転生したら帆波ちゃんだったので、綾小路君の相棒になってみようと思います 作:レイラレイラ
「なあ帆波。よかったらなんだが、オレと部活動説明会に行かないか?」
「えっ」
有栖ちゃんと別れて教室に向かっている途中、清隆くんと雑談していると部活動説明会の話題が浮かんできた。
原作だとここは堀北さんが誘われていたはずだから、思わず変んな声が出るほどには驚かされた。
「…………すまない。オレとは嫌だったよな。堀北あたりにでも頼んでみる」
それを清隆くんは拒否されていると捉えたのか、少し気落ちした様子で歩を速めた。
か、かわいい!
清隆くんの本性をよく知っているからか、普段とのギャップも相まってとても愛らしいものに映っている。
もう少しだけその姿を見ていたいという衝動をなんとか抑えつけて、先行する清隆くんの腕を強引に掴む。
堀北さんを誘うという部分に嫉妬していたのか、さらに腕まで組んでしまった。
結果的に胸で彼の腕を圧迫してしまっているんだけど、退くに退けない状況になっちゃったしこのまま突っ切るしかない!
「だ、大丈夫だから! むしろ私でよかったらいくらでも付き合うよ!」
「いいのか?」
「もちろんだよ! 私は部活動はやるつもりがないけど、清隆くんと一緒なら行きたいなーって思ってたから。ありがとう誘ってくれて!」
「帆波がそう言ってくれてよかった。これでオレも気兼ねなく部活動説明会に行ける」
ほとんど顔には出ていないけど、清隆くんが安心しているのは伝わってくる。
彼を一瞬でも傷つけたかと思うと、少なくない罪悪感が沸き上がってくる。
でも、それはもう過ぎたことだから。
これからも清隆くんの役に立てるなら、私にとっては何よりも喜ばしいことなんだよ。
「もしかして、入りたい部活があるとか? もしそうなら私も付き合うよ」
「まだ考えてはいないが、多分部活には入らないだろうな。ただこれが何かのきっかけにはなればいいとは思ってる」
「友達作りの?」
「なぜ分かった」
「にゃはは。何でだろうねー」
原作知識だけじゃなくて、ホワイトルームに連れてこられた時からの約十年は伊達じゃないんだよ。
清隆くんがどうしたいのか、何を思ってるのかは目を見ればだいたい分かる。
彼に友達を作ってあげるのも、私がそうなったら嬉しいだけなんだけどね。
「帆波」
「清隆くん? どうしたの?」
「少し離れてもらってもいいか? 周囲の視線が気になってな」
「え?」
落ち着いて周りをよく見てみると、たくさんの生徒たちの視線が私たちに集中していた。
清隆くんに殺意の目を向ける男子もいれば、何故かサムズアップしてくる女子もいる。
私と清隆くんの状況を俯瞰的に考えてみると、完全に人目を憚らずにイチャイチャしてるカップルにしか見えないことに気づいた。
慌てて清隆くんから離れるけど、腕と胸に残った彼の感覚を意識しちゃってどうしても顔が熱くなる。
わざわざ鏡を見なくても、私の顔が真っ赤になっているのは明白だった。
「ご、ごめんね! いきなりあんなことしちゃって…………!!」
「帆波が気にする必要はないだろう。元はと言えば、帆波の意見を聞かずに動こうとしたオレが悪いんだからな」
「なら、おあいこってことで…………」
とりあえずはお互い様という形でこの話題を終えて、私たちはそそくさと教室に戻っていく。
教室の中に入るまで背中に様々な視線が付きまとう感覚には、色々と複雑な気分にさせられた。
部活動説明会自体は難なく終わったけど、そのあと陸上部の先輩たちが怒涛の勢いで迫ってきたものだから清隆くんには悪いけどすぐに退散させてもらった。
今後あの先輩たちに頼らない方がいいんじゃないかなとか、半分自業自得なのを分かっていながらツテが多いに越したことはないから受け入れるしかないんだけどね。
そして今私は有栖ちゃんに呼び出されて、有栖ちゃんの自室前に立っている。
ちなみに有栖ちゃんには今度こそ私一人で来るように言われてる。
そんなに清隆くんを連れていったことを気にしているのかな?
確かに有栖ちゃんは今の時点では、清隆くんにかなりの敵対心を持っていたはずだから無理もないかもだけど。
それはともかく有栖ちゃんが言うには、手っ取り早くポイントを稼げる手段があるらしい。
有栖ちゃんがやりそうなこと言ったら相手をはめてポイント接収とか、もしかしたらポイントを貸した相手からその倍は徴収しているかも!?
失礼だっていうのはわかってるんだけど、あの子だったら本当にやりかねないって思う自分がいるのも確かなわけで。
友達の部屋にお呼ばれされるのは前世ぶりだから、さっきまでの想像と合わさってさらに緊張度が増してしまう。
こういう時は深呼吸だよね!
鼻で吸って、口で吐くという工程を何度も繰り返しているうちに扉が勝手に開いて、私も咄嗟のことだったから思わず身体がビクッとなった。
扉の中から顔を出した有栖ちゃん。
周囲を執拗に確認しながら、私の隣に誰もいないことにホッと息をつく。
「ちゃんと一人で来てくれたようですね。安心しました」
「あはは…………」
私としては二人には仲良くしてほしいんだけど、二人の性格とこの学校の校風から考えてもかなり難しいだろうね。
「どうぞ遠慮なく入ってください。紅茶の用意も出来ていますから」
有栖ちゃんに招かれて、言われるがまま部屋に入る。
部屋の中は綺麗に整頓されていて、分かりきっていたことだけど彼女の育ちのよさが伝わってくる。
小さな折り畳みテーブルが部屋の中央に用意され、その上にはアンティークなティーセットが並べられていた。
「どうしました? 遠慮はいりませんから楽にしていいんですよ」
「う、うん。そうさせてもらうね」
そのまま床に直接お尻をつける形で座って、有栖ちゃんは優雅な所作でベッドに腰かける。
有栖ちゃんの身体のことを考えれば、こんな折り畳みテーブルなんて必要ないはず。
なのにそれがあるってことは来客、もとい私のためにわざわざて手配してくれたことになる。
そんな彼女の心配りが嬉しくて、思わず頬が緩みそうになる。
「さて、早速ですが本題に移らせてもらっても構いませんね?」
「うん、大丈夫だよ。それで手っ取り早くポイントを稼ぐ方法って…………」
「帆波さんも大方の予想はついているでしょう。それは…………」
「ポイントの譲渡、だよね」
見事なまでに完璧なタイミングで合わさった二人の言葉。
そう、私もその方法は考えていたけどなかなか踏みきれずにいた。
しかもそれは善意で貰うというようなものではなくて、有栖ちゃんが言いたいのはつまり…………
「それも平たく言えば賭けによるもの。学校側はそれを黙認し、半ば推奨していると言ってもよいでしょう。これならあっという間にポイントを稼げますよ」
有栖ちゃんの端末には26万前後のポイントが表示されていて、初日でそこまで稼いだことに驚かされる。
「どうです? お互いにポイントを賭けてチェスをするというのは」
「賭けか…………うーん、あんまり気乗りしないんだけどな」
「ご心配なく。負けるつもりは毛頭ありませんので」
そう言われたら受けないわけにはいかない。
私は特別負けず嫌いというわけじゃないけど、チェスだけは話が別だったりする。
前世から嗜んできたチェスは一番好きなゲームということもあって、こればかりは譲れないという想いが私にもあるんだよね。
「わかった。ポイントはどれくらい賭けたらいいの?」
「そうですね…………一回につき1万ポイントはどうでしょうか?」
「いいよ。負けても恨みっこなしだからね」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
結論から言って、私が10連勝しちゃった。
9万7千弱だった私のポイントは、もう少しで20万に到達するというところまで来ていた。
「ふ、ふふふ…………こんなことが…………」
「あ、有栖ちゃん? その…………大丈夫? やっぱりポイント返そうか?」
さすがにいたたまれなくなって、有栖ちゃんから譲渡されたポイントの返却を提案するけど彼女は壊れたように笑い続けるだけ。
もう冷めきっていた紅茶を口に含めても、罪悪感が凄くて味が分からない。
なんだか、有栖ちゃんと飲む紅茶は毎回味が無くなってる気がする。
ガバッといきなり俯かせていた首を上げて、私を不気味な笑みで見つめる有栖ちゃん。
な、なんだか怖いよ…………
「帆波さん…………」
「な、なに?」
「そのうちリベンジさせてください。その時は今度こそ、あなたに土を付けてあげますから」
「あはは…………た、楽しみにしてるよー」
ちなみにあの有栖ちゃんの不気味な笑顔が頭から離れなくて、朝まで眠れずにクラスメイトに心配をかけたのはここだけの話。
帆波という幼なじみ的な存在がいる以上、部活動説明会に行くのに堀北を誘う理由がないんですよね
ポイントを稼ぐ試験とか以外の方法だと、ポイントをチップにした『賭け』だったり、誰かに与えた貸しの代わりに『徴収』するなどが想像しやすいと思われます。
それっぽい理屈を並べましたが、実際のところ昨日『賭ケグルイ』読んでたので、作者が感化されただけです笑
帆波の性格上、そのどちらもなるべく行いたくないでしょうから有栖ちゃんがどうしても帆波とチェスをしたいがために使う給料みたいなものとして今回はポイントの大量獲得となりました。
帆波(憑依)に『■■のホワイトルーム生』的な二つ名をつけるとしたら
-
慈愛のホワイトルーム生
-
偶像のホワイトルーム生
-
単純にホワイトルーム生No.2