艦これ ~もう一つの戦争~   作:spring snow

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第六話 円卓

 海軍は「ア号作戦」の成功に続き、続々と深海棲艦の拠点を撃滅していった。人類はついにその制海権を広げることに成功したのである。だが、太平洋全体で見ればその勝利は局地的なモノでしかなかった。そこで軍令部は深海棲艦の大規模拠点の一つフィリピンへの侵攻作戦を企図した「本号作戦」を立案した。

 戦艦「大和」を初めとする主力の打撃部隊、空母「赤城」を中心とした機動部隊を編成。海軍のほぼ全戦力が投入された前例のない大規模作戦だった。

 しかし、参加作戦艦隊の中に第六六艦隊の名は無かった。

 

 

「今度は本土の護衛だ?」

 

 梟は思わず唸った。

 

「仮にも正規軍はこの国の軍隊なんだよな?本土を他人に任せて攻勢にのみ集中するって何考えてんだ?」

 

 その言葉に蝙蝠は答えた。

 

「建前は日本の継戦能力の確保、様は資源の確保と言ってる。ただ実情は俺たちの成果ではなく正規軍に手柄を立てさせるためってところだ」

 

「万が一があればどうするのやら……」

 

 梟は辛辣に答えた。

 

「そのときのための俺らなんだろ。国民の非難の矢面に立たせるための、な」

 

「そうは言ってもこの作戦立てたのは軍の上層部だろ?そっちに非難がむくんじゃないのか?」

 

「マスコミの操作は戦闘機の操作より得意みたいだからな」

 

 鷹が豪快に笑いながら言った。

 

「これを聞いた新入りはどう思うんだろうな?」

 

 梟は叢雲の方を見ながら言った。

 

「こんな艦隊に本土を守らせるなんて上層部は正気かしら?」

 

 叢雲の中で憤りよりも呆れの感情が勝っていた。考えとしては大方梟たちと同じであった。いや、ある意味、失望したという点では梟たち以上に感じていた。今までさんざんそういった経験をしてきている梟あっちにとって失望できるほど上層部に対する期待は残っていない。その点では叢雲はまだ正規の軍属ということもあり、影響を受けていた。

 

「今回は本隊が参加するっぽい~」

 

 夕立はまったく気にした様子は見せていない。というか叢雲の疑問形に答えていない辺り、考えていないだけかもしれない。

 

「大きいくらげだ~!」

 

 雪風に至っては作戦の話すらしていない。

 

「はぁ~……」

 

 叢雲は大きなため息を一つついた。その周囲に慰めるかのように妖精たちが寄ってくる。

 

「まあ、気にすんな」

 

 艦長の妖精が言った。叢雲の就役時から艦長の座に就いている彼は叢雲との付き合いが長い。

 

「こんな状態で……」

 

 と言いかけたとき、遠くからエンジン音が聞こえてきた。

 

「ん?」

 

 叢雲がふと目線を上げるとちょうど上空を爆撃機と攻撃機の編隊が通過していった。味方の対空演習が始まったのだ。

 

「おい、あの爆撃機って……」

 

 海軍で見慣れた固定脚を持つ九九式艦上爆撃機や九七式艦上攻撃機ではない。引き込み脚が採用された海軍最新鋭の急降下爆撃機「彗星」、そして艦上攻撃機「天山」だ。

 

「なんであんな最新鋭機を……」

 

 不思議そうに叢雲の艦長が呟いているのをよそに、対空演習が始まった。味方の三隻の駆逐艦めがけておよそ三〇機の航空機が襲い掛かる。駆逐艦はいずれも睦月型の旧式の駆逐艦だ。

 叢雲はあまりにも圧倒的な戦力差に眉をひそめた。旧式の駆逐艦三隻相手に過剰すぎる戦力だ。これでは訓練にはならない。

 しかし、その認識は直後の発砲炎で吹き飛ばされる。

 睦月型各艦の艦上に信じられないほどの発砲炎がきらめいたのだ。中には魚雷発射管があるはずの場所にも発砲炎が煌めいている。

 

「嘘でしょ……」

 

 信じられないものを見るような声で叢雲は言った。それは自分の目の端に映った対空レーダーの様子だった。演習中、撃墜判定を食らった機体はレーダー上から消滅し、パイロットにも警報音で知らせるため、その後速やかに現場を離れる仕組みとなっている。

 叢雲の対空レーダーは急激な勢いで小さくなっていく航空機の光点を映していた。

 いくら対空装備が強化されていたとしてもこれは異常だ。

 なぜこれほど対空能力が高いのか。

 それに海軍の最新鋭機が配備される上、パイロットの質も高い海軍の異端児艦隊。

 

「何なのよ……、この艦隊」

 

 その時、叢雲は艦隊に勅任した際に言われた言葉を思い出した。

 

「この艦隊に上座も下座もない。唯一、決められた交戦規定は『生き残れ』」

 

 ここは円卓。

 

 そう言われた。

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