎮守府は終わっていた。そんな状況を打開する為にお願いをする。

 

 

「おいチb……じゃなくて……妖精さん、このドックを直してくれないか?」

 

『「なおしたいけど、しざいたりない」』

 

「なに?資材が足りないだと?資材が必要なのか?」

 

『「うん。0から1はつくれない。いまのびちくだと、ひとつしかなおせないよ」』

 

 

 チビが言うには直すために資材が足りないらしい。直せたとしても一つだけだと言うことだ。大体予想はしていたが備蓄も底を尽きそうらしい……チビはこの現状を見てもらいたかったのか?

 

 

 そう視線で訴えかけると妖精は首を縦に振った。わざわざここまで連れて来ずに言葉で説明しろよなっと言いたかったが、相手は妖精である為に下手に出なければ機嫌を損ねてしまうかもしれない先入観もあり扱いは慎重だ。だが困ったことになった。備蓄がないのならば手に入れなければ昇進どころか維持することもできずにここは終わりだ。

 

 

「あの司令官、妖精さんは何と言っていますか?」

 

「今の状態だと資材が足りなくて一つしか直せないだと、だが最悪の事態は避けられた。一つあれば何となる」

 

 

 青年は難を示したが、一つあれば大破しても直すことができる。六人しか艦娘がいないこの鎮守府で交代での入渠となるが無いよりもいい。折角引き上がっている練度と艤装を失うわけにはいかない……代えだって数が多ければ馬鹿にはならないのだ。だが残りの少ない資材を消費してドックを一つ直せるならば安いものだ。資材が溜まったら後々直していけばいいだけのことなのだから。ひとまず安心できるかと思っていたが、その横で申し訳なさそうに吹雪が言葉を付け加える。

 

 

「それで……その……司令官、まだ問題があります」

 

 

 ここは前提督の所業で落ちぶれた鎮守府……まだまだ見ぬところに問題は山ほどあった。

 

 

 艤装もまともに整備されておらず、数もほとんど残っていない。整備する担当もいなければ艦娘達の食料も毎日弁当でもいいが費用が掛かり過ぎて青年の給料では養えない。今の鎮守府には妖精がいるが、ゲームのように無償で直せるわけはない。ここは前世のゲーム内と違って青年にとっては現実なのだ。直すには資材が必要で、建造施設だけがまともに稼働できる状態であった。これは使い捨ての駒を量産できるようにしていたのだろうが、資材が無ければ建造すらままならない……きっと私利私欲の為に資材をどこかに横流しでもしていたに違いない。六人の中では古参の吹雪が自身が知っていることを話してくれた。

 

 

 青年は頭が痛くなる。提督になって深海棲艦を打ち倒し昇進、しまいには英雄と称えられて贅沢三昧の日々を味わえると妄想していたのに着任してみればあまりにもかけ離れた現実だった。軽視派の先輩方に目をかけられ提督の座を手に入れることはできた。その先輩方が自分に与えてくれた鎮守府が問題が山積みと聞いていたが、こんなにも杜撰(ずさん)なものだったとは思わなかった。認識が甘かったのかそれとも先輩方はそれを知っていてわざと着任させたのか……考えたが今はそんなことどうでもいい。ここに着任してしまった以上逃げると言う算段は青年には無い。

 

 

 逃げるなんてできるか。折角手に入れた俺だけの鎮守府だ。ここにあるもの全て俺のもの、誰にも渡すものかよ。

 

 

 そう決意をしても現状最悪の状態だ。問題を起こした鎮守府なだけあって大本営からの資材の仕送りも現在無いとのことだ。青年の記憶ではゲーム内の資材は自動的に少量ずつではあるが回復していた。しかしそれが現実になってくると仕送りされていたことに繋がっている。その仕送りが無いと言うことは資材が無くなれば詰みである。資材がないと出撃もできなければ、工廠も使えず、入渠すらままならない。ゲームと違って現実は甘くない。

 

 

「……はぁ……妖精さんはとりあえずドックを直してくれ。備蓄のことは心配するな。何とかするから」

 

『「りょうかーい!」』

 

 

 青年に敬礼を返し、仲間の元へとかけていく。少し遅い朝食の時に大量のお菓子を貰った妖精達はやる気満々であった。あちらは妖精に任せておけばいい。後は備蓄についてやりくりする必要がある……あまりの問題の多さにうっかりため息が漏れる。

 

 

「はぁ……」

 

「あの、大丈夫ですか司令官?」

 

「……何がだ?」

 

「お疲れのようでしたので……私にできることがあれば()()()()言ってください!」

 

「電も司令官さんの為に頑張るのです!だから……な、()()()()言ってほしいのです!」

 

「……()()()()……だと……!?」

 

 

 吹雪と電の()()()()と言う言葉に反応してしまった青年は慌てて頭を振った。

 

 

 一瞬俺は()()を考えていたんだ……いや、何を考えていたんだ!?餓鬼相手になんてことを考えてんだよ!?ロリコン野郎なんかじゃねぇ。YES!ロリータNO!タッチ……ってだから俺はロリコン野郎じゃねぇんだよ!!NO!ロリータNO!タッチだ!!!

 

 自分の気持ち悪さに嫌気がさした。子供にしか見えない駆逐艦娘相手に()()を妄想してしまったのはきっとこれも愉悦猫のせいだ……そう言うことにしておこう。

 

 

「……だ、大丈夫だ。色々やることが明るみに出て少し悩んだだけだ。お前達はお前達のやれることをやればいい。それにお前達の手を借りる時が必ず来るから急ぐ必要はない。自分のペースを守ればいいさ」

 

「……司令官!!」

 

「司令官さん……はい、なのです!!」

 

 

 吹雪と電は青年の様子が気になった。軍人と言えども訓練学校を卒業したばかりの新米提督で慣れていないこともあり疲れているのかと心配になり、少しでも元気を取り戻してほしかった。以前ならばこういったやり取りさえ許してもらえず、醜いと言う理由で避けられ、視界に入るだけで気持ち悪いと殴られたりもした。男性は傲慢な性格の人間が多く、気に入らないと手を挙げる。不細工だから醜いからと言う理由で吹雪達は酷い目に遭って来た。しかし青年は自分達の為に食事を用意してくれて鎮守府を妖精に頼んで綺麗にしてくれた。それだけでなく、こうして怯えることもなく会話することができているのが吹雪と電は嬉しかった。

 吹雪は青年のことを信じようと決めた。この人ならきっと大丈夫だっと、この場にいる電もそう思っている。

 

 

 ……やりにくい。こいつらの笑顔が眩しいのは光の反射……ではなさそうだな。なんで俺なんかに笑顔を振りまくかねぇ、騙されているとも知らないで。まぁ……今だけは付き合ってやるよ。お前達の()()()()()ってヤツにな。どうせ俺が英雄になれば、お前達とはおさらばだからよ。

 

 

 そんな決意を抱いている時に入り口から駆け込んで来る時雨達の姿があった。夕立と睦月に手を引かれながらも叢雲も一緒だった。彼女達は青年を見つめると迷わずこちらに向かって来て敬礼をした……叢雲以外は。

 

 

「提督、探しました」

 

「んぁ、なんだ?」

 

「その……提督に伝えたいことがあります」

 

「俺に?なんだ?」

 

 

 入電でもあったのかと青年は思った。だが時雨達から伝えられたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、()()()()()美味しかったよ。僕……初めて食事がこんなに美味しいんだって思えたよ」

 

「夕立も初めてお腹いっぱいに食べれたっぽい!提督さんのおかげだよ!!」

 

「睦月も提督に感謝するにゃしぃ!」

 

「……」

 

「ほら、叢雲ちゃんもお礼を言うとよいぞ」

 

「だ、誰がこいつなんかに……!!」

 

「でも感謝しているよね?お腹いっぱいでまた食べたいなぁって言ってた……もう次からいらないっぽい?」

 

「――ッ!?だ、誰がいらないなんて言うのよ!?わ、わかったわよ言えばいいんでしょ!!」

 

 

 夕立と睦月の影に隠れていた叢雲は二人に突き出される形で前に躍り出た。その顔は真っ赤に染まっており羞恥心にかられているようで、青年を何度も見ては視線を逸らしていたが、しばらくして意を決したのか口が動いた。

 

 

「……あんたのおかげでお腹は膨れたわ。そ、それに……美味しかったわよ。次もこれぐらいの食事を提供しなさいよね」

 

 

 そう言い終わると背を向けてしまう。その光景に時雨達はクスクスと笑みを浮かべており、それを叢雲は真っ赤な顔で睨んでいた。

 

 

「電もあの……お、お菓子も……嬉しかったのです!」

 

「司令官、私もカレー美味しかったです!私……司令官がここに来てくれて嬉しいです!だから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ありがとう(っぽい)(なのです)(にゃしぃ)」」」」」

 

「……ふん、お礼なんて私は言わないから」

 

「叢雲ったら……言いたかったことはそれだけ。ごめんね提督」

 

「………………………………………………」

 

「あれ?提督どうしたのにゃ?」

 

「……いや、別に……それよりもやることが山ほどあるんだ。お前達にはやるべきことをやってもらうから覚悟しておけ。これからは忙しくなるからな」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

「……ふん」

 

 

 暗く海底に沈んでいるような鎮守府に海上からの光が差し込んだように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ちくしょう、餓鬼の癖にいい笑顔しやがって。たった一度の飯ぐらいで礼なんか言ってんじゃねぇぞ餓鬼共が……いつか解体してやるぞ。それまでは利用し続けてやるからな!!!

 

 

 吹雪達の前を歩く青年が照れているようであったが、誰も気づくことはなかった。

 

 

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