~夢の第二十二回有マ記念~ 規格外の速さで紅焔を纏う彼女が伝説を作る 作:N2
原作:ウマ娘プリティーダービー
タグ:ウマ娘 マルゼンスキー 史実改変 夢の第11レース シリアス トレンディ クライムカイザー TTG プレストウコウ テンポイント トウショウボーイ グリーングラス 愛が良バ場
出走するのはウマ娘として登場させてあります。
レジェンドクラス達による夢の有マ記念の二次創作です。
トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラス、TTGファンの皆様方には申し訳ありません。
そして、「クライムカイザー、語り継ごうお前の不屈の記録を。讃えよう令和にも、お前の不屈の闘志に祝福を」
栄えあるダービーを制した者に、祝福の讃辞をお送り致します。
クライムカイザーは出走はしませんのでご了承ください。
当初、名称は変更しようかとも考えたのですが、クライムカイザー含めTTGCの名称を、私程度が安易に変えるのもどうかと考え、実名で記載させて頂きました。
元来、実名のほうが失礼なのかもしれませんが、不愉快になられてしまった方々には、本当に申し訳ございません。
懐の深い皆様方の御寛恕を頂きますよう、宜しくお願い致します。
実際の競馬は悪友達や悪いおじさま達の影響で、ナリタブライアンから。ディープインパクト以降は、仕事が忙しくほぼ競馬から離れていました。
マルゼンスキーの血脈であるエフフォーリアには感動を禁じえませんでした。
重ねて――
トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラス、TTGファンの皆様方には申し訳ありません。
当初、名称は変更しようかとも考えたのですが、クライムカイザー含めTTGCの名称を、私程度が安易に変えるのもどうかと考え、実名で記載させて頂きました。
元来実名のほうが失礼なのかもしれませんが、不愉快になられてしまった方々には、本当に申し訳ございません。
懐の深い皆様方の御寛恕を頂きますよう、宜しくお願い致します。
スコープ様の作成したフォントをお借りさせて頂きました。
この場でお礼を申し上げます。
『皆様お集まり頂きました本日の有馬記念。空気の澄んだ突き抜ける冬の青空の下、待ち望んだ対決が実現する今日! 本日を以ってラストランを飾る事になる二人のウマ娘、天翔けるトウショウボーイと流星の貴婦人テンポイント。どちらが有終の美を飾るのか…… しかしついには緑の刺客グリーングラスが鋭い一刺しでそれを阻むのか――』
今年最後のレースとなる冬の中山に鳴り響くアナウンサーの声。
独特な抑揚にレース場に集まった観客たちのボルテージが高まっていく。
『――実力と人気を兼ね備えた三強ウマ娘が相まみえるこの有馬記念。三度目の対決は、ファンも今か今かと待ち焦がれていた事でしょう……』
ここでアナウンサーが言葉を噤む。
会場の観客は、ある種様式美ともなったアナウンサーの語りを聞きながらレース場やパドックを見ていたが、いつもと異なる雰囲気にざわめきが周囲を満たし始めていた。
『しかし! その三強ウマ娘に勝負を挑むウマ娘がいる! ファン投票は第四位、誰もが知る八戦八勝無敗のウマ娘、二着に着けた差は合計六十一バ身という驚異の実績! 規格外のエンジンが織りなす異次元のスピード、スーパーカーマルゼンスキーが三強ウマ娘とぶつかりますっ!』
会場中に大歓声が鳴り響き、全体が揺さぶられているように感じる者も多い事だろう。それほどの大熱狂がレース前から寒々とした中山を熱気で包んでいた。
「マルゼン、君が追い求めた最高に楽しく走れる場所は、もうここしかない…… URAの規則に歯痒く感じながらも、それでも到達した僕と君の最後の舞台だ。最後も笑顔で走っておいで、願わくば――」
パドックでマルゼンスキーと目が合い微笑みあった男、マルゼンスキーのトレーナである人物の言葉に被せるように、アナウンサーの声が鳴り響き、レース前を締めくくる。
『今日! あなたの、そして私の永遠に冷める事の無い夢が、これから走ります』
男はパドック中央のランウェイから下がっていく担当ウマ娘であるマルゼンスキーの背を見届けながら――
「夢…… そうだね、マルゼン。君の想いは知っている。叶えよう、そして変えていこう。URAの規則を…… そして、僕達の未来を」
その後現れる皇帝を補佐していき、アイドルウマ娘への世論の影響が規則の硬直化を打破していくきっかけとして、この両者の思いが実現していくのは、また
☆
『各ウマ娘スタートを切りました。本当に綺麗なスタートを切りました。直ぐ押さえましたのがリアルタイフーン』
今年の有馬記念は、人気と実力を兼ね備えていたトウショウボーイとテンポイントに加えて、規格外の実績を携えながらも持込ウマ娘として、外国産ウマ娘と同等の扱いを受けているマルゼンスキーも出走するため、その他のウマ娘達では敵わないとばかりにこの有馬記念を回避する陣営が多く、最終的に九人のウマ娘の出走となってしまった。
『さぁ、先ずは先頭に立つのはトウショウボーイ、そして直ぐ後ろにテンポイントが着けております』
出走するすべてのウマ娘が枠順は単枠であり――
一枠一番トウショウボーイ。
二枠二番セイフククーペ。
三枠三番テンポイント。
四枠四番リアルタイフーン。
五枠五番プレストウコウ。
六枠六番グリーングラス。
七枠七番スワイプソウル。
八枠八番サイカマグロ。そして――
九枠九番マルゼンスキー。
スーパーウマ娘達の競演により、回避したウマ娘も多いため出走数は少ないものとなってしまっている。
『トウショウボーイとテンポイント。このTTのウマ娘二人が、早くから一番手、そして二番手を走っております。そして三番手にマルゼンスキー、行くと思われましたマルゼンスキーが三番手に控えております。これは事前の予想と異なったレース展開か?』
今までレースで走った距離よりも長い、芝2,500m。日本短波賞よりも700m長い有馬記念。逃げではなく、自身の脚の様子を見ながら序盤は先行する作戦を立てていた。
さすがに好き勝手に走って飛ばしても、距離のある有馬記念では、息切れを起こしたところに、TTGやプレストウコウに差し切られる可能性が高いとトレーナーは踏んでいたためだ。
『そして今年の菊花賞ウマ娘、葦毛のプレストウコウが四番手。バ場の外目を通しまして正面スタンド前、これから拍手に迎えられて各ウマ娘達が通過致します』
以前のマルゼンスキーであれば、不用意に競った状況になると少し気持ちが浮ついて脚が伸びなくなる状況もあったが、予めトレーナーとの二人三脚のトレーニングで、内心面の不安定要素は既に克服している。
『先頭がトウショウボーイ、二番手がテンポイント、三番手九番のマルゼンスキーに四番手プレストウコウ』
正面スタンド前を通り過ぎる時のマルゼンスキーの表情を見たトレーナーは、気負いもない様子で笑みを浮かべていた担当ウマ娘に安堵した。
(気持ちの面では問題無い。今のところ脚部不安も……)
『四強のウマ娘達が、いずれも前のほうでレースを進めております。その後にスワイプソウルと二番のセイフククーペが、そして八番のサイカマグロ』
(そろそろだ。レースの流れを作れ、マルゼン)
マルゼンスキーの後姿を見つめたトレーナーは、内心で作戦上のゴーを掛けるのだった。
『少し後方下がったリアルタイフーンが先頭を窺っている。早くも第一コーナーに差し掛かり…… おぉっと、第一コーナー手前でマルゼンスキーがテンポイントとトウショウボーイを外から躱して半バ身前へ躍り出ていく!』
内を狙うテンポイントとそのすぐ近く、半バ身先頭を走るトウショウボーイの外からマルゼンスキーは飛び出していく。
しかしそのままスピードに乗るのではなく、体力面というよりも脚部に疲労を貯めないために、位置をキープしていく作戦は一応の成功を表している。
『ここで少し抑えた、少し抑えたかマルゼンスキー。この後、第一コーナーで一バ身を包ませて、三番の三番手がテンポイント。しかしテンポイントがスゥーッとコーナーワークをすくって行きました。トウショウボーイとテンポイント身体が合った、身体が合いました! トウショウボーイとテンポイントが二番手争いを繰り広げております。しかし先頭のマルゼンスキーとはまだ半バ身差』
先頭とはいえ、未だ耐える状況にトレーナーの額には、この寒空だというのに汗が浮かび始めていた。
(先頭に出てキープはいいが、想定よりも離せていない。トウショウボーイとテンポイント二人の圧力か?)
『さぁ! この三人のウマ娘達が競り合う展開になりました。果たしてこういった展開となって、最後までこの三人のウマ娘達の対決になるかどうか? あるいは、あまり競り合い過ぎますと、漁夫の利を攫われることもあります。四番手を進みましたのがスワイプソウル。満を持しましてプレストウコウが五番手であります。三人の競り合いを六バ身後ろで見ております』
五番手に位置付けているプレストウコウ。
葦毛で初めてクラシックを勝利した銀髪鬼と呼ばれる菊花賞ウマ娘、長距離の菊花賞を勝利していることもあり、日本短波賞では完膚なきまでに叩きのめしたマルゼンスキーではあるが、この有馬記念の距離では油断のならない相手でもある。
そのプレストウコウは、TTGの三強ウマ娘達ではなくマルゼンスキーに視線を固定していた。
『ここで、テンポイントがまた押さえました。トウショウボーイが行きます、二番手トウショウボーイに三番手テンポイント。そしてスワイプソウルを挟んで五番手にプレストウコウ。グリーングラス、ここで注視しているグリーングラス。サイカマグロ、リアルタイフーン一人置かれましたが、後の五人は激しい展開で第三コーナーを迎えます』
(まだだ、まだ押さえろマルゼン、ここじゃないぞ)
不安を押し込むようにマルゼンスキーのトレーナーは、眉間にしわを寄せながら念じる。
マルゼンスキーの脚部不安を考慮に入れたレース展開の作戦。だが想像以上にトウショウボーイとテンポイントが、マルゼンスキーを追うように競っている。
トレーナーの事前展開予想では、最低でも二番手から一バ身半を開いて迎えていた筈というのにだ。
(わかっているわよトレー、いえ、ダーリン、まだいつもより強めの八割。でも、必ず私の100%を見せてあげるから!)
マルゼンスキーは中央に位置取りをしつつも、自らの右後ろの気配を感じながら、距離感を保つように駆けていく。
『先頭は依然マルゼンスキー、二番手はトウショウボーイ、またテンポイントが行きました。同世代のライバルであるウマ娘二人の意地のぶつかり合い。半バ身差のマルゼンスキーも油断は出来ない』
出走数が少ない事も要因し、先頭のウマ娘達以外は間延びしたように一直線で走っている。
『そしてスワイプソウルの後に、二番のセイフククーペが上がってまいりました』
セイフククーペの動きを皮切りに、中段で縦並びのウマ娘達の走りの気配が変化していくのを先頭のトウショウボーイとテンポイント、勿論マルゼンスキーも掴んだ。
『さぁ! ここからペースが速くなります。第三コーナー手前六Fの標識を過ぎて、ペースがグンッと加速されます。セイフククーペが五番手から四番手に上がろうという感じ。トウショウボーイとテンポイント、熾烈な二番手争いをしております。いや、届くか? 先頭マルゼンスキーに届きそうな勢いだ!』
残り800m辺りから中段も詰まり出していき、第四コーナー後の直線を見据えた位置取りを各ウマ娘達が始め出してくる。
『ここから四番手以下を振り切って、第四コーナー三人のウマ娘による三竦みのまま、最後まで持っていけるかどうか? この中から割ってくるのはプレストウコウか? あるいはグリーングラスか?』
第四コーナーの立ち上がりを意識しながら、遠心力で外に身体が振られるのを完璧に押さえつつ、先頭の各ウマ娘達が限界を超えようとその身体に力を貯めこんでいる。
「怯んじゃダメ! 見ててよカイザー! ぐっ、これがスーパーカー、速い!? でも!」
競り合いの中、かつては怯んだ自分を叱咤するトウショウボーイ。
「マルゼン、この距離でまだダレない…… それでも!」
先頭のマルゼンスキーを見据えたテンポイントは、未だ落ちないスピードのマルゼンスキーの体力に驚く。
しかし、並んでいるトウショウボーイとテンポイントは、過去の対決を思い出して闘志の火に油が注がれていくのを感じていた。
レースを超えた意地が、両ウマ娘共に炸裂し出した。
「マルゼンじゃない…… そう、貴女にはっ!」
トウショウボーイは、テンポイントには絶対に前を譲りたくない。
「後輩何かより、君にはもうっ!」
これ以上、二度とトウショウボーイの後塵を拝したくはないテンポイント。
「「絶対に負けたくないっ!!」」
『意地と意地のぶつかり合い、これは世紀のレース! 世紀の一戦だ!』
両ウマ娘はお互いに火花を散らしながら、並んでマルゼンスキーを猛追し出して、ほぼ横並びで中山の直線を迎える。
夢、夢の続き、そして夢を超えた先にある終着点は、あと少しに迫っているのだった。
☆
三強ウマ娘とマルゼンスキーを一心に見据えながら、威厳溢れるウマ娘が胸の前で手を組み、己の心中に渦巻く数年間蓄積された汚泥のような強い感情を吐露している。
「行け! 行ってくれ…… わらわの後悔と
そのウマ娘の隣に控えている長身の峻烈さを全身から醸し出している男は、己が担当ウマ娘に心を痛めてしまった。
「申し訳ありません、マイレディ。私は、結局貴女の後悔を晴らすことは出来なかった……」
「違う! 違うのじゃ我が
詫びるかの如く目を伏せる男に対して、そのウマ娘はそうではないと強く訴える。
「そんなこと、気にしていませんよマイレディ。トウショウボーイだって怖気づいた自分のせいだって言っていたでしょう?」
「でも!? だって……」
そう、彼女の後悔は誰のせいでも無い。もちろん隣に控えている
世論においては物議を醸したが、URAで審議に掛ける事すらされなかった日本ダービー。
だが、見ている観客にはクライムカイザーが、トウショウボーイに襲い掛かるように身体を寄せたように見えた姿で判断してしまい、世論やファンの罵詈雑言を集めてしまった。
実際はトウショウボーイが怯んで外によれた隙を付いて、クライムカイザーが先頭に素早く躍り出たのが真相だった。
担当ウマ娘を守るためにこの
しかしトレーナーである男は最愛、そして己が夢を重ねたウマ娘に対して、自身が盾となり守れたのであれば本望だ。そもそもURAはそのレースを審議にすら掛けていない。だからこそ、トレーナーに対する処分すら存在していないのだ。
過去の世論による罵詈雑言など気にも留めず、しかし男にとって自責の念が未だに晴れない事実がある。
「私の無念は、貴女の身体の調子を見誤って故障させてしまい、この場に立たせてあげることが出来なかったことです。本当に申し訳ありません」
「わらわが宝塚記念後に無理したせいなのじゃ…… そちは気に、病まないでくれ」
お互いが良きパートナーと言えるのであろう。
結局のところ両者の負の感情は、お互いを思いやっての事でもあったのだ。
「見ましょう、マイフェアレディ。一つの時代の終焉を、この眼で」
男は、その先に通しているだろう互いの未来を鑑み、愛しき担当ウマ娘にレースを見るよう促す。
「うむ。じゃ、じゃがのぉ…… 例え時代が終わっても、この怪我でわらわが引退しても、そちには一緒にいて欲しいのじゃ……」
互いの新たな展望を敏感に感じ取ったウマ娘は、走る事以外、いや、感情から発する欲望を自然と愛しき
「勿論ですよレディ、貴女の執事は私の特権です。死ぬまでね」
「ふわぁぁぁ……♡ じゃ、じゃが! 夜は、執事じゃ、い、嫌なのじゃ……」
顔を真っ赤にしながらモジモジとするクライムカイザーに対して、初めて
「決まっているだろうライム、夜は俺に従って貰うからな!」
既に覚悟を決めている男の返答は淀みが如何程も見えない。
己が欲したド直球の回答に、一瞬惚けてしまう担当ウマ娘であるクライムカイザー。彼の言葉とは裏腹な柔らかで洗練された所作で以って、己が愛している唯一のウマ娘の額に、ふわりと優しさを込めた愛情で口づけをする。
まさかの二人の展開に、「レースを見るか、今すぐにでも爆発しろ!」周囲の観客の心は、自ずと一致するのは必然であった。
☆
中山の直線残り250m。
テンポイントとトウショウボーイが、マルゼンスキーにようやく並び終えたかという所に、後ろのバ群の大外から、グリーングラスが襲いかかってきた。
第三コーナーでインを強襲し、そのまま先頭に立つ戦法を勝ちパターンとするグリーングラスが、この時だけは、荒れた冬枯れの芝を避けて大外を回って来たのだ。
「差す、絶対に差し切ってやる! アタシだって三強の一角、今日はボーイもポインも纏めて差し切ってやる! 勝ち逃げ何て、絶対に許さないんだから…… カイザー、見えるよ。全盛期のアンタはマルゼンの位置だろ? アンタだってこのまま差す!」
『ここでくるのかグリーングラス! 外からグリーングラスだ。外からグリーングラスが来る! 綺麗な芝に身を隠していた緑の刺客が大外から! 怖い怖いグリーングラスが三人のウマ娘に迫ってくる!』
迫るグリーングラスが残り一バ身というところで、誰も見たことが無いという、あるウマ娘の全力が発揮される事となる。
『このまま天翔けるのか? それとも流星が流れるのか? 緑の刺客が三人纏めて刺し貫くのかっ!?』
解説がマルゼンスキーに及ぶ前に、彼女はぐっと更に状態を沈めて脚に力を貯めこむ。
「これ以上のレッドゾーンに踏み込めるのはっ! 貴方との絆の証よ! さぁ、貴方に夢を届けてあげるわ!」
『こ、ここで加速したマルゼンスキィィィイイイ!?』
「「「なぁっ!?」」」
一瞬沈み込んだせいで、トウショウボーイとテンポイントに半バ身抜かれていたマルゼンスキーが、別の動力に点火したかのように再加速する。
ターボエンジンを凌駕したロケット噴射のようだ。
「悔しい、悔しいよ…… でも、行ってよ! マルゼンスキー、私を! 私達を負かした貴女は、誰よりも速いんだって!」
六バ身後方に位置付けていたプレストウコウは、マルゼンスキーの加速に併せる様に叫び声を上げていた。
その感情をぶつける叫び声には、この場には走っていないヒシスピードとラッキールーラの想いも乗っていた筈だ。
観客席にはその二人が涙を流しながら観戦している。
「駆け抜けろマルゼン! お前の速さを永遠に刻み付けてやれ!」
ゴール正面前の観客席から、マルゼンスキーが来るのをトレーナは叫び声を上げながら見つめている。
『規格外のエンジンが中山の直線で唸りを上げる! マルゼンスキー先頭! 一バ身、二バ身後続を引き離していく…… そして!』
獰猛な笑顔のままマルゼンスキーは、互いの絆で結ばれた自身のトレーナーと視線を合わせて、ゴールを駆け抜けたのであった。
『マルゼンスキー、マァルゼンスキィィイイ一着! 紅焔の一閃が中山に刻みつけられたぁっ!! 二バ身半、いや三バ身開いて二着はテンポイント、三着はトウショウボーイ。そしてトウショウボーイから四分の三バ身遅れてグリーングラスが四着』
プレストウコウはマルゼンスキーから、八バ身半遅れた五着でゴールをしたのであった。
☆
「はぁ、はぁ…… トウコウちゃん、一緒に走ってくれて、はぁ…… ん、ありがとうね」
ターフで大の字になって乱れた息を整えながらも空を見上げていたプレストウコウは、今まで見たことが無いほどに息を乱しているマルゼンスキーをぼんやりと見つめる。
差し出された手を受け取り、一度大きく息を吸ってから吐き出して立ち上がった。
「……別に、ヒシはトゥインクルシリーズを九月で引退したけど、私とルーラ、グリーングラス先輩だってまだあんたと走るわよ。ナントガール先輩やバーキンボーだって、来年はマルゼンと――」
いつも良く柔和で朗らかな笑みを浮かべるマルゼンスキーには珍しく、弱弱しい微笑で首を横に振った。
「全員が同じスケジュールになるわけじゃない…… 誰か欠けたら規定出走数に達しないで不成立になっちゃうわ。それにね……」
「マルゼン、その脚……」
元々マルゼンスキーとレースを回避するウマ娘が続出しており、レース不成立になりそうな状況も既に出ていた。それにマルゼンスキーの目標レースは、有馬記念と宝塚記念しか存在しない。
お堅いURAの規則のせいで、出走制限が彼女には設けられている。走れるレース自体がマルゼンスキーには少ないのだ。
最後の加速で脚を痛めてしまい、それが今年の一月後半のレース後に膝を骨折した時よりも長引きそうなのは、現時点で既に自分の身体の事でもあるので実感している。当時その骨折を三か月で直してしまい、五月頭のレースに間に合わせたトレーナーと医者の手腕にはトレセン中が驚いていた。
レース後でまだ興奮状態とはいえ、自身の実感は約半年後の宝塚記念に間に合わないと告げている。
「私だってKYなつもりはナッシングよ。トゥインクルシリーズは引退して、シニア一年目は治療と回復に専念するわ。とんでもハップン
「え、何て?」
同じ世代のプレストウコウであるから、マルゼンスキーの使う言葉は大体わかるつもりだが、それでも解釈が追い付かないことも多かった。
「私の住んでるマンションは歩いてジュップンだから、料理でもこの際もっと勉強しようかしら?」
展開に付いていけなくなったプレストウコウは、乾いた笑いを浮かべるしかなかったのであった。
☆
写真撮影などを行いターフから観客席に向かって、ファンサービスを名残惜しそうに最後まで行ったマルゼンスキーは、レースに出走したウマ娘達の控室に向かう道を、少しバランスを崩しながらカツコツと歩いていた。
「……なぁに、そんなに顔をグシャグシャにして。夢を届けて帰ってきた私に、声を掛けてはくれないの?」
半屋外用の蛍光灯が当たりにくい少し陰溜まりとなっている場所で、肩を壁に預けながらトレーナーはマルゼンスキーを待っていた。
「……君が楽しそうに走る姿を見ているだけで満足だった――」
トレーナーが何とか口を開いて言葉を出してからも、マルゼンスキーはゆっくりとした足取りでトレーナーに向かって歩いていく。
「――君と過ごした二年と八ヶ月、走っていない時も周囲に気を配り、トレーナーである俺にも気遣ってくれる君は、僕にとって誰よりも素敵なウマ娘だ」
「トレーナーちゃん……」
二人の距離は、もう20㎝程度しか離れていない。
「走っている君は僕の夢だと思った。でもそうじゃない、君そのものが僕の夢だよ。ありがとうマルゼンスキー」
「きゅ、及第点……」
マルゼンスキーは真っ赤に染まった表情を見られないように、トレーナーの胸元上、鎖骨に額を乗せる様に擦り付ける。
「及第点なら良いのかな? ルゼ」
「ちょ!? その呼び方、ぅぅう、室内で二人だけの時にして」
了解といった具合に腰もとに手を回して軽くマルゼンスキーを抱きしめるトレーナー。
マルゼンスキーも半歩詰めて身体を密着させる。
「現実…… 私が貴方に寄り添うのも、貴方が私を近くで感じてくれるのも、今までもこれからも現実なんだから! 夢にしないでよね、ダーリン」
「そう、か…… 君の温もりを感じる事が出来るのは幸せだ。でも、ダーリンはちょっとこそばゆいかな」
さすがにその呼び方は甘々で、アメリカンナイズされ過ぎている。日本人のトレーナにはむず痒くなってしまう呼ばれ方だ。
「ふふふ、分かったわ、あ・な・た♡ これでどう?」
「照れくさいよ。ドキドキが止まらなくなってしまう」
お互いの鼓動が混ざり合い溶け合っているので、どちらがどの程度強く鼓動を打っているかは、既に二人にはわからない。
「こんな嬉しい胸の苦しさはロマンティックよね…… 夢」
「ん?」
「今日のレースが今まで走ってきた中で一番楽しかったわ。そして、生まれて初めて最後の直線、200mで自分の全力を出せた」
選抜レースでも全力で走っていないマルゼンスキーではあったが、専属トレーナーになってからも脚部不安のために全力は断固として出すことを禁じていた。
「君の走っているときの表情に笑顔、全力でターフを駆る君のスピードと美しさは瞼の裏に焼き付いている。生涯忘れることはないよ」
「も、もう…… せっかくそろそろ顔を上げて貴方の顔が見たかったのに、まだ…… 上げられなくなっちゃったじゃないの」
「ごめん。でも、見せてくれてもいいんだよ?」
マルゼンスキーが抱きしめる力を強めてきたため、それに応えるようにトレーナーも彼女の腰を少し強めに引き寄せるように力を込めた。
「今は、ダメ…… ねぇ、GⅠ勝利を貴方に届けたわ。嬉しい?」
「あぁ、そうだね、ルゼ。君の笑顔と全力、GⅠ勝利。夢、届いたよ…… 制限が付き纏ってしまった君にGⅠの場を楽しんで欲しかった。最初はただそれだけだったんだけどね。僕も欲張りになっていたみたいだ」
雰囲気と感じる体温で満足を通り越しているマルゼンスキーは、ルゼと呼ばれることに文句をいう事が出来なかった。
二人の身体が密着しすぎて、凭れている壁の際から伸びる影は一つにしか見えない。
蛍光灯のジジッ、ジジジジとか細く鳴る音が、まるで二人が存在しているかを主張しているように錯覚する。
「ありがとう。私を見つけてくれて」
「こちらこそ、僕を選んでくれて」
その後、マルゼンスキーの脚をテーピングとサポーターで応急処置を施し、出走したウマ娘が九人しかいないためウインニングライブが寂しくなる事を危惧したURAは、マルゼンスキーのトレーナーの案を採用することとなった。
クライムカイザーを特別出演させ、センターをマルゼンスキーにテンポイント、トウショウボーイとグリーングラス、そしてクライムカイザーの五人で行うという異例のステージとなった。
バックダンサーにヒシスピードとラッキールーラにも参加して貰い、今年の有馬記念の盛況なレースと共に、熱狂のウイニングライブも異例尽くめの伝説となったのであった。
カイザー「やってみせてよTボーイ」
Tボーイ「何とでもなる筈よ」
Gグラス「Tポイントなの!?」
₍₍ᕦ((▼w▼))ᕤ⁾⁾ ₍₍ʅ((▼w▼))ว⁾⁾
Gグラス「逃がさないっ!」
₍₍((▽人▽))⁾⁾
₍₍((▼w▼))⁾⁾
ヒシスピ「やっちゃいなよ、そんなスーパーカーなんか」
₍₍ ʅ((▼w▼))ʃ ⁾⁾
トウコウ「スーパーカー、マルゼン…… スキー」(舐めプされて七バ身差負け)
₍₍ᕦ((▼w▼))ᕤ⁾⁾ ₍₍ʅ((▼w▼))ว⁾⁾
Tボーイ「ライバル達を抱えているのよ、色々とね」
₍₍ᕦ((▼w▼))ᕤ⁾⁾ ₍₍ʅ((▼w▼))ว⁾⁾
₍₍((▽人▽))⁾⁾
₍₍((▼w▼))⁾⁾
トウコウ「厄介なものよね。生きる世代というのは」(残念ダービー)
₍₍ ʅ((▼w▼))ʃ ⁾⁾
Tボーイ「これからが地獄だわ」(中山の直線は短いぞ)
₍₍((▼人▼))⁾⁾
₍₍((▼w▼))⁾⁾
ゲキマブ「身構えていても、エンジンはフルスロットルよ。先輩方♪」
(゚Д゚)
■激マブ使用語録
・KY・・・空気読めない
・バビる・・・ちょービビる、とかだったかな。
・ナッシング・・・イングつければ、~している。ルー語では無い(笑)
シカッティング(シカトしている)とかよく使ってた気がする。
「あいつシカッティングとか超MM(マジムカツク)~」みたいな
・GHQ・・・go home quickとか何とか、そんな感じで帰宅部だった気がする。
・とんでもハップン、歩いてジュップン、突然の出来事が起こった時に使う。
学生に愛を告げるトレーナー、ヤバいな……
「コヤジマジ超SS、チョッパズからのチョコンバなんですけど~」
助けてヘリオス!