無敗の八冠?だったら、俺が獲ってやるよ。   作:流星の民(恒南茜)

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プロローグ
第1R 転生ッ!したけど、まずは推しに会いたい!


なあ、いいか?聞いてくれ。

何を言っているかわからないと思う。

 

だけどな…1番意味がわからなくなってるのは俺自身だ。

 

朝起きたら、美少女だった。

 

って言ってもわけわかんないよな。

別に元からってわけじゃないんだ。

 

俺は元々、しがない一介の学生だったはず。

 

昨日は…何したっけ?

 

確か…そうだな。

俺には推しがいた。

 

——トウカイテイオー。

初めて出会った時は、そう、運命かと思ったね。

 

あの脳が蕩けるようなボイス。

 

茶髪にポニテと青い瞳の愛くるしい容姿。

 

そして、何より…どんな逆境にも立ち向かうその精神(たましい)

 

一目見た時から、もう俺のハートは射抜かれたままだった。

 

それまで、一切興味がなかった筈なのに、テイオーの軌跡を何回も見返したり….。

 

アニメ二期を五周したり。

 

とまあ、それで、グッズを買いに行ったわけだが…。

確かちょうど発売してたメイド服のクッソ可愛いテイオーを買って…。

 

ってところまでしか、今の俺の記憶にはない。

 

ただ、重要なのはそういうことじゃない筈だ。

今置かれている状況が微塵も理解できん。

 

周りを見回すとな、殺風景でな、狭い部屋なんだよ。

ベッドが一つと、机が置かれているだけ?

 

で、俺はというと…鏡の向こうに映り込んでいるのは、白髪に赤い流星で、目がぱっちりしてて、まつ毛が長くて…と美少女。

 

いや、マジで美少女。

やだ、俺ったらかわ…と口にしかけたところで気づく。

あれ?耳生えてね?と。

 

いや、生えてるのは当然だろうとか、そういう問題じゃない。

 

頭のてっぺんから二つほど生えてるんだよ。

それもヒト耳じゃなくてウマっぽい耳。

 

でさあ、腰の辺りにも違和感があるな、と。

ちらと見てみると、何か尻尾がある。

俺は人じゃないと?と、自問自答を始めそうになった時だった。

 

気づいたんだ。

 

これは——ウマ娘。

俺は、ウマ娘に転生したのだということに。

 

「やった、やってやったぜ!ヒャッホウ!」

 

部屋に響きわたる俺の声らしい高い声。

非常に可愛らしいが、気にするべきはそこじゃない。

 

ウマ娘世界に転生したそれ即ち——

 

テイオーに会える!

 

始まる狂喜乱舞。

誰も咎める人間がいない中、俺は部屋で発狂しまくった。

 

その時である。

 

「ちょっと!うるっさいわよ!アンタ!」

 

と、急に、ドアが開いて、栗毛の少女が怒鳴り込んできた。

この娘にも、耳が生えているからウマ娘、と。

なるほど。

確かに隣人がブチギレるのもやむなしと言わざるを…。

 

「ってもうこんな時間!?起こしてくれてありがとう!?ってかアンタ、遅刻するわよ!」

そう捲し立てると部屋を出ていく少女。

 

うん、全くもって意味がわからん。

てか遅刻とかって…と、時計を見てみると、確かに一般的な学校なら遅刻しそうな時間だ。

 

うん、不味いな。…不味くね?

 

慌てて、クローゼットを開けると、あろうことか、そこにあった制服は、見慣れないものだった。

 

ということはつまるところ…

 

◇ ◇ ◇

 

…はい、やっぱり地方でした。

 

「それにしても、アンタがあんな悲鳴あげるなんて珍しいわね。」

 

ってことは、ここにテイオーはいない。

 

「起こしてくれたことは感謝するわ。」

 

テイオーはいない。

 

「ちょっと!アンタ、聞いてるの!?」

「…へ?俺…私…?」

 

「そうよ!…全く。抜けてるところは、いつも通りのアンタね。そんなので選抜レース、大丈夫なの?」

 

ん?選抜レース、と?

 

つまり俺はまだデビューしていない?

 

「…ねぇ、俺…私にも、中央に行ける可能性があるってこと?」

 

「…え?まあ、あることにはあると思うけど…」

 

だったらっ!だったらっ!

 

俺は、中央を目指して、テイオーと、甘々な学園生活を…。

 

「何を考えてそんなににやけてるのか知らないけど…相当な難易度よ?」

 

だとしても、だとしても、だ。

テイオーと過ごせるなら、それくらいっ!

 

と、だんだん思考が飛躍していく中、俺は忘れていたことに気が付いた。

 

…そうだ、その前にこの体の名前を聞いておかねば。

 

「ねぇ、私の名前って何?」

 

そんな、若干頓狂にも思える質問に、彼女は呆れたように答えてくれた。

 

「…また随分と唐突ね。頭を打ったのかわかんないけど…アンタの名前は———」

 

 

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