無敗の八冠?だったら、俺が獲ってやるよ。 作:流星の民(恒南茜)
お許しください。
第11R 夏合宿だと思った?残念でした!
夏。
またの名を、灼熱地獄。
俺の世界一嫌いな季節がやってきた。
…さてさて、いつも通りだったら家に引き篭もることで、ターンを消費していたというのに、見事にトレーナーに外に連れ出されてしまった。
まあ、夏合宿とは言わないが、日帰りで海行こうぜ!みたいなノリだ。
最初は断ってやろうかと思ったのだが、だんだん潤んでくるトレーナーの瞳を見ている状態で、それは無理な択だった。
「見て見て!アンタっ!海よっ!」
隣に座っているヴァーゴが歓声をあげる。
蒸し暑い夏においての唯一の救済である海。
生命の源とも言える、美しい光景が目の前に広がる。
まあ、そりゃ歓声をあげるのも当然っちゃ当然か。
かく言う俺も段々とテンションが上がってきた。
「さ、着いたわよ。」
トレーナーの到着を知らせる合図と共に、俺たちの夏合宿のような何かは始まった。
◇ ◇ ◇
◇ ◇
◇
どこここ。
車から降りて、トレーナーについて行く事数分。
辿り着いたのは山道の入り口だった。
…え?海に行くんじゃ…と、問いたくなるのを堪える。
きっと、何かの間違いだ。こんなの。
よりによってこんな日に登山だなんてあるわけ…。
「はい、それじゃこれから二人には登山をしてもらいます!」
「はぁ!?」
対面に問いを合わせる。
それほどまでに、普通に意味がわからなかった。
「ってなるのは、想像がついてたわ!だから、頂上まで辿り着いたら、スイーツを奢ってあげる!」
そう高らかに宣言すると、彼女は胸を張る。
だが…だが…残念だったな。
「私は、甘いものが嫌いなんですっ!」
瞬間、崩れるしてやったり顔。
「…え?」
そんなもん奢られるよか、テイオーとの握手券とか、テイオーと会える権利とか、そういうのが欲しいのだが…まあ、高望みだろう。
てかテイオーは、まだ一般人な訳だし。
とにかく、この勝負は俺の勝ち。
このまま、泳いで解散にしようぜと、考えた時だった。
「スイーツ…スイーツ…」
と、隣に立っていたヴァーゴが、今にも涎を垂らさんとしている様が見えた。
「えーっと…ヴァーゴサン…?」
思わず、漏れる質問。
その時だった。
「スイーツのためっ!行くわよ!アンタっ!」
と、急に手を引っ掴まれたかと思うと、爆発的な加速力で、体が前に持ってかれた。
えーと、これはとどのつまり…。
「ヴァーゴのスイーツのために付き合えと…?」
「当然でしょ!?行くわよ!」
だめだ、こいつ、完全にいつもと目の色が違う。
そういえば…と、思い出してみると、前のチーズケーキの時にこいつ、滅茶苦茶美味そうに食ってた気がする。
もしかして、テイオーさんのお友達の…えーと…パクパクさんじゃなくて…えーと…。
やばい、名前が思い出せんとばかりに、記憶を必死にたぐる。
でーたぁ。そうだ、マックイーンだ。
なるほどな、こいつマックと同類か。
確かに言われてみると、髪型とか似てる気がする。雰囲気全然違うけど。
と、考え事をしていた時だった。
「ねえ…アンタ…ここってどこなの…?」
唐突だった。唐突に、ヴァーゴが聞いてきた。
何だろうな、その一言、滅茶苦茶不安になるんだけど…と、辺りを見回してみると、どう見ても山道から外れてる。
「ねぇ、ヴァーゴ…ここって山道から外れてるんじゃ…。」
「…よね?」
こういうところで、満場一致したくなかったなぁ。うん。
「…どうしよう。」
ため息混じりに出てきた声は、この状況をとてもとても的確に表していた。
半ば食い気味に、ではあるけど。
◆ ◆ ◆
「…行っちゃった。」
山道の入り口で、そう呟くトレーナー。
「…何?あの加速…」
自身の担当ウマ娘はあんなのと戦ったのか、という恐怖と共に、最強のジョーカーカードこと、スイーツの汎用性に恐れ慄く。
…まあ、あれだったら、帰ってくるのもすぐだろう。
本来は、自分も登るつもりだったのだけれど…と、頭を抱えつつ、取り敢えずこの場で待機することに決めた時だった。
「パパ!ママ!ボク、先に登ってるね!」
と、背後で甲高い声が響くと同時に、たったった、と。
駆け足で走り出す音が聞こえた。
テイオーサマノアタラシイアニメダヤッタァ!!!(半角)
次回、あの娘との邂逅です。
まあ、一人称ボクの時点で、もう察しはついてるでしょうが…。
それでは次回もよろしくお願いいたします。
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