風見なぎと様
エネゴリくん様
☆9の評価をつけていただいた
風見なぎと様
ありがとうございました!二話連続で評価を頂けるなんて光栄です。また、投稿する度にお気に入り登録してくださる人が増えてくのもまた嬉しいです。
本編どうぞ!
「ここなら……誰も来ないよね……」
真冬は高部家から走って10分程の土手に来ていた。車通りが多いコンクリート製の橋の真下、全く日が当たらないところでただひたすらに佇んでは流れる川をボーッと眺めていた。
「なんで…僕を信じてくれないんだろう……」
記憶のことに関して…どころか真冬は幼い時から父にはあまり信用されずに育ってきた。昔から父に信用されてこなかったのは慣れっこな真冬の目には何の理由かは知らないが涙がこぼれていた。
一人で沈んでいること20分、コンクリート製の橋の柱から声がかかった。
「やっぱり。真冬くん、ここにいたんだね。」
「…………彩さん?」
真冬の脳内を引っ掻き回す事案が発生。彩に居場所を伝えずに家を飛び出したはずなのにその場所を彩に当てられた。いつもなら驚く真冬だが今回はそうでもない。驚嘆より悔しさの方が勝っているからだ。
「どうしてここが……?」
「……なんとなく、かな。」
気になることが多すぎた真冬だがそれ以上は聞かない。聞く気力も無かった。
「僕……父さんに信用されてないんですよ。」
「……」
「さっきだけじゃない。今までもそうだ。僕は信用されてこなかった。」
「……」
「都内一の高校に入って見返そうと思ったのに効果は0。もう……悔しいよ……。」
「真冬くん…」
「だから彩さん……僕のこと、放っておいてください。」
「……出来ないよ。」
「なんでですか。こんなにネガティブなことばかり言ってる僕の近くにいたら彩さんまでネガティブになりますよ。」
「違う。」
「違わないですよ。こんなに弱い僕が許せない。そんな怒りを彩さんの前で見せたくない!」
「…」
「頼むから放っておいてください!こんな僕…誰にも見せたくないんです!」
心からの叫びを彩の心でしっかり受け止める。その彩がやる行動はただ一つ______包容であった。
「放っておけないよ。」
「なんでですか…。こんな僕、嫌じゃないんですか?」
「嫌なわけ無いよ。そういうところまで含めて、私は真冬くんのことを好きになったんだから。」
「……」
「辛かったら私がいるよ。いつでも抱きしめてあげるからね。」
短いやり取りだった。だけど甘い蜜だった。
その甘い蜜の誘惑に勝てるはずもない。荒んでいた真冬の心に甘い蜜が染み渡る。
もう何の涙かは分からない。だが涙腺が決壊した真冬はしばらく彩の胸の中にいた。
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「落ち着いた?」
「はい……ごめんなさい。」
「いいんだよ、謝らなくて。」
「でも…」
「?」
「彩さんと一緒にいると、なんか落ち着くんです。えへっ、なんででしょうね。」
「それは…私にも分からないかな。」
「……そうですか。」
「でも安心したよ。真冬くんに少し笑顔が戻ってきたからね。」
「やっぱり……彩さんと一緒に来れて良かったです。」
「……そっか。」
優しい笑顔で返答した彩。一段落したところで真冬が踏み込む。
「そういえばここって……」
「ん?どうかしたの?」
「なんか見覚えあるんだよなぁ……」
「……え?」
「う~ん……見覚えあるのに思い出せない。」
「そんな……無理して思い出そうとする必要もないんじゃないかな。自然に思い出せると思うけど……」
「でもなんか思い出せそうで思い出せなくて……不思議ですね。」
「そうなんだ…。」
この風景に心当たりがあるという真冬。思い出せそうという言葉に反応しそうだったがその心を引っ込めた。
(真冬くん……この風景ね、私も見覚えあるんだ。忘れもしないよ。)
真冬を無理させないように彩がまた話を切り出す。
「ねぇ真冬くん、先に言っておかなきゃいけないことがあるんだけど……いいかな?」
「え?なんですか?」
「もし真冬くんが記憶を思い出せたとして……真冬くんのトラウマまで思い出しちゃったら……そのときは無理せず私に言ってね。私、真冬くんを支えるって決めたんだから。」
「……あ、ありがとうございます!」
(うんうん。真冬くんと言ったらこの笑顔だよ~。はぁー癒される。)
「あ、そうだ。行きたいところがあるんですけどいいですか?」
「うん、いいよ。どこなの?」
「それは……」
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「ここです。」
「ここって……真冬くんが通ってた中学校?」
「そうです。唯一中学のアルバムだけなかったので見ておきたかったんです。」
「そうなんだ。」
「何か思い出せるといいけど……すこし回ってみますね。」
「うん、そうしよっか。」
真冬は彩と共に校舎の周りを一周してきた。もう少しで一周するというところで真冬の足が止まった。
「あれ、ここは……」
「ん?見覚えあるところ?」
「はい…さっきの橋の下と同じでうっすらと見覚えがあります。」
「そうなんだ……」
「ちょっと待っててください…なんか思い出せそうなんで……」
そうして少ないヒントを便りに記憶の迷路を辿っていった。そして三分ほどした後、真冬に異変が襲いかかる。
「うっ……!あ……あああ……ああああ!!!」
「っ!?どうしたの!真冬くん!!」
「何……この情景は……あああ……っぁぁぁぁ!」
「真冬くん!」
テレビの電源がついたかのようにいきなり真冬の脳内に表れた風景とは中学時代の……鈍器を持った大勢の人々に囲まれている風景だった。
あの日が沈んでいた橋の下で何があったかは分からないが真冬にとって恐怖の対象であることに変わりはない。
「はぁっ…はぁっ……なんだったんだ……」
「大丈夫だった!?真冬くん!!」
「あ、…彩さん……なんとか大丈夫でした……。」
一瞬ではあったが真冬には恐怖として刻まれた映像。だがなんとかしのいだようだ。
「取り敢えず、気を失わなくてよかったよ……。突発的なものだとそういうこともあるらしいからね。」
「はい……」
「一旦実家に戻ろうか。立てる?」
「それが……腰抜けちゃって……」
「そっか。じゃあおんぶしてあげるね。」
「えっ!?い、いいんですか?//」
「何~?緊張してるの~?」
「そ、そそんな訳無いじゃないですか。」
「緊張してるのがバレバレだよ。ほら、乗っていいよ。」
「は、はい……//」
「じゃあ、レッツゴー!」
(彩さんのおんぶ気持ちいい……)
(とうとう記憶の片鱗が出てきちゃったのか……全部思い出すのも時間の問題なのかな。そしたら……もう真冬くんとは一緒にいられないね。)
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「じゃあ父さん、僕達帰るよ。」
「そうか……すまないな。信じてあげられなくてな。」
「……もういい。」
「真冬くんのことは私に任せてください。しっかり支えますから!」
「彩さん……私の息子を、頼みましたぞ。」
「じゃあね、父さん。」
その帰り道の新幹線でのことだった。
「ねえ真冬くん。」
「なんですか?」
「ちょっと嫌なこと思い出しちゃったでしょ?」
「え?ええ……」
「だからね、明日、海行こうよ!」
「海…ですか?」
「だめ?」
「いいですよ。僕も行きたかったので。海水浴ですか?」
「そう!二人だけのハネムーンだよ?」
「……」
「真冬くん?」
「あ、ああごめんなさい。」
「ボーッとしちゃってました……」
「もしかして私の水着姿を想像してた?エッチなんだから~」
「し、してないですよ!//」
「エヘヘ、また楽しみが増えたね。」
「エヘヘ…そうですね!」
想いをのせて、彩は真冬の小さい手を優しく握りしめた。
読了、ありがとうございました!