うわっ…私のサーヴァント、強すぎ……?   作:あんどぅーサンシャイン

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邪竜編
はじまり


 

 

「ヴォハハハハ!! おれの勝ちだな!! にしても骨の無ェヤツらばかりでつまらねェ!! それでもおめェら新世界の海賊かァ!!?」

 

「ク、クソが……!!」

 

「なんなんだ……このデタラメな強さは……!?」 

 

「これが噂の“ロックス”か……!!」 

 

―――あ、あれ? なんだ……これ?

 私……なんでこんな所にいるんだろう。

 

「まァいい。それじゃあ“ルール”通りそいつを……ニューゲートを貰っていくぜェ!!!」

 

「くっ、クソォ……!!」

 

「こんなふざけたゲームで……仲間を取られるなんて……!!」

 

「おいニューゲート! お前まさかホントに……!?」

 

 

「……仕方がねェだろ。それがこの“デービーバックファイト”の絶対ルールなんだ」

 

 

 っ! あれは……白ひげ!? でも、私が知ってるよりももっと若いような……? それに一緒にいるのは白ひげの仲間なのかな? 

 でもどれもこれも原作で見たこと無いキャラクターばかりだし、少なくとも白ひげ海賊団じゃなさそう……はっ! ってことは、これは白ひげのずっと昔の出来事を見てるの!? 

 

「……じゃあな野郎共。今まで世話になった。元気でやれよ」

 

「ニュ、ニューゲート……!」

 

「チクショウ……チクショウ……!」

 

 

 

「よぉ!! 歓迎するぜニューゲート!! 噂は聞いてるぜ……おめェのその強さにゃあおれも一目置いてんだ!! 良い働きぶりを期待してるからな!」

 

 ていうか何だ、あのヴォハハハって特徴的な笑い方してるいかにも凶暴で強そうなヤツ。

 白黒の逆立った髪に鋭い目付き。無精髭に筋骨隆々な体つきはまるでワンピース世界のTHE、ヴィラン海賊って風貌だ。

 

「おい勘違いすんじゃねェぞロックス……! おれァあくまでゲームの結果としててめェの船に乗るだけだ。仲間や部下になるなんてハナから微塵も思ってねェからな」

 

「それで結構! 何故ならおれは仲良しこよしがしたくて船員集めをしてるんじゃねェからな……あくまでもおれの野望の為の足掛かりとしてだ!」

 

「野望……?」

 

「ああ、今はまだ言えねェが、いずれ時期が来たら教えてやる。だがニューゲート、それが叶った暁にはてめェにもそれ相応の“儲け”を約束するぜ? “富”、“名誉”、“権力”……望むものは何でも思いのままさ!」

 

「チッ……そんなモンに興味ねェよ」

 

「ヴォハハ、愛想の無ェ野郎だな」

 

 う、うーん……どういう状況なんだろコレ。

 

 

「さて……だがまだまだ人手が足りねェな。次はこの“金獅子”か“科学強盗”あたりが狙い目か……いいや、この“西の海(ウエストブルー)”のギャングの首領も中々に上等な代物だし、それに“キャプテン・ジョン”、“王直”、“シャーロット・リンリン”……あとは確か“カイドウ”っていうガキが最近暴れまわってるらしいな……ヴォハハハ!! 選び放題だなァ!! 欲深で傲慢! 力をもて余した血も涙も無ェ生粋の化け物……そういうヤツほどおれの船には相応しい!!!」

 

「……そんな連中ばかり集めて、チームが成り立つと思ってんのか」

 

「おいおいさっきも言っただろうがニューゲート!! これはおれの野望の為の戦力増強でしかねェ。てめェと同じで仲間意識なんぞこれっぽっちも持つつもりは無い。つまりそいつらがおれの邪魔だけをしねェ限り、どんな事になっても些細な事なんだよ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

 

「!!?」

 

 !!?

 

 

「さぁ!!! そうと決まりゃあ出航だァ!!! 待ってろよ“世界”!!! ヴォハハハハハハハ!!!」

 

 

 

 

 ……………開いた口が塞がらない。

 一体なんなんだ、この“ロックス”っていうヤツは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩。起きてくださいっ、先輩」

 

「う、うーん……あれ?」

 

 マシュに揺り動かされ、むにゃむにゃと起床する藤丸。

 どうやら彼女がわざわざ自室まで起こしに来てくれたようだ。

 

「おはようございます先輩。昨日はよく眠れましたか?」

 

「あ、おはようマシュ~……うん。おかげさまでね~」

 

「フォウっ」

 

「おうっ」

 

 フォウ君がぴょこっと藤丸の膝に乗っかる。それを見た藤丸は思わずフォウ君を両腕で抱え込むようになで始めた。

 

「ああ~朝からもふもふ最高~」

 

「ふふっ、フォウさんのもふもふ具合は格別ですからね。とても分かります」

 

「フォウ……」

 

 当の本人……もとい本獣は若干嫌そうにしているのだが。

 

「さて、それじゃあ身支度を整えて管制室に向かいましょうか。既に他の皆さんは揃っていますので」

 

「うんオッケー」

 

 そう、彼女達に安息とも呼べる時間はほとんど無い。

 これからカルデアによる人理修復の為の重大任務―――特異点攻略の旅が始まるのだから。

 

 

 (……………それにしても気になる)

 

 (さっきのあれは、夢……なのかな。にしてはやけにリアルだった気がするけど……)

 

 (それにあのロックスって呼ばれてた海賊、一体何者なんだろう……白ひげとどんな関係があるんかな?)

 

 

 

 

 

「さて、全員集まったところで今日のブリーフィングを始めよう」

 

 場所は変わってカルデアの管制室。

 そこには既にロマニ、ダヴィンチ、オルガマリー、白ひげの面子が揃っており、遅れてマシュが藤丸を連れて合流する形となる。

 

 ブリーフィングの内容は、昨日マシュ達に説明した事と同じだ。

 藤丸とマシュを主軸としたレイシフトによる特異点修復……レフによって歪められたそれぞれの時代を巡り、その原因となった聖杯を回収することで無事作戦完了となる。

 そして聖杯があるということは、冬木と同様に

 

「調査の結果、現在確認されている特異点の数は7つ。つまり少なくとも七つの時代を回ってもらう必要があるね」

 

「うげェ……七つもあるんだ。メチャクチャ大変そう」

 

「一筋縄じゃいかなそうね。しかもその全てが歴史の転換期とされる時代……つまり名実ともに世界レベルで優れた英雄が敵味方関係無く現れるのはほぼ確かだわ」

 

 そう予測を立てるオルガマリーに、白ひげが尋ねた。

 

「なぁ、その英雄ってのァどういうモンなんだ?」

 

「え? そうね……英雄と一括りに言ってもその実態は様々なのよ。例えば多くの武勲や伝説を立てた戦士だったり、今なお現存する国の礎を築いた王様だったりとか……あとは特別なパターンだと、“神霊”と呼ばれる存在もいるわ」

 

「神霊?」

 

「文字通り、神そのもの……もしくはそれに準ずる力を備えた英雄がサーヴァントになった存在よ。強さも普通のサーヴァントとは比較にならないほど強力だし、しかもその殆どが人智を超えた能力を持ち合わせている事が多いわ」

 

「神ねェ……」

 

「そっちの感覚で言うと、悪魔の実の能力をカナヅチ無しかつ何個も使えるようなもの、」

 

「なるほどな。だがそんなヤツらまでいるってなァ……改めてとんでもねェ世界だなここは」

 

 顔には出さないものの、そのスケールの大きさに驚く白ひげ。

 神様なんてあくまで言い伝えや名称の一部でしかないものだと考えていた為、実際にそれが存在してたなんてにわかには信じられなかったからだ。  

 

 そんな中、唯一それらしき存在が彼の中で心当たりとしてあるとすれば―――アレだろうか。

 

 

―――ムーの世界は、まだ未完成である!!!

 

―――“黒点支配(ドミ・リバーシ)”!!!  

 

―――終わらせろ!! “デービーの夢”を!!! このゴッドバレーに関わった全ての命を消せ……!!

 

 

 

 (……いいや、ありゃあ神様なんつうモンじゃないな。どちらかと言やァ……“悪魔”そのものだった)

 

 

「てことは、これから白ひげよりも強いサーヴァントが現れるかもしれないってこと?」

 

「ううん……その可能性はゼロではないけれどなァ。かといってどっちが強いかなんて片方に決めつけるには早計だと思うし」

 

「どうなの白ひげ? 貴方は……神様ってものと戦って勝てる自信、ある?」

 

 彼女も白ひげが規格外ほどの強さなのは勿論知っている。

 

「そうだな……まァ、今までそういうヤツに会った事が無ェから分からねェが―――」

 

 

 

「そいつらがその気なら教えてやるだけだ―――“海賊をナメるなよ”ってな」

 

 

 

「「「「っ!」」」」

 

 ニヤリ、と白ひげの言い放ったその“打倒宣言”ともとれる発言に、その場にいた全員が息を飲む。

 どれだけ崇高で偉大な存在だろうが関係ない。敵として自分の前に立ち塞がるのなら一切の容赦はしない。その圧倒的な力で完膚なきまでに捩じ伏せ、叩きのめす。そして目の前の男なら―――()()()()()()()()()()()()()

 それが彼の……いや、海賊というものの在り方なのだ。たかだか神の威光など、彼らの掲げる『自由』の前にはまるで意味を成さない。

 その威風堂々たる物言いはまさに“最強”と呼ばれるに相応しいものだった。

 

「……はは、何て頼もしいんだろうね」

 

「海賊が神に喧嘩を売るか……いいねェ。痺れるねェ!」

 

「ふふん! どう? これが白ひげっていう男の本当のカッコよさだよ!」

 

「いや貴女が威張れることじゃないでしょ……」

 

 えっへんと胸を張ってどや顔をする藤丸に所長の呆れたようなツッコミがはいる。

 

「それにおれだけじゃねェ……優秀なサーヴァントっつうんならよ、コイツがいるだろう」

 

 そう言ってマシュに視線を向ける白ひげ。

 

「わ、私ですか?」

 

「前にも言ったがおめェにゃ見込みがある。ちょっとばかし鍛えてやっただけで確か……宝具っつったか? それが使えるようになったってんなら大したモンよ」

 

「いや、ですがあれは白ひげさんの教えが良かっただけで……」

 

「人間は一度二度教わったぐれェじゃ大して変わらねェよ。おれァかつて一船の船長として色んなヤツを見てきたが……おめェほど成長の早い野郎は決して多くなかった。確かに今のおめェはまだ弱いが無能ってワケじゃねェ。そしてそういうヤツほど―――()()()()()()()()()()

 

「……………」

 

「おめェにはその素質がある。あとはそれなりに経験を積んでいきゃあ、勝手に強くなるだろうよ」

 

 そう、白ひげは知っているのだ。

 その場に置いて実力も何もかも文不相応でありながら決して弱さを言い訳にせず、我が身に降りかかる窮地を乗り越えて次第に大きく進化を遂げていった人間の存在を。そしてそういう人間が、新たなる時代における大きな道標となりうるのだということも。

 

 自分の想像を遥かに越えて強くなった()()()()と同じものを、今のマシュに感じたのだ。

 

 

 ―――お前!! 海賊王になりてェんだろ!! 海賊王になるのはおれだ!!!

 

 ―――待っていた!!! 誰だか知らんが……お前の船に!! 乗せてくれ!!!

 

 ―――おれも遂に“能力”を手に入れたぞ!! もっと力を試してェ!!

 

「……ありがとうございます。白ひげさんにそう言っていただけるなら、少しだけ自信が持てたような気がします」

 

「そうか。そいつァよかったな」

 

「まだまだ私は戦士としてもサーヴァントとしても半人前ではありますが……精一杯努力して、研鑽を積んで……いつか白ひげさんの背中を任せれる様になります! だからまた機会があれば、冬木の時みたいに稽古のほどをよろしくお願いしたいのですが!」

 

「グララララ……バカ言うな。おめェみてェな小娘に守られるほど、おれァ腑抜けちゃいねェよ。……まァ、気が向いたら考えといてやる」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

 喜びと尊敬の姿勢を見せるマシュと、まんざらでもないといった感じで対応する白ひげ。

 その光景はまるで、本当に師匠と弟子の関係性が織り成す仲睦まじさをひしひしと感じさせた。

 

 

「……………むー!」

 

 

 だがそんな中、その様子を心底面白く無さそうに頬を膨らませて睨む少女が一人。

 

「……なんか、やけに二人の距離が縮まっててずるいずるいずるい!!!」

 

「あん?」

 

「えっ?」

 

「さっきからマシュのことばっかり!! 白ひげは本来私のサーヴァントなんだからもっと私にも構ってよ! というか特別扱いしてよー!」

 

 そう言って白ひげの足元にすがりつく藤丸。

 足をバタバタさせるその姿はまるで欲しいおもちゃを買ってもらえず駄々をこねる子供の様だ。

 

「いきなり何言ってやがんだおめェは……」

 

「そしたら私もその、頑張るし……なんなら()()()()()()になることも、やぶさかじゃないよ?」 

 

「気色悪ィこと抜かすなマセガキ」

 

「辛辣なんでよ!! こんなにピチピチで年頃な女の子に好かれたら普通嬉しいでしょ! 男なら!! 自分で言うのもなんだけどまァまァ可愛いし、愛嬌あるし、そこそこ胸あるし!!! それなのに何が不満なの!?」

 

「……フッ、自己評価だけは一人前か」

 

「うがーまた鼻で笑われたー!!! なによー!! 私だって学生時代はそれなりにモテてたんだからなー!! 男子達から引く手あまただったんだぞー!!」

 

「ならいいじゃねェか」

 

「やだやだやだー!!! その辺の男子なんか口だけのチキン野郎しかいないもん!! とにかく私が白ひげにとっての一番じゃなきゃやだー!!! 推しが後輩に寝取られるなんてやだー!!!」

 

「そ、そんな事私考えてないですよっ!? 私はただ純粋に白ひげさんを尊敬しているだけで……!」

 

「高みの見物的な言い方もなんかむかっ腹が立つよコンチクショー!! 見てろよー!! 絶対白ひげのこと振り向かせてやるんだからなー!!!」

 

「うぜェ……いい加減にしやがれこのアホンダラ!!」

 

 (っ……コイツ、こんなにしつけェタイプの女だったのか。これじゃ()()()と同じじゃねェか)

 

 

 ―――ヤダ!! 私はアンタがいいの!! 分かったらさっさと私と結ばれなさいニューゲート!!

 

 

 その様子を心底心配げに見つめてため息をつくオルガマリー。

 

「……ねェロマニ。私胃がとっても痛いんだけど。これからの事が本当に不安になってきたわ……」

 

「た、多分大丈夫だと思うよ。彼女だってやるときはやる子だし、ちょっと緊張感に欠けるのがたまにキズだけどね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ早速始めよう。二人とも用意はいいかな?」

 

「はい。いつでもいけます」

 

「こっちもオッケーだよー」

 

 一通りブリーフィングも終わり、いよいよレイシフトの準備に取りかかる。

 レイシフトの仕組みは至ってシンプル。

 専用の棺桶型コフィンを使うことで中の人間の肉体を一度疑似霊子と呼ばれる物質にまで分解する行程……いわゆる魂のデータ化とよばれる作業を行う。

 次にそれをオペレーター側で指定した異なる時間軸に転移させ、その先でデータを再構築、分解された肉体を復元し元の形に戻すという、いわばタイムマシンと平行世界の往来を兼ね備えたようなシステムなのだ。

 

 しかしレイシフトは誰にでも出来るわけじゃなく、肉体をデータ化するという都合上、非常に高いレイシフト適合率を必要とする。またこの適合率は個人ごとに完全ランダム仕様になっており、例えオルガマリーの様な魔術師として高い能力を有していても適合率が振るわないなんて事も全然あり得る話なのだ。

 そして現在その適合者に該当するのが、人類最後のマスターである藤丸とそのパートナー、マシュだけなのである。

 

「実行前に一応確認するね。まず向こうで何をするべきかだけど……」

 

「はい。レイシフトに成功次第、まずは霊脈を探して簡易召喚サークルの設定。そして現地の人間及びサーヴァントとの協力関係を結ぶ事ですね?」

 

「その通りだ。円滑に聖杯探索を進めるためにも出来るだけ多くの人間ないし英霊はこちら側の戦力としたい」

 

 レフによる聖杯を使った歴史の歪曲は本来為されるべき事象の流れに大きく解離を及ぼした。

 それによって白ひげの様にその土地や歴史とは全く関係のないサーヴァントが召喚されてるハズだとロマニは仮説を立てた。

 

「それにおそらく敵……私達の障害となる連中も本人そのものがサーヴァントか、もしくはそいつがマスターとして別のサーヴァントを使役している可能性が高い。万が一そいつらとの衝突になった時に被害を最小限に留める目的もあるわ」

 

「了解です、ドクター、所長」

 

「それから白ひげ……あの二人を頼んだわよ。私の代わりにしっかりとサポートしてあげてね」

 

「ああ、分かってらァ」

 

 任せとけ、というニュアンスの込められた返事をする白ひげ。

 いくら最優のサーヴァントと名高いセイバーを倒したとはいえ、彼女達はまだまだ戦士として未熟な存在だ。若く、無鉄砲で荒削り……()()()()()()()()()()()()()()()。なのでまだ二人でいかせるには不安は拭えないのだ。

 

「……本当なら」

 

「え?」

 

「はい?」

 

「本当なら、私も冬木の時みたいに現地で貴女達と共に活動出来たら良かったのだけど……でも……私には、それが……()()()()()出来ないから……っ!!」

 

「「……………」」

 

 そう悔しそうに歯噛みするオルガマリー。

 レイシフト適正には恵まれず、信頼していた人間には無能扱いされて捨てられ、そしてほぼ魔術において素人同然の藤丸に無理難題を押し付けて世界の命運を託す羽目になってしまった。

 カルデアを預かる者としても、名門アニムスフィア家の人間としてもこれほど情けなく……そして悔しい事は無い。

 

「……やっぱ所長って、マジメだなー」

 

「先輩の言う通りですよ、所長」

 

「えっ?」

 

「何も現場で活躍する人間だけが特別じゃありません。所長の魔術やサーヴァントに対する広い知見は私達のような未熟者にとって大きな助けになりますし、それは所長だけが持ってる強みだと私は思います」

 

「そーそ! えーと確か……適材適所ってやつ? 人間なんて出来ることと出来ない事があるんだし、それがたまたまレイシフトだったってだけの話ですよ。一緒に行動出来なくても気持ちは一緒! 所長は偉そうに椅子の上でドンと構えてればいいんだよ! ナイーブな所長ってなんか見てて調子狂うし」

 

「マシュ……藤丸……」

 

 二人の優しい励ましに、目頭が熱くなるのを感じた。

 こんな自分にもやれることはあるんだと。これまで分不相応な立場で身を削り、心をすり減らし、毎晩泣き続けながらも諦めずにやってきた事は、決して無駄にはならないんだと教えてくれた。

 それは彼女にとって救いであり、生きていて良かったと思わせてくれるものなのだ。

 

「……………ありがとう。まさか貴女達に励まされるなんて思わなかったけど、私―――」

 

「それに冬木の時みたいに現場でわーわーパニクられても困るしね! まァ泣きべそかいてる所長は可愛かったけど」

 

「ホントにアンタは一言多いわねーーっ!!!」

 

「いだーーっ!? 乙女の顔になんて事すんのさーーっ!!!」

 

 余計な事を言った藤丸にオルガマリーの強烈なビンタが炸裂した。

 

「全く……ちょっと見直したと思ったらコレなんだから……」

 

「えへへ……やっぱり所長はこうでなくちゃ」

 

「ヘラヘラしない……もう!」

 

 前言撤回。やっぱりコイツとは馴れ合えないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃロマニ。始めなさい」

 

「はい。レイシフトシステム、起動」

 

 

『アンサモンプログラム、スタート』

 

『レイシフト適正者二名、及びサーヴァント一名---確認。心身精神状態良好、問題なし。これより霊子変換を開始します』

 

『3……2……1……』

 

 無機質な機械音声が響き渡る。 

 とうとう始まるのだ―――人理を取り戻す為の戦い、その第一歩が。

 

 (……もう二度と負けない。私は―――この力で、守ってみせる)

 

 (……不思議だな。とっても危険な事のハズなのに、妙にワクワクして……冒険のにおいがするっ!!!)

 

 (時間旅行……か。おれァつくづく『冒険』の運命からは逃れられねェな……)

 

 

 それぞれの思いを携え、彼等は今―――飛び立つ。

 

 

『全工程―――完了(クリア)

 

『肉体霊子変換。目的地―――年代及び座標特定』

 

 

『グランドオーダー 実証開始』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その少女はかつて……英雄だった。

 

「ごきげんよう。ふふ……相変わらずひどいザマ。まだ息はあるかしら?」

 

「……………」

 

「まァ……死んでもらっては困るのだけれど。貴女を完璧に服従」

 

 祖国の為に、民の為に、永久の平和と繁栄をその旗に掲げ、命を駆けて戦った。

 結果……彼女の活躍によって、国は長きに渡る戦争を乗り越え、敵を倒しきるに至った。多くの人々が彼女を英雄と称え、敬い、感謝した。

 

「報告よ。今日もたくさん―――()()()()()()()

 

「……………!」

 

「たくさんの建物を燃やした。たくさんの人間が死んだ。たくさんの血を浴びて、たくさんの悲鳴と断末魔が心地よく耳に響いた」

 

「……………あァ」

 

「剣で刺した、頭を潰した、首を斬った、両目をくりぬいた、縄で絞めた、炎で焼いた、屋外から突き落とした、()()()()()()()()()、水責めにした、他にも色々……とにかく思い付く限りの方法で……アイツらに恐怖と絶望を与えてからブチ殺してやったの」

 

「……………なんて、こと」

 

「それに今日はとっても笑っちゃう出来事があった。その途中に、急に小さな子供が私の前に立ち塞がってこう言ったの……『よくもお母さんを、この魔女め!』って……手にはこれくらいの石ころを持ってたわ」

 

 

 ―――だが、運命は彼女を悲惨な末路へと追いやった。

 敵国に捕らえられた彼女を待っていたのは度を越えた暴力と尊厳破壊、そして自らを『魔女』だと決めつける者達による迫害だった。

 

 

「あの子は母親の命を奪おうとするこの私に、勇気を振り絞ってたった石一つで挑もうとしたのよ。あの姿は本当に勇敢で潔くて―――あまりの愚かさに反吐が出そうになった

 

「……………!?」

 

「勇敢と無謀の違いも理解せずにお門違いな戦いに身を投じて犬死にするその姿がホント滑稽で醜悪なの―――()()()()()()()()()()()()()()

 

「……………わた、しと、あなた?」

 

 

 誰にも守られず、誰にも救われず、誰にも愛されなかった。一切の救い無く、尊厳も信念もズタボロにされ、苦痛と悲しみにまみれたまま……英雄ではなく魔女として死んだのだ。

 

 つまり彼女は―――()()()()()()()()()。守り抜いたハズの()()から不要なモノと断罪され、見捨てられた。

 

 

「そうよ……弱いクセに粋がって、中身の無い正義を掲げて空虚な戦いに身を投じる。得るものなんて何もなく、国や民衆にはいいように利用され、終いには魔女なんて謂れの無い言いがかりをつけられて火炙りに処された。こんな愚かでバカみたいな末路……納得なんて誰が出来るの?」

 

「……………私は」

 

「だから全部壊す。復讐する。私を散々裏切って、なぶって、犯して、戦士としても女としても身も心も蹂躙の限りを尽くし、最後にはゴミのように焼いた……そんなこの国も人間も歴史も絶対に許さないと決めた。そしてアンタは---()()()()()()()()()()()そんな私を真っ向から否定し、民衆の為にとその甘っちょろい考えを振り撒いて、戦いを挑んだ……その結果がこのザマ」

 

「……………!!!」

 

 

 

 

「よく覚えておきなさい。……ロクな力も覚悟も無い今のアンタに……国なんてモンは救えないのよ―――“救国の聖女”……()()()()()()()()

 

 

 

 その少女の名は―――ジャンヌ・ダルク

 人類史における一つ目の転換点―――“百年戦争”を己が身一つで生き抜き、“聖女”と呼ばれた英雄である。

 

 

 

 




ということで始まりました、オルレアン編でございます。
一応流れは原作シナリオに沿っていこうとは思いますが、キャラの言動だったりオリジナルな場面展開を新しく加えたいです。だってそうじゃないと二次創作の意味ないじゃねェか。サーヴァントは全部出せるかわからんけど。
特にオルレアンなんて初っ端の特異点なのに平気で人がバンバン死ぬんだから、だったらやれるとこまでやっちゃえ! ジャンヌオルタを更に残酷かつ非情に仕立てあげてしまえ!

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