Fate/Grand Order『楽園常夏領域 アヴァロン・アエスタス -真夏の夢と南の島の一等星-』   作:ひゅーzu

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 序盤ということで、2節目は予定よりも早めの更新に致しました。
 前回の前書きでお話した通り、この物語はFGO 第2部 第6章 「妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ」のネタバレを含みます。予めご容赦ください。
 長文ですので、お時間が許すかぎりお読みいただけると幸いです。
 
 


第二節『2032ナンバーズ・からっと』

 

 

 

 

第二節『2032ナンバーズ・からっと』/

 

 

 

 「良い風が吹いてる。この "タイニー・ノーチラス号" の処女航海を歓迎してくれているようだよ!」

 

 澄んだ大海を一隻の船が横断していく。その軌道は、まるで蒼いキャンパスに白いチョークを引いていくようだった。

 

 

 ───昨日の件から一夜明け、日の出とともに航海に出た。

 島同士はそれほど遠く離れているわけではなく、緩やかな舵を切ってタイニー・ノーチラス号は進んでいく。…ちなみに、タイニー・ノーチラス号という名前は、ネモ船長が名付けたもので、よほどこの船に愛着が湧いているらしい。

 

 

 「気持ちのいい風です!海を渡るというのは、こんなにも心地が良いのですね!」

 

 海風を浴びながらガレスが目を輝かせる。

 その瞳は、太陽の光を反射させる煌びやかな海を写していた。

 

 

 「ガレスちゃんも、海を渡るのははじめてなの?」

 

 被った麦わら帽子が風に飛ばされないよう、手で押さえながらティターニアが訊ねる。

 

 

 「はい!生前の頃は、海にはあまり良い印象はありませんでした。私たちにとって海とは、侵略者が来訪してくる場所以外の何物でもありませんでしたから。渡ったことは一度もなかったんです」

 

 そう言ってガレスは、昔を懐かしむようにどこか儚げな表情を浮かべた。

 

 「ですが!海そのものに罪はありません!こんなにも綺麗な景色なのですから、しっかりと目に焼き付けておかないと大損です!海、サイコー!!」

 

 

 「そうだね。それは確かにその通りだ」

 

 無邪気に微笑むガレスに、自然とこちらも口がほころんだ。

 

 

 

 「あっ!だいぶ近づいてきましたよ!最初に上陸する島はあそこですか?」

 

 「ああ。上陸する前に、アイランド・クイーンについて僕が調べたことを話しておこうか」

 

 そう言って、ネモ船長は昨日までに調べた情報を話しはじめた。

 

 

 「それぞれの島を仕切っているアイランド・クイーンは、島の霊脈を支配しているからか、強力な魔力を有している。ロンディニウムで集めた情報によれば、彼女たちは独自の "常夏 領域(とこなつ りょういき)" を展開しているそうだ」

 

 「常夏領域───────?」

 

 なんなんだ、それは。

 

 「……うん。僕も最初に聞いた時は同じ反応をしたよ。簡単に説明すると、一種の固有結界のようなものさ。それぞれの島には、アイランド・クイーンが敷いた常夏領域によって、通常とは異なる常識(・・)が適応されている。領域内に入れば、無条件でその常識を強制させられることになる。極めて厄介な性質だけど、殺傷力のあるものじゃない」

 

 「何のためにアイランド・クイーンたちはそんなものを?」

 

 「当然、自分たちが夏を楽しむためさ。アイランド・クイーンたちは、各々が抱く最高の夏(・・・・)を体験するためにその力を振るっているらしい。まぁ自らの地位を脅かされないように、国の王が法を敷くのと同じような原理さ」

 

 「地位を守るために敷く法にしては、随分と独裁的かつ奔放ですね」

 

 ティターニアの意見には激しく同意だが、どうやらアイランド・クイーンを負かすのは一筋縄ではいかなさそうだ。

 

 「これから向かっている最初の島は、どんな常夏領域を?」

 

 「さあ。そこまではわからなかった。着いてからのお楽しみってヤツだね。………さて。着いたよ」

 

 そう言って、ネモ船長は海岸の桟橋にタイニー・ノーチラス号の(いかり)を下ろした。

 

 

 「ここが絶叫(・・)の島、"グロスター" だ。」

 

 

 

 

***

 

 

 「すっっっごーーい!!!」

 

 

 そこはまるで愉快なサーカス会場だった。

 海岸を抜けてたどり着いた島の中心地には、あちこちを機械仕掛けの乗り物が走り抜けていき、楽しげな音楽が島全域に響き渡っていた。

 

 「ここって、テーマパーク……?」

 

 二十一世紀の日本における夏の風物詩(ふうぶつし)のひとつ。いわゆる "遊園地" と呼ばれる施設がそこには広がっていたのである。

 

 「これは、驚いたな……」

 

 困惑していたのはネモ船長だけでなく、この場に着いた全員が言葉を失いかけていた。

 

 

 「お客様、4名様でございましょうか?ようこそ絶叫の島・グロスターへ!入場チケットのご提示をお願いします」

 

 テーマパークのスタッフと思われる男性から声がかけられる。

 

 

 「いや、チケットはもっていなくて…」

 

 「おや。そうでしたか。でしたらご入場いただくことはできないのですが………おっと、しばしお待ちを。オーナーから連絡が入りましたので、確認をしてみましょう」

 

 そういって、彼は無線機ごしにオーナーらしき人物と連絡を取り始めた。

 

 

 

 「オーナーって、もしかしてアイランド・クイーンのことなのでしょうか?」

 

 「その可能性はあるかも…連絡を取らせて大丈夫かな?」

 

 スタッフに聞こえないよう、顔を寄せ合いコソコソ話で相談をする。

 

 

 「ざっと見渡したところ、このテーマパークは島全域に広がっていそうだ。アイランド・クイーン本人がオーナーではなかったとしても、間違いなく関係者だろうね」

 

 「ですが、これほどのテーマパークを自らの管理地につくるということは、悪い人ではないのでは…」

 

 「さあ、どうだろう。とりあえず今は様子見しよう」

 

 ひとまず意見がまとまり、4人でスタッフの方へと向き直る。

 

 

 

 「確認が取れました。オーナーの計らいにより、ご入場していただいて構わないそうです」

 

 「え?いいんですか?」

 

 「ええ。オーナーからの指示ですので。私めが口を挟むことはできません。オーナーは、"楽しもうとしているお客様は誰であろうと歓迎する" と。………それでは。どうぞお楽しみください!Welcome(ウェルカム) to(トゥ) Bloom(ブルーム) Beauty(ビューティ) Land(ランド)!!」

 

 

 入場ゲートが開き、中へと入っていく。

 そこかしこでジェットコースターに乗ったお客さんたちの阿鼻叫喚(あびきょうかん)の絶叫が響き渡っていた。

 

 

 「知識では知っていたけど、これはまた凄いな…」

 

 心無しか目を輝かせているように見えるネモ船長。

 

 

 「私、遊園地に来たのははじめてです…」

 

 ボソッと呟くガレス。それもそのはず。遊園地の発祥の地には諸説あるが、少なくともこの手のテーマパークが登場したのは十六世紀から十七世紀頃とされている。日本にやってきたのも十九世紀頃とかなり近代の施設なのだ。

 

 人類史における英雄や偉人のサーヴァントである彼女たちが、遊園地を経験したことがないのは、なんら不思議なことではない。

 

 

 「脳震式メリーゴーランド=アウレラ・ホース…、マントル直下型コースター=サクラ・ドロップ…、即死サバイバル系ツアー=ポトニア・クルーズ……」

 

 入場ゲートの近くにあった園内マップを確認すると、恐ろしいほどに物騒な名前をしたアトラクションの数々が並んでいた。非常に命の危険を感じるとともに、乗らなければ帰さないという圧を感じる。

 

 

 「せっかくだし、何かひとつ乗ってみようか……」

 

 

 

***

 

 

 ───時間はあっという間に過ぎ去っていった。

 最初は全員 警戒心を解くことなく園内を散策していたが、ツアー型のクルーズ船に乗って進んでいくアトラクションに乗ってからというもの、全員のテンションが高まったのだ。

 特に船ということもあってネモ船長の目の輝かせようは群を抜いており、無垢な少年の心持ちになっていたことだろう。気付かぬうちに我々は普通のテーマパークのように夏を満喫していたのである。

 

 

 「こちらのお乗り物はお二人ずつでのご乗車となります。」

 

 惑星間飛行=Crush(クラッシュ) Comet(コメット) Coaster(コースター)

 次に乗ろうとしたのはこのテーマパークで最も人気とされるジェットコースターだった。なんでも宇宙旅行をしている気分になるのだとか。

 

 

 「マスターとティターニアさん、お先にお乗りになられますか?」

 

 

 「いや、俺たちはこの次で大丈夫だよ。ネモ船長とガレス、先に二人で乗って出口で待っててもらえるかな」

 

 

 ガシャンと身体を支えるレバーがネモ船長とガレスの二人に下りる。

 

 

 「わかった。一足先にこの前人未到の乗り物のレビューをしよう。なに、ここまでたくさんのコースターを乗りこなしてきたんだ。これでもライダークラスのサーヴァント、このじゃじゃ馬も難無くものにしてみせると、もおおおおおおおおおおおああああ

ああああ"あ"あ"あ"あ"───!!!!」

 

 

 音と風を切って出発するコースターとともにネモ船長の悲鳴が響き渡った。うん。楽しそうで大変結構です。

 

 

 「ネモくん。ああしていると、歳相応の子どものようですね。なんだか不思議な気持ちです」

 

 隣に残ったティターニアが、柔らかく微笑んだ。

 

 「ティターニアも、こういったテーマパークははじめて来たんだよね?」

 

 「はい。近代の人類史にはちょっと疎くて、驚かされるばかりですよ」

 

 「やっぱりね。時々なにをしていいのか困惑している様子だったから、そうなんじゃないかなって思ってたよ。…もしかして。ネモ船長たち以上に現代には疎いんじゃないかって」

 

 

 「え?もしかして、気づかれてましたか…」

 

 

 「まあ、落下式のコースターで思わず衝撃保護をかけたり、メリーゴーランドの馬に話しかけたりしてたら、さすがに気づくかな」

 

 

 「……む。今さりげなく馬鹿にされましたか」

 

 むうっと、頬を膨らませて抗議の眼差しを向けるティターニア。

 

 

 「してないよ。衝撃保護の魔術とか、咄嗟にかけたにしては本当に便利な魔術だと思うし。……他にも何か使えるの?」

 

 「えっと、さっきのは障壁の魔術の応用です。他には……鍵を開けたり擬態をしたり爆薬を用意したり、不意打ちの魔術なんかもありますよ!」

 

 なんだろう。まるでアサシンクラスのような魔術だ。

 

 

 「そうなんだ。俺なんか、ダ・ヴィンチちゃん達が用意してくれた礼装がないと、まともに魔術が使えないからさ。…尊敬するよ」

 

 ───自分の無力さを噛み締める。

 自分よりも優れた人が、世界を救うに足るだけの人が、本当はたくさんいた。覆らないことを嘆いていても仕方がないとはわかっているが、それが紛れもない事実だった。

 けれど。だからこそこんな自分にできることは精一杯 努力していきたいと思う。懸命に。足掻くことを忘れたくない。そう強く抱いている。

 

 

 「───いいえ。魔術なんて使えなくても、他人(ヒト)より優れていなくても。藤丸くんは立派な人ですよ。あなたは何度 膝を折っても、何度だって立ち上がれる。そういう人です。わたしが保証します。」

 

 

 「え……?」

 

 

 「……あっ、わたしなんかに保証されても、あんまり根拠ないかあ」

 

 そう言って、あはは、と笑うティターニア。

 その横顔が、今はとても眩しかった。

 

 「そんなことないよ。ありがとう」

 

 

 そういえば、彼女はいつの時代の英霊なのだろう。自分でいうのも何だが、カルデアに所属してからというもの、人類史の英雄や偉人については色々と勉強してきているつもりなのだが、どうにも "ティターニア" という名前には心当たりがない。/ …意識されない。

 

 

 「あ!次のが来ましたよ。向こうでガレスちゃん達が待っているでしょうから、早く乗りましょう!」

 

 そう言って、コースターの座席へと乗り込んでいくティターニア。とりあえず今は難しいことは置いておいて、このままこのテーマパークを散策しよう。

 

 

 

***

 

 

 そうして日が暮れる。

 結局どこにも怪しい場所を見つけることはできなかった。

 

 

 「なんというか、普通のテーマパークだったね…」

 

 

 「夜は何が起こるかわからない。今日は一旦 切り上げるのもありだと思うよ」

 

 ネモ船長の提案に思案していると、園内スタッフに背後から声をかけられた。

 

 「お客様、一通りコースターはお巡りになられましたでしょうか」

 

 「ん?…ええ。まあ、はい。コースター系の乗り物は全部乗ったと思いますけど…」

 

 「でしたら。さらなる絶叫のアトラクションがございますよ!ご案内致します。どうぞこちらへ!」

 

 

 スタッフに促されるまま案内される。今は様子を見た方がよさそうだ。もしかしたら、このテーマパークは夜に何か仕掛けがあるのかもしれない。

 

 

 「これ、は…………」

 

 

 案内された施設の前にたどり着く。そこにあったのは───

 

 

 「こちらが恐怖体験型ホラー迷宮 "月見原(つくみはら)病棟" です!」

 

 そう。遊園地の鉄板、ありとあらゆる趣向を凝らして迷い込んだ人々に恐怖体験を強制させる究極(・・)の絶叫施設。"お化け屋敷" がそこに立っていたのである。

 

 

 「ちょっと待った、ここは………」

 

 

 その場にいた全員が目を見合わせ冷や汗をかく。

 それもそうだ。なにせ、自分たちはこの施設の存在に気がついていた(・・・・・・・)。気がついていたにも関わらず、あえて誰もその存在を口にせず、あまつさえ探索することなく今日の調査を切り上げようとしていたのだ。

 

 

 「どうされましたお客様、なにか不都合でも?」

 

 「ああ、いや、えっと……」

 

 このテーマパークは常にお客さんたちの絶叫が響き渡っていた。しかし、この施設から聴こえてくる絶叫は他の比ではなかった。

 

 自分はホラーに対してある程度 耐性がある方だと思っていたが、何故かこの施設に関しては足が竦んで一歩も前へと踏み出すことができない。それはネモ船長やガレス、ティターニアでさえも例外ではなかった。

 

 

 「おっと、先頭のお客様がリタイアなさったようです。間もなく皆様の番になりますので、どうぞお楽しみください」

 

 そう言って、震えるこちらの手へと懐中電灯を握らせてスタッフは退室していった。

 

 

 「……どうする、立香。今ならまだ帰れると思うよ…」

 

 こんなにも怯えきったネモ船長を見ることは滅多にない。しかし今の自分にはその気持ちが痛いほど理解できた。

 

 「そ、そう臆することはありませんよ……、結局は人工のホラー施設ですよ。本当の幽霊が出るわけないじゃないですか…」

 

 「ガレスちゃん、足、すごい震えてるよ……」

 

 

 『───間もなく。扉が開きます。どうぞお進みくだ■■■、■■』

 

 

 不可解な機械音とともにアナウンスが途切れる。

 どうやらもう、自分たちに逃げ場はないようだった。

 

 

 

***

 

 

 「ここ、病棟ですよね……どうしてこんなにも広いんでしょうか………」

 

 

 お化け屋敷に潜入してから、体感40分。

 何かに直接襲われるようなことはまだなく、ひたすら "何かが出てきそうな感覚" だけに包まれたまま、赤いランプの灯った廊下を進んでいく。

 

 

 「いくつも壁を設けて道を複雑化しているんだ……外の広さと中の広さに違いを感じるのは、そも狭いエリアを広く見せかけて区分しているからで、僕らの足が遅いわけでは決してないぞ…」

 

 そう言いつつ自分の腰あたりを掴んで、斜め一歩後ろを歩むネモ船長。完全に盾にされているぞこれは。

 

 

 「あの。ここ病棟ですよね……」

 

 今度はガレスが訊ねていた。

 

 「その質問はさっき答えたよ……うん。広い病棟だってある。いや、もうこれは、結界による空間湾曲(わんきょく)で無理やり広げてる説もあるぞ!」

 

 ちょっと投げやり気味に暴論を唱えるネモくん。

 

 

 「……どうして、病棟に鎧武者(・・・)がいるのでしょうか」

 

 

 「…………………は?」

 

 

 ───すると。

 数刻前まで歩いていた廊下の後方に。

 

 

 病棟の赤いランプとは異なった。(全身を甲冑に包み)

 

 二つの鋭く赤い眼光が(鋭利な抜き身の刀をもって)

 

 こちらを見据えていた(狙いを定めていた)

 

 

 

 

 『■■■、■■■■■───■■──、』

 

 

 

 「……………で、」

 

 「「でたああああああ"あ"あ"あ"───!!!!」」

 

 

 誰からともなく一目散に走り出す。

 しかし、鎧武者も同じくこちらへ目がけて走り出していた。

 

 

 「ちょ、速ッ──────!」

 

 瞬きの間に背後まで詰め寄られ、刀がひと薙ぎ振り下ろされる。

 

 「危ない、マスター!!」

 

 咄嗟に飛び込んだガレスに押され、間一髪で斬撃を回避する。

 そのこめかみの先には、真っ二つに切られた病室のベッドが無惨に転がり落ちていた。

 

 

 「本気でやりに来てるぞ、これ────!」

 

 

 鎧武者と自分の間に、ガレスとティターニアが割って入る。全員 既に戦闘態勢にはいっていた。

 ガレスは自らの身体よりも大きな大剣を、対してティターニアは小さな細身の短剣を構えていた。ガレスに関しては、夏の霊基へ調整するに際して、セイバーへとクラスチェンジしているようだった。

 

 

 「二人とも、気をつけて───!」

 

 

 「はい、ご安心くださいマスター!このガレスにお任せを、」

 

 『■───、■■■───』

 

 間髪入れずに刀を振り下ろす鎧武者。

 一撃、二撃、三撃。その間わずか二秒。鎧の重さを感じさせぬ動きで、その全てがガレスの急所を狙っていく。相手は並の武芸者(ぶげいしゃ)ではないとひと目で理解できた。

 

 しかし、持ち前の直感でその全てをガレスは防ぎ切る。

 

 「くっ──────!」

 

 

 それでも。明らかにガレスは劣勢だった。

 というのも、本来のガレスであれば剣戟で押し負けることはほとんどないほどの実力者である。しかし今のガレスは、傍から見ても本調子ではない(・・・・・・・)ことがわかった。

 

 

 「どういうことだ───?」

 

 

 疑問とともに握りしめた自身の拳を見て、目を疑った。

 そこには尋常ではないほどの手汗と震えが詰まっていたのだ。

 震えは手だけでなく、見下ろした両足も同じく。こうして立っているのがやっとの状態だった。

 

 今までいくつもの戦場をくぐり抜けて来たが、慣れた試しは一度もない。けれど、ここまで戦いに支障を及ぼす恐怖心は明らかに異常だった。

 

 

 「くそっ──────!」

 

 正面へ向き直ると、同じく恐怖心でティターニアも動けずに硬直しているのが伝わった。そしてそれは、今こうして鎧武者と刃を交えているガレスも例外ではなく───

 

 

 「ガレス───!一旦 退こう!今は戦っちゃダメだ…!」

 

 口ではそう言っても、今の自分たちには逃げ出すための胆力すら残ってはいなかった。つまり。このアトラクションに潜入した時点で、自分たちはどうしようもなく詰んでいたのである。

 

 

 「………そういうことか。」

 

 

 膝をついていたネモ船長が起き上がる。その顔は、この場の恐怖心で蒼白に歪みかけていた。

 

 「きっと、これがこの島の"常夏領域"だ。僕たちは冷静な戦闘を行えないほどに、恐怖心を増幅(・・・・・・)させられている───!」

 

 

 ──────恐怖心の増幅。テーマパークのアトラクションによって気分が高鳴ることで、好奇心の影でなりを潜めていたこの島の本当の性質。遊園地のあちこちにあった過剰な数のジェットコースターは、この性質を隠蔽(いんぺい)するためのブラフであり、こちらの警戒を損なわせるためのトラップだったのだ。

 

 

 「それこそが、この絶叫(・・)の島、グロスターの正体だ───!」

 

 

 「うあああああああ"あ"───!!」

 

 死の恐怖から錯乱したガレスが、防御を踏ん張れずに後方へと吹き飛ばされる。そのまま鎧武者は、身動きが取れずに立ち尽くすティターニアへと標的を変え、刃を構えなおす。

 

 

 「まずい───!ティターニア───!!」

 

 

 「ひっ──────!」

 

 

 ティターニアの頭上から鎧武者の刀が振り下ろされる。恐怖に支配されたティターニアは咄嗟に後方へと倒れ込もうとする。その瞬間、ティターニアの手からは、赤い液体の入った "瓶" が手放された。

 

 

 『■■■──────!!?』

 

 

 驚きは誰のものだったか、鎧武者によって振り下ろされた刀はティターニアには届かず、代わりに投げ放たれた瓶を一閃する。

 

 ──────そうして。

 巨大な轟音(ごうおん)とともに "爆薬" が爆発した。

 

 

 「ティターニア───!」

 

 震える足を強く殴りつけてその痙攣(けいれん)を止め、爆風で吹き飛ばされたティターニアを身をていしてキャッチする。

 その一方で、爆発をもろに受けた鎧武者は爆風とともに遠くへと吹き飛ばされ、病棟の壁に激突していた。

 

 

 

 

 ───しばしの静寂。爆発によって病棟内は半壊状態になり、瓦礫(がれき)の落ちる音だけが響いていた。

 

 

 「大丈夫か、ティターニア───!」

 

 意識があるか確認すべくティターニアの体を揺さぶる。

 

 

 「……はい。わたしは問題ありません。衝撃保護の障壁(・・・・・・・)の魔術、咄嗟に使うにしてはやっぱり便利ですね…、藤丸くんの言った通りでした」

 

 

 鎧武者に襲われる瞬間、ティターニアは恐怖心が逆手に功を奏して、障壁の魔術を展開していた。爆薬自体は戦闘態勢になった際に用意したもので、あのタイミングで意図的に放ったわけではないようだった。

 

 

 「……無事でよかった」

 

 しかしまだ安心はできない。とんでもない火力の爆薬ではあったが、あの鎧武者に致命傷を与えられたかどうかはまだ確認できていない。

 

 

 「ティターニア、立香!怪我はないかい!?」

 

 ネモ船長が駆け寄ってくる。その肩にはガレスを担いでいた。

 

 「大丈夫です!船長とガレスもご無事ですか───!?」

 

 「爆発そのものは食らってはいない。ガレスも無事だよ」

 

 「えへへ。ごめんなさいマスター、私またお役に立てず…」

 

 ネモ船長に支えられたまま、申し訳なさそうにガレスが頭を下げる。

 

 「謝らなくて大丈夫だよ。ひとまず全員 無事だったんだ、今は体勢を立て直すために、ここから逃げよう」

 

 ティターニアを抱えて、半壊した病棟の穴から外へ出ようとしたその時───

 

 

 「───ったく、出鱈目(でたらめ)な魔術もあったもんだ。こりゃあ折角の設備も台無しだな」

 

 

 「──────!」

 

 爆発で生まれた煙の向こう側から、先ほど吹き飛ばされた鎧武者とみられる人物がこちらに向かって歩いてきていた。

 

 

 「キミは────!」

 

 全身に身にまとっていた鎧は半壊し、鎧は袈裟(けさ)のような格好になっていた。そこから晒した赤茶色の髪をした人物に、自分たちは見覚えがある。

 

 

 「───よう。恐怖と絶叫が蔓延(はびこ)娯楽場(ごらくじょう)。気ままな "邪神様の庭園"、楽しんでるかい?」

 

 

 伊勢国 桑名(くわな)の刀工。村正一派の創始者にして、原点。セイバークラスのサーヴァント、"千子(せんじ)村正(むらまさ)" がそこには立っていた。

 

 

 

***

 

 

 「千子村正───、」

 

 自らが契約しているはずのサーヴァントの一人、村正は先ほどの爆発で背中を痛めたのか、トンと自らの拳で背中を叩いている。しかしそこには、先ほどまでの殺気の篭った気配は感じられなかった。

 

 

 「キミまでここに召喚されていたとはね、驚きだ。…まさかとは思うけど、キミがアイランド・クイーン、なんてことはないよね?」

 

 一応の確認のために、ネモ船長はそう訊ねた。

 

 

 「ああ?どこをどう見たら、(オレ)が女王様に見えるよ?生憎(あいにく)と儂ぁただの雇われもんだよ」

 

 ため息とともに頭を搔く村正。

 つまり彼は、アイランド・クイーンに雇われてここにいるのだろうか。

 

 

 「そこから先は、僭越ながら私が直接お話しましょうか。マ・ス・ター・さん?♡」

 

 

 村正の後方から、さらに別の人物が姿を現す。

 

 

 「君は───、BB───!」

 

 

 「はーい!呼ばれて飛び出てBBちゃん!渚のモードで、今年の夏も参戦です♡」

 

 

 おそらく。というか間違いなく。この絶叫の島 グロスターを支配するアイランド・クイーン、電子の海よりやってきたという、自分たちとは少し未来の世界の上級AI、月の癌(ムーンキャンサー)───BBがそこにはいた。

 

 

 「君がアイランド・クイーンで間違いないなさそうだね、BB」

 

 「ええ。そうですよ。わたしこそがこのグロスターのアイランド・クイーンであり、夢の楽園 Bloom(ブルーム) Beauty(ビューティ) Land(ランド)───略して "BBランド" のオーナーです!」

 

 まあ。薄々勘づいてはいたけど。というか全く隠す気を感じない施設名ばかりであった。

 

 

 「おやおや?思っていたよりもリアクションが薄いですね。もしかして、薄々お気づきになられてましたか、マスターさん?」

 

 「まあ、それとなく。……それで。今年はどんなイタズラでみんなを困らせようって魂胆(こんたん)なんだ?」

 

 「毎年毎年イタズラしているような言い回しはやめてくださ〜〜いッ!!……コホン。ま、今回のわたしの立ち位置はスポンサー(・・・・・)。目立ってなにか大きな企みをするつもりはありません。Supported(サポーテッド) By(バイ) BBちゃん、です」

 

 「大きな企みをしてねえヤツがこんな娯楽場つくるかよ…」

 

 村正のごもっともなツッコミがはいる。

 

 「…そこ。立場を(わきま)えなさい。今回はコストを削減して、緑茶(ミドチャ)さんは泣く泣く解雇。予め召喚予定だった貴方をパクって小間使いにしているんですから、上下関係をお忘れなく。えいっ♡」

 

 「いでででででででッ───!!」

 

 BBの可愛げな指ふりとともに、恐ろしいほどの電流が村正の体を駆け巡った。よく見ると村正の首元には、黒いチョーカーのような枷が巻き付けられていた。どうやら、無理やり働かされているようだ。

 

 「それじゃあ。君の目的は一体なんなんだ、BB」

 

 「ふふっ。それはもちろん。皆さんに夏を満喫(・・・・)していただきたいんですよ。聴いたでしょう?テーマパーク内に響き渡るゲストさん達の阿鼻叫喚の雨嵐(あめあらし)。夏といえば、絶叫。それはジェットコースターであれお化け屋敷であれ例外ではありません。身も心も震わす恐怖心こそが、夏を満喫する上で最も重要なファクターなのです!」

 

 "怖いもの見たさ" という言葉がある。人は時として自らの身の安全よりも、好奇心が勝ることがあるのだ。"夏" という季節は、それが最も高まる季節だと、BBは語った。

 

 

 「わたしはゲストさん達が放つ"Scream(スクリーム) Gage(ゲージ)" 略して "SG" を集めて、この島に永久(とこしえ)の夏の楽園を築きたいのです!わたしが恐怖心を増幅させる常夏領域を展開しているのもそのためです。ですので、ご遠慮なく。どうか喉が枯れ果てるまで絶叫してください、マスターさん♡」

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

  

 

 

 

 

 バチン。という音とともに唐突に辺りが暗転する。

 見渡すと辺りには先ほどまでいたはずのティターニアやガレスたちの姿はなく、あまつさえBBや村正の姿も消えていた。

 

 その中で。なにかおぞましいモノが。

 何か得体の知れないモノが。

 

 こちらへ向かって這い寄ってくる(・・・・・・・)

 

 恐怖が際限なく全身を駆け巡っていく。

 

 なんなんだ。あれは。

 

 わからない。わからないことが怖い。

 

 わかりたくない。わかることが怖い。

 

 じゃあ。

 思考を放棄して。

 心を捨てて。

 

 一心不乱に逃げ出せばいい。

 

 「はァ──────、はァ──」

 

 体が動かない。逃げなければならないのに。

 

 足が一歩も言うことを聞かない。

 

 いや待て。

 

 そもそも。

 

 逃げるってどこへ?

 

 

 もうここに。逃げ場なんて何処にもないのに。

 

 

 

 「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"───!!!」

 

 

 

 

 

 

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 「ちょっと待った。」

 

 制止の声で現実に引き戻される。一体 自分は今までなにを見ていたのだろうか。

 

 

 「良いところだったのに。どうして邪魔をするんですか、村正さん」

 

 制止の声は村正のものだった。

 

 「そりゃあ止めるだろうよ。優先順位ってのがあるだろ。お前さんの目的は、このテーマパークを使って "恐怖と絶叫の楽園を築く" こと。…だっていうのに、一番の花形施設が倒壊した状態じゃあ、話にならねぇ。遊園地ってのは、事故が一番の天敵なんだろ?…なら。客の少ない夜のうちに隠しておかねえと、立つ瀬がないってもんだ」

 

 「むむ、このわたしに正論パンチとか、生意気(ナマイキ)ですよ村正さん。そもそも、ここが壊れたのって半分は貴方のせいじゃないですかっ!……けどまあ、確かにそれは一理あります。来客が見込めなくなったテーマパークは死んでいるも同然ですから」

 

 

 「"病棟とはその全てが保健室(・・・)のようなもの。その場所での本格的な戦闘行為はタブーです" なんて言ってた割に、いざアイツらが入ってきたら "容赦するな" なんて言ったのはお前さんなんだ。ここは二人揃って連帯責任ってことで、後始末が先だろ?───ああ。ところで。連中はとっくのとうに逃げ(おお)せた訳だが、こっちも連帯責任かい?」

 

 「ちょ、え───────!? む・ら・ま・さ・さん〜〜ッ!!」

 

 

 

 ───遠くでBBの怒号が聞こえた。

 村正には感謝をしなければならない。

 

 

 ネモ船長の提案で、しばらくはテーマパークの外にある民宿に避難し、身を潜め体勢を立て直すことにしたのだ。

 

 

 

 「──────まあ。別にどこへ逃げようとも構いません。どちらにせよ、この島にいる限りは私の(てのひら)の上も同じです。たっぷりと。死ぬほど夏を満喫してもらいますから。覚悟してくださいね、マスターさん?♡」

 

 

 

 

***

 

 

 ───BBたちとの邂逅からおよそ二時間。

 それぞれが体調を取り戻し、打倒BBの作戦会議のために自分の部屋に集まっていた。

  

 「まず目下の課題は、向こうが敷いている "恐怖心を増幅" させる常夏領域だ」

 

 そう言って、部屋に置いてあった紙とペンを使い、紙の中央に大きな円を描くネモ船長。

 

 

 「この島全域に広がっているのなら、領域外からの奇襲は難しいですね…」

 

 「ああ。ただでさえ、テーマパークの外のこの宿にいる僕らでさえ、まだ心拍数の上昇を完全には押さえつけられていない。部屋の戸締りを厳重にしてしまうほどにね」

 

 ガラス張りの窓はしっかりとカーテンを閉め、扉は鍵をかけた上で部屋にあった椅子を動かして塞いでいた。

 

 「戦闘に支障をきたすほどの恐怖心。これを克服する手段はあるのでしょうか…」

 

 ティターニアが自信なさげに呟く。

 

 

 「対抗手段なら、一つだけ思いついている。他ならぬキミが教えてくれたアイデアだよ、ティターニア」

 

 「打倒する方法があるんですか、ネモ船長」

 

 「ああ。恐怖心とは、僕ら生命を与えられた者たちに備わった生存本能だ。これを放棄することはできない。…けれど。"好奇心は猫をも殺す" というだろう?これを逆手にとるんだ」

 

 ネモ船長は何かイタズラを思いついた少年のような眼差しで、ニヤリと口角を釣り上げた。

 

 「───?一体どういうことなんです?」

 

 「三人とも、僕に耳を寄せて」

 

 

 

 ─── そうして作戦がまとまる。ネモ船長の案は確かにこの状態のまま、BBを打倒しうる可能性を秘めていた。

 

 

 「確かに、それなら成功するかも…」

 

 「ですが、BBのもとへはどうやって向かうのですか?」

 

 ティターニアの指摘通り、この作戦を成功させるにはBBの居場所を突き止めることが絶対条件だった。一体どこに身を隠しているのだろうか。

 

 「僕らが病棟のアトラクションに潜入するのを、きっとBBは裏でずっと待っていた。つまり、彼女のオーナー室はそこの近くに作られているんじゃないかな」

 

 「じゃあBBの居場所を突き止めたとして、潜入はどうやって?」

 

 オーナー室はテーマパークで最も厳重な場所といっても過言ではない。そんな場所へ忍び込むことができるとは到底思えなかった。

 

 「そこは。キミに頼るよ、」

 

 そう言って、ネモ船長はティターニアの顔を見据えた。

 

 

 「───────── え? わたしっ!?」

 

 

 

***

 

 

 ───視点はこの島の女王へと移る。

 BBはオーナー室のリクライニングチェアの背もたれに寄りかかり、テーマパーク全域に設置された監視カメラをモニターでチェックしていた。

 

 「うーん、中々現れませんね、マスターさん達」

 

 モニター内に映し出されているゲストの絶叫をBGMに、BBは昨夜 邂逅したカルデアのマスターたちを探していた。

 既に日は落ち、時刻は夜の10時を過ぎたところだった。

 

 

 『連中、()が悪いと判断して前の島に撤退したんじゃねえのか?』

 

 「いいえ。島から出たという情報は入ってきていません。このわたしの管理地なのですから、それくらいの判断はつきます。……ていうか、そっちからの無線連絡を許可した覚えはないですよ、村正さん」

 

 と言いつつも、しっかりと連絡を返してしまう自分のお人好しさ加減に、BBは我ながら頭を痛めた。

 

 

 『わりぃわりぃ、今朝から休みなくモニターチェックに勤しんでいるようだったからな。ちぃとばかり休んだらどうだっていう、(ジジイ)の余計な節介(せっかい)だと思って、受け流してくんな』

 

 「ふん、そういうところですよ村正さんッ!…カレンさんから借りパクした時 "その男はこの中で一番扱いづらいですよ" って言ってた意味がわかってきました。あーあ、直感を信じて選ぶんじゃなかった」

  

 『おいおい、こちとら選択の余地すらなくたらい回しにされた側だぞ?女神様ってのは、こう、どいつもこいつも暴虐無人(ぼうぎゃくむじん)なのかよ』

 

 「当たり前です。基本的に人間に肩入れする女神は少ないので。……けどまあ、そのお心遣いは感謝します。気分転換にシャワー室でひと浴びしてきますので、貴方は引き続き、そこの施設でゲストさん達を驚かせ続けてください」

 

 村正との無線を切る。やはり昨夜のホラー演出が凝りすぎたのだろうか、もし本気でマスターたちが恐れ(おのの)き、特異点調査を放棄していたら、それはそれでこちらも困る。

 

 「ま。もう契約した分の仕事は果たしましたし、私には関係ないか」

 

 

 

 シャワー室に入り扉を閉め鍵をかける。

 

 

 

 鏡の前で大粒の雫を浴びながら瞳を閉じ、髪をかきあげ──

 

 

 ──────ギィ。

 

 と。背後の扉が開く音がした。

 

 「────── 、誰!?」

 

 勢いよく振り返るも、そこには誰もいない。

 

 

 「扉の鍵、閉め忘れましたっけ…?」

 

 

 いや。そんなはずはない。

 ほんの数刻前の出来事を忘れるほど無能なAIではない。

 今この場所で、間違いなく誰か(・・)が扉の鍵を開けたのだ。

 普段使っているスキル行使のためのアイテム "支配の錫杖(しゃくじょう)" は生憎と脱衣所に置いたままだ。

 つまりこの場において。自分は完全に無防備な状態にあることをBBは悟った。

 

 

 ──────曰く。

 お化け屋敷には時として、本物の霊(・・・・)が引き寄せられることがあるという。

 その意図は諸説あり。

 楽しげな人々の声に引き寄せられたとも云われれば、霊を馬鹿にする人間に怒りを抱いてきたとも。…どちらにせよ、扱うのならば細心の注意を払わなければならない。そういう場所なのだ。

 ましてや。自らの欲望を満たすためだけに利用したとなれば、どのような結末を迎えるかは定かではない。

 

 

 「村正さんですか───? 冗談にしては、ちょっと度が過ぎてます!さっきのことは謝りますから、いい加減に姿を見せてください!」

 

 返答はない。ならば、この手の怪異は相手にするだけ無駄だ。そう判断し、自分の勘違いだと思うことにしてシャワーを止めたその時、

 

 ね ぇ 。あ そ ぼ う よ ───?

 

 背後の鏡に写った自分から声をかけられた。

 

 「ひっ──────、!!」

 

 思わず振り返ると同時に鏡にヒビが入る。

 

 「ちょっと、───!?」

 

 今度は頭上のライトがブツンと音を立てて消えた。

 

 もはや思考が定まらない。立てかけておいたバスタオルを身にまとい、その場で尻もちをつく。

 

 そんな彼女に追い討ちをかけるように。

 ぶくぶく、と。

 シャワーの横にあった浴槽から音がしだした。

 

 「もう──、なんなんですか───!?」

 

 シャワー室から飛び出そうと扉へと震える足で駆け寄る。

 しかし。扉の前には、もう一枚なにか見えない壁が立っており、このシャワー室から逃げ出すことを許さなかった。

 

 

 「ちょ───、どうして───!?誰か───!開けてください!わたしが、わたしが悪かったですから、扉を開けてください──!!」

 

 

 み ん な 叫 ん で た 。

 

 み ん な 泣 い て た 。

 

 怖 い っ て 。 助 け て 、っ て 。

 

 で も 。

 

 ず っ と あ な た は 笑 っ て た 。

 

 ど う し て ─── ?

 

 

 「ひっ──────!!?」

 

 浴槽から、黒く長い髪の女が這い出てくる。

 まるで。今まで集めてきた客たちの絶叫が。

 ひとつとなって。主催者を弾劾(だんがい)するように。

 

 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい───!」

 

 ど う し て ─── ?

 

 「皆さんの絶叫を集めるのも、過剰に驚かせるための領域も、皆さんに楽しんでほしいと言いながら、本当はわたし一人が楽しかっただけです───!もうやめます!解除しますから!お願いですから、どうか許してください───!!」

 

 

 な ら 。 よ か っ た。

 

 

 「──────え、?」

 

 

 

 シャワー室のライトが灯る。

 

 

 先ほどまでBBを追い詰めていた女の悪霊は何もなかったかのように消え去り、代わりに自分───藤丸立香を含めた、ガレスにティターニア、ネモ船長の4人がBBのことを取り囲んでいた。

 

 「ちょ、え───? どういうことですか?」

 

 「ごめんなさい、今までのは全部 わたしの魔術(・・・・・・)です。BBさんが無防備なタイミングを狙って、わたしたちみんなでBBさんのことを襲う。そういう作戦だったんです」

 

 ティターニアがここまでのことを説明する。

 

 

 「それじゃあさっきまでの女の悪霊や、ポルターガイストは?」

 

 「擬態の魔術です。鏡はガレスちゃんが。女の悪霊は藤丸くんが演じてくれましたよ」

 

 「ごめん、ちょっと驚かせすぎたかな」

 

 あまりの泣き叫びようだったので、なんというか、こちらが申し訳ない気持ちになっていた。

 

 「ちょっと待ってください!どうやってこのオーナー室がわかったんですか? それに鍵だって───」

 

 「オーナー室の位置はある程度 目星がついていたので、探知の魔術を。鍵は───鍵開けの魔術というのがありまして…」

 

 「なんなんですか、そのアサシンみたいな魔術の数々は───!」

 

 自分が初めて聞いたときと全く同じ反応をするBB。

 

 

 「もうひとつ付け足しておくと、先ほどキミに対して休むよう忠告を促したのは、村正じゃなくて僕だよ。名演だったかな?」

 

 少しばかり得意げな表情を浮かべるネモ船長。

 

 「一体どうやって──────、」

 

 「村正さんの隙をついて、不意打ちの魔術で無線機を盗みました。ああ通信時の声はもちろん、擬態の魔術で偽装を」

 

 小細工だと承知しているからか、どこか気まずそうな顔で真相を話していくティターニア。

 

 

 「───なるほど。先ほどの見えない壁は、昨夜使っていた障壁の魔術ですか。こちらをパニック状態にして、冷静な判断を下せないようにしたんですね」

 

 平常心を取り戻し、BBは自ら状況を分析し出した。

 

 「しかしわかりません。貴方たちの作戦は確かにお見事でした。わたしが無防備なタイミングを狙って、逆にわたしを脅かし恐れさせる。良いアイデアだったと思います。……けれど、貴方たちは常夏領域の影響で、わたしの本拠地に潜入するなんて行為、恐怖心のあまりできないはずでは?そんな死を覚悟するほどの行為が実行に移せるはずがありません」

 

 

 BBの言った通り、自分たちはこうしている今も彼女の常夏領域の影響を受けている。この島で一番の脅威である彼女の根城に忍び込むなどという行為は、自らの命を尊重しようとするならばできないことだ。

 

 「ああ。普通はできないとも。けれど、"好奇心は猫をも殺す" という言葉を知っているかい? 」

 

 用心深い猫でさえ、好奇心に突き動かされ死に至ることもあるのだから、人間の場合はそれ以上に、好奇心というものは危険を含んでいるという意味だ。確かイギリスのことわざが語源だったか。

 

 「今の僕たちは、まさにこの状態だったのさ。……この地を支配するアイランド・クイーンのアジトへと潜入するという暴挙。まさに絶対的な死を孕む危険行為だ。けれどその一方で、こうも感じたんだよ。この島を支配する(・・・・・・・・)アイランド(・・・・・)クイーンを(・・・・・)驚かせてみたい(・・・・・・・)ってね」

 

 「恐怖心すらも勝る好奇心、ですか───」

 

 

 「俺たちが君の本拠地に潜入できた理由は、そんなとこかな」

 

 「───だとしても、乙女のシャワータイムに忍び込むとか、ちょっと流石にデリカシーなさすぎませんか、マスターさん」

 

 そう言い放ちながら、BBは抗議の眼差しを向けてきた。

 

 「さすがに、それは俺も思った…、だから俺の出番の前にシャワー室のライトは消してもらったし、髪の長い女性の霊の擬態を演じさせてもらったのも、前が見えないからだよ。……なんなら、今も視覚に擬態の魔術を使ってもらっているから、君の姿はハッキリと見えてないんだけどね…」

 

 するとBBは目を丸くしてから、大きくため息を吐き、立ち上がった。

 

 「そういう中途半端にモラルが行き届いているところ、主人公属性って感じですね、マスターさん」

 

 今、自分は褒められているのだろうか。

 

 「さて。形はどうあれ、キミは先ほど僕らの前で罪を認めた。これは、"アイランド・クイーンを負かした" ってことになるんじゃないかな」

 

 ネモ船長の指摘に、BBは観念したように両手をあげた。というか、今両手をあげると体に巻いてたタオルが落ちますけど!

 

 「どうせマスターさんには見えていませんし別にいいでしょう。……正真正銘、わたしは丸腰で貴方たちに負かされました(・・・・・・・)。少々気に食わない結末ですが、敗北は敗北ですから。素直に負けを認めます」

 

 「では、"純愛の鐘" の場所へ案内してくださるのですね!」

 

 「ええ。ただまあ、その前に脱衣所で着替えますから、貴方たちはオーナー室で待っていてください」

 

 そう言って、BBは一足先にシャワー室の扉の前まで行き、そのまま扉を開けようとして───

 

 「大丈夫か、BB───!! すまねえ、いつの間にか連中に無線機を奪わ──」

 

 ようやく到着した村正と鉢合わせたのだった。

 

 「そういうところですよ、村正さんッ!」

 「そういうところだぞ、村正ァ!」

 

 

 

***

 

 

 「さあ。ここがこの島の純愛の鐘が眠る地です」

 

 BBはいつもの身なりに整え、自分たちを案内した。

 

 

 「ここってテーマパークの中心地…?」

 

 案内された場所はテーマパークの中心地であり、巨大な噴水のオブジェが置いてあるだけだった。

 

 「なるほど。"灯台もと暗し"ってわけかい」

 

 どうやら村正も純愛の鐘の場所は教えてもらえていなかったらしい。

 

 「ええ。そもそも純愛の鐘を鳴らすには、アイランド・クイーンの同意が必要です。場所がバレたところでどうということはないですが、まあ何かしらの小細工を弄して鳴らされても面倒ですので」

 

 そう言って、BBはパチンと指を鳴らすと、噴水のオブジェの水が止まり、内側から薄い桃色をした、5~6歳ほどの子供大のサイズの鐘が現れた。

 

 

 「これが、純愛の鐘───、」

 

 思わず固唾を飲んでいると、背後からパチパチパチと小さな拍手をする音が聞こえてきた。振り返るとそこには───

 

 「皆さん。一つ目の鐘、おめでとうございます」

 

 愛の神アムールこと、カレンが満足気な表情で一つ目の鐘にたどり着いたことを祝福していた。

 

 「真夏のカレンちゃん殿───!!?」

 

 「はい。真夏のカレンちゃんです。100点満点の反応をありがとうございますガレスさん」

 

 カレンはそう言いながら、鐘の方へと歩み寄っていく。

 

 

 「それで。俺たちはどうやってこの鐘を鳴らせば?」

 

 鳴らすということは聞いていたが、鳴らし方までは聞いていなかった。見たところ、現れた純愛の鐘には鐘を鳴らすための撞木(しゅもく)がなかった。

 

 「ええ。こちらの錫杖(しゃくじょう)を。ティターニアと藤丸 立香、二人でもってください」

 

 「はい?」

 

 そう言ってカレンは、こちらに先端に小さな鐘がついた錫杖を手渡してきた。

 

 「二人で鐘の前に立ちその錫杖を掲げ、そして深く深く祈るのです。"愛" を」

 

 「はい?」

 

 こちらの頭を置いてけぼりにして、では。とカレンは去ろうとしていく。

 

 「いや、待って待って!"愛"って、具体的には何を思い浮かべればいいの!?」

 

 「はあ。愛とはそもそも抽象的なものですよ藤丸 立香。…でもまあ、そうですね。この島で体験した思い出とか、そういったものを思い浮かべればよろしいかと」

 

 そう言い残して、カレンは光に包まれ消えていく。

 

 「思い出、か───」

 

 

 二人で互いに目を見合わす。

 そうして鐘の前に立ち、瞳を閉じて錫杖を掲げた。

 

 

 

 島に。空に。海に。

 鐘の音が響き渡っていく。

 

 

 

 

 「あーあ、これで夢のBBランドも頓挫(とんざ)ですか」

 

 BBは小石を蹴って、不貞腐れたようにそう言った。

 

 

 「運営を継続することはできないのかい?」

 

 「この島の支配権は、鐘を鳴らした時点でマスターさんとティターニアさんの二人に譲渡されました。常夏領域も一緒になくなりましたし、このテーマパークの電力は、すべて島の霊脈を利用して(まかな)っていましたから」

 

 大規模なテーマパークを運営できていたのも、すべて島の霊脈由来のものだったようだ。

 

 

 「ああ、でも。もしもマスターさんたちが望むのなら、またBBランドを開園してあげても構いませんよ?この島の霊脈を使わせていただくことになりますけど、恐怖と絶叫の楽園にまた行きたいというのであれば、いつでもご連絡ください、マスターさん♡ ………それと」

 

 BBが指を鳴らすと、村正の首に巻かれていた拘束が跡形もなく解かれていった。

 

 「お、いいのかい?(オレ)ぁてっきり、この特異点が消えちまう時まで、最後まで付き合わされるもんだと思ってたがよ」

 

 「別にいいです。村正さん、全然役に立ちませんでしたし。これで晴れて自由の身ですから、マスターさんの護衛をするなり好きにしてください。奴隷(どれい)生活が終わって、清々したでしょう?」

 

 そう言ってBBはそっぽを向いた。

 

 「なんでい。存外、お前さんに付き合うのも悪いもんじゃなかったけどな。……生前、道場も娯楽場も行かねえ、鍛冶場に(こも)っては刀を打つだけの偏屈(へんくつ)だったからな。人を殺す剣、人を生かす剣と色んなのを見てきたが、人を楽します剣(・・・・・・・)なんてのは初めての経験だった。形はどうあれ、相手を楽しませる気で振るう刀は、まあ、楽しかったぜ」

 

 「ふ、ふん!意外です。村正さん、割と体質的にはMだと思っていましたけど、Sだったんですね。電流は気持ちよくなかったですか?」

 

 「なんでそんな話になるんだよ!……まあ電流は置いておいて。お前さんは恐怖と絶叫の楽園をつくるなんて()かしながら、その根本では客を楽しませることをちゃんと考えてた。毎日モニターチェックに勤しんでやがったのも、本当は怪我や事故が起きていねえか確認するためだったんだろ? 協力する理由としては、それだけで十分だったんだよ」

 

 村正は、しっかりとBBの根底にあるものを見抜いていた。

 

 「ば、──!ち、違います───!ゲストさん達の恐怖や悲鳴の声を聴いて、わたし一人が楽しくなりたかっただけです!なにを勘違いしているんですか、貴方は!」

 

 BBは、あわあわと慌てふためく。

 

 「そうかい? 儂の目にはむしろ、そんな神さんみてぇな視点の娯楽よりも、本当は "一人の客として大切な誰か(・・・・・)と遊園地を過ごしたい"。そんな眼差しを浮かべているように見えたんだが、違うかい?……もっとも。その肝心の相手は、まだ現れてくれてねえみてえだが」

 

 「──────はあ。村正さんのそういうところ、本当にイライラします。目障りですので、さっさとマスターさん達と消えてください」

 

 

 「その前にひとつ。僕の方からキミに頼みがあるんだけど、構わないかい?」

 

 そうして自分はもう関係ないとばかりに不貞腐れたBBに対して、ネモ船長が声をかける。

 

 「まだわたしになにか───?」

 

 「実は。これは立香たちに対してのお願い事でもあるのだけど。…キミが建設したBBランド、良ければこのまま運営を継続してくれないかな?」

 

 それは思わぬ要望だった。

 

 「ちょ、ネモくん、一体どういう風の吹き回し?」

 

 「いや、実はね。ここの島へと向かうための船を、ロンディニウムの船乗り達から貸してもらったと話しただろう?」

 

 「はい。確かアイランド・クイーンの情報を交渉材料に使ったって…、」

 

 「そのことで。僕はこの島にテーマパークがあることを聞いていたんだよ。…それで。このBBランドを "船乗りたちを含めた島民たちの憩いの場" として、残しておいてほしいんだ。もちろん、入場料はタダで(・・・・・・・)、ね?」

 

 なるほど。どうやらネモ船長は、船乗り達に "BBランドを自由に入場できるようにする" ことを条件に、船を貸してもらっていたらしい。

 

 

 「ふーん、それわたしに何かメリットはあるのですか?」

 

 「当然あるさ。キミが望んだように、ゲスト達の阿鼻叫喚は変わらずに聞くことができる。なんなら入場料を無料にすることで、来客は今の比にならないだろう。……ああ、もちろん。あの常夏領域を使うのは厳禁だけどね。どうだい?悪くない提案だと思うけど?」

 

 BBはしばし顎に手を当て、熟考した後───

 

 

 「わかりました。その条件を飲みましょう。どの道、常夏領域に関しては鐘を鳴らされた時点でわたしにはもう使えません。…けれど。今のグロスターの支配権はマスターさんとティターニアさんの二人にあります。貴方たちはそれでいいんですか? もしその場合、この島の霊脈をわたしが勝手に利用することになりますけど」

 

 ネモ船長とBBはこちらへと眼差しを向ける。

 

 「………わたしは。あなたに似た人を知っています。流行に寛容で、争いを好まず。けれど、強い復讐心ゆえに他者を痛ぶる道を選んで、彼女は破滅しました。…他者の恐怖と絶叫が、その人には全く楽しいものに感じなかったんです。根本的に被害者側でしたから」

 

 ティターニアは遠くを見つめ、過去を懐かしむようにそう口にした。

 

 「でもあなたは。あなたの心に見えるのは、復讐心ではありません。きっとそれは "憧憬(どうけい)" です。そんなあなたが運営するテーマパークが楽しいものにならないはずがない。だからわたしは、あなたが再びこの島の霊脈を使うことを許します」

 

 そう言ってティターニアはこちらへと視線を向ける。

 

 

 「どうでしょうか、藤丸くん───?」

 

 その申し訳なさそうな瞳がどこかおかしくて。

 

 

 「───どうもこうも。もちろん。賛成だよ」

 

 頷きとともに、笑みで返した。

 

 

 

 

***

 

 

 「まずは一つ目、ですか」

 

 朝焼けの中を去っていく一隻の船を眺め、BBは海岸で一人そう呟いた。

 

 

 「お勤めご苦労様です、流石は夏の経験者。貫禄がありましたよ」

 

 「───それ。褒めてるんですか?」

 

 背後にはカレンが同じように船を見つめながら立っていた。

 

 「貴女との契約は、これで満了ですので。わたしはマスターさん達との約束通り、この特異点が消失するその時まで、BBランドの運営を継続することにします。それでは」

 

 

 「一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか?ミス・BB」

 

 カレンを置いて、BBはテーマパークへと帰ろうとしたところ、その背中を呼び止められた。

 

 「なんでしょう、まだわたしになにか?」

 

 「ええ。ここまで私に協力的だった理由はなんでしょう?ダメもとでご相談したつもりでしたが、意外と好意的でしたので」

 

 それを聞いたBBは、興味なさげに鼻を鳴らした。

 

 「別に。契約内容はwin-win(ウィン・ウィン)でしたから。…でも」

 

 「でも?」

 

 

 「一つだけ付け加えるとするならば、わたしの後継機になる予定だった人物のモデルが、どのような人だったのか。少し気になっただけです。……まあ、とんでもなく身勝手な人でしたけど!やはりサクラシリーズこそ、至高の健康管理AIだとわかりました!」

 

 小さく一人でガッツポーズを決めるBB。

 

 

 「健康管理?私は根っからの聖職者ですよ。保健室 務めなんてするわけがないし、サボるに決まっているでしょう」

 

 カレンは興味なさげにBBを見据える。

 

 「さて。世界というのは存外に広いものです。そういう世界線だって、あるかもしれませんよ?」

 

 なぜか勝ち誇ったように、小さなスキップをしてBBは去っていった。

 

 

 「世界は広い───、か」

 

 カレンは一人そう呟く。

 振り返った朝焼けは、これでもかというほどに見事な薄紅色を携えて、今日という夏の日の到来を祝福していた。

 

 

 

 

 ─────────、一つ目の鐘がなった。

 

 

 

 

 

 /『2032ナンバーズ・からっと』 -了-

 




 
 
 まずはここまでご愛読いただき、誠にありがとうございました。
 ここから先は、今回の内容についての補足説明を、後々のネタバレを含まない範囲でお話していこうと思います。興味がございましたら、お読みいただけると幸いです。

 ・星5 ムーンキャンサー BB

 僕らのBBちゃんだ!既存の水着サーヴァントです。新規ではありません。ごめんなさい!…というのも、最初のアイランド・クイーンは、やはり夏のイベント経験者が担当した方が趣旨が伝わってよいかと判断したためです。
 最初の舞台がグロスターでしたので、ムリアンとの対比を描きたかったのもBBちゃんを選んだ理由です。
 復讐心に由来した悲鳴や絶叫は楽しくなくても、相手を楽しませる目的で聞く悲鳴や絶叫は、見ていて楽しいものでしょう?という問いかけを目的とした立ち位置でした。みんなドッキリ番組とかホラーゲーム実況とか、好きでしょ?
 夏といえばの一つ目に選んだのが "絶叫"。上記の理由もあって、適任者はBBちゃんを除いて他にいなかった。サクラ顔 × ホラー うん。彼女しかいない。
 ちなみに最後のカレンとの会話は、Fate/EXTRA CCCの裏設定にある、"保健室の健康管理AI"の設定に由来するものです。きのこ曰く、間桐桜の後継機は、カレンちゃんなんだってー。とてつもなく見たい。それはそうとカレンさん、貴方プリヤ世界線なら保健室勤務ですよ。(え?)

 ・星5 セイバー 千子村正

 二人目の水着霊衣の男性サーヴァントだー!ん?水着 着てなかったって?全身甲冑の鬼武者じゃねぇかって?はい。実はこの次の話から彼の水着霊衣は出そうと考えてました。ごめんなさい。なので霊衣に関してはまた次回。だって、水着のイケメンが襲ってきたら、それはもうホラーではなくてロマンスですから。
 ちなみにネモ船長の迫真の村正トレース。マジで完成度が高く、あの無線会話の数分後、村正は本当にBBの体調を気遣って、自ら連絡を入れようとしました。が、そこで無線機をティターニア達に盗られたことに気づいたわけです。自分の失態を判断した村正は、一目散でBBの安否を確認しに駆けつけたとさ。なおタイミング。そういうところだぞ、村正ァ。

 他にも、グロスター到着の折、テーマパークを見たネモ船長が「知識では知っていたけど」と言っていたのは、ロンディニウムの船乗りからBBランドの存在自体を聞いていたからです。
 ガレスちゃんが擬態の魔術で無機物である"鏡"に擬態していたのも、"鏡の氏族"からのちょっとした小ネタになります。
 ちなみにFGO 第2部 第6章において、最初に鳴らした巡礼の鐘はノリッジのものでしたが、今回はグロスターでした。その理由は、同じ道は辿らない(・・・・・・・・)ということでひとつ。

 とまあ、今回はこんな感じで。全然新しい水着サーヴァントが出てこなくて、楽しみにしていた方がいらっしゃったら大変申し訳ありません。次回は必ず出るので!何卒お許しを!

 改めまして、ここまでご愛読くださり、誠にありがとうございました。次回更新をお楽しみください!
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