あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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平穏な日常とはいいものです……っと言う訳でして平穏な回でございます。


それでは……


本編どうぞ!


4-4 お酒は正しく飲もう

「おぉ、これはお酒!?買って来てくれたのか!?」

 

「まぁな、加古は飲兵衛(のんべえ)ではないとは思うがほどほどにしろよ」

 

「わかってるって。でもあたしの為にわざわざ買ってくるなんて気ぃ利くじゃん!ここは環境もいいし、料理もおいしいから満足なんだけど、これが無くて物足りなかったからね」

 

「すみません外道提督、私達の為に……」

 

「構わん、古鷹も遠慮することはないと言っているだろう。仮着任であっても今は俺の艦娘、戦場に出るのはいつもお前達だ。指示を出すことしかできない俺が出来ることはこれぐらいだ。少しぐらいの贅沢をお前達に与えても……いや、与えられるべきだからな」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 深々と青年に対して頭を下げる古鷹と上機嫌の加古、食堂には酒瓶がいくつも並べられていた。少し前に加古が愚痴った「お酒がない」との発言を聞き、ジュースやお茶などの飲料水関係はこの鎮守府に置かれていたが、お酒は入荷していなかった。青年は娯楽を少しでも増やして不満を減らすことを優先。入荷することを決め、本日届いたところだった。

 

 

 こいつらの好みなんてわからんから適当に入荷したが、先に聞いておけば良かったかもしれないな。吹雪達は酒なんて初めてだろうし……まず飲ませて大丈夫なのか?『艦これ』には飲兵衛(のんべえ)の奴らがいた気がする。そいつらのように四六時中酒に溺れることはないだろうがやはり見た目が……な。特に睦月と電、あいつらが酒なんて飲んでいる姿を見せていいものなのか?絵面が……だがあれでも合法だ。法律には触れないから大丈夫、そう大丈夫なんだ。だから俺は罪に問われることはない。「お前さては子供を酔わせて乱暴する気でしょう?同人誌みたいに!」なんて展開にはならないはず……って言うかそんな展開になってたまるか!!ロリコンじゃねぇし、俺には夢がある。昇進して贅沢三昧の夢がな!俺が昇進の為の(艦娘)にそんなことするわけないだろう!!

 

 

 お酒を入荷するのに壁が立ちはだかった。吹雪達の見た目がどう見ても子供なのだ。未成年にお酒を勧めるのも飲ますのもやってはいけないことだからだ。日頃から姑息な作戦を練り、艦娘を利用しようとしている青年ではあるがちゃんと法律を守ってはいる。小悪党面の彼でも法律には勝てぬらしい。

 しかし吹雪達は艦娘であり、建造された時から子供の姿をしている駆逐艦娘。そうなれば年齢はどうなるのか?と疑問が生まれ、確認したところ問題ないとのことで衝撃(睦月や電が合法であったこと)を受けた。色々と葛藤や何やら青年の中で渦巻いているが……今はそんなこと忘れよう。

 

 

「外道提督?どうかなされましたか?」

 

「――ッ!?い、いや、なんでもない。酒か、実は俺は飲んだことが無くてな」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ、酒にまつわることわざがある。酒は飲んでも飲まれるなってな、酒の飲み過ぎで酷く酔って自分を見失うようなことは避けなければならないと言う意味で、毒になるとともに身を滅ぼす原因にもなり得る。それに酒の旨味に酔いしれ、軍人の務めを忘れてしまったら大変だからな。俺はまだ訓練生で未熟だと思っていたし、もしそんなことで失態を犯すことを恐れて避けたんだ。おい加古、今回は加古の要望に応えたまでだ。飲み過ぎは許さんからな?」

 

「大丈夫だって、あたし達が酒に溺れるわけないって」

 

「まぁ大丈夫だと思っているが、人間の中にはそう言いつつ身を滅ぼした奴が大勢いる。どんなものでも過剰摂取は毒にしかならねぇ。だから適度の量を守るこれが大事だぞ?」

 

「はいはい!わかっているって」

 

「もう加古ったら……」

 

「それじゃ、酒を厨房に運ぶぞ」

 

 

 仕入れたお酒を厨房へ運んでいると食堂にぞろぞろと艦娘達が集まりだした。護衛任務に出ている神通達以外は集まりつつあった。その誰もが当然お酒の存在に注目する。

 

 

「外道司令官、これお酒だね。どうしたの?」

 

「響か、加古が酒がないと愚痴ってな。要望を聞き入れてやった」

 

「それじゃこのお酒は個人のじゃなくて、鎮守府全体のモノなんだね。それって私達も飲んでいいってことだよね?」

 

「……んぁ、まぁ……な」

 

……よし

 

 

 響はその言葉を待っていたのか小さくガッツポーズを取った。

 

 

 響の奴め、酒を狙っているな。それもウイスキーと来たもんだ。この見た目でウイスキーを飲むつもりなのか……限りなくアウトに近いセーフだから問題はないがやはり絵面が危ないな。外出した時はそこんところ考えねぇと。それにしてもこいつら全員酒に興味津々じゃねぇか……ってこっちを見るな!そんな期待した目で見ても……くっ!?か、可愛い……じゃなくて!し、仕方ねぇ、折角だから少しぐらいなら許してやるか。

 

 

「響、飲んでみたいか?」

 

「うん、私はウイスキーがいいな」

 

「(知ってた)度数が高いぞ?飲めるのか?」

 

「初めてだけど多分大丈夫だよ。何故かそんな気がするんだ」

 

「ああー、響だけずるい!暁も飲む!!」

 

「暁には強すぎるよ。代わりにオレンジジュースがいいと思う」

 

「暁はレディーなんだから響に飲めて飲めない訳ないじゃない!」

 

 

 ぷんすか!と怒る暁だが全然怖くない。そんな暁のことを流している響はウイスキーを開けて香りと味を楽しんでいる。その姿を見て青年は見た目を気にしていたが雰囲気が大人の女性を醸し出しており様になっているなと感じていた。加古も待ちきれないと焼酎を片手に早速一杯飲み干すと「くぅ~!これが酒の味か~!!」と舌鼓を打っていた。その姿に感化されたのか各自適当なお酒を注いで一口……

 

 

「あら美味しいわ♪」

 

「苦いにゃしぃ……!!」

 

「へぇ、お酒ってこんな味なんだ」

 

「うげぇ!?か、かっらぁ!!?」

 

 

 思い思いの感想が飛び交う。自分に合うものを探して一口飲んで別のお酒をまた一口、そしてようやく自分の飲めるお酒を見つけて今度はしっかりと味わっていく。艦娘達がそれぞれ初めての大人の味を楽しんでいると青年も酒瓶を意識し始めた。

 

 

 んぁ、酒にはあまり興味はないんだがこうも吹雪達が飲んでいる姿を見ると……飲みたくなって来るじゃねぇか。餓鬼の頃は酒が何故か美味そうに見えたっけな……一口飲んでみるか。

 

 

「雷、悪いがそこのワインを取ってくれないか?」

 

「いいわよ。あっ、そうだ司令官、雷がお酌してあげるわ」

 

「ああ、悪いな」

 

「いいのよ。もっと私に頼ってね♪」

 

 

 青年のお酌が出来ると幸運に見舞われた雷は背後から嫉妬の眼差しを向ける電達に気づかなかったのが更なる幸運だろう。

 

 

 さてと、香りは……いいな。ジュースに近い軽めのワインを選んでみたが味は……うん、悪くないな。ぶどうジュースに近い。どちらもぶどうを使っている、やはりアルコールがあるのと無いのとでは違うな。これならもう一杯行けそうだな。

 

 

「雷もう一杯貰えるか?」

 

「はーい!どうぞ」

 

「あっ!こ、今度は電がお酌するのです!!」

 

「ねぇ雷、僕も一杯注ぎたいんだけどいいかな?」

 

「夕立もやりたいっぽい!!」

 

「にゃー!!ここは睦月の出番にゃしぃ!!」

 

「司令官、わ、私も司令官にお酌したいですぅ!!」

 

「ダメよ、これは雷のお仕事なんだから!!」

 

「お、おいお前ら……!?」

 

 

 お酌の座を求め詰めかける吹雪達。その波に飲まれている青年はお酌されて次から次へと飲み干していき、一人がお酌すれば別の誰かが代わり、いつの間にかこの場にいる艦娘全員がお酌する流れとなってしまっていた。断ればいいものを彼は断る事が出来なかった。

 青年はお酒を甘く見たつもりはない。だがお酒の力は実際に凄い。飲んでいると気分が良くなり、感情が高ぶり正常な判断を鈍らせる。少しなら良いが、度を過ぎれば毒となる。しかも青年にとってお酒は初体験で、体が慣れていないこともあり、何より吹雪達だけでなく全員がキラキラした瞳で訴えかけていた。

 

 

 やめr……くっ!?一杯、一杯だけお前らに付き合ってやる。仕方なく……しかたなーく、お酌されてやるから有難く思うんだな!!

 

 

 拒絶すれば良かったのだが、青年が吹雪達の善意を無下にすることはなく、なんやかんや言いながらも杯を空にしていく。それほど高級なお酒でもないが飲みやすかった。笑顔を向ける彼女達と共にこの一時を楽しめるからこそワインがより良い味に感じたのかもしれない。

 そうしている内に段々飲むスピードが上がり、飲み干してお酌されることを続けていけば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言語道断です!!加古さんが真っ先に止めないといけないのにこの有様はなんですか!!古鷹さんもですよ?暁さん達も反省してください!!それと吹雪さん達は先輩方ですがこの際言わせてもらいますが……がみがみがみがみ!!!

 

「私は提督と早飲み勝負したかったなー。ねぇー連装砲ちゃん?」

 

「神通さんに怒られる側でなかった青葉達は運が良かったようですが、司令官は大丈夫でしょうかね?」

 

「那珂ちゃんも提督のことは心配だなぁ……でも川内ちゃんと叢雲ちゃんがいるから問題ないと思うよ?」

 

「(……ご飯食べに来たら……何この状況?)」

 

 

 神通達が任務から戻って来て誰も出迎えの無い事に寂しさを感じながらも食堂の扉を開けるとそこには青年が倒れており、吹雪達が慌てふためいており、緊急事態だとわかり川内が青年を抱き起すと目を回して真っ赤になって完全に酔いつぶれていることがわかる。周りにはお酒が沢山あって原因はすぐにわかり、問いただすと単純な飲み過ぎだったが、神通はカンカンになって説教をし始めて全員が正座されられている。島風や青葉に那珂は説教を受けずに済み、先ほどまで工廠で作業をしていた夕張はどういった状況かさえわかっていなかった。

 結果から言えば青年は二日酔いとなって吹雪達は原稿用紙二十枚と言う過酷な反省文を書く羽目となったが一番得をしたのはこの二人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、自業自得よ。まったく断ればいいのに優しくし過ぎよ……そういうところが良いんだけど

 

「提督、一口でも食べて。私が腕によりをかけて作ったんだから」

 

「……んぁ、助かるぜ……」

 

 

 うぇ……気持ち悪い。酒は飲んでも飲まれるなってな言っておきながらこれは無いだろう……ちくしょう、俺がこんな失態を犯すなんてな提督失格だぜ。次は飲む量を管理しておかねぇとな……う、うぇぇぇぇ……

 

 

「うぅ……き、きもちわりぃよぉ……」

 

「「(弱っている姿って……なんかいいな♪)」」

 

 

 叢雲と川内はいつもと違い二日酔いでダウンしている青年のギャップを見て、いけない気持ちになったことは内緒だ。元に戻るまでの間、身の回りを世話をすることになり、一番得をしたのはこの二人だと言うことには間違いないだろう。

 

 


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