無敗の八冠?だったら、俺が獲ってやるよ。 作:流星の民(恒南茜)
第6R まずは最初の一歩。要はトレーニング…か。
『トレミアンタレス、トレミアンタレス先頭!他の追随を一切許しません!このまま、八冠の栄誉を掴み取るのか!?』
ザッ、と芝を踏み締めると、さらに加速する身体。
これを制せば、八冠だと言うのが信じられないぐらいに、上手くいっているレース展開。
背後を振り返ると、他のウマ娘たちは、遥か後ろにと言った状況。
——行ける。
そう思い、前を向いた時だった。
『起きなさいっ!アンタァッ!!!』
突如、実況の声が変わった。
…というか聞き覚えのある声である。
慌てて、記憶を漁ろうとした時だった。
「は…はぁっ!?」
唐突に、ターフが裂けたかと思うと、俺はどこまでも深い深い闇の中に落ちて…
「はっ!」
「何が『はっ!』よ!?さっさと支度しなさい!遅刻するわよ!?」
目の前にいたのは、無駄に上手い俺の声真似と共に、支度を促してくるヴァーゴ。
…んで、遅刻、と。
その言葉の意味を理解するまで、コンマ0.5秒…。
「…はぁ!?」
「アンタ、寝坊したのよ!ほら、行くわよ!」
ヴァーゴの御前で、さっさと着替えを済ませた瞬間に掴まれる右手。
そのままタッタタ、と軽く地面を踏み、熱きビートを刻むと、外へと一歩踏み出す。
…今日は何が待っているんだろう、と。
考え…
「ほらアンタ、急ぐわよ!」
…る間も無く。
俺は走り出した。
◆ ◆ ◆
「…はぁ…はぁ!?」
朝一から部屋中に響き渡る叫び声。
「何言ってんのよ、昨日の私ぃ!」
昨日のことを思い出し、火照ってきた頬を抑える。
「いや、確かに…確かに…あの時は感情移入してたけど…」
“中央で無敗の八冠”
流石に重いのでは…?と、少々頭を抱えたくはなる状況ではあった。
…それでも、彼女にとって、あの時口にした言葉は全て本音の筈だった。
軽く首を振りつつ、
「…頑張りますか。」
ボソリとそう呟くと、ドアを開き、彼女は外へと一歩踏み出した。
◆ ◆ ◆
◆ ◆
◆
「…と言うわけで、今日が初めてのトレーニング…ね。」
今日も今日とてヴァーゴと昼飯を食しながら、今後の展望について…と言うか、この後待ち受けているトレーニングについて、話し合う。
「ヴァーゴもトレーナー、決まったんだっけ?」
「ええ。私も、ね。結構誘われたわ。…それにしても、アンタが即答した方が驚きなのよね…あそこまでの走りを見せたのに…。」
これはこれは、お褒めに預かり、至極恐縮感謝感激雨霰と言いたいところではあるが、流石に論点はそこじゃないだろう。
「…なんだろうね、何か、運命的なものを感じたというか…。」
それとも、あの人が必死だったから、だろうか?
でも、それも何だか違う気がする。
とにかく、口じゃうまく説明できない何かが、あった気がした。
「…なるほど、ね。まあいいわ。大事なのはこれからだもの。…それで、掲げる目標は…あのまま?」
「当然!」
即答する。
まあ、そりゃそうだ。
人間の夢なんぞ、そうそう変わらんよ。
…と言うよりも。
テイオーとワクワクドキドキの学園生活を送るため。
そして、あそこで断言しちゃったから。
今更、変えると言うわけにもいかんだろう。
「…まあ、いいわ。とにかくお互いの目標のために頑張りましょ。」
お茶を啜りながら、そう宣言するヴァーゴ。
…そういえば、一つだけまだ気になっていたことがあるんだった。
「ねぇ、ヴァーゴはどうして中央を目指してるの?」
その時、一瞬彼女から動揺しているかのような、素振りが見えた気がした。
一瞬空く間。
あれ?まずいこと聞いちゃったかな?と、質問から謝罪へと切り替えをかますか、考えた時である。
「…まだ、秘密よ。」
ボソリと彼女がそう呟いた。
…なるほど?
であれば、流石にこれ以上質問するのは論外だろう。
「…わかった、ありがとう。」
結局、これを以て、この場は解散と相成った。
◇ ◇ ◇
「こんにちはっ!トレーナーさんっ!」
「…う、うん?こんにちは。」
元気一杯のトレーナーさんへのこんにちは。
…いいな。
一回やって見たかったんだよ、これ。
テイオーに「トレーナー」と呼ばれ、何度脳が蕩けたことか…。
もう、数えきれないほどである。
なんならMADにして、一生聞けるようにしちゃってたモンニ!
…まあこの際、このことは置いておくとして…。
さて、問題はこの後、要はトレーニングである。
…目の前で、少々ポカンとしている彼女——トレーナーがどれだけ厳しい指導をつけてくるのか、俺は知らないわけだが…。
「…さて、まずあなたの走りを見てて思ったこと、言っちゃうわね。」
始まるか。
軽く身構え、何を指示されても対応できる体制を作る。
「あっ、そうそう。まだ構えなくても大丈夫。何せ…あなたの最初の課題は…」
なんだ?何が来る?
フォームか?それとも…
「スタートダッシュだから!」
…ん?
…スタートダッシュ…?
フォームとかじゃなくって…?
「あ、その顔!ちょっとバ鹿にしてるわよね!確かにあなたの末脚はすごかったけど…そもそもスタートダッシュで出遅れなければ、あそこまで後半、厳しくなることはなかったでしょ?」
「…まあ、確かにそう…ですね。」
「わかれば結構!これも八冠への道、ってところだから!」
…あ、ガッツリ八冠強調するんっすね。ちょっと顔赤くなっちゃう。
ってところは置いておいて。
まあ、確かに返す言葉もございません、と言ったところ。
彼女の指示通り、スタートラインに立ち、構える。
「それじゃあ、位置について…よーい、スタート!」
その言葉に合わせ、俺は駆け出した。
◆ ◆ ◆
スタートダッシュは上々。
やっぱり、選抜レースの時と違って、ここに焦点を絞った分、ちゃんと集中してくれたか、と少しため息をつく。
実のところ、彼女も出遅れには現役時代、だいぶ悩まされてきた。
それも加味すると、あの少女——トレミアンタレスは、素質自体は悪くないと、言った所だろう。
だが…八冠どころか、中央の壁はまだまだ高い。
…結局は、彼女自身の努力もだが…自分がどこまで彼女を支援していけるか、そこは大きい筈だ。
こめかみを少し抑えると、再度気合を入れるように、ガッツポーズを決め、彼女は再び前を向いた。
…リアルの方が忙しかったんですっ!本当なんです!
と言うわけで、次回はなるべく早めに出すので、何卒。
追伸:チャンミ、敗北です。
YES魔改造!NOタッチ!
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