すみません。
那珂が建造された鎮守府は所謂ブラック鎮守府だった。
提督のお気に召した艦娘は丁寧な扱いを受け育成もされて補給も整備も装備もちゃんとしていた。神通姉さんと川内姉さんもその中にいた。通称『勝ち組』。
だけど私は『そこ』に加えてはもらえなかった。建て付けの悪い宿舎で、提督のお気に召さなかった他の艦娘達と雑用しながら共同生活。通称『負け組』に配属となった。そこでは鎮守府のさまざまな雑用をほとんど不休でやらされていた。
そして作戦が上手くいかなかった時の提督のご機嫌をとるために『慰みモノ』として使われることもしばしば。…いや提督だけならともかく勝ち組の艦娘までもが負け組の艦娘を『慰みモノ』として使っていた。襲われる側にとって、艦娘が艦娘に犯されるソレは提督のソレとはまた違う方向の恐怖と屈辱が襲ってくるみたい。
敵主力部隊を誘い出すための囮艦隊が時々結成され『負け組』から適当に艦娘が選ばれた。その娘達が帰ってくることは殆どなかったし、仮に帰ってこれたとしても酷い怪我を負っていて治療もしてもらえないまま、解体場へと連れてかれた。
「解体された方が幸せ」
そう言う娘もいた。私もそのうち、そう考えるようになってしまった。
他人なんか気にかけていられない。なるべく目立たないように1日を過ごすだけ。その工夫が功を奏してか、配属してから数ヶ月。捨て艦や慰みモノとして使われた事はなかった。…だけど永遠に続くはずもなかった。
ある日、川内姉さんと神通姉さんが『負け組』宿舎にやってきた。
「ねえ、那珂ちょっと付き合ってくれない?」と川内姉さん。
「姉妹仲良く楽しいことしましょう」と神通姉さん。
二人の顔は笑ってはいたものの、目の色は泥のように濁って見えた。
私は従うしかなかった。二人について行きたどり着いたのは二人が過ごしている部屋。二人しかいないのに広さは『負け組』の私たちが5〜6人で生活するのに使っている部屋と同じくらいの広さ。
机とか壁の絵とか鏡とかその他の装飾品、どれも『負け組』の宿舎では見ることが出来ない高級品みたいなものばかりで見惚れてしまいそうだった。
それから部屋の壁側にベットが二つ、横並びにピタリとつけた状態で置いてあって簡易的なダブルベットにしてあった。
部屋の様々なものに目を奪われていると突然背中を押され、そのベットにうつ伏せで倒れ込んだ。このあと何をされるかなんて考えるまでも無かった。川内姉さんは私をベットの上で押さえつける。
「や…やめてお姉さん!こんな事間違っているよ!」
口先だけでも抵抗してみる。
「うるさいなぁ那珂。黙って私と夜戦しようよ〜」
「姉さん、服は破かないようにね。新調するのが勿体ないと提督がおっしゃていましたから。」
神通姉さんは手際良くビデオカメラを用意していた。どうやら提督の趣味らしい。
「姉さん、準備出来ましたよ」
「そお?それじゃ…」
川内姉さんは口を私の耳元に近づけてこう言った
「私たちの言う通りにしてくれたら物資とか食料とか『負け組』に横流ししてあげても良いんだよ?」
「…え?」
川内姉さんは続ける。
「お腹を空かせた駆逐艦の子達だっているんでしょ?那珂が私と神通に犯されてその様子を映したビデオを提督に見てもらうだけで、『負け組』の子達のお腹を満たせたり怪我の手当てができるんだよ?…ね、良い条件でしょ。」
「で…でも…」
「嫌だったら断ってくれても良いんだよ。そのかわり別な子で『遊ぶ』だけだから。あー…でも姉妹艦じゃなかったら乱暴に扱っちゃうかもなぁ〜。私も神通もどこまで欲望を抑え込めるかわからないし。姉妹艦じゃなかったら人格崩壊するまで遊んじゃうかもね。
もちろん那珂が相手ならそんな事しないよ。大切な妹だもんね!」
とても純粋に感じるような口調で川内姉さんは私を脅してきた。その条件を受け入れる選択肢しか思い浮かばなかった。
此処に来てからずっと、他人に気にかけていられないと自分に言い聞かせて来たけど、これ以上『負け組』の艦娘達が苦しむ姿を見て見ぬふりをする事もできなかった。
それから三時間。私は容赦なく姉達に犯され続けた。ビデオカメラは三脚の上で無機質に回り続け、私の痴態を全てを記録した。
ベットの上での『遊び』が終わり姉二人が満足した顔でシャワーに向かった時、私はベットの上で裸体を晒しながら放心状態だった。カメラは止められてない為その姿も余す事なく録画されている。
怖かった。悔しかった。そして悲しかった。
実の姉達に良い様にオモチャにされた事が。
姉妹とこんな形でしか交流が出来ないことが。
この鎮守府の腐った状況を変えることが出来ず、受け入れる事しかできない自分の不甲斐なさが。
その他いろんな感情がごちゃ混ぜになり一糸纏わぬ姿のまま私は泣き叫んだ。泣き続けた。その姿もビデオカメラによって録画され、提督を喜ばせる素材となっていった。
姉さん達がシャワーから出たあと 私も浴びるように言われから浴びた。体の汚れは落ちていったけど心には落とすことのできない汚れが付いてしまった気がする。
服は破かれなかったから脱がされたものをそのまま着て部屋を出た。お金が幾らかポケットに入っていたのに気が付いたのは勝ち組宿舎を出たあとだった。
私はその足で間宮さんのお店に行った。間宮さんのお店は鎮守府内唯一の甘味処。ここではデザートとか甘いモノは勿論出るけど、普通の食事も提供されている。
間宮さんは『勝ち組』とか『負け組』とかの部類には入っていない。前に他の艦娘たちの会話から盗み聞いたところによると
「提督のやることに干渉しないからお店は取り上げないで欲しい。」
と頼んだそう。提督は承諾し間宮さんを『身分制度』から除外する代わりに
「材料費などは出すが間宮個人が自由に出来るお金を所持するのは禁止。ご飯の無償提供は『勝ち組』にのみ」
という条件をつけたという。
私がこの話を聞いた時、目をつけたのは「無償提供は『勝ち組』にのみ」の部分だった。なら有償だと提供してもらえるのだろうか。
『負け組』には給料が支払われないから『利用できるものならしてみろ』という提督の嫌がらせが込められていたのかもしれない。
提督にどんな考えがあったのか、実際はわからないけど。
どんな理由があったとしても、この網目を利用するしかないと思った。
とは言っても『負け組』の艦娘達は甘味処の使用禁止というのが暗黙のルール。間宮さんのところに行くのは一つの賭けでもあった。
お店が見えてくると裏口に周りそっとお店の中に忍び込む。中に入るとすぐに厨房だった。厨房の中には美味しそうな匂いが立ち込めていた。食べる事ができず嗅ぐ事しか出来ないのが辛い。
幸い、間宮さんは一人で作業をしていた。厨房からはお店の中が少し見える。視界にチラッと入ったのは一航戦の赤城さんと加賀さんだった。バレないようにしなきゃ。
腰を低くして物陰に隠れるように間宮さんに接近し
「間宮さん」
囁くような声で呼んでみた。間宮さんは気が付かない。もう一度
「間宮さん!」
囁き声ではあるが少し力を強く呼んでみた。すると今度は ビク! とした後、そっとこちらを振り返った。
「あなたは…
「お願いです!少し食べ物を融通させて貰えませんか?」
先走る気持ちのあまり、間宮さんの声を遮るように頼んでしまった。
「『負け組』と呼ばれている貴女たちが不当な扱いをされて困っているのは知っているわ。私も協力したい。…でも…」
「これでもダメですか?」
間宮さんが渋るのは予想通り。だから私は、さっき川内姉さんと神通姉さんに辱められた事によって貰ったお金を全て間宮さんに渡した。
「あなた…このお金をどこで…?」
「安心してください。盗んだわけではありませんから。」
「誰から貰ったくらいは教えてくれないかしら?私もリスクを背負うなら、そこははっきりさせておきたいの。」
「…川内姉さんと神通姉さんから貰いました。」
迷ったけど答えるしかないと思った。
「え、あの『勝ち組』の?でもどうしてあの二人が…。…まさか貴女、体を売…
「間宮さーん?厨房にどなたかいらっしゃるんですかー?」
突然の赤城さんの呼びかけに私は はっ として口を塞ぐ。
「いえ、居ませんよ。独り言です。新作メニューどうしようかなと思いまして。」
「なるほど、そうですか。もし決まったら教えてくださいね?」
幸いなことに赤城さんはご飯を食べながら厨房に向かって喋った為、私が見られることはなかった。
私と間宮さんの会話が全て小声で行われていたのは言うまでもない。まだ気付かれては居ないだろうけど、このままでは時間の問題ではある。
「間宮さんお願いです。何か見繕ってください。提督の命令は『勝ち組』への無償提供です。ならば有償なら『負け組』も貰える筈ですよね?」
「…わかったわ。少し待ってて。」
それから間宮さんは急いで余り物を包み、私に持たしてくれた。
「出来ることなら、今日中にこの『証拠』を消してしまうのが望ましいと思うわ。」
受け取る時、間宮さんはそう言った。もし何かしらの調査みたいなものが『負け組』宿舎で行われた時、間宮さんからもらった コレ が出てきたら酷い目に遭うかもしれない。
私は間宮さんにお金を渡してお礼を言い厨房からそっと出る。これでみんなのお腹を少なからず持たす事ができる。そう思いながら宿舎に足を進めた時
「待ちなさい」
一航戦の赤城さんの声に呼び止められてしまった。
私は恐る恐る振り向く。目の前には赤城さんと加賀さんが立っていた。案の定見つかってしまった。
「貴女は『負け組』の艦娘よね?なぜこんなところに居るのかしら?それに手に下げている包み物は何かしら?」
鋭い目で睨みつけながら加賀さんが問いかけてくる。
「加賀さん、それくらいわかりきっているでしょう?此処に来る『負け組』の目的なんか食べ物を盗みに来る事くらいですよ。」
意地悪な口調で赤城さんが言った。
「ぬ…盗んでません!これは…
私が反論をしようとしたところで赤城さんが片手を上げた。 「その続きは言わなくて良い」という合図と解釈して仕方なく黙る。
「私と加賀さんは別に提督に報告するつもりはありません。貴女のような【娼婦】は何人も見てきましたから。」
「…え?」
今、赤城さんは何て言った?
「貴女もこの鎮守府に来て数ヶ月以上経つのでしょう。なら気になっていたはずよ、時々『勝ち組』の艦娘が出撃でもないのに『負け組』の艦娘を連れて行くのを」
加賀さんにそう言われてようやく私の思考も回り始めた。そう、確かに出撃任務もないのに連れてかれる艦娘は多々いた。それは慰み者として使われるためというのも察していた。だけど、金銭的やり取りが行われていたなんて…。
赤城さんが続ける
「対価を支払わなければ『負け組』がいつ反乱するかわかったものではありません。『負け組』の体を〝使ったら〟それなりのお金を『勝ち組』は払っているのよ。でも貴女の反応を見る限り知らなかったようね。
【娼婦】をやっている艦娘達はお金を貰えるのを黙っているという事ね。それはそれで賢い選択かもね。
【娼婦】が増えてしまえば自分の儲けが減るもの。」
「貴女も自分が かわいい と思うならお金を貰ったことは伏せておくことね。そうすれば貴女は非娼婦よりもマシな日々が送れるわ。」
二人の言葉は半分以上入ってこなかった。少しショックだったから。
私、那珂は何も出来ないけど『勝ち組』に連れて行かれる慰み係の艦娘たちを見るたびに同情していた。自分は彼女たちに比べればマシ。だからこそ一日一日を頑張って生き抜こう、そう思っていた。
なのに彼女達はしれっと自分達だけお金を貰って、お腹を空かしている艦娘達を他所に腹を満たしていたなんて…。裏切られた気分になった。
「ところで那珂さん、黙っていてあげる代わりにお願いがあるんですよ。」
「素直に従ってくれたらすぐに済みます。」
赤城さんと加賀さんが何を企んでいるのかすぐにわかってしまった。二人の目は私を襲っているときの川内姉さん達と同じ目をしていたから。
それからおよそ数十分間。倉庫に連れ込まれた私は赤城さんと加賀さんに好きなようにされた。
宿舎に着いたときはフラフラしていて制服は破られていないものの、心の中はぐちゃぐちゃだった。
でも
間宮さんから貰った食べ物をお腹を空かしている駆逐艦の子達に分けたとき
「ほ…本当によろしいのですか…?」
「私の気分が変わらないウチに早く食べちゃって」
ありがとう、と言いながら涙を流して食べ物を頬張る彼女たちを見て、私は少しだけ救われた気分になった。
初めてのハーメルンでの投稿でしたので至らない点もあったかと思います。
これから少しずつ勉強していこうと思います。
読んでくださってありがとうございました。