あらすじ……遂に作戦決行の時が来た!
それでは……
本編どうぞ!
5-1 一航戦
「よ、よぉ!お前とこうして会うの……ひ、久しぶりだよな。お、俺が居なくて大変だったろ?」
「まぁな、だがお前のおかげで吹雪達は成長できたんだ。木曾には感謝しているぞ」
「お、おう!?べ、別にか、感謝される覚えはない……ぞ?と、当然のことをしただけなんだからな!!」
「どうした?なんか挙動不審だぞ?」
「な、なんでもねぇよ!!」
【戦艦棲姫撃滅作戦】
そう名付けられたこの作戦は厳しいものになるだろう。
南西諸島海域を拠点とする深海棲艦及び戦艦棲姫の撃破を目的として臨時基地を拠点に、大勢の艦娘と一人の提督が集結した。
赤城と加賀、そして木曾は先にここ臨時基地に到着していた。早く到着した訳でもなく、小一時間程で青年達が到着すると知っていた彼女達だったが、その時からソワソワしていた木曾。やたらと服装を気にしたり、同じ場所を行ったり来たり、青年達がやって来るだろう方角を何度も眺めては同じ動作を繰り返す。赤城と加賀に指摘されるも落ち着きを取り戻すことはなく、彼が到着すれば真っ先に駆け出していた。
木曾の中では自然に振舞っているようではあるが、裏腹に挙動不審状態に陥り、青年に指摘されると顔を真っ赤にした。一番この時を待ち望んでいた人物は言うまでもなく彼女であったのは間違いない。
「木曾さんお久しぶりです!!」
「はっ!?……ゴホン、よう吹雪、叢雲も久しぶりだな。訓練さぼっていなかっただろうな?」
「私達がさぼるなんてありえないわ。
久々の再会に嬉しさが表立って話題が止まらなくなる。その間も木曾はチラチラと青年を気にしていたらしいが、当の青年は赤城と加賀が居たことに驚いており、意識から外れていることに何やら寂しそうな瞳をしていた。そんなことなど知らない彼は木曾を吹雪達に任せ、苦手意識を持つ相手だからと言えど援軍つまり味方。声をかけない選択肢はあるはずもなく。
「お、お前達か、久しいな。どうだ鳳翔達は元気にしているか?」
「はい、鳳翔さんは私達を気にかけてくれて、前線を離れていても力になってくれています。他の皆さんも元気にしています」
「………………………………………………」
赤城は笑顔で対応してくれるが加賀はピクリとも表情筋は動かず無言、しかし瞳が鋭く見据えていた。記憶の中の『艦これ』に出てくる赤城と加賀の印象と同じように見えるが、笑顔の赤城ですら意味ありげな笑みであることを青年は知っている。以前視察の時に受けた殺気、あの感覚を忘れることなんてできないので彼にとっては悪夢である。
しかし安心してほしい。二人の瞳に殺気を宿している様子はない。代わりに瞳に映るのは疑いや不信感だろう。
赤城と加賀は鳳翔達が戻って来たことに大層喜んだ一方、彼女達にとって納得いかない事の方が多い。間宮と鳳翔は自ら○○鎮守府A基地に潜入スパイとして名乗りを上げた。その時の覚悟は相当のものだったはずだ。しかし再会した鳳翔はいつもの鳳翔だった。青年のことを敵視していた二人だったが、まさか鳳翔からお叱りの言葉をもらうとは思ってもいなかった。あれほど覚悟を宿していたはずの鳳翔と同一の彼女なのかと疑いを持ったことがあった。疑うなど彼女を信頼する赤城と加賀が一番思うことはあり得ないと言うのに。
帰って来てからの鳳翔は居酒屋を訪れた時、よく○○鎮守府A基地での思い出を語っていた。楽しそうに、そして寂しそうに話していたのを赤城と加賀は知っているが、面白くないと思えた。吹雪達の話や大淀達のことはよいが、青年のことを自慢げに話していたのには納得できなかった。
最初の話と違うではないか。軽視派の人間でありながら何故艦娘に優しくするのか?醜い私達の傍に居て気持ち悪がらないのか?美船元帥が青年に抱いた『矛盾』何が正しく、何が間違っているかどうかもわからず、ちぐはぐな存在に心を許せと言われて「はいそうですね」と頷くことは二人には出来なかった。
だがこれも運命かな、こうして二人の目の前に『矛盾』を宿した青年が現れた。この作戦を通して彼を見定めようとしているのだ。
「「………………………………………………」」
「(な、なんだよ?
赤城と加賀の視線にビビりながらも平静を装う青年。赤城は笑顔、加賀は無言を突き通しているだけだが、ここだけ空気が重いのは気のせいではない。彼の心はストレスがマッハで溜まっていることだろう。
「ちょっと何さっきから提督さんのこと睨んでいるのよ!」
「ちょ、ちょっと瑞鶴!?」
そんな空気をぶち壊す一声。瑞鶴が横やりを入れてきた。慌てて翔鶴が止めに入るが相手が相手、瑞鶴に対して一番に反応を示すのは
「なに五航戦?別に私達は睨んでいないのだけど?」
「いいや、絶対睨んでた。一航戦の加賀さんともあろう方が嘘を言うつもりなの?」
「……っ、睨んでないわ。あなたの目は節穴なのかしら?」
「なんですって!!?」
「ず、瑞鶴止めなさいって!!」
加賀の高圧的な態度に瑞鶴が噛みつこうとするが翔鶴に止められた。傍から見ていると犬猿の仲にも思える光景である。しかしこれも戦時中の記憶の名残りかな、一航戦と五航戦の仲は不仲だったと言う。実戦経験が豊富で乗員の練度も非常に高かったが、プライドと
以前視察に訪れた時は対面はままならなかった。だが対面しただけで喧嘩を吹っかけることは瑞鶴もしないはず、彼女が横やりを入れた理由は青年が関係していた。
以前美船元帥一行が視察の為に訪れた。その時に赤城と加賀も同行していたことは後から吹雪達経由で聞かされた時に瑞鶴は腹が立った。鳳翔に説教を受けていたようだが、それでも瑞鶴の胸の底には静かな怒りが潜むことになる。その怒りを抱いたのも彼女の性格故のものと記憶の名残りが原因だろう。特に加賀に対して
だからお互いが対立するのは必然的なことだった。避けては通れぬ道とも言える。
「あ、赤城さんこれはどういうことですか!?」
「あら、吹雪ちゃんこんにちは」
「はいこんにちは……っじゃなくて!なんで瑞鶴さんと加賀さんが争っているんですか!!?」
異変に気付いて吹雪達が集まりだした。睨み合っている瑞鶴と加賀に周りはついていけてない野次馬状態、翔鶴は二人の気迫に押されオロオロしだしていた。このまま険悪な空気が続いてしまうのはまずいと判断した青年が止めに入った。
「おい瑞鶴、その辺にしておけ」
「でも提督さん!」
「落ち着け、俺達は何しに来たか忘れたか?」
「……深海棲艦を倒す為に来た」
「そうだ、お前と加賀がお互いに対してきつく当たってしまうのは相性の問題であることは大体理解しているつもりだ。だからこういうことがあっても多少なら仕方ないと思うが、今は時間も惜しい。あと加賀、きっとお前も過酷な環境下に居たんだろう。予想はできる。世の中は理不尽だ、見た目で全てを決めつける奴が多すぎる」
「……」
「俺のことを信用できないならそれでもいい、だが仲間内でいざこざを起こされると作戦に支障をきたす。今回の作戦は失敗は許されない。そこはわかってくれるよな?」
「……はい」
「俺を信用しなくとも構わない。だが瑞鶴達なら信用できるだろう?今回の作戦にはお前達の力が必要なんだ。力を貸してくれ頼む」
青年はそう言うと赤城と加賀に対して頭を下げる。彼の行動に動揺した二人は驚いていた。加賀ですら先ほどの無表情に驚愕が表れたほどだ。
「……わかったわ。私達を扱えるかどうかそれなりに期待はしているわ」
「助かるぞ加賀、赤城も手を貸してくれるか?」
「ええ、構いません」
「感謝する。瑞鶴もそう言うことだ。わかるだろ?」
「提督さんがそう言うなら従うけど、提督さんの悪口を言ったら私我慢できないよ?」
「我慢しろ。この作戦が終わったらいくらでも加賀とじゃれ合っていいから」
「じゃ、じゃれ合ってないって!!?」
「「………………………………………………」」
耳を真っ赤にして抗議する瑞鶴の姿を赤城と加賀は何を思っているのかわからないが、ただジッと眺めていた。
★------------------★
臨時基地の一角、長旅の疲れを休める為に休息時間を設けた。作戦会議まで時間はあるので赤城達は集まってお互いの胸の内を話すことにした。
「瑞鶴とあの提督……仲が良さそうでした」
あの加賀さんがそう呟いたのを私は見逃さない。表情に出していなくても私にはわかる。そして加賀さんが心の奥で瑞鶴さんを羨ましく思っていることも。
「そうですね。鳳翔さんから詳しいお話を聞いていましたが驚きました。木曾さんとも仲が良いみたいですね」
「な、なんだよ?別におかしいことかよ?」
そんな言葉をあなたから聞くとは思いませんでした。○○鎮守府A基地、正確にはあの男と関りを持ってからあなたは変わりました。鋭さを放っていた敵意も今や見る影もなくなってしまいましたね。
「はい、おかしいです。本来私達は醜い人の形をした
「俺達の美船元帥だって……」
「美船元帥は人間と艦娘との違いはあれど
「それはあいつは変人だからだ」
変人だからと言って「わかりました」と言えたらどれほど楽か。木曾さん、艦娘である者は世間から何と呼ばれているかを忘れていませんか?私達は人の形をした
人間と艦娘との距離が縮まれば私達は強くなれる。しかしそうなることを許さぬように『醜さ』と言う壁が立ち塞がり、艦娘はその被害者。私と加賀さんもこんな姿だから嫌われ、不要とされ、一航戦のプライドも傷つけられました。
表では艦娘に優しく接していても、裏では貶していることなんて当たり前のようにある。今まで散々見て来たはずですよ木曾さん?それに
だからこの目で見定めるまでは信用なんて出来ません。ですが、私達に頭を下げるなんて何を考えているのか……本当にわからない。不思議な感覚に陥ってしまいそうです……
「……そうですか。それはともかく私と加賀さんは
「
木曾から放たれた言葉には静かな怒りが籠っていた。思い起こさせる視察の時に鳳翔に怒られた時と同じ、何より仲間である木曾が自分達に向ける視線が鋭かったことに表面では冷静に受け止めていても内面では驚愕を宿していた。
……木曾さん、あなたは本当に変わりましたね。○○鎮守府A基地に行く前のあなたとは別人です。何がここまであなたを変えたんでしょうか……いえ、原因はわかりきっていましたね。やっぱりそうなんですね?
赤城は気づかれないよう一呼吸入れて気持ちを落ち着かせた。
「……わかりました。あなたが信頼する
「ああ、一つ言っておくが、あいつはお二人が考えているよりもずっと変人だから気をつけた方がいいぜ」
「「……」」
木曾にはそう確信させる自信がある。何を根拠にしているのかこの時の二人にはわからないものだった。