無敗の八冠?だったら、俺が獲ってやるよ。   作:流星の民(恒南茜)

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第7R 俺が何者かって?ははっ(乾いた笑い)

「…うぇ…」

朝。

全身…特に足に集中している激痛で目が覚める。

 

トレーナー——彼女の指導は俺が思ってたより全然、厳しかった。

そりゃ、スタートダッシュのトレーニングだけで終わるわけがなかったのである。

まあ、俺自身が大きい目標を叩きつけたと言うのは、デカイだろうが…。

 

それにしても…それにしても…である。

テイオーは…ウマ娘たちは、毎日こんなことやってんの?

俺がボタンを一回ポチるだけで、テイオーはこの地獄のような筋肉痛を味わってるの?

 

それなら、ギガガガガとか変な擬音語をあげちゃう理由もわかる気がする。

…というか、胸が痛む。

やべぇ、学園行きたくねぇ…トレーニングしたく…

 

「行くわよっ!アンタっ!」

「げっ!」

やべぇ…隣人直々に殴り込んできやがった。

 

「どうしたのよ?ベッドに座り込んで…。今日、寝坊しなかったのは褒めてあげるけど…ってそれよりも!早く支度しなさい!遅刻するわよ!」

「う…うん!?」

急かされ、慌てて立ちあがろうとした時である。

「ぐぇ!」

 

一際強めの激痛が脚に走った。

要するに、筋肉痛の第ニウェーブである。

一瞬にして、歪む俺の表情。

 

前世…と言うか、以前の俺であれば、テイオー似の美少女が表情を歪ませるのを見て、新たな扉を開いていたかもしれないが、当然、今の俺にそんな感

情はない…と言うか、余裕がない。

「…もしかして、筋肉痛…?」

その通り!流石ヴァーゴ先生!もしかしての精度がgoogle先生ばりに高い!

 

と、褒め称えたくなるのは置いておいて。

今のこの大惨事の中では、そんな余裕もない。

黙ってこくりと、頷いておく。

「…んもう、しょうがないわね…。」

 

一言、呟いたかと思うと、俺の手を取り、己の肩に引っ掛けるヴァーゴ。

…ん?どういう…

「…肩貸してあげるから、早く支度しなさい。」

 

…ああ、そう言うことですか、少々目が潤んでくるな、それ。

とまあ、何とかヴァーゴ氏の介護も受け、着替えなどの支度も完了。

「それじゃ、行くわよっ!」

 

と、開かれたドア。

 

1日の始まり。

 

朝の一幕であった。

 

◇ ◇ ◇

 

「…それにしても、アンタ…最近、ヒトが変わったみたい。」

「…へ?」

 

死の宣告は、唐突に。

全く予期せぬところから襲ってくる。

身構えている時に、死神が来なくても、身構えていない時には、バリバリやってくるのだよ。

 

「ナ…ナンノコトデショウ…。」

「…ほら、そう言うとこよ。それに、朝の筋肉痛だって…今までだったら、あれぐらいじゃ根をあげなかった筈なのに。」

こいつ、随分と勘がいいな。

 

いっそ始末を…と死ぬほど物騒なことを閃いたあたりで、考える。

…こいつにだったら、今までの事の顛末を伝えてもいいんじゃないか、と。

 

——とはいえ、いくら信用できるとは言ってもなぁ…。

唐突に隣人が、実は僕、トレミアンタレスじゃないんです、とか言い出したら、どうなるか。

普通、正気を疑うだろう。

流石に、それはやめておいた方がいい。

 

「…えーと…トレーナーも決まったし、今までの自分を変えてみようかなって…ははっ。」

っべー、死ぬほど乾いてたぞ、今の笑い声。

…それにしても、こんな言い訳で通用するのか?

 

「…そう…だったら、いいんだけど…あんまり無理しないでね?別に、元々のアンタのままでも、私はいいと思うから…。」

あれ?このヒト、意外とチョロい?

もしかしたら俺、気づいちゃったやもしれぬ。

 

と言うことは置いておいて。

まあ、誤魔化せたのなら、それに越したことはない。

「…そういえば、アンタ、今週末って空いてる?」

 

…今週末?

どうしたんだろ、急に。

まあ、別に特に予定はないと思うが。

うんうんと、黙って頷く。

 

「…そう。だったら、そのまま空けておいてくれると、助かるわ。」

と、そうボソリと呟くヴァーゴ。

一体、どういう用件かはわからないが…まあ、ここは聞いておいた方がいいだろう。

 

帰ったら、予定表に書いとこっと。

と、思いつつ。

俺も、彼女に習って席を立つ。

「…それじゃ、行きましょ。」

 

そう言う彼女に従って、食器を片し、俺も午後からの授業に向かうことにした。

 

◇ ◇ ◇

 

「…こんにちは…トレーナーさん…。」

「…こんにちは、って随分と前回よりテンション低いわね。もしかして筋肉痛かしら?」

図星である。

 

「あ、図星って顔してる。…やっぱりね。」

「…やっぱりって何ですか、やっぱりって…。」

恨みをたっぷり含んだ声音で、そう呟いてみる。

 

「最初は、誰でもそんなもんってことよ。さ、今日も始めましょ!」

先程とは一転、明るい声を出すトレーナー。

仕方なく俺も「おー」と、やる気のかけらも感じられないような返事をする。

 

「ほらほら、もっと元気出して!早く適性も見つけちゃわないといけないんだから!」

 

…適性、か。

そういや、そんなのあったな、と。

脳裏にチラつく嫌な記憶の数々。

因子因子因子因子…。

 

嫌だ、忘れたい…。

 

「…なんでそんなに嫌そうなの?」

「…いえ、因子が…。」

 

「いんし…?よくわからないけれど…。とにかく、一本走りましょうか!」

あ、そうなるんすね。

 

「…わかりました。」

 

仕方なく、そうぼやくと、俺もスタート位置につく。

 

——さて、今日も走るか。

 

「…それじゃ、位置について…よーい、スタート!」




中途半端な終わり方で申し訳ありません。
それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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