あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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イベント海域攻略にリアル事情で遅くなりました。短いですがお楽しみください。


それでは……


本編どうぞ!


4-3 艦娘の裏事情

「ふぅい……さっぱりしました♪」

 

 

 艦娘の朝は早い。

 

 

 今日はいつもよりも日差しの強い一日となり、太陽光が体中を照らして水分が汗で溢れ出てしまう快晴な朝を迎えた。そして朝と言えば恒例のラジオ体操だ。○○鎮守府A基地では週に何度か朝のラジオ体操を取り入れており、健康管理の一環として行われている。健康の為だけでなく、この後に待っている朝食の味が更に美味しく感じるのも得なことであった。

 ラジオ体操終わりに青葉が真っ先に向かうのは入渠ドック(風呂場)。汗で濡れた体は気持ち悪いもので、さっぱりしたい思いは皆同じ。彼女もその一人であり、朝風呂を堪能し、たった今上がったところで湯気が立ち昇っている。しかしこれだけが理由にあらず。食堂へ向かう前に行く必要がある真の理由はそこに誰がやって来るのか考えれば答えが自ずと出るだろう。

 

 

「司令官、おはようございます!」

 

「ああ、おはよう」

 

 

 食堂へやって来た青年を発見するとすぐさま近づいていく青葉。

 

 

「いやー朝風呂はやはりいいものですね~♪さっぱりして頭の回転が速くなった気がしますよ。それで司令官、一緒に食事なんかどうでしょうか?」

 

「別に構わんぞ」

 

「恐縮です♪」

 

 

 清潔は大事。もしも青年に「臭い」なんて言われでもしたらショックで立ち直れないだろう。

 

 

「お二方どうもです~♪」

 

「青葉さん今日は一段と気分がよろしいですね」

 

「なんじゃ?吾輩の手料理がそんなに楽しみだったのか?」

 

「そう言うことにしておきます」

 

「ふむ、まぁ吾輩自らの手料理じゃからな。当然じゃろう♪」

 

「ふふっ♪さぁ、提督もどうぞ」

 

「おう、悪いな」

 

 

 青葉はルンルン気分で利根と筑摩から朝食を受け取りテーブルへ着くとすぐさま隣の椅子に引いて青年がそこへ座るのは当たり前。そしてその隣を誰かが座り、前方の席、斜め向かいの席の順に埋まっていき、いつも彼の周りは艦娘達で埋め尽くされる。男性と一緒に食事ができる鎮守府は全世界を探してもここだけだろう。

 

 

 元々美味しい朝食に加えて朝風呂の後に食う飯は美味しくなる。仲間と一緒に食う飯は更に美味しい。青年と一緒なら格別な味となろう。何気ない艦娘達の会話をしながらバレないように隣の青年の顔を盗み見てほっこりするのも青葉にとって楽しみの一つとなっている。そんな朝食も終わりを迎え、少し寂しい思いになるものの青葉はこの後出撃予定となっているので一旦ここで彼とはお別れだ。

 

 

 執務室へ向かう青年の隣に付き従う秘書艦の睦月に羨ましい気持ちとちょっぴり嫉妬を抱きながら背を見送り、彼女は自室へと向かう。

 ご飯を食べた後に急な運動は控えるべし。出撃予定だが必ず青年は食事をした後に休息を挟むことを忘れない。その間は自由となっている。

 

 

 自室へ辿り着くとそこは小さな一人部屋、同じ建造組である那珂と熊野は姉妹の下へ移り、島風は自由奔放で特定の部屋に居ることはまずない。各部屋を回り、その都度どこかの部屋に泊まっている。青葉一人だけが取り残されたわけではない。彼女は極秘任務があるからだ。

 押し入れの奥の奥、布団が邪魔で普段ならばそんな取り出しにくいところから一冊のアルバムを取り出した。そのアルバムの表紙には【㊙三】と書かれていた。三と書かれているならば一、二もあるのだろう。しかし一体これはなんだろうか?

 

 

 コンコンとそんな時、扉をノックする音が聞こえて来た。

 

 

「時雨だよ。開けてくれる?」

 

「はいはい今開けますよ」

 

 

 青葉は時雨を招き入れると小さな部屋が更に狭く感じるが、何やら二人はただならぬ雰囲気を漂わせていた。

 

 

「例のもの、用意できた?」

 

「はい、これですね」

 

 

 青葉は【㊙三】と書かれたアルバムから写真を何枚か抜き取る。それを受け取った時雨はニチャリっと普段の姿から考えられない程のいやらしい笑みを浮かべた。

 

 

「ありがとう青葉、これで鎮守府の安全は守られるよ」

 

「まぁそうですけど……しかしあれだけ司令官のムフフな写真を撮ろうとすると邪魔して来た時雨さんがこの件を持ち掛けられた時、偽物かと思いましたよ。これ司令官にバレたら大変なことですよ?」

 

「仕方ないよ、()()がないと誰かが提督を襲いかねないから」

 

「司令官は私達を信用してくれるのは嬉しいんですけど……こんなことしていていいのかって思うところがあります。裏切っているみたいで……申し訳ない気持ちがいっぱいです」

 

「でも我慢できないよね?」

 

「……我慢できません」

 

 

 一体何の話をしているのか?

 

 

 青葉は建造当初男性でありながらも醜悪の塊である艦娘と向き合う青年に興味を示し、ジャーナリスト魂に火が付いた。先回りして色々と根掘り葉掘り追求したことがあり、彼のムフフな姿を写真に収めようと盗撮まがいなことまでしたこともあった。しかし偶然にもその場を通りかかった時雨に発見され、写真は没収されてしまい、後々この件で脅さr……()()することもあった。没収された写真は今も時雨の下に大切に保管されている。

 盗撮がバレれば青年からの信頼を失いかけない。未遂に終わった青葉は反省し、真っ当なジャーナリストとして過ごしていたある日に時雨が彼女の下を訪れたことから始まる。

 

 

 考えてみてほしい。今まで醜いと理不尽な扱いを受けていた艦娘達が住まう魔境の巣(鎮守府)に自分達のことを一番に思ってくれて大切にしてくれる男性の提督が現れたとしたら?例え容姿が醜かろうとも体は人間の女性と変わらない。痛み、苦痛、喜び、悲しみ、感情も人間のそれと同じ。ならば欲求は?

 青年が着任してから色々と事件が起きている。お姫様抱っこや木曾の解体未遂事件、添い寝騒動と主に彼のせいだが、艦娘達の心を虜にしたことだろう。こんな出来事に遭遇して果たして彼女達は我慢できたであろうか?

 

 

 否、否である。欲求とは生きる上で避けられない衝動。青年にとって愛らしい姿の艦娘達に興奮するように(本人からしてみれば興奮などしていないと言うだろうが)彼女達もカッコイイ彼に興奮しないわけがない。女である以上男を体の隅から隅までケダモノとなって貪り尽くしたいところだろうが、彼に嫌われでもしたら彼女達の心が崩壊してしまうだろう。添い寝の時でも大人への階段を昇る訳にはいかず、お預け状態(青年の方から襲って来るなら話は別)で欲求は溜まっていく一方どこで発散させればいいのだろうか?

 邪な悩みを持つ艦娘達(ケダモノ)。最悪無理やりHな事件(処女卒業)にまで発展してしまったら最後、二度と青年と会うことはできなくなってしまい、解体の可能性もある。それだけは絶対にダメだ。何とかしなければならないが欲望は制御するのが難しく、日々の出撃や遠征が彼女達の気を紛らわすことができるのが幸いなことだった。しかしこのままでは時間の問題だろう。

 

 

 そしてここで時雨(救世主)の登場だ。吹雪達は共に生き延びた仲間であり、日に日に青年を思う気持ちが強くなり、彼があってこそ、想いが強ければ欲求も比例して強くなる事態を重く見て、欲求を発散できずに苦しむ艦娘達を救うべく彼女は立ち上がった。

 

 

 時雨は青葉に提案したこととは、青年の姿をそのカメラに収めてほしいとのことだ。青年は写真を撮られることはあまり好きではないが、一声かけ「写真を撮らせてください」とお願いすれば許可が下りる。青葉がカメラを所持してから何度もお願いしたことがあってそれに応えた。別におかしなことは何一つとしてないはずなのに青葉は時雨の提案を初めは受け入れなかった。何故か?時雨と望んだ写真はそんな日常的な姿を収めてほしいものではなかった。彼女が本当に欲したものそれは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、これは……刺激が強すぎるねっ!!」

 

 

 時雨は一人で以前倉庫として使われていた部屋で手にした写真をまじまじと眺めていた。

 

 

 その写真には青年が背を向けた姿が写し出されていた。しかし明らかにカメラのアングルがおかしい……これは隠し撮りしたものだとわかり、写し出されている光景はどこかで見たことがある。そこは脱衣所で彼がこれからお風呂に入る瞬間を捉えたものだ。軍服を脱ぎ、ズボンに手をかけ「パンツ!パンツです!」とプリティなお尻を守る神聖領域の守護者(下着)が煌々と存在を主張していた。

 「誰得の写真だよ!?」と思うかもしれないが、ここはあべこべ世界。男性の神聖領域の守護者(下着)は女性達にとってダイヤモンドよりも価値があるものだ。

 

 

 時雨も女の子。しかも自分が敬愛する提督の体に興味を持たない枯れ女ではない。写真を眺めている彼女の頬が真っ赤に染まって目が釘付けになり、においを感じないはずなのに鼻がピクピクと敏感に反応していた。

 

 

「………………………………………………よし、これは僕が保管しておくとして、他の写真は吹雪達に渡そう」

 

 

 写真を大事にポケットの中に忍ばせ、あまり過激ではない方の写真を別の誰かに渡す……発案者なのでこれぐらいの贅沢はしていいと自身に言い聞かせる。

 これが艦娘達の裏事情であり、()()青年に害が及ぼすこともせず、知られないから問題ない。欲求は誰しもが持つ(さが)であり、彼女達艦娘が生きている証拠でもある。

 

 

 もし青年がこのことを知れば仰天していまうだろうが……艦娘達の素肌を何度も拝んでいるのでお互い様だろうとここに記載しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい睦月、先ほどから集中していないがどうした?」

 

「お、およっ!?な、なんでもないのですにゃははは……!」

 

「んぁ?そうか?」

 

「(今日は提督のどんなエッチな写真が拝めるのか気になるのね。むふふ、今晩が楽しみにゃしぃ♪)」

 

 

 今日も○○鎮守府A基地は平和なようだ。

 

 

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