それでは……
本編どうぞ!
「よーし、鈴谷張りきっちゃうよ!!」
さっきまで不安でヤバかったけど、睦月に気づかされるなんて思ってなかったなぁ。ビビッていた気持ちがどこかいっちゃったみたい。今の鈴谷、なんだか誰が相手でも無敵な気分になっちゃった。誰でもいいからかかってきなよ……って、おおぅ?あれは古鷹と加古じゃん。
「やっほー、二人共調子どう?」
「あっ、鈴谷さん」
「調子?あたしは絶好調って言えたら良かったんだけどさ、そう言ってられないよ」
「うんうん、そうだよね!」
「……なんか良いことでもあったのか?流石にふざけていられない状況だと思うけど?」
「元気がありますよね。あっ!決して悪いとか言っている訳ではないんですよ?ただ……不安はないのかなって思っただけでして」
「不安は勿論あるよ。でもね、不安よりももっと大切なことがあるって気づいたんだ」
「大切なこと……ですか?」
「なんなんだ、それは?」
二人は首を傾げてわかっていないみたいなら私が教えてあげちゃお。
「敵はマジでヤバイ奴らしいけど、提督は鈴谷達のことを信じてくれている。一人じゃ無理だけど私達は一人じゃないでしょ?全員が力を合わせれば勝てるよ。負けるなんてごめんだから、無事に帰ってまた提督とデートしたいし、ビビっているよりも頑張ろうって勇気の気持ちが大切だよねって。二人もそう思うっしょ?」
「鈴谷さん……そうですね。後ろを気にするより、前を向いていた方がいいですね。保護してくれた外道提督の為にも足手纏いだと思われたくありませんし」
「まぁ、あたしはまだ加古スペシャルをお見舞いしてないから丁度いい期待だ。うじうじしているよりぶち当たった方があたしらしいからな!」
「そうそう、二人共その意気じゃん♪」
これで二人は大丈夫、私って良い事したよね?……そうだ!他にも不安を募らせている子が居るはずだから不安がる必要はないんだよって勇気をお裾分けしてあげようっと。
「そんじゃ私は用事があるから」
「ありがとうございます。鈴谷さんのおかげで勇気が出ました」
「サンキュー♪」
「いいっていいって、バイバーイ♪」
良い事した後はなんだか気分がいいなぁ♪私ってめっちゃ役立ってるよね?提督に褒められても誰も文句は言えないはずだし……俄然やる気出て来ちゃった!!!
『「わたくし達の分まで生きて……幸せになって……」』
最上、三隈、熊野……見ててね。私は幸せになってみせるから。
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『「――!!!」』
『「――?」』
『「――!!?」』
「妖精さん達……争ってますね」
「あはは……これって那珂ちゃんのせい?」
食堂で私達のサポート要員として残った妖精達が残り僅かなお菓子を賭けて勝負している……じゃんけんで。那珂が言った高級って言葉が原因でいつも以上にやる気に満ちているみたい。言葉は私達艦娘でも分からないけど、これはこれで平和でいいと私は思うな。
「いや~妖精達が争うのは当然だと思います。このお菓子美味しかったですからね♪」
「青葉さん、お聞きしたいのですけど何故わたくしにじゃんけんに参加する資格はありませんの?」
「いやいや熊野さんどれだけ食べたと思っているんですか。半分は一人で食べてましたよね?」
「あら、レディとして当たり前なことをしたまでですけど?」
「レディなら全員に公平に分けようと言ってくれたはずだし、熊野さんはレディとは言わないと那珂ちゃん思います」
うん、那珂の言うことに私も賛成だね。熊野が粗方一人で食べたから妖精達の取り分が減ったんじゃないか。その証拠に妖精達が熊野にお菓子は絶対渡すものか!って顔で距離を置いている。本人はそのことに気づいていない……いい加減気づこうよ。
「そ、そんな……わたくしはレディなんですわ。誰が何と言おうとレディなんですのよ!?その証として見てください!」
「なになに……レディ検定1級?本当になんですかこれ?」
「あらわかりませんか青葉さん?これは真のレディであることの証ですの。わたくしと暁さんが密かに作ったものでして世界に所有者がわたくしと暁さんの二人だけのレア物ですのよ♪」
「そ、そうなんですか……驚きましたね」
「な、那珂ちゃん的にもびっくりしちゃったな……」
「ふふん♪驚くのも無理はありませんわ。何故ならレディ検定1級の資格を持っているのはわたくしだけなのですから♪これでわたくしが真のレディであることがお分かりになりましたか?」
「「あっ、はい」」
自分達で作ったんだ。まぁ二人の間に特別なお遊びが存在していることを今初めて知ったよ。仲が良い事はいいんだけど……ほらみんな呆然としちゃってるじゃんか。本人達が楽しんでいるなら止めないけど。
○○鎮守府A基地は平和だ。この海域周辺は元々深海棲艦が入って来ることは少ないって提督が言ってたけど、私達の活躍で漁業が再開した。おかげで内陸部の人達の食卓には魚介類がちらほら現れているって漁業関係者の老人の人が手紙で教えてくれて、感謝の言葉も載っていた。でもほんのそれは一部の人だけで、大多数が私達に感謝の【か】の字もないんだって……酷いよね。醜いからって受け入れてくれた提督を見習うべきだと思うな。
……でも今ここに提督はいない。私達四人と一部の妖精達以外は提督と一緒に作戦へ向かった。私は練度も低いし、まだトラウマがあるからお留守番になった。当然と言えば当然だけど……寂しいなぁ。
「……眠れない」
静かな鎮守府。夜だからみんな寝静まっている時間だけど、この静かさは好きになれない。やっぱり提督や神通達が居ないからかな?もしくは無事に帰って来れないんじゃないかって不安か。
「……んん、川内ちゃん?」
「那珂、起きてたの?」
「うん、中々寝付けなくて」
「那珂もなんだね」
「川内ちゃんも?」
「……いつも以上に静かすぎてね。それとみんなのことが心配で……帰って来てくれるよね?」
「川内ちゃん……大丈夫だよ、提督も神通ちゃんもみんな帰って来るよ」
「……そうだと……いいけど」
「もう、川内ちゃんネガティブ思考過ぎるよ!暗い女は好かれないよ?もし川内ちゃんがこのままだと提督に愛想尽かされちゃうかもしれないよ?」
「――ッ!!?」
提督に愛想尽かされる……ビクッと自分の体が反応したのがわかるぐらい震えた。それは嫌だ、はっきりと提督に愛想尽かされてしまう自身の姿を想像しようとする脳内を拒絶した私の意志は間違っていない。想像するだけでも怖いと感じてしまう。それほど提督が私の中で大切になっているんだと実感する。いや、それはみんなも同じか。ライバルは多いよねぇ……
「負けるつもりはないけどね」
「何か言った川内ちゃん?」
「ううん、なんでもない。そうだよね、暗い女はダメだよね……うん、提督達は無事に帰って来てくれるに決まっている!」
「そうだよ、だって神通ちゃんも提督もみんな一緒なんだから!」
「よし、そうとわかれば明日に備えて寝よう」
「うん、おやすみ川内ちゃん」
「うん……おやすみ、那珂」
戦艦棲姫が相手でもみんなが負けるわけがない。みんなは弱くないんだから……
だからみんな無事に帰って来てくれるよね……ねぇ、提督?