回復系聖女に憧れた子がバーン様みたいになっちゃった件について 作:リーグロード
プロローグ的な展開の為に、内容はちょっと薄いですが、楽しんでくれると幸いです。
勇者とその弟子を始末したと思いバドスが去っていって数分後のこと、灼熱の業火によって辺り一面焼け野原となった地面の下からモゾモゾと動く何かがいた。
モグラかと思いきや、地面の下から現れたのはなんとバドスの魔法によって焼死したかと思われたホルンだった。
「ぶはっ!! ぺっぺっぺ、口ん中にメッチャ土が入っちまったぜ。さて、頼むから生きててくれよリュウセイ!」
地面から抜け出して、口の中に入り込んだ土を吐き出し終わるとすぐさま辺りの土で手で掘り返していく。
「──―っいた! おい、大丈夫か? しっかりしろリュウセイ!!」
掘り返した地面の下から胸に穴が開いたリュウセイを発見する。
小さく息はしているようだが、このままでは衰弱して死んでしまうかもしれない。
「ちくしょう! なんか、なんかねぇか!?」
ホルンは腰にぶら下げてあるアイテム袋から今の状況に役立つ物は何かないかと手当たり次第に探す。
「あっ! これなら……」
アイテム袋から取り出したのは、かつて勇者ディールが火を司る精霊に出会いに行った際に遭遇した神鳥フェニックスの翼から手に入れた羽の1つ。
この世界で最高峰の回復アイテムであるフェニックスの羽。あらゆる傷を癒し、死者すら目を覚まさせるという逸話さえ残した伝説のアイテム。
それを何故ホルンが持っているのかというと、この島に来る途中でディールがいざという時の為にと手持ち最後のそのアイテムを託したのだ。
「頼む! これで治ってくれぇ! 神様……」
祈るようにフェニックスの羽をリュウセイの胸の傷に押し当てると、羽は自然と蒼く燃え上がった。
その炎はやがてリュウセイの傷口を焼いていき、ついには全身へと広がっていった。
だが、驚く事にその炎は熱くは無く、まるで幼い頃に陽の下の元で母親に抱きしめられているかのような、そんな優しい温もりを感じる。
「……っう、ここは……」
「っ! 目が覚めたかよリュウセイ!!」
蒼い炎が消えると、リュウセイが薄っすらと目を見開いて意識を取り戻す。
それを喜んだホルンがガバッ! と抱きしめて涙を流す。
「お、おい! どうしたんだよホルン!?」
「うるせぇ! どうしたもこうしたもあるかよ!! オメェあの魔王に変な光線で胸を撃ち抜かれて瀕死の状態だったんだぞ!」
そこまで言われて思い出した。自分たちは師匠である勇者ディールの敵討ちに失敗して殺されかけたということを。
「あれ? でも俺たちって確かあいつの炎に飲み込まれたはずじゃ?」
自身の体を確認してみるも、火傷らしい傷もなく胸を貫かれて出来た風穴も存在しなかった。
ホルンの方は多少火傷の跡が残ってはいるが、あの炎に飲み込まれたにしては傷痕が薄く、あれは夢だったのではないかと疑いたくなってしまう。
「バカ野郎! そりゃこの天才ホルン様のお陰よ! あの咄嗟の瞬間に身を守る為に2つの魔法の同時展開を見事やってのけたって訳さ!!」
そう、あの瞬間ホルンは魔王バドスの炎に飲み込まれる直前に2つの魔法を使用したのだ。1つは自身とリュウセイを守る為の土の鎧を形成するアースクリエイト、もう1つはその土の鎧を炎から守る為の氷の棺を作り出すアイスメイクである。
それぞれまったく別の属性魔法をあの一瞬の間に展開するなど、まさに神業と呼んで然るべき偉業であろう。
「って、それどころじゃねぇよ。お師匠さんは、お師匠さんを探さねぇと!」
自分語りに酔っていたホルンだったが、自身の敬愛する師匠である勇者ディールが魔王との戦いで重症を負っていたことを唐突に思い出して周囲を捜索する。
リュウセイも立ち上がって手分けしてディールの捜索を開始する。
「いた! こっちだよホルン!」
2人が手分けして探した結果、リュウセイが岩陰で倒れ込むディールを発見した。
そこに倒れていたディールは息も絶え絶えで、国中の女性が見惚れていたあの美しかった金髪も老人のような白髪へと変貌していた。
「うっ……、ああ、良かった。2人共生きていたんですね……」
「師匠! 良かった目を覚ました」
「ああ、けど安心はしてらんねぇ。早くその怪我を治さねぇと!!」
先ほどリュウセイを治す際に使ったフェニックスの羽は既に燃え尽きてしまって手持ちに無く、今のディールに効くような回復アイテムの類の物は一切残っていなかった。
「チクショウ! 俺のせいだ……、俺が無鉄砲にあいつに戦いを挑んだから……。ホルンの言う通りに隠れてやり過ごしてれば、師匠に俺を救ったあのアイテムを使うことが出来たのに……」
ボロボロと涙を垂れ流して後悔による自責の念に苛まれる。
そんなリュウセイの頬をディールは力ないその体で優しく触れて、流れる涙を拭う。
「君がそう気に病むことはない。今の俺は既に生命力を使い尽くして肉体も精神もボロボロの状態だ。この状態でフェニックスの羽を使ったとしても、傷が無い死体が出来上がるだけの事。今こうして君たちと話ができていること事態が奇跡のようなものだ」
今にも死にそうだというのに、ディールはニッコリと微笑んでリュウセイの頭を撫でる。
そして、懐から1つのメダルを取り出して、それをリュウセイの胸元にへと押し付ける。
「お師匠さん!? そ……それは……!!!」
「グスッ……、何これ?」
「これは俺の故郷であるロワール王国に代々受け継がれてきた初代勇者ローガンの証だ。世界に危機が迫った際はその時代の救世主にこのメダルを継承させる。だから、もう戦えない俺ではなく、これからの未来を背負って立つ、
リュウセイの胸に押し付けられた勇者を示すメダル。未だに見習いの身でこれを受け継ぐことになったリュウセイの心境は戸惑いと重圧であった。
未だ修業も終えておらず、先ほども勇者である師匠と戦い終えてハンデもあった魔王バドスに負けたばかりだ。
もし仮に魔王バドスにまともな傷1つでもつけることが出来ていたのならば、戸惑いはあれど重圧は感じていなかっただろう。
けれど、そんなリュウセイの心境を見透かしたディールは、ふらつく体で無理矢理立ち上がり、胸に押し付けたメダルをリュウセイに多少無無理矢理にでも握らせる。
「いいですか。確かに君はまだまだ未熟者だ。今のままで世界を救えなんて無茶は言わない。だけど、君は進まなければならない。今から進む道は険しい茨の道だろう。どれだけの困難と絶望が立ち塞がるかは分からない。けれど、君は1人じゃない。君と共に辛い修業を受けてきたホルンがいる。戦い続けていれば俺の仲間がきっと助けてくれる。世界を救わんとする君と志を同じくするまだ若い戦士ときっと出会える。そして、ホルン」
「は、はい!」
「君は少し自分に自信が無さすぎる。俺の修業を今日まで逃げ出さずにやってこれたんだ、もっと自信を持って困難に立ち向かいなさい。あっ! でも、褒められたり多少上手くいったからといって、調子に乗り過ぎて天狗になってはいけないよ」
「──―っばい゛!」
困ったような笑みを浮かべながら、ホルンへ師匠としての最後のアドバイスと忠告に、ホルンは濁流のような涙を流して唇を嚙みしめながら首を縦に振る。
「そして最後に……っぐ、ハァハァ……」
ディールが言葉を紡ぐたびに、はらはらと髪は抜け落ち、肌は枯れ木のように朽ちていく。
本当ならば今すぐに安静にさせなければならない。が、それでも、自分がもうすぐで死ぬと分かった上で未来に希望を託そうとするディールを誰が止められるだろうか。
リュウセイもホルンも勇者ディールとの永遠の別れを悟りながらも、託される意思を受け継ごうと涙をこらえながら話を聞き続ける。
「新生魔王軍はきっと俺の死を皮切りに世界各国に一斉攻撃を開始するだろう。だから君たちはまずここから北西に位置する俺の故郷であるロワール王国に行って勇者として認めてもらうんだ。そうすればきっとこれからの君たちにとって心強い後ろ盾になってくれるはずだ……」
もはや呼吸すらまともに出来ない状態だというのに、ディールは勇者として、そして2人の師匠として燃えカスのような体に鞭打って、膝をつくことなく立ち続けて最後に伝えたいことを話す。
「俺はもうじき死ぬだろう。けれど後悔や絶望はしていない。何故なら俺は君たち2人をまだ未熟ながらも育てることが出来た。これから先の冒険の旅できっと君たちは成長を繰り返して俺を超えるような人間になるだろう。だから、俺は今この瞬間も満足して死ねる。……後のことは……任せたぞ……」
「し、師匠?」
「そんな、お……お師匠さん!!!」
最後の最後にリュウセイとホルンの肩を抱き寄せると2人に未来を託し、ディールはこの世を去っていった。
2人の肩を抱き寄せて抱擁してきたディールから、生きている者の命の暖かさというものが完全に消えたことに気づいたリュウセイとホルンは『噓だろ……』と口にしながらも、変えようのない現実に盛大な涙と悲しみの悲鳴を押さえることが出来ずに爆発する。
「「うああぁぁぁぁっっっ!!!」」
獣のような泣き声で叫びながら、眠ったように息を引き取ったディールの強く抱きしめる。
やがて流す涙も涸れ果てた2人は死体となったディールを島で一番陽の当たる綺麗な景色の中央に埋めて墓を建てた。
「それじゃ師匠。俺勇者として精一杯頑張って世界を救ってみせるよ」
「俺も兄弟子としてしっかりリュウセイのやつを支えてやるからさ、お師匠さんも安心してこっから見守ってくれよな」
目を閉じて黙禱を済ますと、2人は恩師の墓を背にロワール王国へ向けて旅を始める。
次回からは前編、中編、後編ぐらいに物語を短縮して書くんで、読みづらいや分かりづらいになったら連載にすることを期待してください。
2話以降の続編を
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続けて
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しない
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さっさと主人公を出せ!