あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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とても遅いあけましておめでとうございます。休み中のだらけ具合が抜けずにようやくかけましたので投稿です。


それでは……


本編どうぞ!




5-10 敵意

 何の為に生まれてくるのだろうか?

 

 

 一体何故生まれてくるのだろうか?

 

 

 長いようで短い人生の中でその意味を見つけるだろう。しかし生まれた時からこうなることを与えられたら?進む人生と言う道を初めから決められていたら?その運命をはたして受け入れられるだろうか?

 

 

 何も知らず、知識を持ち合わせていなければその運命を当然のように受け入れる……いや、その覚悟すら抱かずに言われるがまま従っているだろう。

 

 

 これがもし生まれながら知識を持ち、深海棲艦と戦うと言う使命を与えられている存在ならばどうだろか?

 

 

 艦娘……人類を守る為に深海棲艦と戦う醜い存在。醜いながらも人のような感情、形、思考を持つ。人と同じと思う者もいれば、それを認めないと主張する者がいる。世界は艦娘にとって住みにくいところだが、彼女達は己に与えられた使命を果たそうと命を賭けた。

 

 

 そしてここに、その使命すら与えられずに残酷な運命を定められた者達がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうことか」

 

 

 南西諸島海域の小島へとやってきた青年達。しかしそこには大いなる面倒事が隠されていた。

 

 

 謎を秘めた廃墟の地下には囚人のような扱いの艦娘達がいた。叢雲から経緯を伝えられた青年御一行達、特に反応を示したのは吹雪達だった。彼女達は爪が食い込む程に拳が握られ、今にも血が流れだしてしまいそうで、仲間に対する酷い仕打ちに怒りを覚えたと同時に悲しみが歯を食いしばらせた。叢雲の表情からもわかるように今回の騒動は艦娘達の心に大いなる影が宿る事だろう。

 

 

「大丈夫か球磨!!?多摩!!?」

 

「あっ!木曾さん!?」

 

 

 自身が大破してろくに体の自由も効かない状態であるにも関わらず翔鶴の制止を振り切り、己よりも球磨と多摩の心配をする木曾。彼女は球磨型の5番艦、二人は姉妹艦に当たり、まさか姉達がこんなところに居るとは思ってもいなかった。動揺を隠しきれず痛む体に鞭を打ってでも近寄り失神している二人の肩を揺らして起こそうと試みる。しかしそれを青年は止める。

 

 

「木曾、無茶はよせ」

 

「だが球磨と多摩がっ!!!」

 

「わかっている。まずはお前が落ち着かないとダメだ。弱り切っている相手を無理に起こそうとするとそれだけでもエネルギーを消費する筈だ。幸い死んではいない、気を失っているだけのようだからな。早く入渠ドックへ運んで休ませてやる必要があるが、その為にはお前が冷静にならないとその分時間を割いてしまうぞ?」

 

「うっ、わ、わるい……」

 

「謝るな、辛いが我慢してくれ。必ず助けてやるから」

 

「……ああ」

 

 

 我に返り、青年の言葉に耳を傾け冷静さを取り戻す。木曾はこれで大丈夫だろう。

 

 

 くっそ、予想していたとは言え最悪な結果だな。救出した連中だけでなく、木曾達のメンタルケアも必要になっちまったじゃねぇか……ちくしょう!!俺の仕事を増やしやがって!!こんなことをした連中はどこのどいつだよ!?こんな面倒事を押し付けやがって……っと落ち着け。とにかくこのままにしていたって何も進展しないじゃないか。特に木曾と赤城は大破状態で敵と遭遇すれば危険、ただでさえほぼ全員怪我を負っている状態なんだ。こいつらもさっさと連れて帰ってドックに入れねぇと。俺の()()に傷なんて残らせてなるものか。

 

 

「おい時雨、睦月」

 

「……提督」

 

「ひぐっ……提督ぅ……」

 

 

 おいおい、そんな顔をするな泣き虫かよ。この程度で泣いてんじゃねぇよ。まぁ、知り合いや姉妹がこんな目に遭えば悲しむか……チッ、木曾よりも手間のかかる奴だな。仕方ねぇ!

 

 

 木曾の時もそうだが、二人の表情を間近に見た青年の胸にチクリと痛みを感じた。そんな彼はただの気のせいだと認識し、さっさとこの状況から抜け出したかったので行動に出た。懐からハンカチを取り出す青年。

 

 

「ジッとしてろよ」

 

「……提督ぅ?」

 

 

 涙を浮かべながら不思議そうに見つめる睦月に対して優しく目元をハンカチで拭う。その行動に睦月は一瞬唖然としたが、すぐさま顔を赤らめた。

 

 

「て、提督……いきなりはずるいにゃしぃ……」

 

「何がずるいだ。いつまでもめそめそするよりも辛いと思うが挫けず前を向け。今は嘆くことより如月をドックへ連れて行くことが最優先だろ?」

 

「提督……うん、そうだよね。ごめんなさい……」

 

「謝るな、お前が一番辛いんだからな」

 

「提督……」

 

 

 悲しみの証である涙は役目を終え、見惚れる眼差しが向けられる。そんなことなど青年本人は気づくことなく時雨にも薄っすらと浮かぶ涙を拭って優しく頭を撫でる。そうすると時雨の表情はほころびを見せた。

 

 

「時雨も辛いだろうが一刻も早く全員を連れて帰った方がいい。こんなところにいつまでも残り続けるのは嫌だろ?」

 

「うん、提督の言う通りだよ。ごめん山城、すぐに連れて帰るから」

 

 

 うん、上手くいったようで安心したぞ。流石俺だと褒めてやりたいところだ。艦娘なんて優しく扱えばこんなもんよ、ちょろいちょろい♪しかしこれで木曾達は大丈夫だろうが、問題は山城達。突いて何が出てくるのか、どうせ碌なことなんてないから関わりたくないが……結局巻き込まれるに俺は賭けるぞ。

 

 

 自らの足で歩けぬほどに弱り切り、担がれる山城達を見て青年はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 臨時基地へと戻って来た青年達。大破状態の木曾と赤城も居るので時雨達全員に高速修復剤を使い、その後で囚われの身であった山城達を入渠ドックへと入れた。初めは高速修復剤を使用しようか悩んだところだ。弱り切っており、急な治療も時と場合によっては負担になる可能性があり、安全性を取ってゆっくりと治療する方を選んだ。ついでに弱り切った状態の山城達をドック内で放置する訳にもいかず、木曾に睦月と時雨及び数名の艦娘を介護要員として傍につけておいた。これで何か緊急事態が発生しても即座に気づくことができる。今は慎重に事を進めることが良いと判断したのだ。

 とりあえずやることをやった青年は手の空いている艦娘達を招集し今後どうするか話し合いの場を設け意見を出し合う。その結果、山城達が回復するまでは臨時基地に滞在し、その間は作戦が成功したことを元帥に報告する手筈となった。

 

 

……そうだ、あのおばさn……小葉佐大将にも連絡しないと

 

「ん?どったの提督?」

 

「んぁ?ああいや、なんでもない」

 

「え、なになに?鈴谷には内緒の話?」

 

「ああ、内緒だ」

 

「ええー、鈴谷と提督の仲なのに隠しごとはいけないと思うんですけど?」

 

 

 青年は作戦決行前に小葉佐大将から連絡があったことを思い出す。()()()()()()()()()()()()()()があれば報告してくれとの話だった。山城達の件を報告するべきだと判断した青年だったが、相手があの小葉佐大将、なるべく関わりたくないと思っている。美醜逆転してしまった青年にとって小葉佐大将は超美人から超不細工に格下げとなり、気に入った発言をされてしまって困っていた。それだけではない、彼の勘が嫌な予感を発していた。何故かはわからないがそう告げているのだ。それでも報告を怠ることは出来ないので、事務的に伝えるだけ伝えて逃げられないかとあれこれ悩んでおり、鈴谷とちょっとしたやり取りをしていた時に神通が彼の下へとやってきた。

 

 

「提督失礼します」

 

「んぁ、どうした神通……いや、わかる。山城達が回復したんだな?」

 

「はい、今は皆さん突如のことなので混乱している様子です」

 

「そうだろうな。よし、俺もこの目で確かめておきたいことがあるから会いに行くぞ」

 

 

 青年達は目を覚ました山城の下へと向かうのであった。

 

 

 ★------------------★

 

 

んぎゃああああああああああああああ!!?

 

 

 臨時基地全体を覆った絶叫。それは誰のものでもない青年のもの、彼はたった今、危険な目に遭遇している。

 

 

「ぐまぁっ!!!」

 

「ふしゃっ!!!」

 

 

 (球磨)(多摩)に両腕をそれぞれ噛まれていた。

 

 

「球磨!?多摩!?おいこのやめろ!!提督を離せ!!!」

 

 

 青年の危機に姉妹艦の木曾及び他の艦娘達が一斉に二人を取り押さえると多勢に無勢いとも簡単に離すことができた。そもそも弱り切っていた状態から回復したばかりで対抗する程の力を持っていなかったようだ。しかし離されてからも青年に対する敵意は薄れておらず威嚇し続けている。

 

 

「ちょっ!?て、提督マジで大丈夫!!?」

 

 

 鈴谷は青年の下へと近づいて二人に噛まれたであろう両腕を観察すればくっきりと歯形が残っていた。血まで流れなかったことは幸いだろうが、これを見た鈴谷は怒りが芽生えた。

 

 

 鈴谷達の提督に傷をつけるなんて……マジ許さない!!!

 

 

 奈落のどん底人生を歩むしか道はなかった自分達に新たな道を作ってくれた恩人、そして理想の提督それが青年だった。そんな彼に傷をつけた球磨と多摩をギッと睨みつけ、怒りのまま突き進もうとしたところ腕を掴まれた。掴んだのは理想の彼だった。

 

 

「やめろ鈴谷」

 

「――ッ!?て、提督大丈夫……じゃないよね?無理しないでよ!?」

 

「俺は大丈夫だ、お前の方が大丈夫じゃない……冷静になれ」

 

「で、でも提督を……」

 

「こいつらもお前と同じ、辛い過去があるんだろう。きっとそれが原因で怯えて攻撃的なだけ、本来のこいつらはそうじゃない。お前と同じ優しい艦娘だ。だから許してやれ」

 

「うっ、提督がそう言うなら……我慢する」

 

「それでいい」

 

 

 提督……やっぱり優し過ぎじゃん。こんなことされたら解体事案なのに許しちゃうなんて普通ならありえないっしょ。でもそこがマジカッコイイ♪でも提督はもっと自分を大事にしてほしいじゃん?他の子だって心配してるもん。

 

 

 鈴谷は改めて自分達の提督の魅力に惚れ惚れした。しかしながら彼女の思っている通り、青年の周りには彼を慕い心から心配する艦娘で溢れていた。それ程に艦娘に愛されている彼に攻撃した球磨と多摩はこの光景に戸惑っている様子だが、警戒心を緩めていない。そもそも何故このような状況になっているのか説明しよう。

 

 

 目を覚ました山城達の下へとやってきた青年達だった。彼らが目にしたのは見るから気力を失った山城達の姿、その傍で木曾達は辛い表情を宿していた。吹雪達もこの暗い雰囲気をどうするべきか戸惑っていたが、青年が彼女達に話を伺おうと近づいたがこれがいけなかった。

 突如現れた謎の人間でありしかも男、彼女達にしかわからない何かのトラウマが刺激されたのか如月は恐怖の表情を浮かべ、球磨と多摩は身を守る為に攻撃し、その光景を興味も抱かぬ形でぼんやり眺めているのが山城と言う混沌とした現状が作り出されていた。

 

 

 鈴谷達の時よりも深刻な状態が眼前に広がっていた。鈴谷達の時と同様に接触を試みたがあえなく撃沈。今回は迂闊に近づいた青年に非があり、二人を許した寛大さを見せつけた……かに思うだろうが、内心めっちゃ怒っていた。

 

 

「(ぐぅううう、この野郎!よくも俺を噛みやがったな!!?くっそ痛ぇよぉ……チビ共が見ていなかったら解体してやったのに!だが我慢だ、我慢しなければならない。美船元帥さんのお気に入り登録されるには()()()()を演じ続けなければ……ちくしょう、覚えておくぞ。必ずここぞと言う時に仕返ししてやる!!!)」

 

 

 めっちゃ怒っていたが、昇進の欲求には逆らえず怒りを飲み込んだ。痛いのを我慢した青年はとても偉いと褒めておこう。いい子いい子しても許される……maybe(メイビー)

 

 

「何故止める木曾!こいつは敵クマ!!!」

 

「にゃにゃにゃ!!!」

 

「落ち着いてくれ球磨、多摩よ。提督は敵じゃない」

 

「木曾はわかっていないクマ!()()()()だクマ!」

 

「そうにゃ!!!」

 

 

 ()()()()、その言葉に秘められた想いの重さは計り知れないものだ。艦娘は国と人間の為に立ち上がり深海棲艦と戦うことを使命とした者達。醜く、化け物と称され、時として罵倒され暴力を振るわれても国と人間を見捨てることが出来なかった艦娘達。それがどうだ?目の前の球磨と多摩は青年に対して敵意を向け、攻撃した。本来なら艦娘は人間に危害を加えられない(木曾や川内など何故か青年に対して通用する例外はあった)が、その前提が覆り、艦娘の立場が危機に訪れる可能性が高まる。

 

 

 わかる、めっちゃわかるよ。私だって豚野(あいつ)が嫌いだった。不細工だからってだけで補給もさせてくれなくて、打たれて罵倒されて怖くて文句も言えなかった。沈んでいく最上達の代わりに残ってしまって一人で絶望したこともあった。便利な道具としてしか見てくれず、瑞鶴(ずいずい)達と出撃すれば沈んでいく仲間達を見送ることしかできなかった。私達の居場所なんてどこにもなかったのに、沈んじゃおうかなって思ったことは何度もあっても沈んでいった熊野との約束を思い出しちゃって、呪いのように生きることにしがみついた結果、提督に会えた。

 提督と出会えて私は本当の意味で最上型の3番艦『鈴谷』になれた。出会えていなかったらきっと()()()()だ!って叫んでたと思う……だから気持ち凄くわかるけど、納得はしたくない。だって仲間を見捨てるなんてできないじゃん?それに私達も救われたんだから大丈夫。提督ならきっと助けてくれるから!

 

 

 この場に居る者の多くは人間の所業により心に傷を負った。鈴谷もその一人だったが、運命とも言える出会いを果たし彼女は青年に心を許した。他の艦娘もそうだ。ここに居る者達は彼によって救われた。だからどんな困難が待ち受けていようと彼と共になら乗り越えられる。山城達もきっと救われる……いや、自分達で救うんだ!と強く思っていることだった。その為にも彼女達の闇を知らなければならない。

 

 

「まずは何故そこまで人間に恨みを持つのか……お聞かせ願いませんか?」

 

 

 やり取りを壁側で観察していた赤城は一歩前に出て問いかけた。

 

 

「……いいわ、話してあげるわよ」

 

「……山城?」

 

「時雨、あなたも知るべきよ……私達の……()()を……ね」

 

 

 先ほどまで興味も無さげにぼんやり眺めていた山城。生気を感じさせぬ瞳を持つ彼女が語る闇を青年達は知ることになる。

 

 

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