無敗の八冠?だったら、俺が獲ってやるよ。 作:流星の民(恒南茜)
「…うぇ…」
朝。
全身…特に足に集中している激痛で目が覚める。
トレーナー——彼女の指導は俺が思ってたより全然、厳しかった。
そりゃ、スタートダッシュのトレーニングだけで終わるわけがなかったのである。
まあ、俺自身が大きい目標を叩きつけたと言うのは、デカイだろうが…。
それにしても…それにしても…である。
テイオーは…ウマ娘たちは、毎日こんなことやってんの?
俺がボタンを一回ポチるだけで、テイオーはこの地獄のような筋肉痛を味わってるの?
それなら、ギガガガガとか変な擬音語をあげちゃう理由もわかる気がする。
…というか、胸が痛む。
やべぇ、学園行きたくねぇ…トレーニングしたく…
「行くわよっ!アンタっ!」
「げっ!」
やべぇ…隣人直々に殴り込んできやがった。
「どうしたのよ?ベッドに座り込んで…。今日、寝坊しなかったのは褒めてあげるけど…ってそれよりも!早く支度しなさい!遅刻するわよ!」
「う…うん!?」
急かされ、慌てて立ちあがろうとした時である。
「ぐぇ!」
一際強めの激痛が脚に走った。
要するに、筋肉痛の第ニウェーブである。
一瞬にして、歪む俺の表情。
前世…と言うか、以前の俺であれば、テイオー似の美少女が表情を歪ませるのを見て、新たな扉を開いていたかもしれないが、当然、今の俺にそんな感
情はない…と言うか、余裕がない。
「…もしかして、筋肉痛…?」
その通り!流石ヴァーゴ先生!もしかしての精度がgoogle先生ばりに高い!
と、褒め称えたくなるのは置いておいて。
今のこの大惨事の中では、そんな余裕もない。
黙ってこくりと、頷いておく。
「…んもう、しょうがないわね…。」
一言、呟いたかと思うと、俺の手を取り、己の肩に引っ掛けるヴァーゴ。
…ん?どういう…
「…肩貸してあげるから、早く支度しなさい。」
…ああ、そう言うことですか、少々目が潤んでくるな、それ。
とまあ、何とかヴァーゴ氏の介護も受け、着替えなどの支度も完了。
「それじゃ、行くわよっ!」
と、開かれたドア。
1日の始まり。
朝の一幕であった。
◇ ◇ ◇
「…それにしても、アンタ…最近、ヒトが変わったみたい。」
「…へ?」
死の宣告は、唐突に。
全く予期せぬところから襲ってくる。
身構えている時に、死神が来なくても、身構えていない時には、バリバリやってくるのだよ。
「ナ…ナンノコトデショウ…。」
「…ほら、そう言うとこよ。それに、朝の筋肉痛だって…今までだったら、あれぐらいじゃ根をあげなかった筈なのに。」
こいつ、随分と勘がいいな。
いっそ始末を…と死ぬほど物騒なことを閃いたあたりで、考える。
…こいつにだったら、今までの事の顛末を伝えてもいいんじゃないか、と。
——とはいえ、いくら信用できるとは言ってもなぁ…。
唐突に隣人が、実は僕、トレミアンタレスじゃないんです、とか言い出したら、どうなるか。
普通、正気を疑うだろう。
流石に、それはやめておいた方がいい。
「…えーと…トレーナーも決まったし、今までの自分を変えてみようかなって…ははっ。」
っべー、死ぬほど乾いてたぞ、今の笑い声。
…それにしても、こんな言い訳で通用するのか?
「…そう…だったら、いいんだけど…あんまり無理しないでね?別に、元々のアンタのままでも、私はいいと思うから…。」
あれ?このヒト、意外とチョロい?
もしかしたら俺、気づいちゃったやもしれぬ。
と言うことは置いておいて。
まあ、誤魔化せたのなら、それに越したことはない。
「…そういえば、アンタ、今週末って空いてる?」
…今週末?
どうしたんだろ、急に。
まあ、別に特に予定はないと思うが。
うんうんと、黙って頷く。
「…そう。だったら、そのまま空けておいてくれると、助かるわ。」
と、そうボソリと呟くヴァーゴ。
一体、どういう用件かはわからないが…まあ、ここは聞いておいた方がいいだろう。
帰ったら、予定表に書いとこっと。
と、思いつつ。
俺も、彼女に習って席を立つ。
「…それじゃ、行きましょ。」
そう言う彼女に従って、食器を片し、俺も午後からの授業に向かうことにした。
◇ ◇ ◇
「…こんにちは…トレーナーさん…。」
「…こんにちは、って随分と前回よりテンション低いわね。もしかして筋肉痛かしら?」
図星である。
「あ、図星って顔してる。…やっぱりね。」
「…やっぱりって何ですか、やっぱりって…。」
恨みをたっぷり含んだ声音で、そう呟いてみる。
「最初は、誰でもそんなもんってことよ。さ、今日も始めましょ!」
先程とは一転、明るい声を出すトレーナー。
仕方なく俺も「おー」と、やる気のかけらも感じられないような返事をする。
「ほらほら、もっと元気出して!早く適性も見つけちゃわないといけないんだから!」
…適性、か。
そういや、そんなのあったな、と。
脳裏にチラつく嫌な記憶の数々。
因子因子因子因子…。
嫌だ、忘れたい…。
「…なんでそんなに嫌そうなの?」
「…いえ、因子が…。」
「いんし…?よくわからないけれど…。とにかく、一本走りましょうか!」
あ、そうなるんすね。
「…わかりました。」
仕方なく、そうぼやくと、俺もスタート位置につく。
——さて、今日も走るか。
「…それじゃ、位置について…よーい、スタート!」
中途半端な終わり方で申し訳ありません。
それでは、次回もよろしくお願いいたします。
掲示板形式(BBS)
-
欲しい
-
いらない