無敗の八冠?だったら、俺が獲ってやるよ。   作:流星の民(恒南茜)

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今回より、句読点の位置とリーダーの数について若干フォーマットを変更いたしました。
内容には変更がありませんのでご安心を。
また、大きく遅れた理由につきましては後書きで説明いたします。


第36R 色々と懸けて…いざ勝負っ!

「……アンタレス……君も呼ばれていたのか」

「……そちらこそ。もしかして……ルドルフも何の説明も受けてない感じ?」

 

さてさて早朝、空はまだ白んでいる時間帯。

気温も中々に低めであり、中々走るには上々な環境ではなかろうか。

 

夏合宿もなんだかんだ始まってから一週間ほどが経過した。

灼熱の如き気温に身を焦がしながら…ではあるが、まあ海沿いということもあり意外と涼しいもんなんだな、と言った具合。

というわけで、環境にも適応してきたので、頭ターボしたノリで居たら……何故だか、朝早くからトレーナーに招集をかけられた訳である。

 

……んで、いざね?砂浜に着いてみたら、いつの間にかトレーナーはいなくなってるし。何故だか、ルドルフはいるし……と。

待ち受けていたのは、非常に理解するまで時間がかかりそうな状況だった。

まあともかく、状況は理解できずとも結構気まずいのは確かだ。

 

いくら先日呼び捨てにしてくれ、と頼んで若干距離が縮まったとはいえまだまだ親交を深めるには時間がかかりそうだしね?

しばし、ご歓談タイムとも言いづらい。

口も開けず、ぼぅっと海を眺めること数分、先に口を開いたのはルドルフの方だった。

 

「……そういえばこの間の件についてだが……感謝しているよ。おかげでトレーナー君とも、もう一度話しあえたから、ね」

 

この間の件とは?と、少々思索を巡らせ……そういえばこないだ夜の公園で話したんだったっけか、と思い出す。

 

「ううん、別に私が何か特別なことを言ったわけでもないから。結局、トレーナーさんと関係性を修復できたのはルドルフ自身の力でしょ?」

 

実際、あの時俺がかけた言葉なんて特別なものでも何でもない。

きっと、勝てたのは俺一人の力じゃなくて……。ヴァーゴやトレーナー、それにルドルフだって。『出会い』に恵まれていたからだ。

それに、一歩踏み込んで話す勇気だって、たくさんもらってきた。

 

そうやってみんながいてくれるから、俺は未だに馬鹿でかい夢を見続けることができてて——って、きっと、あの時はただ伝えたかっただけだったんだと思う。

 

「……私自身の力、か」

 

俺の答えに対して、彼女が口にしたのはそんな一言。

 

小さく呟かれたその言葉の真意を読み取れず、少々思考を空回りさせていた時だった。

 

「ハァイ、ルドルフにアンタレスちゃん! お・ま・たっ!」

 

圧倒的な激マブオーラと共に、視界に入ってきたのは栗毛。

間違いない、この中央にやってきた日ぶりに見るオーラは……マルゼンスキーだ。

 

「おはよう、マルゼン。ところでこれは……何の集まりなんだい?」

 

しかし、そこは流石のルドルフといった具合。オーラに全く当てられることなく、むしろ弾き返しているようにも見える。

 

「あら、聞いてないの? まあ説明は全員揃ってから、かしらね?」

「……全……員?」

 

とはいえ、謎は深まるばかりで、流石のルドルフも首を傾げるばかりだ。

当然、そんな状況で俺が理解できるわけもなく。

 

ただトレーナーを待つだけの時間が続き……。

かくて数分後、その時は来た。

 

「やっほーマルゼン、それにルドルフも。」

 

……と、思ったんだけども。

代わりにやってきたのは、白い帽子に黒鹿毛……俺としては、見知った顔だった。

 

「……あとキミは確か……トレミアンタレス、だっけ?」

「ええ、初めまして。“ミスターシービー“さん」

 

——ミスターシービー。

中央に来て、初めて見たレースでの勝者。

レース後半で見せつけられた圧倒的な末脚は、俺にとっての中央の指標として……今でも、脳裏に焼き付いていた。

 

……というか、さっきから大物ばかりだ。

 

“ミスターシービー“に“マルゼンスキー“、それに“シンボリルドルフ“。

これだけのメンバーを集めて、一体、今から何が……。

 

そんな鳥肌すら立つような感覚に襲われていた時だった。

 

「……えーと、みんな! おはよう!」

 

やっとこさ聞こえてきた聞き覚えのある声。

そちらを向くと、いつの間に用意したのか、デカイスピーカーの隣でトレーナーがマイクを手に、話し始めたところだった。

 

「ひいふうみい……うん、四人集まってるわね! トレーナーさん、挨拶ってこんな感じですか?」

「……おい、マイクが全部拾ってるぞ」

ひぇっ!? ……すみません、こういうの、初めてやったものですから……」

 

トレーナー、気まずいよぉ!とばかりに、泣きつきたい気持ちを必死に堪えつつ、一旦は見守ることに徹するとする。

まあ、隣にはこの間の男性こと——後から知ったことだが——ルドルフのトレーナー、それに白髪に着物の男性が一人と、このクソ暑い中だからか、白いつば広帽を被った女性が一人。

 

年齢から察するに恐らく彼らはトレーナーの先輩。

 

……そして、そんなのに囲まれてトレーナーはトレーナーで引けないところまで行っちゃってる訳なのだろう、うん。

 

「とにかく、今日やることは一つ! トライアスロンよっ!」

 

そんな圧力からか、かなりテンアゲといった具合で彼女は宣言した。いと哀れなり。

……それにしても、“トライアスロン”か。

普通に初挑戦ではある訳だが、スタミナの補強には適していそうだ。

 

——それに、この面子。

集まっているのは実力者という言葉程度じゃ済まされないほどのやべーやつら達。

 

彼女らに挑戦できるというのならば……と少々、闘争本能も疼いてくる。

 

「まずはあそこのブイまで行って折り返しスイム、これで100m!」

 

トレーナーが指した先に浮かんでいるのは、オレンジ色のブイ。

なるほど、片道50mと言ったところか。

 

「次に砂浜から道路まで出て、山道の入り口までサイクル、4000m!」

 

次に指されたのは道路。通じる先は山、と。

正直、去年の一件で若干トラウマ気味にはなっていたが、小さいから遭難する心配はナシ!と信じたい。

 

「そして、最後に頂上までラン、坂道750m! ……あ、道は整備されてるから安心してね?」

 

しかして流石トレーナー、きちんと不安要素を拾ってもらえた辺りありがたい。

 

「それじゃ、スタートっ!」

 

それに合わせてパァン、パァンと、立て続けに音が響く。

発生源はというと……真顔でクラッカーを握りしめたお二人。推察するに、マルゼンとシービーのトレーナーだった。

あまり愉快そうな顔はしていないが、随分とお茶目な一面もあるようだ。

 

……ん?スタート?

 

次いで、パシャンと水音が三連発。

 

「アンタレスっ! スタートしてるわよっ!?」

 

そんなトレーナーの声が聞こえ……ようやく、俺は出遅れたことを理解した。

 

「……だって、こんな急にスタートするって……思わなかったんだもんっ!」

 

疼いていた闘志は何処へやら、言い訳じみた頓狂な声が飛び出てしまう。

とはいえ、言い訳したところで、遅れたもんを取り返すには急ぐしかない。

俺も勢いよく海へとダイブ。

 

半ば機械的に手と足を動かし、大体の距離を測る。

 

……おおよそ2、3バ身程度、か。

出遅れた割には、思考は至って冷静。

もしかしたら、水の冷たさも手伝ってくれていたのかもしれないが。

 

「ちなみに勝者にはモリオカ名物、チーズケーキが授与されますっ!」

 

ふーん、トレーナーもノってきたじゃん……なんて、頭の隅っこで考えつつ……。

 

「——チーズケ——ガボゴボッ!?」

 

なんて冷静さは一瞬で途切れ、あまりにも魅力的なそのワードと共に飲んでしまったのは水。

 

「ゲホッゴホッ!」

 

塩っ気が口いっぱいに広がり、若干、むせてしまう。

……幸い、軽く済んだが、気づいた時にはさらにもう2バ身ほど、先団とは差ができてしまっていた。

 

——それでも、モリオカ産のチーズケーキがかかってるのならこの戦い、負けられないっ!

 

再び闘志が燃え上がり、全身に烈火の如く、流れ込む。

 

——バトル(トライアスロン)はまだまだここからだっ!

 

ただ、口にすることはできないので、心の中で絶叫しつつ。

 

どこか栗毛が浮かぶデジャブを感じつつも昂る想いのままに。

 

俺は水を掻き出した。




まず、遅れた理由につきましては例によって考査です。
加えて、今回は文化祭に備えた部誌の作成のため、中々こちらを書くのに時間を割けなくなっていました。
ただ、色々と一段落したため、こちらも執筆ペースも上げていきたいところです。
不定期でご迷惑をおかけしますが今後は活動報告に加えて、遅くなる場合は後書きの方でも報告させていただきます。
また、今回よりフォーマットを変更いたしましたが、前回までの3点リーダーとどちらの方が見やすいか、アンケートを取らせていただきたいと思います。
それでは次回トライアスロン後編、今後ともよろしくお願いいたします。

リーダー(点)の数

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