あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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戦艦棲姫との死闘は激しさを増し、そして……


それでは……


本編どうぞ!




5-6 せめて安らかに

ウワァアアアアア!!!ニクイ……ニクイィイイイイイ!!!

 

 

 暴れる戦艦棲姫。獲物を狩る側であり、知性と冷静さで的確に艦娘達を追い詰めていた……先ほどまでは。だが突如としてそれは終わりを迎え、そこには所かまわず砲撃を繰り返し、雄たけびを上げる猛獣が居た。

 

 

 何度も何度も……同じ言葉を繰り返す。『テイトク』と言う言葉を……憎悪を込めて。

 

 

「戦艦……棲姫さん」

 

 

 吹雪は先ほどとは対照的な印象を戦艦棲姫に抱いた。敵である者に対して()()()()までして今、胸の内にあるのは敵意ではなく哀れみだった。

 

 

 『「()()()()……ドウシテ……ワタシヲ……ステタノ!!?」』

 

 

 胸の内を叫んだのだろう。この場に居る艦娘全員が同じことを思った。

 

 

 深海棲艦が以前○○鎮守府A基地へやってきたことがあった。正確には拾った表現となるのだが「軽巡ヘ級」が川内へと変わる異例の事件があった。この事件で、深海棲艦が艦娘に、艦娘が深海棲艦になることが明るみに出た。不確定要素ばかりである内容だが、この一件を知った艦娘、そして美船元帥に衝撃を与えることとなった。そして情報を知る者は皆、一つの可能性を心の奥底に宿すこととなってしまう。

 

 

 『深海棲艦は元は艦娘だったのではないか?』

 

 

 この一件以来、知るもの全てに付きまとう深海棲艦の可能性。それが今、目の前の戦艦棲姫にも同じことが言える状況が露わとなった。

 『テイトク』に異常な反応を示すところ、何かあったのは間違いない。それも悪い方向の……暴れ続ける戦艦棲姫はかつて艦娘だった者かもしれない……この者も被害者だったのだ。

 

 

 助けてあげたい……元同じ仲間として。だがそれを許さんとばかりに戦艦棲姫は凶暴さを増していき、その凶暴性は周りに当たり散らす癇癪を起こした子供と言う表現では生温(なまぬる)い。全てを憎しみの対象としてしか見ていない破壊衝動と自暴自棄が彼女の絶望的な感情を表している。

 

 

「……」

 

「吹雪、変な気を起こすつもりじゃないでしょうね?」

 

「叢雲ちゃん……」

 

「同情はよしなさい。あれはもう艦娘じゃない戦艦棲姫なの。幾多の仲間達を沈めた憎き相手……作戦は成功させなければならないのよ。それでも同情すると言うのなら……これ以上苦しめさせない為にもやっつけるしかないのよ」

 

 

 そう諭す叢雲の表情は苦し気だった。彼女もまた艦娘、元々○○鎮守府A基地はブラック鎮守府だった。青年が現れてから変わったが、あのまま前提督が支配していればいずれ吹雪も叢雲も海の底に沈んでいただろう。そうなった場合、前提督に対して怨み憎しみを抱く自分はきっと深海棲艦になっていたのではないだろうか。深海棲艦と艦娘の関係性はハッキリと掴めていないが、目の前の戦艦棲姫は()()()()の存在を恨んでいる。

 復讐する為に……戦艦棲姫は()()()()()()()()だ。それがどんなに苦しいことか、自分を見失ってしまうとはどんなに恐ろしいことだろうか。心の叫びを聞いてしまった叢雲は吹雪に「同情はよせ」と忠告したが、彼女自身これ以上戦艦棲姫に罪を背負わせたくはない。それは元仲間に対する慈悲の表れでもあった。

 

 

「ニクイ……ニクイ……ニクイィイイイイイ!!!

 

「まずいわね、これ以上空母組が狙われたら私達に勝ち目がなくなってしまうわ!」

 

「なら私達のやることは……」

 

「変わらずこちらに注意を引き付けることよ。吹雪行くわよ!」

 

「うん!」

 

 

 叢雲と吹雪は無造作に飛び散る砲弾を回避しながら砲撃で応戦する。ほとんど攻撃が通じぬとわかっていても今の狂乱状態の戦艦棲姫には注意を向けさせる効果はあった。憎悪に支配され、悲痛な雄たけびを上げながら砲撃は二人を狙う。その光景を黙って見ている赤城達ではない。弓が使い物にならなくなった赤城は加賀のサポートをしつつ瑞鶴と翔鶴も艦載機で二人を援護し、隙を(うかが)いチャンスを狙っていた。決定的な一手を打ち込める時を。しかしだ。

 駆逐艦の機動力を活かして避けていたが、一発の砲弾が叢雲の足を掠めた。その拍子に痛めたのかよろけて海面へと身を投げ出されてしまった。すぐに立ち上がろうとするが足に力が入らず叢雲はそれを目にした。怪物型の艤装の砲口が叢雲を捉えている姿を。赤城達は艦載機で戦艦棲姫に対して攻撃を行い標的をこちらに向けようとしたが、それでも砲口は叢雲を捉えていた。

 

 

 戦艦棲姫から憎悪を孕んだ狂気の笑みを浮かべて命じた。

 

 

シズメ

 

 

 叢雲は終わりを見た。近づいて来る砲弾がゆっくりと感じ、一瞬の時間が長く感じられる。あの軌道は直撃すると理解し、死が近づいて来るのを実感したが彼女は諦めていなかった。

 

 

「(沈んで堪るもんですか。私はまだやりたいことが……あいつにまだ言いたいことが!!!)」

 

 

 しかし現実は残酷かな。無慈悲にも吹雪が駆け付けるよりも砲弾が叢雲に直撃する……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――バシャン!

 

 

 叢雲には水の跳ねる音が聞こえた気がした。そして不思議なことに自分の体が再び海面に投げ出されていた。一体何が起こったのか……答えはすぐに出た。

 

 

「オゥッ!?き、ききいっぱ……危機一髪だったぁあああ!!!?」

 

「し、島風!!?」

 

 

 叢雲の絶体絶命の時に彼女を庇ったのは島風だった。艦隊型駆逐艦の最高峰を目指して開発された、高速で重雷装の駆逐艦それが彼女だ。40ノット以上の快速を誇る彼女が捨て身の勢いで叢雲を助けたようだ。仲間を守りたい一心で、艦の性能すらぶっちぎった速度を出して駆け付けたのだ。ぎりぎりのところで避けることができたが、島風には珍しく真っ青な顔で生きていることに感謝している様子だった。

 

 

「オノレイマイマシイ!!ジャマヲs――!!?」

 

 

 危機を救った島風に砲口を向けた怪物型の艤装の艤装が爆発した。忘れていないだろうか?島風がここに居るということは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員狙え!!!決して敵に主導権を渡すな!!!

 

 

 全身ボロボロの流血状態の木曾が仲間に肩を借りながら堂々とした声が辺りに響く。それに共鳴して数多くの咆哮が木霊(こだま)し、戦艦棲姫へ無数の砲撃が着弾する。

 

 

 赤く変色し、絶望と恐怖を振りまく海に似つかわしくない希望と光を宿した者達……○○鎮守府A基地の艦娘()()が損傷を負いながらも戦艦棲姫に立ち塞がった。

 辺りを見回しても他の深海棲艦の姿はなかった。彼女達は見事敵を撃破した(食らった)艦娘()深海棲艦()に打ち勝ったのだ。

 

 

「バ、バカ……ナッ!?ア、アリエ……ナイ!!?」

 

 

 戦艦棲姫は目を疑った。今までの艦娘達と違ったのはわかっていたが、負けるとは微塵も思わなかった。数も性能もこちらが上でここは変色海域、自分達の領土(テリトリー)。何から何まで優勢だった。それがこれだ。

 

 

 敗北……戦艦棲姫は悟った。目の前の艦娘達はボロボロの満身創痍ばかりだが沈む気がしない。彼女達の目に宿っている闘志はただの勝利への渇望などではないと理解した。

 

 

 『生』への執着心。『提督』との約束が彼女達の闘志と言う形で作られていたのだ。

 

 

 ギリッと苦虫を嚙み潰したような表情を艦娘達に向ける。

 

 

 気に入らない。()()()()()()()()を持っている彼女達の存在自体が非常に気に入らなかった。胸の奥からぐつぐつと湧き上がる感情が何か嫌でも理解させられる……これはきっとそう……嫉妬なのだろうと。

 

 

「ミトメナイ……ミトメテナルモノカ!!!」

 

 

 羨ましい……だから認めない。戦艦棲姫は憎しみを艦娘達にぶつけるべく砲口を向けた。

 

 

「――ウグゥ!!?」

 

 

 背中に衝撃が走る。振り返ればそこには空には無数の艦載機とそれらを操る四人の空母達。

 

 

「これで終わりよ。瑞鶴隊攻撃!!」

 

「沈んでいった皆さんの為にも……これで終わりです!」

 

「鎧袖一触……これでお終いよ」

 

「戦艦棲姫、私達はあなたを倒す。それがあなたに対する慈悲と信じて……あなたの悲しみはこの航空母艦、赤城が忘れません。だから……せめて安らかに」

 

 

 降り注ぐ無数の爆撃。それが戦艦棲姫が見た最後の光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わった?」

 

 

 誰かが口にした言葉が耳に残る。辺り一帯見渡せば赤く染まった海は元の姿を取り戻し、空は青く太陽が顔を出していた。

 

 

「終わりましたね」

 

「赤城さん……ええ、終わりました」

 

「翔鶴姉、私達……勝ったの?」

 

「そう……みたいね」

 

 

 自分達が勝ったのか実感が湧かない。先ほどまでの激戦もどこかに消え失せ、静かな波の音が応えるのみ。そんな時、無線から待ち望んでいた声が響いて来た。

 

 

『「おい!おいお前ら返事しろ!!全員無事なんだろうな!!?」』

 

「司令官!」

 

『「吹雪無事か!?怪我はしたか!?誰が怪我したんだ!?誰も沈んでいないだろうな!!?」』

 

「し、司令官一度にいっぱい聞き過ぎですぅ!!」

 

 

 無線からは青年の焦った声が響く。自分達のことを心配してくれていることに吹雪達は嬉しく感じた。生きていて良かったと思える瞬間だった。

 

 

「提督、無事……じゃないけど、鈴谷達全員生還したよ」

 

『「ほ、ほんとか!!?」』

 

「ホントだよ提督。でも僕達満身創痍だからすぐに帰るのはちょっと難しいかな?」

 

 

 大破した者は仲間に支えられながらも支えている側もボロボロだ。全員満身創痍ながらも支え合いながらも戦い抜いた。こんな状態でも一人も轟沈していないことはまさに奇跡だろう。

 

 

『「無理はするな!吹雪、近くに休める場所はあるのか?」』

 

「ええっと……あっ、近くに小さな島があります」

 

『「わかった。全員一度に帰還するのは待て。まだ深海棲艦の残党が残っていないとも言えないしな。動けるメンバーで動けない奴を支援しつつ帰って来い。いいな、深海棲艦を見つけても刺激するなよ?今は帰って来ることだけを頭に入れろよ?」』

 

「はい、司令官!」

 

『「おっとまだ切るな。お前達に言いたいことがある」』

 

 

 なんだろう?と艦娘達はお互いに顔を合わせた。

 

 

『「よくこの難題とも言える作戦を遂行してくれた。お前達がいなければ南西諸島海域はおろか日ノ本が危険に晒されていただろう。よくぞ戦艦棲姫を倒してくれた。そして誰一人として沈まないで居てくれたお前達艦娘はやはり俺の誇りだ!!流石、俺の艦娘達だ!!!」』

 

 

 艦娘達は震えた。自分達が泥水を啜ってでも生きる意味がこの言葉にあった。中には薄っすらと涙を流す者もいる。

 

 

『「俺達の勝利だ!!!」』

 

 

 【戦艦棲姫撃滅作戦】

 

 

 ここに作戦成功と記載する。

 

 

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