気付けば僕には年上の彼女がいた   作:zennoo

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ありがとうございました!

また、MIC Drop様には☆9の評価を頂きました。6話にしてもう二人の方に評価していただき感激です!

本編どうぞ!


記憶のヒントを集める感じです(上)

来るべき8/13。早朝から少しばかり真冬が意気込んでいた。駅のホームに着いた頃にはもう眠気なんてなかったのである。

 

 

「真冬くん?」

 

「…」

 

「おーい、真冬くん?」

 

「!?は、はい!」

 

「緊張しすぎなんじゃない?もうちょっとリラックスしてもいいと思うよ。」

 

「そうしたいのは山々ですけど…自分の記憶を取り戻すってなるとなんか意気込んじゃって……」

 

「うーん、真冬くんらしいといえば真冬くんらしいけど。そうだ!真冬くんがそんなに肩張ってるなら私が肩揉んであげるね!」

 

「えっ、そんな………ふにゃぁ…」

 

 

少しだけいちゃついていると岐阜行きの新幹線が来たので早速乗り込んだ。新幹線内ではまあ大人しくしてた…とは言いがたい。相変わらず彩のアタックが凄まじい。

 

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「ということで着きましたね。」

 

「そうだね。と言ってもそんなに自然豊かな感じではないんだね。」

 

「僕の実家は駅近くなのでここから歩いていくつもりですけど…いいですか?」

 

「うん、大丈夫だよ。」

 

「手、繋ぎましょうか。」

 

「……うん。」

 

 

彩の、真冬を握る手はいつも以上に力が入っていた。

 

 

(お願い…無事に終わって。記憶が戻るなんてことがありませんように。)

 

 

その願いは誰に届くのか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「彩さん、手に力が入ってますけど大丈夫ですか?どこか具合が悪いとか……」

 

「え?ううん!な、なんでもないよ!」

 

「そうですか……ここが僕の実家です。入りましょうか。」

 

「……うん。」

 

(なんかいつもと様子が違う……変な彩さん。)

 

 

古風な家のインターホンを淡々と鳴らすとガラッと玄関のドアが開いた。そして中から明らかに厳格そうな男が現れた。

 

 

「真冬か。元気にしておったか。」

 

「うん。」

 

 

真冬の父、高部鉄である。

 

 

「彩さんも元気そうですな。いつも真冬が世話になっております。」

 

「いえいえ!むしろ私が真冬くんの世話になってるくらいです。」

 

「まあまあ、立ち話もここまでにして中に入っておくんなせえ。」

 

 

そうして二人は家内へと足を踏み入れる。どこまでも真っ直ぐな目をしている真冬とは対照的に彩の目には不安が宿っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

木造の屋根と畳といった和風な居間に二人が横並びに座った。そして二人の対面に真冬の父が座禅で座る。その姿から威厳を感じとることは容易い。

 

 

「真冬。東京での生活はどうじゃ。」

 

「順調だよ。学校でもいい友達に恵まれたし、学業でも特に問題はないよ。後は……彩さんの存在が大きいね。」

 

「ほう……彩さんには感謝してもしきれませんな。」

 

「私も、真冬くんにはいっぱいお世話になってるところもあります。私が感謝したいところです。」

 

「そうですか。さぞかし楽しんでいるようですな。」

 

「あ、そうだ。父さん。」

 

「なんだ?」

 

「母さんに線香あげてもいいかな?」

 

「ああ。あげていってくれ。」

 

「それなら私も。」

 

「ありがとうございます。きっと、天国で母さんも喜んでいることでしょう。」

 

 

そして線香をあげる二人。あげ終わると彩が切り出した。

 

 

「そういえば真冬くん。記憶がないって言ってるけどいつ頃からの記憶がないの?私聞いたことなかったよ。」

 

「うーんと…だいたい小学校に入学したくらいから中学3年の冬まで記憶が無いんです。」

 

「結構忘れてるんだね……」

 

「卒業アルバム見ても何もピンと来ないし……僕どうしたら…。あ、父さん。中学の頃の卒業アルバムってどこにあるの?」

 

「真冬が東京に持っていったのではないのか?」

 

「違うよ。持っていってないもん。」

 

「どういうことだ?この家にもないぞ?」

 

「絶対おかしいよ!あんなに目立つものをなくすなんてこと無いよ!」

 

「まあまあ真冬くん。もう一回自分の部屋とかを探してみたらどう?案外簡単に見つかったりするかもよ。」

 

「彩さんが言うなら……父さん、僕探してくる。」

 

「そ、そうか……」

 

 

そう言って真冬は2階への階段を全力で駆け上がった。真冬が行った後の居間には数秒の静寂が流れたがその後二人は一つ、息をついた。

 

 

「ふぅ……でもどうしたら…」

 

「卒業アルバムが見つかることはありません。そう簡単に記憶が戻ることは……」

 

「で、でも!ここで真冬くんを諦めさせないといつ記憶が戻るか分かりませんよ!もし真冬くんの記憶が戻っちゃったら……」

 

「落ち着いてください!もし記憶が戻ったとしても真冬ならきっと耐えられるはず。」

 

「でもこの作戦に加担したのは真冬くんが心配なんだからじゃないんですか…?」

 

「……」

 

「真冬くんを諦めさせましょう。そうしたら真冬くんは知らなくていいことを知ることは無いんですから…。」

 

 

無理やり彩が父を丸め込んだ。知らなくていいことを知る恐ろしさというナイフで父を丸め込んだのだ。

そして真冬が2階から帰ってきた。

 

 

「うーん……無かったなぁ……。」

 

「真冬。」

 

「なぁに?」

 

「今更だが、なぜそこまでして記憶を取り戻したいのだ。もしかしたら、知らないほうがいいこともあるのかもしれないのだぞ?」

 

「それでもいい。僕が知りたいだけ。」

 

「本当にいいのか?」

 

「……え?」

 

「思い出したくないことを思い出してそれに縛られてしまうことだってあるのだぞ?だったら「うるさい!!」っ!?」

 

「僕がそんなに弱いと思ってるの?そんなに信じられないの!?だったら見せてあげるよ……そんな記憶にも立ち向かうだけの勇気があるってことを!!」

 

「真冬くん……」

 

「とりあえず外に出て思い出せるか試してみる。彩さんはゆっくりしてください……」

 

「あっ、待って真冬くん!」

 

 

悔しさを目ににじませて真冬は勢いよく外へ飛び出していった。唖然とする鉄。面を食らった顔であった。

 

 

「私、真冬くんを追いかけてきます。」

 

「真冬を……頼みます。」

 

「……はい。」

 

 

鉄は彩の背中をずっと見守り続ける。それと同時に真冬に想いを馳せる。

 

 

(真冬……。私が過小評価しすぎていたのか……。信じきれずに…すまんな。)

 

 

一方彩は全速力で街を走り回っていた。

 

 

(私……真冬くんを守るって言ってるのに……これじゃ裏切り者じゃん……。彼女失格だね……。)




読了、ありがとうございました!
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