怪しさMAXの陰陽師は、奈落の底を目指すようです 作:S・DOMAN
全身が鉛のように重く、暗い感覚に包まれており、それが心地よくてうっとりとしておりました。有体に言えば拙僧、現在すやすやと眠っているのです。
ですがその安寧も長くは続きませんでした。なにやら外が騒がしいようで、先ほどから絶え間なく爆発音が…
ンンン爆発音ンン!?
「なぁッ……は!?」
慌てて飛び起き窓の外から村の様子を確認しますと、住人たちが各々の武器を持って広間の方へと向かっていくのが見えまする。
何が起こっているのかサッパリ分かりませんので、式神を用いて爆発音の聞こえた方へ式神を飛ばし、確認してみますと、“村”の外壁に巨大な大穴が開いておりました。
そして、その穴の傍らには、右腕から蒸気を燻らせておられるレグ殿とワズキャン殿がおられます。
「は、はハ、ハハハハハ!何ですかコレは!!何なのです!ああ…」
何故です。何故にレグ殿がこのような事を?拙僧の記憶操作は完璧だったハズ。だというのに何故、ワズキャンなんぞの甘言に惑わされておるのですか…
ともあれ、この状況をどうにかしなければなりませぬ。このままでは空いた大穴から深界生物どもが侵入してきて、全員まとめてお陀仏ですぞ!?
ああッ何故だ。何故、何故、ナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼェェェェェェッッッ!!!
「ワズキャンンンンン!!!貴様ァァ!!!リコ殿らに毒を盛ろうとするに飽き足らず、レグ殿にまで手を掛けるかァァッ!!」
「ンンン然らばッ!予定を前倒ししまして儀式を執り行いましょう。我が神術魔術の粋を見よ。この身は現世最強の陰陽師の物なるぞ!」
窓から飛び降り、レグ殿がおられる方へと駆けてゆきます。陰陽術を使用すれば一瞬ですが、今は瞬間移動を行うための魔力さえ惜しい。多少時間はかかりますがこちらの方が都合が良いのです。移動している最中の詠唱も、概念礼装の換装も忘れませぬぞ。今回ばかりは拙僧も覚悟を決めねばなりませぬので。
なぜ拙僧がこれほどまでに慌てているのかと言えば、魔術工房が未だ完成していないからなのです。本来であれば一月ほどかけて作成する拙僧の陣地、魔術工房。何分生物の中に作るのは初めてのことでしたから慎重に慎重に……とゆっくり作業をしていたのが命取りになってしまいました。
そも、アルターエゴである拙僧に限らず、魔術師という存在は工房の中にあってこそ真価を発揮するのです。自身の工房の中であれば大抵の事が可能でありますれば、儀式の成功のためにはやはり必須。ですので、ええ。
今からパパっと完成させまする。
言うまでもなく、走りながら陣を描くのは至難の業です。特に、このやり方では“村”を痛めつける事になりますので、拙僧も精算の対象に選ばれてしまうのですよ。そのために痛みの出ない方法で術を刻み込んでいたのですがねェ…
うねうねと拙僧ににじり寄ってくる黒い粘液を、退散の呪術で追い払っておりますが、煩わしいものです。
「ええい鬱陶しい!拙僧に構う程ヒマがあるのなら外敵を駆除しに行った方が宜しいのでは!?」
ぶつくさと文句を垂れながらも描いておりますと、そこでようやく気付くことになります。未だ未完とはいえども自身の工房に魔力を、感覚を通わせていたからこそ感じる、この重圧、この恨み、そして何より、濃密なりし殺意。
「―――それは……不味い、ですなぁ」
姫が帰還なさいました。
_( _´ω`)_ < いつも感想ありがとうございます。によによしながら読んでます。