無敗の八冠?だったら、俺が獲ってやるよ。   作:流星の民(恒南茜)

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第22R やったぁ!カイチョーだぁ!…うん。

「…でっか…。」

 

もうここについてから何度目になるのかわからないため息。

んでもって目の前に広がるのは、バケモンみたいな広さの学園、と。

 

…いや、本当に何だこの広さ。

アニメで見た時は特に何とも思わなかったけど、いざこうして実際に目の前にしてみると、パッケージ詐欺にも程があると言った具合である。

 

そんでもって、校門前に立ってくれている緑の帽子には、とんでもなく見覚えがある、と。

 

「おはようございます…いえ、こんにちはの時間ですね。こんにちは、トレミアンタレスさん。」

 

「こんにちは、たづなさん。」

 

駿川たづな、別名緑の悪…。

 

…なんだ?動悸が…おさまらない。心拍数までどんどん上がって…。

落ち着け、俺。この世界にガチャはない。お迎えしなきゃいけないテイオーなんてここにはいないし、完凸しなきゃいけないサポカなんてここにはない

んだ。

 

——ガチャがない。

その事実は、少なからず俺を落ち着かせた。

 

おさまってくる動悸と、段々と安定してくる心拍数。

よし、これでようやくお話ができると、顔を上げ、彼女の顔を直視する。

 

「大丈夫…ですか…?アンタレスさん。」

 

心配しているような声音で話しかけてくる彼女に、「大丈夫です」と返し、話を続けてもらう。

 

「それでは、生徒会室までご案内いたします。ついてきてください。」

 

そう告げるとこちらに背をむけ、歩き出すたづなさんに、とてとてとついていく。

 

…にしても、歩くの速いな…。

若干ついていくためのペース作りに一苦労といったところではあるが…。

 

まあ、何とかなるだろうと。

俺も彼女に合わせて歩幅を刻み始めた。

 

◇ ◇ ◇

 

…というわけで、やってまいりました。

生徒会室の前にやってきたわけだが…。

 

放たれているのは、負のオーラ。

というか威圧感…か?

 

どちらにせよ、かなり恐怖を感じるのは間違いなし、といったところ。

 

…まあ、でもここまで来たら行くしかない。

 

「ありがとうございました、たづなさん。」

 

「いえいえ。何か困ったことがありましたら、気軽にお声がけくださいね。」

 

そう告げると、去っていくたづなさん。

取り残された俺は完全に一人。

この状態で、生徒会室に殴り込まなければならない…と。

 

——いや、俺は…とまらねぇからよぉ!

勢いに任せ、バーン!と、擬音が鳴るぐらいの勢いでドアを開ける。

 

瞬間、俺は感じた。

 

明らかに異様な空気を。

発生源はすぐにわかった。

 

…トレーナーだ。

 

んでもって、彼女が発している気まずい的な負のオーラにカイチョーの威圧感が混じって、独特なハーモニーを醸し出している。

 

まあ待て、どう考えても、この空気が醸造されるきっかけになったのは俺。

 

そして、ぎろりとこちらを見つめるカイチョーとトレーナーの視線は中々に鋭い。

 

こうなったら、取れる択は一つだろう。

 

「遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでしたっ!」

 

◇ ◇ ◇

 

さてさて、俺の十八番こと、“土下座“で何とかこの場は許してもらえたようだ。

 

…え?カイチョーは意外と寛容だぁ?

 

うるさいやい。カイチョーが許しても、トレーナーが許してくれたかわからないんだもん。

さてさて、トレーナーの隣の席に腰を下ろし、見つめるのはカイチョーの瞳。

 

先ほどの威圧感は、既に鞘に収めたのか、だいぶ落ち着いた様子で、こちらを見つめている。

 

やはり、土下座には効果があったのだろう。多分。

こうして、静寂に包まれること数秒、先に口を開いたのはカイチョーだった。

 

「さて、こんにちは、トレミアンタレス君。この度は、私のスカウトに応じてもらえて大変嬉しく思う。どうだい?中央は。」

 

「そう…ですね…。」

 

端的に換言しようとしたが、結局答えは一つしか出てこなかった。

 

「何というか…大きい…です。」

 

「…そうか。他に感想は…?」

 

「いえ、今のところは特に。」

 

「わかった。早く慣れてくれることをこちらとしても願っているよ。さて——主要な手続きは、全て君のトレーナーさんが済ませてくれたから…私からは、我が校のスクールモットーについて話しておこうと思ってね。あれが読めるかい?」

 

そこで彼女は壁にかかっている文字を指差した。

 

ふむ。スクールモットー…か。任せておけ。英語を読むことぐらいなら、俺にだってできるもん。

 

「えくりぷすふぁーすとざ…れすと…のーうぇあ…ですか…?」

 

「その通り。eclipse first the rest nowhere。意味はわかるかい?」

 

カイチョーの発音と、俺の発音の比較、と。

うん。地獄かな?というのは置いておいて。

 

意味は…何だっけ…?うん。テイオーの可愛さが脳のリソースの8割を占めている以上、ちょっと出てきませんね。

 

「すみません、わからないです。」

 

「“唯一抜きん出て並ぶ者なし”。君にも、そんなウマ娘を目指して努力してほしいと思う。いいかい?」

 

ここで、若干鋭くなるカイチョーの瞳。

 

ボク、オーラに弱いんだよね。だって、カイチョーの目、鋭いんだもん。

さて、テイオーぶってエンペラーオーラから逃れようとはしたが…まあ、無理だ。

 

ここは、睨まれたんだし、睨み返しとこうぜ!と思うも、そんな度胸、俺にはない。

大人しく睨まれながら、返事するとするか。

 

「わかりました。頑張りますっ!」

 

せめてもの抵抗として、いつもの元気は見せつけつつ、だが。

 

「その意気やよし、だ。こちらとしても期待しているよ、アンタレス君。君と戦える時を、ね。」

 

…そうだ。

改めて、理解する現実。

 

俺は、今後ルドルフと戦っていかねばならない。

 

それも、先ほど見たミスターシービーや、まだ見ぬ敵の数々もプラスした、“中央での戦い“に身を投じていかねばならないのだ。

 

今、俺が属しているのは、そういう世代なのだから。

 

——だが、俺はテイオーをデレさせなければいけない。

 

だったら、目の前のこの敵に、負けるわけにはいかないんだ。

 

最後に、精一杯の抵抗を込めるように、瞳を釣り上げると、カイチョーの瞳を見つめる。

 

そうすること、数秒。

 

沈黙に耐えかねるように、再びルドルフが口を開いた。

 

「それでは、私から伝えることは以上だ。…ああ、あと君の寮が同室になる生徒について、だが…。」

 

同室になる…生徒…?

 

ここで思い出す中央のルール。量は二人部屋。

 

嘘だ。おい待てカイチョー、俺のコミュ力でそんな同室だなんて…。

 

「君と同室になる生徒は、今のところいない。どうしても、人数の関係で…君だけ余ってしまってね。だが、安心してくれ。編入生が来た時には、晴れて君も二人部屋の住人になる。そして、その編入生には当然…地方から来た生徒も含まれる。」

 

まずは、一人部屋であることに感謝。

 

そして、もう一点…地方から生徒が来た時…ということは…。

 

「ヴァーゴが、仮に中央に来れたとしたら、同じ部屋になれる可能性がある…と?」

 

「…まあ、あくまでも可能性の話だよ。当然、こちらも精一杯配慮はするつもりだ。…だから、君も邁進してくれたまえ。これで以上…だな。何か質問は…?」

 

粋なことを…してくれるじゃねぇか。

まあ、あくまでも可能性の話、というのは理解しているつもりだが、正直、それは俺を奮起させるには十分すぎた。

 

「…いえ、特にありません。ありがとうございました。会長さん。」

 

そう最後に挨拶し、トレーナーと共に、部屋を出て行こうとした時だった。

 

「ああ、あと最後に伝えておかねばならないことがあった。私のことはルドルフでいいし、敬語も使わなくていいよ。アンタレス君。仮にもこれからトゥインクルシリーズで互いに競い合う仲なのだからね。」

 

「...わかったよ。ルドルフさん。それでは、これにて、私は…。」

 

っベー、慣れねぇ、慣れねぇよ。流石に非敬語は。

 

…まあ、とはいえ、同級生なのだし、これぐらいの距離感が正しいの…かな…?多分。

そんなことを考えつつ、扉を閉めると、ほっと一息つく。

 

「それじゃ、アンタレス。トレーニングは明日から始めるから、次回は遅刻しないように。いいかしら?」

 

そして、最後に頂戴するトレーナーからのありがたい一言。

 

…まあ、流石に二日連続で迷惑をかけたらヤバい。主に俺の命が。

 

「…了解しました。」

 

「ならよし。それじゃ、お互い寮に戻りましょうか。」

 

軽く挨拶をし、俺たちはそこで別れた。

 

◆ ◆ ◆

 

「…トレミアンタレス君…ふふ、やはり面白い娘だ。果たして、彼女が私のライバルとなり得るのか…。今後が楽しみで仕方ないよ。」

 

二人が去り、誰もいなくなった生徒会室で、誰に聞かせるともなく、ルドルフはそう呟いた。

 

◆ ◆ ◆

 

◆ ◆

 

 

…というわけで、初めて部屋にやってきたわけだが…。

 

広い。

というか、元々二人部屋での運用を想定されていたのだ。

 

流石に一人では広すぎるだろう。

 

時間を見てみると、もう大分遅い。

消灯するか、と。

 

電気を消す前に、髪留めを解いて気がつく。

 

…そっか。もう毎朝起こしてくれるヴァーゴは、いないんだ。

 

別れたのは今朝のはずなのに、もう随分と長いこと経った様な気がする。

 

…それでも、俺はこの程度で落ち込んでいるわけにはいかない。

 

彼女との約束を果たさなければ…“無敗の八冠ウマ娘”にならないといけないのだから。

 

「…よし。」

 

軽く声を出して、気合を入れ直すと俺は、目覚まし時計をセットして、横になった。

 

胸中に広がる寂しさを振り払うように、軽く寝返りを打ちながら。




というわけで次回、ローテの発表です。
それでは次回もよろしくお願いします。
追伸:テイオーに勝てません。守護ビショップでも、進化ネクロでも、バフドラゴンでも無理です。
取り敢えずプレイングを磨いてくることにします。ありがとうございました。
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