あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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まもなく開始する作戦の準備に取り掛かる艦娘達と青年の回です。


しばらくは真面目回ばかりになりそうです。


それでは……


本編どうぞ!




5-2 意気込み

 南西諸島海域はかつて静かで優雅に魚達が泳ぎ回り、各国の輸送船が行き交う場所だった。深海棲艦が姿を見せてからそれは一変したが、一度は奪還することに成功。一時期は比較的平穏な時間もあったものだ。現在はその鱗片すら感じさせない程に臨時基地から遠くに見える空が赤い。そう見えているのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが原因である。

 

 

 【変色海域】

 血のように赤く変色した海。この状態の海では深海棲艦を除く生物は全て死滅し、艦娘であっても徐々に艤装が損傷していき、現在の状況では戦艦棲姫が現れたことで発生している霧も関連が予測されているが詳しいことははっきりとしていない。

 

 

 深海棲艦側に優位に働き、艦娘側に不利に働くフィールド。幾多の犠牲を出して掴んだこの情報が勝利への手がかりとなる。戦艦棲姫を倒す為には圧倒的不利なフィールドに入り敵を殲滅しなければならない。

 

 

 臨時基地の一室で青年を含めた艦娘達が集まり、作戦会議を行っていた。

 

 

「最後にもう一度現状を伝えておくぞ。変色海域の影響により、長時間海域に留まることはできない。とても危険な状況だ。敵の縄張りに飛び込み戦艦棲姫を撃滅しなくてはならないが、やらねばならない。しかし今まで俺の下で汗水を流し、厳しい訓練で鍛えたんだ。お前達ならばきっとこの作戦を成功させてくれると信じているからな」

 

「「「「「はっ!!!」」」」」

 

 

 真剣な眼差しの艦娘達。これから始まる作戦に様々な感情が宿っているだろう。その誰もが勝利への渇望をお抑えきれずにいるようだ。

 

 

「木曾も頼りにしているぞ」

 

「へっ、俺が居るんだ。お前に最高の勝利を与えてやるよ」

 

「頼もしい限りだ。そして勿論赤城と加賀も頼りにしている」

 

「了解しました。命に代えてもこの作戦を成功させます。加賀さんと私の一航戦の誇り、お見せします」

 

「赤城さんと同じく」

 

「心強い言葉だ……が、二人には一つ言っておくことがある」

 

「?なんでしょうか?」

 

 

 首を傾げる赤城と加賀。

 

 

「この作戦にはお前達が必要なのは間違いない。命に代えても成功させようとする意気込みは素晴らしいが、お前達が散った後はどうするつもりだ?この作戦を命と引き換えに勝利しても次はお前達が居ない状況で戦わなければならなくなるぞ?」

 

「それは……仕方のないことです。僅かな犠牲で勝利を手に入れられるなら……」

 

「だから沈んでもいいと?そんな目標の()()()ことは言うな」

 

()()()ですって?」

 

 

 青年の言葉に加賀が反応した。表情は変わらないが、言葉に鋭さが籠っている。以前他の鎮守府へ援軍として出撃した時は仲間の犠牲があって勝利した。それを()()()と言われたと、沈んでいった子達を侮辱したと感じた。赤城も加賀と同じ感情なのかそれを咎めることもしない。二人から発せられる威圧感は周りの吹雪達も感じていたが、固唾をのんで見守っている。

 

 

ひぇっ!?……ゴホン!いいか、俺達がやるべきことは戦艦棲姫を倒すだけが目的じゃない。戦艦棲姫を倒す(プラス)全員が生き残ることだ」

 

「それは……」

 

「赤城はできないと言うのか?簡単ではないだろうが、無理ではない。それにな、初めから沈んでもいいなんて考えは止せ。何が何でも生き残ってやる気持ちでいろ。辛いのは死んでいったものよりも残された方だ。自分は生き、仲間が沈み、親しい者と会えなくなっちまう方がずっと後悔することになるんだ。お前達は仲間達に後悔(呪い)を残していくつもりか?」

 

「いえ、そのようなことは望みません」

 

「なら生き残れ。泥水を啜ってでも帰って来ることだ。生きていればやり直せることだってあるかもしれねぇ、死んじまったら人間も艦娘もそこでお終いだ」

 

「生きていれば、ですか?」

 

「そうだぞ加賀、良い事も悪い事は生きている時にしか成せない生命の特権だからな。それに目的は大きい方がいいだろう?まぁ、お前達は元帥殿の直属、借りたもんは返さねぇと。無事にとはいかねぇかもしれねぇが返してやるよ必ずな」

 

「「………………………………………………」」

 

 

 先ほどまで部屋中に充満していた威圧感はどこかに消え去り、赤城と加賀はこの時、信じられないものを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に地獄の淵より救ってくれた「母」として慕う鳳翔の姿が見えた……そんな気がした。

 

 

 ★------------------★

 

 

 臨時基地の仮設司令部にて、もうすぐ始まる戦艦棲姫撃滅作戦にいつになく緊張していた。

 

 

 ちくしょう、落ち着け俺。この作戦失敗する訳にはいかない。この俺にとっての転機になるだろうから負けられねぇ。

 この作戦は美船元帥さんからの()()()だ。元帥の地位にいる人物から名指しされると言うことはそれだけの意味を持っていることになる。その期待に応えれば俺の評価が上がり、一人も轟沈せずに作戦を成功させればあのお優しい美船元帥さんの好感度がグーンっとアップするに違いねぇ。俺を疑っていても頼らざるを得ない状況に陥っている今、更なる功績を挙げれば俺に釘付けよ。そうなれば昇進間違いなし、そしてゆくゆくは元帥の座に座っているのは俺かもな!!!

 

 

 緊張を解すように昇進への欲望を燃え上がらせて自分自身に言い聞かせる。こうでもしないと緊張に負けてしまいそうだからだ。何度も「昇進、昇進」と呟いて鼓舞していると……

 

 

 ――プルルルルッ!!

 

 

 臨時基地に備え付けられていた電話が鳴った。 

 

 

 んぁ?誰だよこんな大事な時に……って、まさか美船元帥さんか?おいおい、いいのかい?そんなに俺に入れ込んじまっても?まぁ俺が優秀だから俺に頼らざる負えないのはわかるけどよ♪しゃあねぇな、出てやるか。

 

 

 青年は受話器を手に取り「もしもし」と相手が美船元帥だと思って出たが……

 

 

『「初めまして外道提督さん、わたくしのことお分かりですよね?」』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………はっ?」

 

 

 小葉佐……大将?えっ、なんで?なんで小葉佐大将がこんなところに連絡して来てんだよ!!?

 

 

 予想外の人物に度肝を抜かれた青年。しかも相手は穏健派の人物であり、小葉佐の階級は大将。元帥に直接会っておきながら今更何を思っているんだと思われるだろうが、小葉佐大将の姿を思い浮かべてみればわかる。

 今では愉悦猫のせいで美醜が逆転しているが、その前までは彼もあべこべ世界の住人の一人だった。そして小葉佐大将は一度その姿を見てしまえば視線を釘付けにしてしまう()()()()()だ。しかし彼にとっては()()()()()()と化す……つまり。

 

 

 ――うぇぇぇえ!!?き、きもちわるく……なってきやがった。うぅ……ちく、しょ……う。折角忘れていたのに……思い出させやがって。

 

 

 思い出してはいけなかった記憶を蘇らせてしまった。口元を抑えて懸命に持ち堪えようとしている青年は己の胃と奮闘している。気が抜けてしまえば胃から上がって来た()()()()()()()()()してしまう……それだけはまずい。

 美的感覚が狂ってしまった彼にとって危機的状況に陥っていた。それも仕方ない、美人の美船元帥を思い浮かべていたら、横からこの世のものとは思えない魔物が急に姿を現したのと一緒だ。おかしいのは青年であって世界ではない。

 

 

 不意打ちボディブローを打ち込まれその場に倒れ伏しそうになったが堪えた。足がガクガク震え顔色も悪くなっているが、気分最悪になったからと言っても電話を切ることはできない。これ以上小葉佐大将を思い出さないように中和剤として美船元帥の姿を思い起こさせながら電話対応することにした。

 

 

「……小葉佐大将ですよね?何故大将ともあろうお方がおr……ワタシなどに電話を?」

 

『「おーほっほっほっ!!!大将としての威厳を新米のあなたに教えて差し上げたかったのですわ!!……っと言うのはほんの冗談です。わたくし、あなたのことを心配しておりますのよ?」』

 

「し、心配ですか?」

 

『「はい、戦艦棲姫撃滅作戦は極めて過酷な戦いになると断言できますわ。戦艦棲姫を倒そうと提督、艦娘達が奮闘したのにも関わらず今も健在し、我が国を脅かす脅威となっております。あなたの活躍はお伺いしておりますが、新米提督のあなたを指名した美船様は何を考えているのやら……わたくし、正気を疑いました。ああ、あなたが相応しくないと言う事では無いのですよ?ただ()()()()()()に対する責任を考えれば経験を積んだ方が良いとわたくしは思うのですよ」』

 

「は、はぁ……ですが美船元帥さんはワタシを信頼してくれています。その期待に応えたいと思っておりますし、艦娘達もこのまま深海棲艦の好きにさせておくわけにはいかないと十分理解しております。ワタシは国の為にも負けることなど考えておりません。艦娘達を信じておりますので」

 

『「……あなたは素晴らしいお方なのですね。まだまだ未熟でありながら無理難題をこなそうとする。お若いのに熱い信念をお持ちのようですね……わたくし感動致しましたわぁ♪」』

 

「い、いえそんな……ワタシごときが素晴らしいなどと……」

 

『「外道提督さん、そのわたくしはあなたを気に入りましたわぁ」』

 

――げぇっ!?

 

『「何か仰いまして?」』

 

「い、いえいえ何も仰っておりませんですはい!」

 

 

 気に入っただと!?嘘だろおい!?ちくしょう化粧盛りおばさんに気に入られたくねぇよ。昔はそりゃ目で追ってしまったことだってあったが……うぅ、思い出したら吐き気がしてきた。

 

 

 気に入られてしまったことに絶望状態。幸いなことに電話越しで顔と小さく出た本音が相手に知られなくて済んだことが幸運だ。

 

 

『「そうですか。外道提督さん、作戦成功することを祈っていますわ。わたくしはあなたを信頼しております。この作戦が無事に成功した暁には共に盃を酌み交わしたいものですね」』

 

「いえk……ええ、機会があれば」

 

 

 「いえ結構です」と口にしかかって慌てて止めることができた。上司に対して本音を口に出せないのは以前の世界とあべこべ世界でも共通の宿命であるようだ。

 

 

『「ではわたくしはこれで失礼させていただきますが、最後にあなたに伝えておくことがありますわぁ」』

 

「な、なんでしょうか?」

 

『「()()()()()()()()()()()()()を手に入れた場合、まずはわたくしに連絡してほしいのです。わたくしの方でも情報部や作戦戦略部とも対処法を模索し、今後このような深海棲艦が現れた時に対応できる用に色々と知っておきたいのです。それが艦娘達を守ることに繋がるかもしれませんから」』

 

「は、はいわかりました。何かあれば小葉佐大将の方にも連絡を入れさせていただきます」

 

『「ふふ、お待ちしておりますよ。外道提督さん♪」』

 

 

 ――ガチャン。

 

 

「ふぃ……疲れた」

 

 

 受話器を置いた途端にへなへなと椅子に腰を下ろして、気が抜けたのか安堵のため息が漏れた。

 

 

 まさか小葉佐大将自ら連絡を寄越すとはな。しかしあの人も()()()の人物だから艦娘のことが気になったのか?美船元帥さんと個人的に仲が悪いと聞いたことがある。詳しいことは知らないし、知る必要もないが、元帥さんと大将さんは同じ派閥でも何か違う思いを抱えているのかもな。俺には関係ない話だが、これは嬉しい誤算だ。美船元帥さんだけでなく、小葉佐大将さんも俺に夢中ときた。昇進への道がまた近づいたんじゃないか?クヒヒ♪そうとなればこうしちゃいられねぇ!今回の作戦絶対に勝ってやるからな!!!

 

 

 青年の瞳にやる気の炎が燃え上がる。何としても戦艦棲姫を撃滅し、最高の戦果を挙げてみせると意気込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ガチャン。

 

 

「うふっ♪男は単純ですわね。()()()()()()()()()が為に躍起になってくれるでしょう♪」

 

 

 小葉佐大将は己の容姿に絶対なる自信があった。美の象徴とも呼べれるその姿に男共は鼻の下を伸ばす。青年もその部類だと疑わず、気に入られようと立ち回ってくれるだろうと。そもそも青年は軽視派、小葉佐大将のことを穏健派だと彼から思われているが、何も問題ないと小葉佐大将は確信している。例え穏健派の人物だと思われていても結局は世の中は損か得かで物事が動くからだ。

 

 

「彼にはわたくしが軽視派の人間だと伝えるのはまだ避けておきましょう。伝えるのは直接会った時の方が驚くと思いますし……驚いた時どんな顔をしてくれるのでしょうかぁ?彼の驚いた顔……うっふ♪お若い男は実に可愛いですからね、是非ともねっとりと拝見したいですわぁ♪」

 

 

 小葉佐大将はとろけた表情でそう呟く。その裏で一体()()を想像しているのか……

 

 

「なのにあの美船(ババア)に期待されているのは可哀想ですわ。早くわたくしが彼を守ってあげないといけませんね。勿論対価は戴きますが、彼もわたくしの()()()()()()()に決まってますわぁ。わたくしのモノになった暁にはたっぷりと可愛がって差し上げますよ……じゅるり❤」

 

 

 小葉佐大将は知らない。青年はこの世界ではイレギュラーな存在であることを……

 

 




「追記」


少し内容を見直しましたので元から少々変更されています。
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