あべこべ艦これの提督さん   作:てへぺろん

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今回の視点は大淀達元帥側であります。


それでは……


本編どうぞ!




0-9 想像とは裏腹に

「はぁ……思ってた人物像とちいっと違うどころやあらへんかったで」

 

「しかしこちらを油断させる演技とも考えられます。人間は外面を(よそお)うことなどいくらでもできますから」

 

「不知火の言う通りだ。あいつも他の指揮官と変わらない無能な連中の一人に違いないさ。龍驤もそう思わないのか?なぁ?」

 

 

 龍驤、不知火、木曾の三人が決して広くない入渠ドック(お風呂)にどっぷりと浸かって一日の疲れを癒していた。

 

 

 入渠ドック(お風呂)は小破・中破・大破した状態を治療する役割を持つ以外にも、単に入浴するための浴場としても機能することを妖精から聞かされた青年は、風呂場がここにしかないことに不思議がっていたが合点がいった。艦娘が入渠する場合には治療効率を保つために一つのドックにつき一人しか入れないのはゲームと同じであった。

 妖精達が施設を新築のように修繕し、前提督の手によって破壊された入渠ドック(お風呂)もピカピカに輝く光を放っており、非常時の時でなければ毎日お風呂に入ることができる。そのことに吹雪達が感激していたのを龍驤は傍で見ていた。

 

 

 けったいな問題やで。まだ横暴な態度を取ってもらっていた方が楽やった。妖精がおらんかったらあの態度も嘘の演技の可能性もあったんやけれどな……悩むわぁ。

 

 

 美船元帥から話を伺っていた龍驤達は想像ではあるものの、青年が善人を装い、吹雪達を騙して利用しているだけの可能性があった。しかし吹雪達も青年に期待を抱いており、信頼を寄せている(ふし)がある。それだけでなく、妖精達がこの惨劇の舞台となった鎮守府に現れた。しかも青年が着任してからだ。妖精達はいい人間にしか懐かないし、妖精達を認識できる人間は僅かである。軍にとって妖精達を認識できる人間は貴重で是非とも確保したい人材であるが、それが問題の青年である。想定していない現状に龍驤達は頭を悩ませている。

 

 

「妖精が見えているのは間違えようの無い事実や。しかも妖精はウチら艦娘にとって切っても切れへん関係にある。難しい状況やでこれは……ちと探りを入れるつもりで攻めたんやけど、吹雪ら駆逐艦の子らからは信頼されているようやった。まさかたった二日目にして信頼を得るとはなぁ」

 

 

 信頼を得るのは難しい。心に深手を負った子なら尚更のはずだが、青年は着任してたった二日目にして信頼を得ていた。あのプライドの高い叢雲からも少しばかりの信頼を感じられた。だから余計にわからない。軽視派であるはずの青年……彼は一体なんなのであろうか?

 

 

 ますますわからんようになった。妖精に好かれる軽視派の人間とか冗談やないで……なんなんやあの若者は?

 

 

 龍驤がいくら考えても答えは出ない。まだ始まったばかりだ。これから少しずつ探りを入れていけばいい。

 

 

「あの男が軽視派であることをそっと伝えるべきでしょうか?」

 

「今はやめとき、大淀と相談したんやけど混乱に繋がる可能性がある。信じた相手が軽視派だったなんて信じへんやろ。最悪の場合には裏切られたと心にまた深い傷を作ることになるかもしれんから、それは避けたい。このことはウチらだけで内密にするんやで」

 

「かしこまりました。例え拷問されようとこのことは喋りません」

 

「吹雪達とは駆逐艦同士だから不知火には胸の内を話してくれるかもしれない。俺達に話せないことだってあるはずだからな。もしかしたら色々と裏の情報を手に入れられるかもしれないから、あいつの悪事を暴く鍵を握るのはお前かもな。悪事が発覚したらあいつを逮捕する前に一発主砲をぶち込むのは俺にさせてくれ」

 

「了解しました。ですが木曾さん、そんなことをすれば粉々になってしまいます。せめて機銃で我慢してください」

 

「いや、そないなことしたら殺人罪で二人共しょっぴかれるで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし驚きでした。食材を自費で用意し、あまつさえ自分で調理してそれを振る舞うとは……艦娘である不知火達に対してですよ?これは何かの罠かもしれませんね」

 

 

 しばらく湯船に浸かりのんびりしていると不知火が切り出した。会議が終わり、寝室を案内された大淀達は一部屋に集まり今後の行動について話し合っていた時の話だ。

 

 

 部屋がノックされ、扉を開けると電が居た。出迎えた間宮に「ご飯のお時間なのです!」と嬉しそうに晩飯の時間だと報告しに来たのだ。電は晩飯が楽しみで仕方ない様子であった……が、その言葉に間宮と鳳翔は気づかされた。このおかしな鎮守府について色々と話し合っていたらいつの間にか時間が経っており、自分達は艦娘達の食事を支えるのが担当のはず……なのに時間を忘れて自身の仕事をこなしていないことを恥じた。それもこれも自分達の容姿を見ても嫌悪感を現さず、妖精を従え鎮守府を建て直した青年に夢中になり過ぎていたせいだ。

 慌てて仕事をしようにもこの鎮守府の備蓄はレーションだけ。翌日から大淀が仕入れの為に行動に移すのだが今日の分がない。すぐに食材を買いに行こうかと準備するも、電が言うには晩飯は既に用意してあるらしい。話し合いはここまでにして、そのまま連れられて一同が食堂に集まるとそこには人数分の料理が並べられていた。湯気が立ち上っていることから出来立てであることが窺える。

 

 

 「一体誰が料理をお作りに?」と間宮は吹雪達に視線を向けるが誰もが首を横に振る。そうなるとこの場にはもう一人だけしかいない。

 

 

 俺だ!とエプロン姿の青年が主張するように「さっさと席につけ。冷めちまうだろ」と全員を席につかせた。見ればハンバーグ定食だ。勿論サラダ付きで、ほかほかのお米も茶碗に盛られていた。青年が作ったもので、訓練生時代は一人暮らしの生活をしており、カップ麵だけの食生活では栄養バランスに支障が出る為、自分で料理をしていた。見た目は一般家庭で作られる程度の仕上がりで、店で販売されているものには程遠いハンバーグ……しかし出来立てなのだ。肉の油が染み出て香りが鼻をつく。鉄板に乗せられてジュージューと音を立て、食べてくれと主張しているようだった。

 吹雪達を見ればお預けをくらった犬のようにハンバーグ定食を見つめている。夕立に至っては我慢できずに「提督さん早く食べたい!」と言葉にしているぐらいだ。普段ならツンツンしている様子の叢雲も今はハンバーグに夢中で自分でも気づいていないのか涎が垂れていた。

 

 

 吹雪達は思い出す……ハンバーグと言うものを見たのは何度かある。前提督の頃、お腹を空かせていた吹雪達は他の駆逐艦娘が手に入れた新聞記事に乗っていた料理の写真を眺めながら、少しの足しにもならぬ妄想でお腹を満たそうとしていた。その時の料理がハンバーグで、こんな美味しそうなものがこの世にあるのか!?と妄想を膨らませていたぐらいだ。それが目の前にあるのだ。あの時の写真よりも迫力はないが、それでも喉から手が出るほどにお腹が嘆いていた。それに青年自ら作った手料理を食べてみたい……人一倍吹雪はそう思っていた。

 

 

 そして時が来る。青年が「食材に感謝を忘れぬようにいただきますをしろ」と合図を出せば吹雪達はもの凄い勢いで「いただきます!」と手を合わせた。その迫力に一瞬の遅れをとった大淀達も同じく控えめに手を合わせ、箸を片手にハンバーグへと手を伸ばす……

 

 

 「美味しい!!」と吹雪達駆逐艦娘から声が上がる。みんな次から次へと口に運び、睦月なんかは喉に詰まらせ苦しむ姿があった。しかし全員見るからに嬉しそうで、無我夢中になっていた。その光景に大淀達はいつの間にか手が止まっていたらしく「食わないのか?」と青年に言われてから手を動かす。

 一口食べればわかってしまった。知っている……大淀は知っているのだ。味は違えど、醜いからと虐げられていた自分達に美船元帥が作ってくれた手料理と同じ……愛情が籠っていた。

 

 

 そこからは大淀は何も考えず味を楽しんだ。今まで色々いいものを食べて来た彼女的には味は悪くない程度に感じられたが、最後まで味わいたいと思えた。一人で食事をする時より、美船元帥や仲間達と一緒に食事をしている時の料理が一番美味しいと感じたものと同じであった。

 しかしひと悶着あったことを伝えておこう。ふっと青年を見た吹雪が気づく。青年のテーブルには何もない。コップに入った水しか置いていなかった。吹雪が青年に食べないのかと聞けば取り出したのはカップ麺だった。

 

 

 カップ麺を見たことのない吹雪達は首を傾げてそれが何なのか聞いていた。「簡単に食べれるもので、財布に優しい優れものだ」と青年は言ったが、不思議に思った時雨が「提督、朝は何を食べたの?」と聞けばカップ麺と答えた。「昼は何を食べたの?」と聞けば出迎えで忙しく食べておらず「晩はそれだけ?」と聞けば間が空いてそうだと答えた青年……その言葉を聞いた間宮と鳳翔が急に立ち上がり「いけません!」と青年に詰め寄ったのは誰もが驚いた。

 

 

 二人は刺激された。例え相手が軽視派であっても食を疎かにする青年に我慢できなかったのだろう。二人は詰めより食事の大切さを説いていた。青年はその迫力に押されているようだった。吹雪達は何なのかわかっていなかったが、明石の説明で「司令官もちゃんと食べないとダメですぅ!」心配する吹雪達に群がられていた。うるさい食堂だが、大淀は居心地の良さを感じていられた。

 

 

 そんな出来事があり、今思えば不思議な光景だった。不知火は思いにふける。

 

 

「信じられない光景でした。食事を艦娘である不知火に提供するとは……それに艦娘に群がられて嫌がる素振りはありませんでしたし……謎が深まるばかりですね。踏まえてこれらは不知火達を油断させる罠だと考えていいのかもしれません」

 

「罠って……デザートに出て来たプリンをキラキラした瞳で眺めながら食していた駆逐艦はどこの誰やった?」

 

「……し、不知火ではありません」

 

「あんたやて。美味しいって騒ぐ吹雪達とどっこいどっこいの反応やったで?」

 

「……しょ、食材に罪はありません……!」

 

 

 クールなはずの不知火の顔は真っ赤になっている……お風呂でのぼせあがったわけでは決してない。

 

 

 そう。そして一番の盛り上がりを見せたのは食後のデザートに用意したプリンであった。子供っぽい駆逐艦娘である吹雪達は甘い物には目がないらしく、それを見た駆逐艦娘からは感激の声が上がった。ちなみにこの駆逐艦娘には不知火も含まれていたのを龍驤は見逃してはいなかった。

 

 

 不知火も子供なんやな。大人びた態度をとっても根は駆逐艦に変わりないから無理もないか。しかしえらい盛り上がりようやったな……見ていて微笑ましいわ。これもあの若者のおかげか……複雑な気分やな。

 

 

 吹雪達の満面の笑みで満たされた食事風景。きっとプリンを食べたのも初めてなのだろう……スプーンで掬い、少しずつ味わいながら大事に食べていく姿は傍で見ていた龍驤達にも幸せを感じさせる光景であった。

 

 

「しっかし……なんなんだあいつ。悪人のはずなのに……」

 

 

 そんな感じがしねぇっと口から言葉が出そうだったが飲み込んだ。その言葉が出そうになったことが信じられないと自分自身に驚いた。木曾は信用していない。軽視派である男はみんな艦娘をボロ屑のように扱う悪人なんだと決め込んでいた。なのにそんな風には見えなかった。

 

 

 だからこそ余計に気に入らない。

 

 

「必ずあいつの悪事を暴いてやる。俺が直接罰を与えてやるから覚悟しておけよ」

 

「……」

 

 

 木曾は意気込んでいる様子であった。また新たな問題が生まれるかもと言う気苦労が絶えない未来を想像し、今だけはお風呂の気持ち良さに身を沈めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー!フカフカなのです!!」

 

「気持ちいいのにゃ♪」

 

「よーし、みんなで枕投げするっぽい!」

 

「ダメだよ、うるさくしたら提督に怒られるから僕は反対だよ」

 

 

 時刻はフタヒトサンマル。

 

 

 綺麗になったお風呂で入浴した後、結局吹雪達初期艦六人組は同じ寝室で過ごすことにした。六人同じ部屋だが、前の倉庫に比べると広さが別格だ。人数が少ない為、使われていない大部屋を贅沢に使うことができた。何故各自一人ずつ部屋を確保しなかったのかはやはり寂しいのだ。一人だと心細く、静けさは恐怖心をそそる。寝て目が覚めた時、もしも以前の鎮守府になっていたらと思うと誰もが一人でいることを嫌い、こうして六人で過ごすこととなったのだ。

 

 

 大部屋で興奮の冷めやまぬ様子の夕立は遊びたくて仕方ない。遠征から戻って来て青年から労いの言葉をかけられただけでなく、セクハラ行為を行っても許してくれて、美味しいお弁当とお菓子まで食べることができた。今までとは雲泥の差の生活が待っていた。夕立だけでなく、睦月も電も布団のフワフワな感触に天国へと連れて行かれそうになる。狭い倉庫で寝る必要はなくなった。これほどの幸せを感じられることが信じられないがこれは現実である。夕立の制止力である時雨も静かに興奮していた。初めての布団と枕に体を預けてしまうとそのまま夢の中へと誘われてしまうだろうと確信していたし、こんなに早く寝てもいいと言われたことすら以前ならばあり得なかったことだ。

 疲労、空腹、恐怖……様々な負の感情が渦巻いていた○○鎮守府A基地はもうどこにもその姿はなかった。見違えるほど変わったA基地。それもこれも全てあの青年がやってきてから変わった。感謝しても気持ち程度では足りない。だからこそ青年の期待に応えなければと思う吹雪達……でも遊びたいと思う気持ちもなくはない。

 

 

「ええー!枕投げやりたかったっぽい……」

 

「じゃあ司令官も誘って一緒にやろう。それなら怒られる心配はないよ」

 

「おおー!吹雪ちゃん話がわかるっぽい!夕立、提督さんと一緒がいい!」

 

「なら睦月も参加するのね!」

 

「電もなのです!」

 

「提督と一緒……なら僕もいいかな」

 

「ちょっと静かにしなさいあんた達!!なんで枕投げをやる感じになってんのよ!?そんな幼稚なことしないでもう寝なさいよ!!!」

 

 

 何やら青年を交えて枕投げを実行する動きを見せていた矢先に怒号が飛んだ。布団に包まり、温かく居心地良くうっとりしていた叢雲だったが、ワイワイと興奮して騒ぐ吹雪達の騒音に邪魔されて堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「「「「「ごめんなさい(っぽい)(なのです)(にゃしぃ)」」」」」

 

「もう……謝るなら初めから静かにしてほしかったわ。それに明日起きれなくなったら大変でしょ。明日からはやることが多いみたいだから」

 

「そうだね。叢雲ちゃんの言う通りだよ。みんな、これ以上司令官に迷惑かけないよう寝ちゃおう」

 

「……私には迷惑かけていいように聞こえるのだけど?」

 

「そ、そんなことないよ。さ、さぁてっと!私も寝よ。明日から頑張るんだから!!」

 

 

 「おやすみなさい」と各自の布団に潜り込む。六人で寝ることはもう慣れたものだが、身を寄せ合って明日が訪れるのを怖がる必要がない屋根の下。吹雪達はすぐに寝息が所々聞こえ始め、ようやく静かになったところで叢雲も温かさに包まれながら夢の中へと旅立った。

 

 

 ★------------------★

 

 

「寝たようですね」

 

「うなされている様子とかありそう?」

 

「流石に扉越しから内容まではわかりません。ですが、今日の感じだとその心配は無用だと思います」

 

 

 大部屋の扉の前で耳を澄ませていたのは大淀と明石、その二人に付きそうように間宮と鳳翔が安堵の表情を浮かべた。彼女達は何をしていたのか?それは吹雪達の様子を見に来たのだ。以前の環境がトラウマとなり、怖くて眠れない状態であったら大変だ。聞き耳する形となり、はしたない行動だが、軽視派である青年が影で何をしているかわからない……慎重に事を進める必要がある。しかし状況はいい方に向かっている。吹雪達の様子を確認できると速やかに別れ、各自の寝室へと退避した。

 

 

「ひとまずは安心出来ましたね鳳翔さん」

 

 

 間宮さんの声に私は「はい」と呟きました。

 

 

 私、鳳翔は美船さんとの出会いを忘れません。美船さんは私達艦娘に生き方を教えてくれた優しい方です。大淀さんも間宮さん、同じ軽空母である龍驤さんに不知火ちゃんや木曾さんも辛い生活を余儀なくされていました。艦娘である私達にとって生きづらい世界でしたので……

 

 

 ○○鎮守府A基地……ここは私が居たところとよく似ていました。私が建造された鎮守府でも艦娘に対して酷い扱いをしていた方が提督でした。女性という違いはありましたが、私達に向ける嫌悪感を孕んだ瞳は同じだったと見ずともわかります。間宮さんとはその頃からの付き合いです。共に深海棲艦と戦い疲れた体と心を癒す為の温かい食事と憩いの場を提供することが私達の役割でした。しかし私達に料理を作るどころか食材に触れることすら許されませんでした。当時の提督から「汚いから触るな。食材にカビが付くじゃない」と言われました。私達は無力でした。私は他の子達から母のように慕われていたりしますが……何もしてあげられませんでした。いえ、何もするなと命令されました。

 

 

 『鳳翔は居るだけで艦娘の士気を保つことができる便()()()()()』として、私自身理不尽な扱いを受けることはありませんでした。ですが他の子達は無理な遠征から出撃を余儀なくされ、私はただそれを見ているしかできなかったのです。他の子達の為に何かやりたいと提督に申し出ても聞き入れてもらえませんでした。

 落ち込む私を間宮さんはずっと支えてくれました。間宮さんも無力さを感じて嘆いており、何かしてあげたいと思ってもさせてもらえない心苦しさに耐えていた時でした。

 

 

 運命と言うものを感じました。まだその頃は元帥ではなく提督であった美船さんが視察として鎮守府を訪れてから私達は救われました。

 

 

 提督は私達の知らないところで横領を繰り返していたようで、その事実を美船さんは突き止め、提督は憲兵に連れて行かれました。良かったと思う反面、私達は路頭に迷うのではないかと言う不安が生まれました。しかし美船さんはそんな私達を受け入れてくれました。

 美船さんは人には珍しい私達と同じ……失礼ですが不細工なお方です。でも心はとても温かい優しい方なのだと、初めて私達と真っ当に向き合ってくれる人だと知りました。そこからは今までの生活が一変し、間宮さんと共に食事やお酒を提供できるようになり、私は自分を取り戻すことができました。

 

 

 しかし私は知りました。私と間宮さんが居た鎮守府と同じ環境……その頃よりも劣悪な環境に立たされた○○鎮守府A基地の存在を。新しく着任する提督が軽視派であることも……

 

 

 私と間宮さんは居ても立っても居られなくなり、美船さんに掛け合いました。了承を得て、大淀さん方と共に派遣されることを選びました。もう無力な姿を晒すのは……あんな心苦しい思いは嫌なのです。何もできず、弱みを見せようとせず、空元気を振りまく子達を……ただ見ていることなんて私にはできません。意を決して死地に飛び込む覚悟をしていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出迎えてくれた提督は少々目つきが悪くギザ歯が特徴的な怖さがある若い方でしたが、私も見惚れてしまうお顔でした……この方が軽視派でなければの話です。どちらかと言えば軽蔑の視線をその時の私は送っていたと思います。この方もあの時の提督と同じく酷い人だと……そう思っていました。

 しかし私は考えを改める必要があるようです。新設と見違えるほどに修繕された建物に驚かされただけで終わらず、私は目を疑いました。妖精さんの姿が彼には見えており、美船さんと同じく意思疎通ができる方でした。まさか!?と他の方々も私と同じ思いを抱いていましたが、一番驚かされたのは吹雪ちゃん達が彼と仲良くしている光景でした。

 

 

 男性は特別視され、傲慢な方が多いです。醜い私達艦娘と外面だけはまともに接しているようでも内面は別という方ばかりです。仕事だからと我慢してくれるだけでも艦娘にとってはまだ幸せな方でしょう。中にはあからさまな態度を取る方もいます。艦娘である私達とまともに接してくれる男性などこの世にいるのでしょうか?と疑問を通り越して、()()()と決めつけていました。ですがどうでしょう……吹雪ちゃん達と共にいる彼は本当に軽視派の方なのか疑問が生まれました。

 その疑問を改める決定的なことが食事の時です。恥ずかしながら私と間宮さんは大淀さん方と彼についての話し合いに夢中で、すっかり私達の本分を忘れていました。情けない姿を早々さらけ出してしまい、明石さんに慰められながらも食堂の扉を開けば……またもや驚かされました。

 

 

 吹雪ちゃん達だけでなく、私達の分まで彼は食事を用意してくれました。ハンバーグ定食がそれぞれのテーブルに並べられ「一体誰が料理をお作りに?」と間宮さんは視線を送ればエプロン姿の彼に皆さんが釘付けにされ唖然としてしまいました。そこからは温かい光景が広がっていました。

 美味しそうにハンバーグ定食を食べる駆逐艦の子達。家庭的な作りのハンバーグですが、そこには愛情が籠もっていました。健康に気を使ったメニュー、出来立てほかほかのハンバーグ、そして食後のデザートにプリンを用意し、それら全て彼が自身のお金から出したものだと知った私は、何度目か憶えていない程に驚いてしまいました。

 

 

 食後のお風呂にも欠かさず入れとも言われ、私達に親身になってくれる彼が本当に軽視派の方なのか不思議で仕方ありません。それに彼の見る目が……その……艦娘の私にそんなはずはないのですが、熱い視線を送られていた気がしました。わ、私自身もなんてことを考えているのかわかりません。ちょっと女として……期待していたりしますが……そ、そんなことはありません!まず私のような容姿を好む男性などいるはずがありません。悲しいことですけど現実です。でも……不思議です。

 

 

「不思議な方ですね……」

 

「そうですね」

 

 

 私は無意識に呟いていたようで、間宮さんも同じ意見のようです。

 

 

「これからどうなるのでしょうか……少し不安です。でも吹雪ちゃん達を見ているとそんな不安が杞憂なものだと感じてしまいます」

 

「同感です。ですが鳳翔さん、今の私達にできることをしないといけません。今日のような失敗をしない為にも明日から頑張りましょう」

 

 

 間宮さんも今日の失敗を気にしているようでした。そう、明日から私達は頑張らないといけません!吹雪ちゃん達の為にも!そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、()()()の為にもお互い気合いを入れていきましょう!」

 

 

 『()()()』その言葉の中に青年も入っているのだろうか……?

 

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